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(短編集)

カールの降誕祭



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【この小説が収録されている参考書籍】
カールの降誕祭

カールの降誕祭の評価: 3.80/5点 レビュー 10件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.80pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全7件 1~7 1/1ページ
No.7:
(5pt)

日常の中に埋没した狂気をシュールに描いた短編集

刑事事件専門の弁護士としての経験を生かし,多数の法廷劇を執筆してきたドイツの推理作家が描いた短編集。
 スリリングな法廷劇の末に歴史上の悲劇が紐解かれる『コリーニ事件』とは異なり,シュールでブラックな3つの短編小説で構成されています。正確で精緻な表現,それでいてぜい肉をそぎ落とした無駄のない短文で綴られたストーリーは,機械的というか,無機質そのもの。しかし,それがかえって犯罪の狂気を引き立てており,ゾッとするほどシュールな空気を醸し出しています。
 どうしてこんなことになってしまったのか? どこでどう道を誤ったのか? 
 いや,実は正気と狂気はいつも紙一重で,人間は誰もがその隘路を微妙なバランスを保ちながら生きているのかも。もし,そのバランスが崩れたら,自分もこうなるかも・・・思わず背筋が寒くなりますが,日常の中に埋没した狂気が顕在化していく様を淡々と描いた作風に引き込まれ,一気に読み終えてしまいました。
 『コリーニ事件』とは違った意味で,衝撃の傑作です。
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4488010504
No.6:
(4pt)

面白い

他の作品同様面白いが、はっきりと結末を書かず登場人物の人生を細かく描写している
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4488010504
No.5:
(4pt)

面白かった!シーラッハ

「犯罪」「罪悪」から「カールの降誕祭」へ。「訳者あとがき」を
入れても93ページ。収録されているのは3作のみ。帯には以下が。

「パン屋の主人」
日本人女性に恋をしたパン職人が、"まともなパン屋"で
なくなってしまった理由とは。
「ザイボルト」
規律を守り、公明正大だった裁判官に退職後おとずれた、
すさまじく数奇な人生の結末。
「カールの降誕祭」
十世紀から続く貴族「トーアベルク家」。クリスマスの
帰省中に息子が起こした哀しい惨劇。

一番スンナリ読めたのは「ザイボルト」かな。退職後の人生って
想像すると身につまされるような。ガラッと変わる、変えてしまう
その後の人生が、すさまじく悲しい。
「パン屋の主人」恋をしたパン屋の主人は彼女へのプレゼントに
5層からなるタルトを長い時間をかけて精魂込めて作る。なのに・・・。
「俺のつくった最高のタルトだ」ひとかけ食べて、又ひとかけ・・・
全部食べた・・・殺人しちゃった後に。黙々と食べる。
そう。パン屋の主人の夢は東京でケーキ屋を開くことだった。
日本人はケーキが好き。“黒い森のサクランボのケーキ”を作るのが得意な
主人の夢。この「黒い森の~~のケーキ」を検索すると、出てきました。
色々画像が。ドイツ南西部のシュヴァルツヴァルト地方の黒い森の特産品
さくらんぼをイメージした云々とありました。
レシピもたくさん載っておりました。ドイツ留学中に食べたとか・・・
へぇ有名なんだ。食べたいな。読みながらおもいました。

「カールの降誕祭」は「訳者あとがき」によるとハンス・ホルバインの
傑作「天使たち」を傍らにおいて鑑賞してほしいと記載されていたので、
この絵画を検索してみました。ロンドンのナショナルギャラリーに所蔵
されているそうです。小さな画像なのでよく見えないのではありますが、
「天使たち」は二人の男、フランス司教とフランス大使が描かれていて、
所謂肖像画と呼ばれるもののようですが、ただの肖像画ではないとのこと。
さまざまな謎が隠されているそうです。
楽譜、算術書、ドクロ・・・。主人公カールはカールの絵をかつて母親から
「所詮はクズ」と一蹴され絵から数字の世界へとその世界は変貌し、
カール自身が母親殺した後に呟くコトバの意味は・・・
絵画技法から浮かび上がってくる・・・「所詮はクズ」。見事な展開で
おわりとなりました。シーラッハってすごいな。

訳者「酒寄真一」も絵「タダジュン」も好きです。事実を事実として淡々とした
簡潔な訳はとても読みやすいです。イラストもたくさん入っていて、趣味悪いみたいな
レビューもありましたが、そうはおもいませんでした。
シーラッハ、次は長編へとなるかしらん。
カールの降誕祭Amazon書評・レビュー:カールの降誕祭より
4488010504
No.4:
(5pt)

この本は素晴らしい。

なんとなく、表紙のホラーさに押し出されて、手に取る人が少ないような気がしますが、この本は何年も法律家として人間を観てきたシーラッハだから書ける短編なのではないかと思います。 よく知らないのに、運命の人だと思ってしまう寂しさ。 仕事を失うと行き場をなくしてしまう人の哀しさ。 親の愛情にがんじがらめに縛られる閉塞感。 どんな人も同じような感情を持ったことがあるのではないかと思います。 やはり、シーラッハはすごい。 そして、酒寄先生の訳も素晴らしい。
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No.3:
(4pt)

もっと読みたい!

「犯罪」や「罪悪」と同じ短編集です。 これらの作品に満足した方なら誰でも、再び同じ満足感が得られるでしょう。 読み始めてからページをめくる手が止まらず、あっというまに読了してしまいました。 ただ、収録された話数は3つで、ひとつひとつがそこそこ長いのかと思えばそんなこともなく。 前述の二作中の短編と同じくらい短いです。 物足りなさが残りました。
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No.2:
(5pt)

『犯罪』と『罪悪』が気に入った読者に、この短編集をぜひ勧めたい。

『犯罪』『罪悪』『コリーニ事件』――。
 フェルディナント・フォン・シーラッハは、人が罪を犯す理由の捉えどころのなさや、その罪を現代の司法制度で裁くことの限界と苦味について、乾いた文体で冷然と描いてきたドイツ人作家です。巧みな物語構成にすっかり魅了されて、私は新刊が出るたびに欠かさず手にしてきました。

 フォン・シーラッハの作品は、翻訳出版元の東京創元社がカバーの内側に付している<あらすじ>には目を通さずに読み始めることが鉄則です。今回は東京創元社側が私のようなフォン・シーラッハ信奉者に最初から配慮したのか、カバーの内側には何も記載がなかったため、何の憂慮もなく読み始めることができました。

 この100頁にも満たない書には短編が3つ収められています。
 第1編『パン屋の主人』は、長編『コリーニ事件』にも登場した、いつかまともなパン屋になることを夢見ている男が主人公です。『パン屋の主人』は『コリーニ事件』の前日譚にあたる話で、なぜこの主人が身を持ち崩すに至ったかが描かれるというわけです。
 物語の味わいは『犯罪』や『罪悪』に収められている作品群と同じく、名もなき市井の人が犯罪に手を染めるに至る人生の苦みについて見つめた作品といえるでしょう。

 第2編『ザイボルト』は私が最も気に入った一編です。
 真面目一徹でキャリアを積み上げた判事のザイボルトが、65歳で定年を迎えた後に予期せぬ形で送ることになる人生の流転ぶりが読ませます。物語を閉じたときに私が抱いたのは、地道な現役時代よりも、破綻した老後の破格な生活のほうが、主人公ザイボルトに<生きた>という確かな手ごたえを与えたにちがいないという、寒々とした思いです。
 小説の最後に登場する「満ち足りた人生」という言葉が、底冷えのする響きをたたえて聞こえる、フォン・シーラッハらしい物語です。

 最終編の『カールの降誕祭』は、『犯罪』や『罪悪』よりも『禁忌』に近い味わいの物語です。私は『禁忌』のことを、読者を過度に惑乱させるだけに終わった小説としか感じられず、大いに落胆した覚えがあります。『カールの降誕祭』は『禁忌』に比べれば、まだ、その物語の底に沈んだ、人間の脆さが巧みに描かれていて、痛みを伴いながらも充実した読書を楽しむことができました。

 『犯罪』と『罪悪』の挿画を担当したタダジュン氏がこの『カールの降誕祭』でもおどろおどろしい版画を多数提供しています。ところどころに原著のドイツ語の文章がちりばめられ、この怪異の短編群をさらに迫力あるものにしています。日本オリジナルの挿絵と小説のコラボレーションが見事です。

 訳者の酒寄氏によるあとがきには、フォン・シーラッハがさらなる短編集に取り組んでいるという嬉しい知らせが記されています。酒寄氏の見事な翻訳で読める日が今から楽しみです。

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*78頁:翻訳文に「州立精神病院」という記述がありました。これは「州立精神科病院」としたほうが適当です。
 平成18年に、「精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律」が成立し、「精神病院という用語には、精神病者を収容する施設というイメージが残っており、そのことが、精神科医療機関に対する国民の正しい理解の深化や患者の自発的な受診の妨げとなっている」ため、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等における「精神病院」という用語を「精神科病院」という用語に改めること」になりました。(参議院法制局HPより引用)
カールの降誕祭Amazon書評・レビュー:カールの降誕祭より
4488010504
No.1:
(5pt)

喉に引っかかる気持ち

小説は苦手で敬遠していた。 本書の紹介文を読み購入。 面白い。 そして、喉に何かが引っかかる気持ち悪さ。 スッキリしない。
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4488010504

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