ねじまき少女
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古典SFは科学の限りない発展による遠い未来(輝くものとは限らない)の世界を夢見たが、 サイバーパンク小説はもっと近い未来、不完全で人をゆがめるような技術と、巨大資本による世界支配を予測した。 ある意味で、それはもう現実化しつつあるように見えるが、 現実・現代の環境破壊は、そんな歪んだ世界さえ滅ぼしてしまいそうな勢いで進んでいるようにも見える。 パオロ・バチガルピが紡ぐ物語、エコSFなどとも呼ばれた作品群は、そんな差し迫った危機を描いて見せる。 世界を経済的に支配するために遺伝子操作された作物、害虫、病気がばらまかれる世界。 しかし、現実でも遺伝子組み換え作物の是非を問うまでもなく、通常の農作物や店頭で普通に売られている種苗ですら、不稔化されて植物・生物の本来の性質を失わされた上で商品化されたものであり、本来の種子は失われる方向にある。 地球環境が破壊されていると言う情報に懐疑的な人々は実際多いし、 人類は(科学者の一部が言うようには)滅んだりしないのかもしれない(オゾンホールもふさがるそうだ)。 しかし、確かに今も飢えや貧しさだけでなく土地の浸食などで困窮している人々は多く居る。 (全ての報道が偽りでないなら。) 破壊とまで呼べる環境変化が実際には起こっていない、少なくとも人類の所為じゃない、としても、日常の生活用品や食品の値上げをぼやかずに居られない層なら、 その「燃えている対岸」に落とされる可能性は限りなく高いと思う。 例えば「渚にて」に描かれるような静かで、ある意味安らかな終末をむかえられるとは思えない。 「いずれすべては海の中に」も環境破壊の末の終わりとしては希望を持ち過ぎのように感じる。 喧騒と貧困と暴力と汚染の絶望に満ちた世界で、うだるような暑さの不快感に苛まれながら生きるために(稼ぐために)足掻かずには居られない、そんな人々を描くこんな作品こそが、今、読んでおくべき物語ではないか、と言えば大げさだと笑われるだろうか。 (世界が物語のように破壊されるとは限らないけれど、 物語のように都合よく世界を救う手段が見つけられるとも限らないのが現実だと思うのだが。) | ||||
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ねじまき、遺伝子改変と疫病、カロリー企業と昔ながらの生活の対立構図っていう設定は面白いんだけど、説明が皆無で、断片から推理しながら読むしかない。そのへんの設定がピッチリ世界にハマるのがSFの気持ちよさだと思うんだけど、それは先に出た短編のほうで全部書いちゃってるのかな? ほんでその面白い設定の上で展開する話は、つまらない政治。ワシの好みからすればいらん蛇足だけを読まされてる気分。 ほんとに設定はシビれるくらい面白いんで、そこだけもっと深堀りして読みたい。短編のほうを読めばいいのかな? | ||||
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"きみたちはいま、過去にしがみついてるせいで死んでるんだ。わたしたちはいまごろ、全員ねじまきになっているべきだったんだ。初期バージョンの人間を瘤病から守るよりも、瘤病に耐性を持つ人間を作るほうが簡単なんだから。"2009年発刊の本書は、SF賞を総なめにしたディストピアSF傑作。 個人的にも少し縁のあるタイ、バンコクを舞台にした本書。群像劇的に展開する上巻の途中で挫折していたのですが、今回ようやく読み終えました。 さて、そんな本書は【石油が枯渇しゼンマイ仕掛けの機械(とそれを巻く遺伝子改造された象)エネルギーが普及した】世界、また意図をもって創り出された【疫病が蔓延する一方、それに対応した穀物を法外な値段で売りつける】カロリー企業が牛耳っている世界を舞台に複数の登場人物の視点で物語がバラバラに展開していくのですが。 率直に言って、以前は【ややあやしい翻訳】それと【エネルギー資源問題、ウイルス、遺伝子操作】と現在地球上で懸念されている事態がことごとく最悪の形で実現した】ようなディストピア設定を読み込むのに一苦労したのと(この点は確かに帯通りにニューロマンザーと近い感覚)また、そこで日本企業の遺伝子操作により労働者として生まれた新人類"ねじまき少女"ことエミコが【度々性的に虐げられている場面】に嫌悪感を覚えて【上巻で挫折してしまっていた】のですが。 今回【途中から最後まで無事に読み終えて】そのエミコが自らとった行動によって【全てが加速して、見事に収束しているラスト】に拍手を贈りたくなりました。また一方で、エミコも含めた個性豊かな登場人物を勧善懲悪的ではなく【それぞれに偏らずに描いている】点も含めて面白かったです。 また東洋的なモチーフが取り入れられた似たようなディストピア世界だとブレードランナーとかを想像しがちですが。SF作品には珍しく?タイを舞台にしていることで、また違った【熱帯的な暑さや雑多感を感じさせてくれている】のも新鮮かつ本書の特徴的なところではないかと思いました。(しかし、こんな破滅の予感しかない酷い近未来が、どこかしらありうるかも?と今は思ってしまうのが怖い。。) よく練られた設定、世界観を感じさせるSF作品好きな方へ、またSFならではのディストピア世界に浸りたい方やタイに縁ある方にもオススメ。 | ||||
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"きみたちはいま、過去にしがみついてるせいで死んでるんだ。わたしたちはいまごろ、全員ねじまきになっているべきだったんだ。初期バージョンの人間を瘤病から守るよりも、瘤病に耐性を持つ人間を作るほうが簡単なんだから。"2009年発刊の本書は、SF賞を総なめにしたディストピアSF傑作。 個人的にも少し縁のあるタイ、バンコクを舞台にした本書。群像劇的に展開する上巻の途中で挫折していたのですが、今回ようやく読み終えました。 さて、そんな本書は【石油が枯渇しゼンマイ仕掛けの機械(とそれを巻く遺伝子改造された象)エネルギーが普及した】世界、また意図をもって創り出された【疫病が蔓延する一方、それに対応した穀物を法外な値段で売りつける】カロリー企業が牛耳っている世界を舞台に複数の登場人物の視点で物語がバラバラに展開していくのですが。 率直に言って、以前は【ややあやしい翻訳】それと【エネルギー資源問題、ウイルス、遺伝子操作】と現在地球上で懸念されている事態がことごとく最悪の形で実現した】ようなディストピア設定を読み込むのに一苦労したのと(この点は確かに帯通りにニューロマンザーと近い感覚)また、そこで日本企業の遺伝子操作により労働者として生まれた新人類"ねじまき少女"ことエミコが【度々性的に虐げられている場面】に嫌悪感を覚えて【上巻で挫折してしまっていた】のですが。 今回【途中から最後まで無事に読み終えて】そのエミコが自らとった行動によって【全てが加速して、見事に収束しているラスト】に拍手を贈りたくなりました。また一方で、エミコも含めた個性豊かな登場人物を勧善懲悪的ではなく【それぞれに偏らずに描いている】点も含めて面白かったです。 また東洋的なモチーフが取り入れられた似たようなディストピア世界だとブレードランナーとかを想像しがちですが。SF作品には珍しく?タイを舞台にしていることで、また違った【熱帯的な暑さや雑多感を感じさせてくれている】のも新鮮かつ本書の特徴的なところではないかと思いました。(しかし、こんな破滅の予感しかない酷い近未来が、どこかしらありうるかも?と今は思ってしまうのが怖い。。) よく練られた設定、世界観を感じさせるSF作品好きな方へ、またSFならではのディストピア世界に浸りたい方やタイに縁ある方にもオススメ。 | ||||
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複数の登場人物の視点から未来のバンコクを描く。いきなり創作世界固有の用語がなんの説明もなく出てくるので、決して読みやすいとは言えない。ここまで説明のための一文を省く長編小説は初めてである。読みやすさが犠牲になったが(いやー疲れた!)、そのために黙示録的、叙事詩的な雰囲気が邪魔されずにいきている。とも言えるかもしれないが、やはり分かりづらく没入感を阻害するので独りよがりとの謗りは免れ難い。 いわゆる隠された世界の秘密を暴くタイプのSFではない。遺伝子操作がこの世界のキーテクノロジーであることは序盤から明らかだが、遺伝子操作についての技術的な解説やガジェットは、伝説的?遺伝子リッパーが登場しても、ほとんど語られない。グレッグイーガンなどのハードSF作家とは違い、そんなことにはあまり興味がない作家なんだろうと思う。背表紙にもエコSFと書かれていたが、それは間違いではない。ギブスンやイーガンではなく、フランクハーバートの『デューン』の系譜の遠い親戚に連なる作品なのである。ただ、同作は巻末に「事典」が付いているので、世界観はもっと伝わりやすいが。 エミコがなぜ本能に抗ってサバイブできたかとか、ギボンズの生命観とか人類観みたいなものを、もう少し語って欲しかった気がする。ホクセンやカニヤはほとんどねじまきとの接触もないので、彼らのパートはどうしてもSF感が薄い。アマゾンでいろいろ書いている人たちの期待ハズレ感も、ほんとはそのあたりにあるのではないか。 SF感の薄さと入り口の狭さはあるが、物語としてはよく練られていて面白かった。 追記 作家の上田氏によれば、これはノワール小説であって、皆が何かを求めてあがくが、ついに誰もそれを手に入れられない、という。なるほど、全くその通り | ||||
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