■スポンサードリンク


ひなた



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
ひなた
ひなた (光文社文庫)

ひなたの評価: 3.84/5点 レビュー 25件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.84pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全25件 21~25 2/2ページ
<<12
No.5:
(4pt)

日常生活が不安定なものであること

大学生の大路尚純と彼女、尚純の兄と兄嫁の男女4人が、それぞれの立場から語り手となり、ひとつの小説を構成している。吉田修一の読者にとってはお馴染みの手法だ。今回は4人の“書き出し”を合わせるといったお楽しみ的な細工も見られる。

 「JJ」連載ということで、女性主人公は兄嫁が雑誌編集者、彼女がアパレルの広報といった「月9」ばりの流行り職業だが、男性のほうは兄が信金勤務、弟がフツーの大学生といたって地味、さらにはプレスの彼女も実は族上がり、こうした予定調和でない設定が逆にリアリティーを生んでいる。本作は4人の視点によって、大路家周辺の家族関係、夫婦関係、友人関係の表層と深層を描き、一見、賑やかで和やかで安らかな日常が、不倫や同性愛や出生の秘密に支えられた不安定なものであることを示している。「東京湾景」は実際「月9」になってしまったわけだけど、甘いコーティングに潜む毒を描くことこそが吉田修一の本質なのだと思う。そして闇を抱えながらも日常を生きていくことを是とする前向きな現実主義と楽観主義に救われる。

 なんでもない風景が実は不安定で歪んだものであることを教えてくれる安村崇の表紙写真も、作品内容にマッチしている。
ひなた (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:ひなた (光文社文庫)より
4334744281
No.4:
(5pt)

嘘と不安

登場人物の誰もが、嘘と不安を抱えています。あるいは、嘘があるから不安になり、不安から逃れるために嘘をつく。そんな「日陰」を抱え込んでいる登場人物たち。けれど誰もが一様にひなたに憧れ、ひなたを守ろうとし、ひなたに自分の居場所を見つけようとする。

それは決して遠い物語の話ではないように思えます。自分自身を振り返ってみれば、登場人物たちと同じように、ほのかな嘘とささやかな不安を隠し持っていることに気づきます。そして読み終えたとき、自分がとりたてて何の意識もしていなかった生活の「ひなた」が、ひどく愛しく、大切なものであるように思えました。
ひなた (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:ひなた (光文社文庫)より
4334744281
No.3:
(3pt)

ちょっと心を揺さ振る

兄とその妻、弟とその彼女。

この4人を春夏秋冬に描いたことで、夫婦、家族、友情を浮き掘りにする。

季節の変化と共に、頼りなかった弟とその彼女が社会人として足固めして

多忙を極めてた兄とその妻にも変化が・・・

季節の変化と、家族の変化も少しづつ起こる

そんな時不安になる気持ち

流れるように書きながら、たまに鋭い所を突く本だった
ひなた (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:ひなた (光文社文庫)より
4334744281
No.2:
(5pt)

感性を柔らかくときほぐす文章

4人の人物それぞれの視点から語られる1人称の「日常風景」。どこにでもありそうな会話/行動に、自らが持つ狡さや脆さ・弱さを炙り出しにされるような瞬間が多く存在する。全体を通して感じる言いようのない不安感・いたたまれない感覚こそは、こうした普段は目を背けようとしている自らのネガティヴな感情に向き合うことを余儀なくされることから来ているのではないだろうか。

自らの弱さ故に生じる孤独感・空虚さから、相手への裏切りとなるような行為を行う人間の狡さ。そういったものを直視する作業は楽しいことではない。けれどもそうした負の感情のフィルターを通して見つめ直される"大切な人を想う感情"は、これまでに無い鮮やかさを持って胸の内を激烈に渦巻く。知らぬ間に随分と硬化していた感情の殻を、丁寧に丁寧に剥ぎ取っていく文章。

吉田修一が書く物語を読み終えたとき

自分を取り巻く世界はいつもよりほんの少し

鮮やかな質感を伴って目に映る。
ひなた (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:ひなた (光文社文庫)より
4334744281
No.1:
(5pt)

「ひなた」の上のヴェール

吉田修一の久々、そして待望の新作。

彼の小説は単に男女の関係を描いてはいない。いつも人間と人間、その不完全なものどうしが織り成す会話、そして場面を丹念に描くことによって、その心の表面を覆ったヴェールのようなものをうまく書き出してみせる。

今作も兄弟、夫婦、恋人。様々な人間模様を軽いタッチで描いてみせている。ただその軽さの向こうには、日常がずれていく恐ろしさ、他人や自分と他人が作り出す環境へ適応することの難しさが潜んでいる。普段はあるかどうか気がつかない、自分が纏っているヴェールのようなものがしっかりとした手触りで描かれているのだ。

でも軽いんです。一気に読めてしまいます。
吉田ファンならずともオススメの一冊です。
ひなた (光文社文庫)Amazon書評・レビュー:ひなた (光文社文庫)より
4334744281

スポンサードリンク

  



<<12
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!