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(短編集)
奥の部屋: ロバート・エイクマン短篇集
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奥の部屋: ロバート・エイクマン短篇集の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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数年前にウェイクフィールドの短編集が文庫で出た時には、欣喜雀躍したものである。値段は高めだったが、確かに読み応えがあった。あの、単純につきる構成と、短いが凄まじい魑魅魍魎の描写! さて、本書はくしくも上記短編集の原型である、「国書刊行会の魔法の本棚」のなかの一冊を増補した、文庫版エイクマン作品集である。あらたに加えられた作品もあるが・・・ 最初に言ってしまおう。すでに国書刊行会版を所持しているか、既読の方は、あまり本書を購入される意味はないかもしれない、と。 そもそもエイクマンは、奇妙な作家である。作品は怪奇小説ともいいがたいし、作風さえ同一人物の手によるものかと疑う時が、ある。表題作の「奥の部屋」は、出だしこそM・R・ジェイムズの「人形の家」を想起させるが、ミニチュアの家の構造の「理屈にあわなさ」と、そのなかにいる(はずの)人形たちの「不可解さ」を示唆しながら、次第にまったく別の作品を読んでいるような感覚にもっていかれてしまう。そうして読者は突然、おいてけぼりにされたようなラストにとまどうことになるのだ。 日本の作家でいえば、椎名誠の短編の一部がかもす生理的ないやらしさ。そうして内田百けんの神経症的不安感がミックスされたような。 ならば、エイクマンの作品は面白くないのか、といえばこれもちがう。当方が推す佳品は、本書未収録の「鳴りひびく鐘の町」だが、ここでは生きている者と、おそらく・・・・・・・・・・・・山から、海から甦った、おびただしい死者との破天荒な「祝祭(死の舞踏)」が、まるで怒涛のように描写され。読者はあぜんとする間もなく、まるで何も、ないーー何も起こらなかったような終幕を、目の当たりにすることになる。実際は、何が起きたのか。あれは何であったのか。超自然、人為、一切の合理的説明を排してなおつきまとう腐臭が余韻を残す、圧倒的な描写! つまりは、エイクマンの作品群は、読者をとことん選ぶということだろうか。巻末の邦訳リストを見ても、すでにかなりの数の作品が開陳されている。はまる人はとことんはまるかもしれないし、真逆もあろう。その意味ではエイクマン作品集は、初見の方にはーーとりわけ鮮烈にして直截的な怪奇と恐怖を期待する層にはつらい可能性は否定できないし、増補分のために購入しようとするコアな層には、たった2編程度の新エピソードではものたりないやも。やはり、編集方針としてウェィクフィールドの時のように、大幅に収録作を増やすなり、散逸している既訳作品をこの機会に集約する試みが必要だったのではないだろうか? ともあれ当方としては、エイクマンをまったく知らないが、「煙にまかれるような奇妙な話」に興味があるという方がいらっしゃるならば? アンソロジー等で読める「鳴りひびく鐘の町」を吟味されてから、本作品集を手にされることをおすすめするものです。 | ||||
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