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わたしたちが孤児だったころ
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わたしたちが孤児だったころの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.99pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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この小説の結末にはとても興味があった。しかし終盤での、駆け落ちを決定したことの唐突さや、両親の拉致されているであろう家に推測だけで命がけで向かおうとする不自然さや、親友アキラとの再会の非現実性など、前作「充たされざる者」の世界であれば許容できた展開も、今回は許容できなかった。しかし、大どんでん返しの結末は楽しめ、サラの死も、もの悲しさの余韻が残り、しみじみ感じられた点は良かった。総合評価は3.5としたいが、3とした。 | ||||
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とにかく物語として非常に拙く、特に前半はダラダラとしてエピソードをつないでいるだけなのでかなり退屈でした。 ほぼ半分にあたる257頁あたりからそれまでの記述スタイルとは明らかに異なる語りにテンポの良さのようなものが出てきますが、作者であるイシグロ氏にもこの木に竹を接いだような不自然な変化についてちゃんとした説明が出来ていないことからも、おそらく作者のミスなのだろうということが感じだれて、この点も本作の出来の悪さに一役買っています。 いちばん不味いのは、本作の物語の中心である「両親誘拐事件(?)」を主人公のクリストファーが私立探偵になってまで解決しようとしているのに、明らかにこの事件に深く関わっている「フィリップおじさん」なる人物を最後まで全く捜そうとしない点です。 幸いにも本書のラストで別の件でむしろフィリップおじさんの方から再会してくれるわけですが、高名な名探偵という立場になっているクリストファーがそんな当たり前にことすら出来ないということにはただただ呆れてしまいます。 そもそも探偵というわりに探偵らしい活躍が一切書かれていないというのも奇妙ですが、これはイシグロ氏の作家として力量と才能に大きな問題があるからだと私は思います。 本作でも残りわずかになってからバタバタと事件の真相が書かれていきますが、その記述がいかにも取ってつけたように不自然でそれまでの文章から乖離しているという問題点は、本作の後に書かれた『わたしを離さないで』『忘れられた巨人』でも共通する欠点です。 さらに欠点を指摘すると、ダラダラとした意味のないエピソードを細かくつないでイシグロ作品は出来ていて、それらからなる全体の物語には「メタ」が全く存在しない単一の意味しかないということでしょう。 本作においても表層的で単純なストーリーしか存在せず、批評家が無理筋に強引な評価をしてような「孤児」というワードへの複雑な含蓄などじつは本作には全く存在してはいません。 評価については個人的には最低評価が妥当ですが、こうして意図的に作られたノーベル文学賞作家という意味を提議するためにもあえて普通という評価にさせていただきます。 | ||||
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前半のミス・ヘミングスとの出会い、幼少時代の回想あたりまでは、可笑しいやら美しいやらでとても楽しめました。 上海に戻ったあたりから暗雲がたちこめ、パンドラの箱を開けたように、世界の負の部分が噴出してきます。物語の冒頭、20代前半だった主人公は、最終章では還暦近いおじさんに。老人になった彼の生活は、冒頭の青年が思い描いていた未来と、遠くかけ離れたものではないけれど、なんだか「ま、こんなものなのかな?」みたいな諦念が漂う。老人になるってあんな「やっと全ての傷口がふさがった」みたいな心地なんでしょうか…。 真ん中くらいから「充たされざる者」を二番煎じした世界が広がり、不安や心配でグラグラと話は進みます。再会したアキラは本当に本人だったのかは謎…。アキラ、ミス・ヘミングス、そして父親・母親の結末…。豊かでキラキラと潤いに満ちた幼少時代が、灰色で乾燥した地に変化した感じ。 それにしてもイシグロさんって奇妙な人。分厚い仮面をかぶっていて、何が起こっても耐えしのんで、絶対に本性を表に出さない。生粋のイギリス人とはまたちょっと違う頑固さ・謙虚さがある。見ていて時に息苦しくなるほど。でもこの本の終盤では、その仮面を一枚とって素直な表情を見せているような気が少しした。そしてそこにいるのは意外と普通の人だったりする。 | ||||
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相変わらず一筋縄でない展開、最後の方に突きつけられる真実の衝撃、主人公が味わわされる挫折や悲哀、といったイシグロ氏おなじみのフルコースといった様相なのだが、今回はあまりうまくいっていないように思われた。展開が強引すぎたのと、主人公があまりに自信家で楽天家すぎたように思う。いくら探偵としてイギリスで大成功をおさめているとはいえ、子供の頃に失踪した両親を何十年も経った後でもすぐに見つけ出せる、そしてまだある家に幽閉されていると確信できるだろうか。 主人公のクリストファーの甘い期待や思惑は最後に木っ端みじんにされてしまい、イシグロ氏が得意とする語り手である主人公の挫折や悲哀が最後に痛烈に炸裂するわけだが、自分の属する世界、自分の信じている信念、自分の大切にしている記憶が、実はそれほどたいしたものではなく、むしろもろくて曖昧なものであるという、イシグロ氏のテーマが最後にいかんなく発揮されてやはり素晴らしい。 後半の戦闘シーンも、息をのむほどの迫力と恐怖が伝わってきて、この作家の描写力の確かさがよくわかった・ しかし、「日の名残」や「私を離さないで」と比べると、特に後半はあまりに事がとんとんと小気味よく進みすぎて、それが作者の都合に思えてしまい、小説に入り込めなかった。残念。 | ||||
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フィクションなのだけど何だかリアリティがあって入り込みやすかったです。 終わり方が良かった。 | ||||
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美しい「ただそこにいる」母。アキラいわく「ノスタルジックになる時思い出すんだ、子供の頃に住んでいた今よりも良い世界を。思い出して、良い世界がまた戻ってきてくれればと願う。だからとても大切なんだ。」彼が描くこの世界はとってもきれいで、ふわふわとした優しさがあって絶妙だとおもった。 また、生きることの使命感、「イギリス人らしく」「日本人らしく」というアイデンティティへのこだわりは共鳴できた。 一つ好きでなかったのは、クリストファーの母親のいく末のストーリーと描写は、息子を守るための犠牲という対比のために作られた感が強く、少々不快だった。 | ||||
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「私を離さないで」を読んで興味を持った作家だったので二冊目として選んだ。 モノローグで綴られることや、静謐な語り口は同じ。物語は過去と現在を往復しながら、上海とイギリスを行き来するのだが、記憶と現実の行き着く先である上海が中心となる。「租界」という言葉の醸しだす妖しい雰囲気が、作品に登場する阿片の煙のように物語全体を覆っている気がする。主人公の少年時代を除けば「私を・・・」の舞台であるイギリスの印象と同じく、陰鬱な感じの舞台だ。 物語の筋はわかるし過去の事件に対する主人公のこだわりもわかるのだが、その行動が今ひとつ理解できない。しかも物語の進行に執拗に絡んでくる同じ女性やイベントの話など、まるで自分の無力を象徴するように繰り返される悪夢にさえ思える。もしかして、この気分こそが作者の目指すところだったのだろうかと思えてしまった。 上海での子供時代のエピソードで、イギリス人である主人公と日本人の友人とがお互いに自分の中にイギリス人らしさ/日本人らしさが足りないと告白するシーンがある。日本人として生まれながら幼少からイギリスに育った作者の思いがここにありそうだ。 | ||||
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ヨーロッパの白人が、中国という広大な植民地の未開の地で失踪していくヨーロッパにはよくありそうなテーマな気がします。 シャーロックホームズのイギリスで、元々戦中の不安から探偵小で説というジャンルは盛り上がったと解説にあります。 喪失した植民地で探偵小説=支配は成り立たなかったという。 探偵小説の否定、理性の支配の否定か。 誰の証言もアテにならないという、混乱、喪失読書体験になるようです。 長いし、実利を求める人には向きません。 この本がどうのとかではなくて、私はカズオイシグロ自体に向かなかったようです。 カズオイシグロとしては、安定のクオリティではないでしょうか。 | ||||
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作品全体を見るとイシグロさんならではのとても美しい文章で書かれていますが、中盤以降は荒削りな展開で首を傾げてしまいます。 個人の視点が中心とはいえ話のスケールが大きいため、もう少し丁寧に展開したらもっと良かったのでは…後半は急ぎ足になり過ぎています。 | ||||
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