ターミナル・エクスペリメント
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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ソウヤー4作目の読書。だんだんと著者のエンターテインメントの傾向が感じられてきました。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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魂の存在や死後の世界について書かれた物語は数多くありますが、神話、伝承の類は別として、そのほとんどが“トンデモ”または“宗教的”と捉えられているのではないでしょうか? にもかかわらず、本書は、本格SF作家が、真面目に取り組んだ魂と死後の世界に関する物語です。 と言っても、いかにもSFという、しちめんどうくさい理論に覆われた話ではありません。 物語は、普通の夫婦の危機に起こった普通じゃない事件の顛末です。ただし、その骨格にはしっかりしたSF的なアイデアがあり、ミステリーとサスペンスの皮をまとっています。発表時点から見れば近未来(16年後)の2011年のトロントを舞台にした日常的な風景が通俗小説のように語られます。 不倫と殺人事件という下世話な話が、魂と死後の世界という観念的な話にどうつながっていくのか?そのあたりが本書の特徴で、ソウヤーの腕の見せ所です。 冒頭はサスペンス的に始まりますが、昔(1995年頃)を回想するシーンで主人公が魂の存在を発見するあたりまでのリアルさが、物語全体の雰囲気を形作っています。 その後、話は佳境に入り、ミステリータッチの展開で一気に終盤まで流れ込んでいくのですが、ある意味ではとんでもない話なのに、あまりおかしいと感じないのは、主人公とその奥さんの話が、あまりにも地についているためだからでしょうか。 一SFマニアとしては、瀬名氏の解説のとおり突っ込みどころがいくつかあって、その飛躍にニヤリとさせられるのですが、期待を裏切られた感じも少し残ります。ちょっと詰めが甘いよなあ。この展開もいいけど、もっとガチガチの展開を期待していたのでした。 世界の反応にしても、幅広く、興味深く表現されているけれど、実際にはもっと大きな影響がありそうで、欲を言えば、そこも読みたかったのです。 主人公の周りの小さな世界で語られていた話が、最後に一気に広がります。 宗教のことは良くわかりませんが、キリスト教的な世界観に支配されている感じはあります。 分厚い本ですが読みやすいので一気読みもできます。が、最後の10ページは読み飛ばさない方が良いでしょう。 クライマックスでスピリットが選んだ方法もその一つだけれど、解説に書かれているとおり、作者は、議論のネタをばらまいていったのかもしれません。 | ||||
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SF"風味"の設定に、ミステリ"風味"の設定。 さわりだけ聞くと面白そうなのだが、 元になるアイデアから話が発展していかないのでほとんど盛り上がりが無い。 描写や説明がさっぱりしすぎて緊迫感が無いせいかもしれない。 というか作者はおそらく科学に精通しているわけではないのだろう。 設定についての作中の解説は面白く読めたが、 話としては読了しても何も残らない。 起こった現象に対して登場人物達がちょっと右往左往しただけの話に思える。 | ||||
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脳の活動をスキャンすることで自分の“魂”をコンピューターに展開できるようになっている世界。デジタル化された“魂”(人口生命のようなもの)と、そのオリジナル?の魂から寿命などの制限を取り除いた不死をシミュレートする魂と肉体の制限をすべて取り除いた死後の世界をシミュレートする純粋な魂を作成し、それらが意思を持ってネットワークに放たれたことで、殺人事件などの騒動が起こる。 いろいろ話の展開に多少ひっかかるところがあったり、今となっては古い技術が使われていたりするものの、基本的には物語に引き込まれるように読み進められる。純粋にストーリーを楽しめた。 本のジャンルとしてはSFなのだが、殺人事件の真犯人を探すところはミステリーになってくる。犯人がリアルな人間ではなく、コンピューターで動いているプログラム(魂のシミュレーション)だというのが面白い。2045年といわれている技術的特異点(シンギュラリティ)を迎えると、このような犯罪も発生するのだろうかと考えると、フィクションではなくなる日がくるのではないかと読み終えてから思った。 | ||||
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ソウヤーは広げた大風呂敷を折り目正しく畳んでくれる作家ではないので、結構重要なネタが回収されず放置状態のまま終わることが多い。 この小説最大の大風呂敷は序盤の「魂波」つまり人間の魂を発見する話たが、ここから派生した「動物に魂はあるか?」の問題も、あっけないほど深く追求されないまま終わる。 ウシには魂はない。でも、なぜかチンパンジーには魂がある。これだけ。 まともな線引きの根拠も示さないまま、こんなことだけ言われても困る。 じゃあ、犬猫はどうなの?、イルカやクジラは?、作者得意の?ネアンデルタールは?、あるいは異形のエイリアンは?と際限なく疑問がわく。 このあたりの妙にギクシャクした筆致からすると、ソウヤー自身、このままこのネタを続ければ泥沼にはまることを察知して、むりやり議論をうっちゃってしまった感じがする。 でも、愛犬家の私としては、ウチの犬に魂がないなんて言われても到底納得できないし、クジラに魂はないなんてことを書いたらシーシェパードが黙っていないだろう。 ウシに魂があるなんて考えるとステーキが不味くなるから、とりあえずウシには魂はないことにして・・・その程度の話なのか!? まあこんな感じで、ツッコミどころ満載のソウヤーではあるが、善意にとれば広げる風呂敷が大きいだけ色んなことを考えさせてくれる作家ではある(なんという善意の解釈)。 デカルト主義(動物機械論)や動物の魂にまつわる本を検索していたら、もろ「動物に魂はあるのか」(中公新書)という本があったのでAmazonで注文してしまった。 あるいは、前に読んだ「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)を再読してみようかなんて気になったりもする。 そんなわけで?ほんとは3つ星だが、オマケで4つ星を献上する。 | ||||
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無性にSF小説が読みたくなるときがあります。 何か面白いSF小説はないものかと探していたところ,様々なSF小説が下敷きになっているアメリカの人気テレビドラマ「LOST」にソーヤーという名前の登場人物がいたことから,その作者の名前ソーヤーに惹かれ,今更ながら発見したのが本書。 面白いです。 難しい理論に読者が置き去りにされることなく,読みやすい文体で,夫婦の危機という人間臭さも描きながらも,サスペンスフルでぐいぐいと読み進めずにはいられない知的エンターテイメントです。 主人公ピーター・ホブスンが大学院生時代に立ち会った臓器移植手術で目撃した脳死者の反応に,果たして本当に死亡していたのかとの疑念をもち,自ら立ち上げた会社で,確実に死亡したことを科学的に感知できる脳波計を作成する。その実験中に,なんと人が死亡する瞬間に人体から離れていく信号を発見してしまう。これは人の魂なのか?これが魂だとすれば,この信号が人体に入ってくるのはいつなのか。そしてついに,妊婦の協力を得て,その信号が宿る瞬間を記録することに成功する。 という世界を騒然とさせる大発見から本書はスタートしますが,その後は急きょサスペンス的展開となっていきます。 後半における展開は,グレッグ・イーガンのいくつかの作品を思い出しました。 ソーヤーという作家は日本でも大変人気があるそうで,なるほどと思います。 ところで,本書の中で主人公がロバートBパーカーの小説を読むシーンがあります。私もパーカーのスペンサーシリーズが好きなので,この場面での主人公の気持ちがよく分かります。未読の方は「初秋」をお奨めします。大変面白いです。 | ||||
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