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探偵はバーにいる
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探偵はバーにいるの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.30pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全36件 21~36 2/2ページ
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東直己さんの名前は存じていましたが、恥ずかしながら初めて拝見しました。そしてはまりました。今年(2012年)に入って初めて読んだのですが、すでにススキノ探偵シリーズを通しで2回読み、他のシリーズにも手を出しています。ちょうど読んだタイミングも良かったのでしょう。登場人物、舞台、世界観、文体等、「何で今まで読んでいなかったんだ」というくらいのはまりようです。ただ、読者は選ぶでしょうね。お酒を飲まない、あるいはあまり好きではない人が読んだら、どう思うのでしょうか。私はバーボンのストレートを片手に読んでいます。バカですね。内容に関するネタバレはしたくないので、この程度で。 | ||||
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札幌、ススキノを舞台に、探偵というか便利屋というか職業やや不詳の「俺」という主人公が、人捜しをきっかけに、ある殺人事件にどっぷりと関わっていきます。 主人公が酒を飲むシーンがたっぷり出てきて、読んでいるととにかく酒が飲みたくなります。また、読んでいて気がついたのですが、まだ携帯電話が普及する前の時代(80年代前半頃)で、話の中に固定電話が度々出てきますが、携帯電話は全く出てきません。そのあたりも時代を感じさせて、面白いです。 色々なご意見はあるでしょうが、私は日本国内の話としてハードボイルドを描くのはそれほど容易ではないと思います。そのような中で本作は善戦していると思いますし、読んでいてとても楽しめました。 「探偵はBARにいる」という映画がありますが、映画の原作はこの作品ではなく、シリーズ第2弾(本作は第1弾)の「バーにかかってきた電話」だそうで、本作とは違う話のようです。この映画も見てみたいと思いますが、まずは原作の「バーにかかってきた電話」を読んでみたいと思います。 | ||||
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主人公の「俺」酒をいつでもあおっている。 朝食でもウィスキーストレート、ベーコンエッグとホットサンド。(もしかしたら美味しいかも、、、と思わないこともないが) また、喧嘩も強い。 このあたりはハードボイルド的な主人公ですが、ストーリーは重すぎないハードボイルドという感じです。 あまり複雑にし過ぎてなく、素直に読み進めることができました。 一日で一気に読んでしまったことを考えると、面白かった、ということになります。 私は著者の作品を読むのは初めてでしたので、試しにもう一冊何か読んでから、再度評価します。 | ||||
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本作品は、<ススキノ探偵シリーズ>の第1作で、1992年に発表されたものを、1995年に文庫化。 なお、私の読んだ2011年第31刷の「巻末解説」は、2011年の本シリーズ第2作の映画化を踏まえて書かれています。 本作品の舞台は、1980年頃の札幌の歓楽街「ススキノ」。 ここで探偵のような仕事をして暮らしている<俺>は、バーで大学の後輩から事件の依頼を受ける。 同棲している短大生の彼女が4日間も行方不明だというのだ。 調査を始めた<俺>は、預金口座への入金回数の多さから、彼女が性風俗の世界に足を踏み入れていると感づく。 さらに、数日前に起きたラブ・ホテルでの殺人事件と何らかの関わりがあることも分かってくるが…。 −−という設定ですが、2012年の現在の眼でみると、ありきたりな設定のような感じがします。 でも、1980年代初頭という時代では、親から十分な仕送りを受け、金銭的に苦労している訳でもない女子大生が、「いとも簡単に」性風俗の世界に入っていく、ということは、一般的ではなかったのでは。 「素人らしさが売りの性風俗」のはしりと言えるのではないでしょうか。 冒頭の「0章」というたった2行に記されているのは、当時の「性風俗」の状況、ということで、「性風俗」に着目しましたが、想像するに、ススキノに住む<俺>を取り巻く人々が携わっている様々な業態についても、当時の状況を活写しているのではないかと感じています。 「歓楽街」は、「外側」に住む人間にとっては、「客」としてお金を使うことを条件に、ほんのひとときだけを過ごすことが許される場所。 本作品は、その「内側」に住む<俺>が、「歓楽街」の「内側」を駆け回り、そこに住む人々の「喜怒哀楽」を道案内してくれます。 迎え酒も厭わない「酔っぱらい」である<俺>と、一緒に「酔う」ことのできる小説がここにあります。 | ||||
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ススキノを舞台にした探偵シリーズの1冊目ですが、軽快な文章とエピソードの積み重ねが飽きさせない構成で、楽しんで読むことが出来ました。 あらを捜せば、キーになる女性を絞り込んだ方がハードボイルドな感じが増したでしょうし、明かされる解決のひねり方も過剰すぎてもう少しすっきりしたほうが文体に馴染んで、楽しめたと思います。 とはいえ、軽いユーモアと読みやすい文章、テンポの良いストーリーと値段分きっちりと楽しませてくれる良質のハードボイルドだと思います。 | ||||
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どこの本屋さんでも平積みなので、とりあえず読んで見ることにしまよりした。 何の予備知識も無いまま買ったので、これが映画の原作ではない事を、読んだ後のあとがきで 知りました。内容は普通の探偵物というのが正直な感想です。 <ケラー>というバーで酒を飲む主人公はハードボイルドっぽいですが・・・。 シリーズ物なので気に入ったら他の作品を読んでもいいと思います。 | ||||
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映画の公開がきっかけで本書を手にとりました。シリーズ第一作なので舞台は90年代前半ころのススキノ、なので作中に携帯電話が登場しない点がノスタルジーを感じさせます。作中名なしの「俺」は毎日とにかくよく酒を呑みます。その呑みっぷりは、ありし日のアル中探偵マット・スカダーを思わせます。本作は事件そのものより、主人公の思考を自分にシンクロさせてススキノを歩き回る気持ちで読みました。 日本ではそもそも私立探偵が作りづらい環境です。東京は都市機能が整備されすぎて探偵が事件を捜査するスキマが少なすぎる様に思います。その点本作の舞台ススキノは誰もが知っているがその実体はあまりよく知りませんのでむしろリアリティを感じます。地元出身の作家が地の利を活かして書くことは探偵を活躍させるのは効果的な方法だと思いました。考えて見れば外国では作家の住んでいる街が舞台になっていることはごく普通のことです。「ススキノ探偵」というといかにもベタでとっつきにくいですが、地方色が横糸になって物語の奥行きを出しています。 本作と映画化された次回作は広く読まれているようですが、その他の作品はまだ一部のファンのもののようです。今回の映画化をきっかけにシリーズをひも解く本好きがそれほどいるかレビューをウォッチしていきたいと思います。 | ||||
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大泉洋主演・競演に小雪と松田龍平を配した映画「探偵はBARにいる」がとても面白かったので、原作シリーズにあたる<ススキノ>探偵のシリーズ第一作「探偵はバーにいる」を読んでみました。 先に映画を見てしまったので、イメージが違いすぎるとどうかなと思って読み始めたのですが、原作のほうがより破滅的で自堕落ではあるものの、読めば読むほど大泉洋のキャスティングはあっていたんじゃないのかというくらい、頭の中で大泉洋に変換してストーリーを映像で追う事ができました。 ストーリーはいたってオーソドックスな探偵もので、常連のバー<ケラー オオハタ>にいる彼のもとに、大学の後輩が彼女探しを依頼するところから始まる殺人事件の謎解きものでした。ヤクザに、デートクラブ、娼婦、ヒモ、クズ、酔っぱらいたち、と昔懐かしのハードボイルドものに出てくる道具立ては全てそろっており、安心して楽しむ事ができます。かなり辛口のレビューをされる方も多いですが、依頼内容からしたらこれくらいの雰囲気のほうがそれらしい舞台立てな気がします。 また、主人公がかなりのアル中具合で往年のミステリーファンならロバート・ブロックのマッド・スカダーものを彷彿とさせるシーンもあれば、けっこう殴られて気絶させられたりしながら事件解決にひたすら邁進するレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウの愚直さと感傷癖を思い出すかも知れません。 まぁ、そういうタイプの小説ということです。 でも、単なるそういう流れの亜流の出来ということはなく、ススキノというアジア北部で最大の歓楽街であるところの土地をうまく利用して雰囲気とオリジナリティを出しているし、作品もハードボイルドでありつつも後半は結構ツイストがいくつもありプロットもすごく練られています。また時代風俗をかなり正確に再現しているようで、読むとあの時代あたりだなとぴたっと自分の記憶にある歴史とはまるので、読んでいて妙なノスタルジーを感じたりもしましたし、個人的にはもうちょっと評価していもいいんではないかなという作品です。 ですので、ちょっとシリーズで追いかけてみようかと思います。 ちなみに、主人公が読む飲むカクテル「ラスティネイル」はスコッチウィスキーとドランブイ(ドンブイと表記する人もいるようです)というリキュールを混ぜたカクテルで、B&Bやフレンチコネクションのような甘さと強さをあわせもったカクテルが好きな人なら美味しいカクテルだと思います。先日、いきつけのバーで作ってもらったんですが、美味しかったです。 | ||||
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むろん、本書の性格上、ネタバレ的な感想は書けないので、アレなんだが、大変面白く読ませてもらった。まず、主人公である探偵の《俺》であるけれど、これは「ススキノ探偵シリーズ」の二作目の『バーにかかってきた電話』で、『すすきのタウン情報』の編集長、平野たまみさんが解説的に述べているように、著者の東直己さんの等身大の姿といってもよいかもしれない。そして、「俺は史上最大の溜息をついた」などといった独特の言い回しと、放送禁止的な“悪態”(笑)が特徴だ。実は、東さんは私の自宅がある地区に住まわれているようで、私も何度かJR駅に付属したスーパーやJR電車内で“ご尊顔”を拝したことがある(笑)。ただ、私も大概酔っている関係上、声をかけたことはない(笑)。一言で表現すれば、プロレスラーの“マサ斎藤”を二回りほどダウンサイジングした感じか…(ゴメンナサイ) それはさておき、この本を読んでいると、「ハハ〜ン」と思われるススキノの仮名ビルなどが出てくる。最近は、とんとススキノ方面に出張ることのなくなった私であるが、ホニャラホニャラ団事務所の入った建物なども知っており、何となく“懐かしさ”を覚えてしまった。また、明け方、“葉っぱ”の臭いが微かに残る(私ではないよ!)タクシーで帰宅した、私の若かりし頃を思い出す…。ススキノは、飲食店ビルの中に、居酒屋やフーゾク等が入り混じり、何とも不思議なカオスを生んでいる歓楽街である。そのススキノをバックグラウンドにして、「ススキノ便利屋」を自称する《俺》の“探偵物語”は、「低能」とか「落ちこぼれのゴミ」といった《俺》流の「知性と教養」(笑)を絶えず炸裂させ、読者をどんどん引き込んで展開する。“ハードボイルド小説”の定義云々はともかく、何ともススキノの“ニオイ”を放つ作品だ。 | ||||
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謎解きというよりも、個々のキャラクターのもつ個性がおもしろい。また、軽快なテンポで描かれるストーリー展開も絶妙だった。 | ||||
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ハヤカワJAの送り出している作家・東 直己さんってどんな探偵小説書くんだろ?程度に思って、気軽に手に取った本。これが、大当たり! マスコミ・出版社・書店が<造り出した>ベストセラーに辟易しているあなた、本物の1冊がここにあります。内容などは購入してから後の話し。 とにかく手に取ってみてください。あっという間に読了して、東さんに出会えた事に感謝する<あなた>がきっとそこにいるはずです。 このあとの作品群も私の書棚の大事な本のポジションを永久キープです(北方謙三の諸作ともども)。 | ||||
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既レビューに「生ゴミの匂いがする」と言う記述が あったので、我慢できずに筆を取りました。 私も他の方の例に漏れず「探偵はバーにいる」とい う題名が嫌で、ずっとこの作品を手にせずに来まし た。しかし「畝原」シリーズのあまりの出来の良さに この「ススキノ探偵シリーズ」も読んでみる気になっ たのです。 この作品だけについて言えば、デビュー作ということ もあってか、文章や構成に生硬なところがあって、や や読みにくいかも知れません。ましてや目の肥えたミ ステリ愛好家の皆さんには軽すぎると思える展開もあ ると思います。 しかし、皆さん、これは東直己のデビュー作です。多 少の事には目を瞑って、自作の「バーにかかってきた 電話」も読んでみましょう。その成長ぶりに驚くこと でしょう。そして、シリーズが進むごとに作品は成長 して行きます。 銃を持てない日本で「探偵」小説が成り立つのか?と いう命題に東直己は見事に答えを出しています。多く の作家がこのジレンマに耐え切れずに、結局は警官を 主人公に据えることが多いのが日本のミステリです。 「ススキノの便利屋」は年齢を重ねると共に成長して いきます。そしてシリーズもよりリアル感が増して行 きます。是非、全作を通して読んで頂きたい。 この作家の良さが分かってもらえるはずです。 それにしても「生ゴミの匂い」をレビューの題にする とは小説への愛が足りない気がします。 | ||||
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全く知らなかった方なのですが、良かったです。行ったことないのですが、北海道は札幌に、もしくはススキノに、もっと言えばバーボンに、偏愛を感じさせる文章で、しかも窮屈でなく、そして受け手の想像を遊ばせる範囲を残す「ゆるさ」があり、そのうえその「ゆるさ」を上手く使えている部分を特に良いと感じました。 札幌はススキノの酒場で「何でも屋」で暮らしている<俺>は今日もいきつけのバーで美味しい酒にありつき、そして細々した用事を片付けなければいけない。そんないつものバーで<俺>を待っていたのは中退した大学の後輩で、しかも彼女の失踪だと言うのだが...というのが冒頭部分です。もちろんただの失踪ではなく、その後いろいろと絡んでくるのですが、ただのハードボイルドでは無く感じさせるのは、テンポの良さとそのキャラクター、そして遊びのある「ゆるさ」であると私は感じました。 たしかにちょっと古い話しかもしれません、手垢のついた話しと感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、それでも充分楽しめる作品です。それはただのハードボイルドではなく、土着のハードボイルドであるからのように感じました。それにいわゆるキメ台詞も、もちろん素晴らしいのですが、そのレベルが日本の日常会話レベルで素晴らしいのです。そりゃリュウ・アーチャーやフィリップ・マーロウが、あるいはリック・ブレイン(「カサブランカ」のハンフリー・ボガート)がキメる台詞はカッコイイでしょう。けれど私には恥ずかしくもあるんです。恥ずかしさを感じさせない世界を構築する方も、その技術は凄いけれど、等身大でかっこよくさせる日本の日常的世界観とその技術も素晴らしいと私は思います。なかなか冴えた台詞があって私は好きです「生きてる証拠」ってやつ。 また、運転免許を持っていないところ、持っていないことに何の問題も感じていないところがまた何となくカッコイイのです。 そして何かを思い出させると思っていたら、それは「羊をめぐる冒険」ですね。札幌の街を歩き回るので急に思い出しました。行ってみたいです、札幌。 日本の、ハードボイルドが好きな方に、どっぷり世界に浸るのではなく、日常と地続きのハードボイルドを楽しめる方にオススメ致します。 | ||||
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ソフト・ハードボイルド(何じゃそりゃ)とでも言うのでしょうか。 語り口はハードボイルドなのに会話が全然普通で、最初は、そこがどうもな〜と思っていたのですが、徐々にその不思議な会話のリズム感が説得力ある感じになってきました。 ただどうしても、小汚い場末の飲み屋や、ヤクザの手下のヤク中のチンピラや、下卑た女子大生は、不潔でかなわない。混沌とした中に何か真実をつかもうとする気持ちは分かるんだけど、それは不潔でなくてもできるだろうって感じ。主人公の散らかった部屋や、繁華街の裏口や、デートクラブの事務所や、ラブホテル、と出てくる場所がすべて生ゴミとゴムの匂いがしそうな場所ばかりなのも辛い。 この不潔な環境にガマンできるのは、主人公の若さの証拠なんでしょうが。音楽や女優の好みやら、そこだけ取ってつけた"趣味の良さ"をアピールするエピソードも、人間関係も、鼻白むものが多いし。作者の若さのせいなのか。 そこらへん変わって来ますかね。次作はどうしようか。 | ||||
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特定の地域を限定にした探偵ものか・・・と思いながら購入。飲んでいる酒の種類は聖なるハードボイルドのカクテルで、依頼の受け方はマンハッタン・ニュヨークで便利屋探偵業をやってるおっさんと似ており、「俺」に向かって「聖なるカクテルをがぶ飲みするな!」と注意したりする自分が楽しかった。男族たいていの奴が持っている「後輩の面倒を見てやる」という心情をくすぶりながらストーリーは展開していく。やたらと便利な友人、気の弱いロマンティクな依頼人の後輩、言い訳で固めた娼婦業を営むその彼女。「ススキの界隈で最高に素敵な娼婦」なかなかよい登場人物設定です。あっと言う間に読みふけるモテナイ「俺」に「バカ」とつぶやきながら読める探偵ものです。 | ||||
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札幌に越して来て5年。だと言うのに、ぼくはこのススキノ作家・東直己の本を一冊も読んでいなかった。1992年、つまり10年前にハヤカワミステリーワールドという日本人作家のミステリ・シリーズが早川書房でスタートしたときにも、東直己の方は、新人作家ということでさほど興味を覚えずに、そのままぼくは東直己という作家を素通りしてしまった。 一つには作品名が気に入らないっていうのがあった。『探偵はバーにいる』だ。なんだか臭い、品がないと感じたのだった。その頃ぼくの読書的天敵と言えば、多作作家。彼らのタイトルに対するこだわりのなさや、ふざけ加減が、どうもいい加減な仕事のように思えて反感を感じていたから、この東直己も、正直同類だろう、くらいに思っていた。だってタイトルがいかにも軽そうだ。 でも実に10年の時を要して、ぼくはこの作品のページを開いた。ぼくの渋る背中を押してくれたのは他でもない、多くの読者たちの東直己賛美だ。悪く言う人というのをあまり聞かない。それどころか書店での東直己コーナーは厚みを増すばかりだ。札幌だけの現象なのかもしれないが、それにしても作品が増え、賞を取り、いやでも名前を聞くようになる。ある日妻が街で東直己を見かけたらしい。ぼくが読まず嫌いだった作家は、ぼくの知らぬうちにそのくらい有名になっていた。 読んでみて面白かった。軽ハードボイルドと誰が言ったのか知らないが、ぴったりくる小説かと思えた。随所にユーモア。風来坊な主人公。不細工で弱点だらけで、自動車の運転ができず、いつでもどこでもウイスキーをタンブラーになみなみと継いでもらい、ススキノを漂流して歩く男。なんだ、探偵でも何でもないじゃないか。 そう。ぼくは先入観から、いわゆるトラベル・ミステリーみたいな探偵を思い描いていたのだ。そんな「探偵」では全然なかった。いい加減な28歳の若造と言われてもおかしくない自由業の男が、いい加減な生活のなかで、適度に自分の方法を見出しつつ、便利屋をやって人さがしをやって、周りと折り合いを付けながらススキノで生きてゆく、割と生活臭の漂う、大人の小説であったのだ。 意外だった。たちまち面白さに取り憑かれた。全作読んでみたくなってしまった。街の紹介、脇役陣の紹介などが多いように見えるが、作者はきっと最初からシリーズ化をもくろんでいたのだと思う。シリーズのスタート作だと一度思ってしまえば、それ以外のものには決して見えない作品だ。何故か。ススキノへの愛着。多くの酒場への愛着。作品にそれがいやがおうでも漂っていることだからだ。 札幌に住んで5年経った今、ようやくこれを手にして、味わい深いものを感じる。通りやビルやその他のもろもろに、多く親しみを持って読むことができる。わが身の生活タイミングとのシンクロを考えると、10年遅れて読むことになってしまったいきさつについても、そうあながち悪いことではないような気がしてきた。 | ||||
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