■スポンサードリンク
(短編集)
ひとりっ子
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
ひとりっ子の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.09pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
『The One』という映画があった。125のパラレルワールドに存在するもう一人の“自分”を抹殺することにより全能の力を得ようとした男の話だ。 『The One』は波動関数の収縮を体現したコペンハーゲン解釈をなぞった映画といえるだろう。に対し、本短編集に収録されている『オラクル』と『ひとりっ子』は、宇宙は量子が重ね合わさった世界へ分岐していくというドイッチュが支持する多世界解釈をベースにしている。 しかしこの多世界解釈、理論的には穴だらけで専門家に言わせるとかなりマユツバものらしい。その空白をイーガン流の想像力(ファンタジー)で埋めて、らしくみせたストーリー(フィクション)が上記2作といえるのではないか。 そもそも宇宙には量子デコヒーレンスによる波動関数の収縮を外側から観測する者がいない以上、科学的証明などできるわけないのであるが、クアプスなる架空プロセッサーを“ぼく”に開発させたイーガンは、“ヘレン”というAIロボットにその観測者の役割を担わせている。 ナチスドイツの暗号エニグマを解読するために古典コンピューターの原型を作ったといわれるチューリング。ホモセクシャルでもあった彼をモデルにしたロバート・ストゥーニーに知恵を授けたのがこのヘレン(観測者)という設定だ。 (ドイッチュ理論も個人的には十分スピリチュアルだとは思うが)どこかスピリチュアルなペンローズの量子脳理論は一蹴、大乗仏教の唯識と量子論を関連づけたがる輩などは歯牙にもかけない“ぼく”(イーガン)。 アンドロイドに宇宙でたった一つの意識をもたせることができるなら、多世界解釈の証明はおろか、分枝のベクトルだって変えて(未来を予測して)みせる。作家の壮大な自信を伺わせる連作である。 「(量子コンピューターの)能力の源泉は、膨大な数の並行宇宙で計算を分担する点にある」 デヴィッド・ドイッチュ | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!