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火星の人



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火星の人の評価: 4.46/5点 レビュー 282件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.46pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全247件 241~247 13/13ページ
No.7:
(5pt)

単数形のタイトルの「火星の人」の背後に複数形の「地球人」の姿が見える

人類にとって3度目の有人火星探査は猛烈な砂塵のために到着からわずか6日で中止を余儀なくされる。乗組員たちが火星を離脱する寸前、そのうちのひとりマーク・ワトニーを折れたアンテナが直撃する。砂嵐の彼方へ姿を消したワトニーを残し、船長たちはやむなく地球への帰路の途につく。しかしワトニーは生きていた。不毛の赤い惑星で彼は科学者として持てる知識を最大限に活用し、地球への帰還の道を探りながら決死のサバイバルを敢行する…。
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 このレビューを書いている今日現在、アメリカのAmazon.comでは原作本『The Martian』に5000人超がレビューをし、そのうち3650人が5つ星の評価をしているSF長編です。もともとはアマチュア作家の著者自身が自分のサイトで細々と無料公開していた小説だというのですが、その完成度の高さには大いに驚かされます。

 「火星人」という書名が指すのはマーク・ワトニーその人です。巨大な頭部と細長い職手状の四肢をもった異星人は登場しません。人類の技術によって隣の惑星に送りだされた地球人が、草木も生えず空気も存在しない広大な砂の大地で独り生き抜いていく。およそ1年半に渡る孤独で不安な日々の中で、彼は酸素と水を化学反応で作りだし、持参した実験用野菜の栽培に着手し、ヒューストンとの間で無線のかわりとなる通信手段を編み出していきます。

 ワトニーのサバイバルを支えるのは科学知識だけではありません。彼を次々と不測の事態が襲い、脱出への道もこれまでかと思わせる場面が果てしなく続きます。それでも彼が前へ前へと進む歩みを決して緩めないのは、何ものもへし折ることができない強靭な精神と、底抜けに明るいユーモア精神があればこそです。決死行を記録するログに彼が散りばめるジョークの数々は、場違いなほどの楽天主義に満ちていて、読んでいて幾度も笑みがこぼれました。並みの人であれば精神の均衡を容易に失ってしまいそうな絶望的場面にあって、それでも逞しく明るく生きる彼の姿を見て、胸に熱いものがこみ上げてきました。

 小説の後段では、地球から彼を見守る人々、そして一度は彼を置きざりにしてしまった仲間たちが手を携え合ってワトニー救出を図っていきます。単数で表現される<火星人>の背後に、複数の<地球人>の確かで熱い思いが描かれる小説といえます。

 600頁になんなんとするこのSF巨編を私は堪能しました。
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星の人 (ハヤカワ文庫SF)より
4150119716
No.6:
(5pt)

絶望的な状況とユーモアに富んだ語り口

日経新聞の書評の☆5を見て購入。ワープも量子力学も出てこないし、ロボットの支援も宇宙人との戦闘もない。でも、ハードSF。読みだすとマークの運命が気になって、睡眠不足になること請け合い。マークの一人称のログとNASAや火星探査線の三人称が交互に出てくるが、やはりマークのときどき下品な語り口が楽しい。前半はじゃがいも農夫で、後半は長距離トラッカー。
最後に救助された時にマークのヘルメットを外した時のシーンが傑作。リドリー・スコットとマット・デイモンで映画化されるとのことで、楽しみだ。ちょっと高い文庫だけど、許す。迷っている君、読め。
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星の人 (ハヤカワ文庫SF)より
4150119716
No.5:
(5pt)

亜米利加の人

ハリウッド映画で見かける、所謂ウイットの効いたセリフのような独白と場面が続く本作。ただのユーモアにとどまらない瞬発的な、まさに「機知」に富んだセリフと場面展開が最後まで続きます。終始ハラハラ&ニヤニヤしながら読んでいましたが、ラスト近くでホロリとさせられる箇所もあり、物語としてとてもよくできていると感じました。
 主人公の「ひらめき」は生存のためのアイデアだけでなく、自らの現状を皮肉ったり、笑い飛ばすためにも発揮されます。頭の回転の速い亜米利加の人(英語圏の住人)が執筆してるんだなぁと感じながら読了。解説等で著者プロフィールを見て、ある種納得しました。
 現実の生活を共にしたくないような「ウザい天才」とは、惑星間くらいの距離を置くと笑えるのかもしれません。 読書だからこそ愛すべきキャラとして受け入れられるのでしょう。同様に映画化されるかもとの事ですが、主人公のウザさのニュアンスを映画というメディアは旨く伝えられるかしら?と少し心配です。
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星の人 (ハヤカワ文庫SF)より
4150119716
No.4:
(5pt)

久しぶりに鳥肌が立った

ハードSFは1980年代で終わってしまった。そう感じている人は、是非読むべし。
A.C.クラークやJ.P.ホーガン、グレゴリー・ベンフォード、 グラント キャリン、彼らの名前に無条件に反応した貴兄なら、この作品を楽しめること間違いなし。
内容はすでに紹介されているので省くが、いや〜本当にゾクゾクした。
主人公は別格として、NASAの非凡なオタク連中の活躍には、涙がでてくる。
ううむ、明日も会社に行くぞ!
(追記 2015/6/20)
映画のトレーラーが公開されていました。リドリー・スコット監督、マット・デイモン主演で、かなりシリアスな作品のようです。
それはそれで、楽しみです。
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星の人 (ハヤカワ文庫SF)より
4150119716
No.3:
(4pt)

主人公の作業内容に関しては・・・当方理解力不足、それでも面白いのだから...

大した作品と言わざるを得ない。
リアルといえば、超リアル、例えば排泄に関してその都度解決策を記載しており、
本当にこんな本よく書けたなぁ~とマジ感心してしまった。
終盤のクライマックス火星を3200kmも移動するなんて<ウソだろウ~>と唸ってしまった。
残念なのは、ローバーとかMDVとかハブとかどんな形状なのか、自分には上手く具体的にイメージできず、
適当に流さざるを得なかった事か....(アホにもう少し説明して欲しかった)
最後まで火星人の出現あるいは痕跡の発見を待ったが....
続編は無理だろう... とにかく分からないなりに面白かった。
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星の人 (ハヤカワ文庫SF)より
4150119716
No.2:
(5pt)

「見て見て! おっぱい!->(.Y.)」に尽きる

『月は地獄だ!』『渇きの海』『アポロ13』「日の下を歩いて」『ゼロ・グラビティ』に続く、宇宙サバイバルものの傑作登場!

この手の物語は、最後は助かるのがわかっているものの、人間を完全に拒絶する宇宙という環境、限られた物資、救助隊が絶対に期待できない状況を知識と工夫でどうやって生き延びるのか、という構成要素だけで出来ているから、ドラマチックにならないはずがない。
食料は? 水は? 空気は? 通信は? と問題山積で、その問題解決自体が物語の推進力となる。
この手の物語は危機また危機がお約束だけど、作者の言葉にもあるように、主人公を苦しめるためだけに挿入される危機ではなく、一つの問題を解決することによって副産物として危機が生まれてしまう。わかり易い例では、水を作るために水素燃やして爆発させちゃうとか。
物語は、基本、人間関係(政治力学)による危機はなく、あくまで火星サバイバルだけに特化している。

しかし、一番の特徴は、

見て見て! おっぱい!->(.Y.)

かなw
これだけで、今年のベストは揺るぎないものになった。

マークの一人称(ログ)パートと、ヒューストンなど彼を見つめる人々の三人称パートに分かれている。
この一人称パートのユーモラスさがあまりに魅力的すぎて、最初はサバイバルを味わうために読んでいたのが、彼の発言を追っていることに気づく。
個人的には、ハードSFの印象が全くなくて、こんなに笑ったハードSFは初めてかも。
宇宙飛行士なんだからエリートなのに、かなりのアホキャラw
それなら、全編一人称にすればいいじゃないかと思われるかもしれないけど、コントなら、三人称パートはネタ振りの役割になっていて、マークがそれに答えるようにボケる。
例えば、物語前半ヒューストンは監視衛星で彼の様子を確認することしかできず、「彼は何を考えているんだろうな……」とシリアスな場面から一転、マークはその時アクアマンの超能力の不条理を考えている、という塩梅。
ヒューストンがやるなということをやっちゃって危機を脱する(陥る)というのはパターンとしてあるけど、本作の場合それが完全にギャグ方面に傾いている。マークには、交信が「押すなよ押すなよ」と聞こえているに違いないw

作者は火星人など、今現在確認できない要素は入れず、リアルな火星の状況とそこから導き出される危機で物語を構築している。
リアルを売りにしたハードSFは、ともすれば、キャラクターは二の次で、状況を動かすためだけの無味乾燥な人物造形になりがちだけど、その代わりに投入されているのが、マークのオタクネタと皮肉とブラックジョークと愚痴に溢れたひとり語り。これがこの上もなく物語と主人公を愛すべきものにしている。正直、上記した過去作のキャラクターって、直近の『ゼロ・グラビティ』以外覚えてないんだよね。
リアルな火星サバイバルだけだったら、ここまで好きにならなかっただろうなぁ。

映画化の話があるようだけど、単なる宇宙サバイバルもので終わらないことを祈る。
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星の人 (ハヤカワ文庫SF)より
4150119716
No.1:
(5pt)

これまでありそうでなかった、主人公の魅力が心に残る「軽い」ハードSF

火星調査隊の植物学者兼エンジニアのマーク・ワトニー、全6名の調査隊が事故に巻き込まれ、彼は死亡したと判断されて他5名は火星脱出。火星に置いてけぼりとなった主人公、そこから、知恵と能力とひたすら前向きな精神で、絶望的な火星生存計画を実践していくが・・・

 読みやすい、主人公の魅力が飛び抜けてる、そして何よりも文系の人間にも分かりやすく説得力のあるハードSF。
 生存のためのハードルをあらゆる方法を使って飛び越えたともったら絶望的な課題が突きつけられ、これも飛び越えたらまた新たな課題が、という繰り返しなのですが、その過程がとにかく面白いのと、科学的な考証がどこまで正確なのかは分かりませんが、説得力が凄い。救出計画については、やり過ぎ感もありますが。
 特に、導入から最初の危機を乗り越える辺りがめちゃくちゃ面白いので、のめり込んで巻を措くに能わず。
 ゼロ・グラビティの火星版ではあるのだけど、どのような状況でもユーモアと希望を失わない主人公の魅力のため、絶望的状況であるにもかかわらず、悲愴感がありません。
 若干ネタバレですが、NASAは主人公の生存を確認したため、世界中が彼の一挙手一投足を注視することになります。
 そして、世界中が彼の生存と帰還を願うように、読者も彼のことを応援したくなる。この点、本書は非常に映画向けです。
 主人公とNASAのやりとりなどは、にやけっぱなしです。
 ユーモアパートと言っていい主人公の一人称パートもいいけど、主人公の生存と帰還を願う地球側パートも泣かせるんだ。

 中盤以降、少し描写がくどくなる部分がある反面、もっと読みたいNASAとのやりとりなどが端折られてる点で、少し不満はありますが、この長さ、あっという間でした。ハードSFという概念を再認識させられました(ちっともハードっぽくない)。
 軽いっちゃ軽いけど、そこのどこが悪いんだ。オススメです。
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:火星の人 (ハヤカワ文庫SF)より
4150119716

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