フレームシフト
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著者はSF作家だと多くの人は認識していると思う。一方でミステリー作家だと思っている人も少なからずいるだろう。適切なのはミステリーSF作家という肩書きだろう。本作品はどちらかというとミステリーの要素が強い。主人公のピエールがネオナチに襲われる(未遂に終わったが)のだが、なぜ狙われなければならなかったのか。ホワイダニットを追い求める。物語ではテレパシー能力を持つ女性(妻となる)が登場したり、人のクローンが生まれたり、SF的要素もしっかりとある。DNAを研究するピエールが遺伝性疾患に係っていることが、ホワイダニット解決する手がかりのひとつとなっていく。そして第二次世界大戦中にユダヤ人を大量殺戮したナチスの犯罪者を探すストーリーがピエールと関係しだしてからは、冒険小説のようなアクションも見せる。作品を振り返ると、エンタテインメント要素はてんこ盛りだ。読んでいて楽しいわけだ。 | ||||
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本書はソウヤーの他の傑作「さよならダイノサウルス」「ターミナルエクスペリメント」「フラッシュフォワード」といった作品に比べると,あっと驚くようなSF的な驚きは少なく,どちらかと言えばハリウッド映画的な展開を見せます。 それでも,国民自身で民間の保険会社と保健契約を締結しなければ,その高額な医療費を支払えず,貧しい人々は病気になっても病院に行けないという,アメリカにおける保険制度の問題点を浮きぼりにしており,そこを本書は物語にうまくとけ込ませることに成功しています。 健康保険に加入することで,自身の医療費の一部を負担するだけでよいという現状があたりまえの,カナダ人であるソウヤーや,社会保障に力を入れる日本人にとっては,アメリカの保険制度のあり方は,力のある政治家が変えようとしてもなかなか変わらないことが不思議です。どうやらアメリカは極端なまでの民主主義国家で個人を尊重する社会のため,社会主義的な制度にはアレルギー反応を示すようです。 また,本書の大きなテーマの一つはDNAです。 本書タイトルのフレームシフトとは,「フレームシフト突然変異」という生物学用語を指します。 遺伝子の一つであるヌクレオチドが挿入されたり欠損したりすることで遺伝コードが変わってしまうことをいうらしい。 本書では,主人公自身が親から引き継いだ遺伝病だけに限らず,その妻が持つ特殊な能力についてもこのフレームシフト突然変異によって解明しようとしている点が面白い。 物語が進むにつれて,これが前述のアメリカにおける保険制度と絡んできます。 更に,人間ドラマとして,親子の心の繋がりについて,たとえそれが生物学的な親と子でなくてもDNAとは関係なく成り立つ家族関係についてもふれられています。 「神は生命の進む方向についておおざっぱな計画をたてたが,すべてが動き出した後は,定められた進路に沿ってわたしたちが独自に成長し発展していくのをじっと見守っている。」 科学の進歩によりDNAを発見した我々にとって,人間はDNAによって生まれながら運命が定められているように見えてしまいがちだが,実はそこまでは神によるおおざっぱな計画であって,その後の発展や人類の未来は,我々自身の考え方次第なのです。 | ||||
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SFとミステリを融合した作品を発表している著者が、1997年にヒトゲノムをテーマに発表した作品。 ヒトゲノム・センター勤務の若き遺伝子学者、ピエール・タルディヴェルは、妻のモリー・ボンドと6月の夜、大学のキャンパスを歩いていたところ、刃物を持った見知らぬ男に襲われる。 妻の機転で、難を逃れたピエールだったが、男がネオナチと知り、なぜ自分が襲われたのか、独自に調査を開始するのだったが…。 本作品は、SF文庫として、刊行されていますが、ミステリとの比率は半々、といったところで、ミステリ文庫として刊行されていても、違和感はない作品となっています。 ミステリとしての興味は、ネオナチがなぜ、何の関わりもないピエールを襲ったのか、という謎。 そして、SFとしての興味は、遺伝子の突然変異を示す「フレームシフト」という題名のとおり、遺伝子工学を巡る、ストーリー展開にあります。 本作品発表後の2000年、アメリカはヒトゲノム解析の初期調査が終了したと発表し、遺伝子工学の新時代が到来したことを告げました。 その後、DNA解析の技術は飛躍的に進歩し、2011年6月放送のNHK「クローズアップ現代」では、一個人から採取した細胞から全遺伝子情報を解析する時間は、1時間20分、解析費用も50万円程度になっており、「パーソナルゲノム」がビジネスとして成立する時代が到来していると伝えています。 本作品は、ヒトゲノム計画の達成前に書かれていますが、当然著者は未来も予想して書いているので、発表後10年を経過した2011年の視点を持って読んでも、古びた感じはしないどころか、逆に「今、まさに旬を迎えている」と感じました。 望めば、誰でも安価に自分の遺伝子情報の全てを入手できる日が近い将来訪れる、とされている今、主人公の遺伝子学者ピエールを巡る物語は、ある種の「社会派」ミステリになっているのかもしれません。 | ||||
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ソウヤー節が炸裂するSFミステリー。 「遺伝子」というガジェットは、病気や戦争、あるいは犯罪に翻弄される登場人物たちの「運命」を象徴しており、人類の起源と行く末という壮大なテーマを読者に問いかけます。 それでいて読みやすく、夢中になって一気に読める作品です。 | ||||
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理由なく暴漢に襲われる不可解なイントロから、一気に時代を逆行して第二次世界大戦時の収容所のエピソードに飛び、読者は翻弄されてしまう。ストーリーは遺伝子研究者の生活を追いながら、どんどん展開していく。 生命保険会社とのやりとりや憤り、カナダ出身であることからアメリカで異邦人扱いされる主人公、ちょっと首を傾げるような主人公の妻の特異な能力などが効果的な複線としてよく効いている。また過去の犯人探しに当たる部分では人物が入り乱れて二転三転するサスペンスの様相を呈したりと、気を緩めることが出来ない。 過去の掘り起こしや倫理人権問題など、戦争や遺伝子研究を巡るきわどいテーマを扱いつつ、堂々と書ききった感じがする。読後に爽快さと満足感を感じる会心作だ。サスペンス、ミステリ、そしてSFとして非常によく組み立てられた楽しめる作品だと思う。 | ||||
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