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叛鬼
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叛鬼の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.15pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全26件 21~26 2/2ページ
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『叛鬼』(伊東潤著、講談社)は、本当に久しぶりに歴史小説の面白さを堪能させてくれた。 この『叛鬼』は、著者の司馬遼太郎に対する「叛旗」だというのが、私見である。なぜならば、今なお人気の衰えぬ司馬遼太郎の歴史小説から、文中にしばしば顔を出す時代背景や考証の長くなりがちな説明部分を省いたのが、伊東の歴史小説だからである。このため、ストーリー展開の緊迫感が持続し、臨場感をまざまざと味わうことができる。 因みに、歴史小説と時代小説は分けて考えるべきと、私は思っている。諸説があるが、私なりの分類では、海音寺潮五郎、司馬遼太郎、永井路子、宮城谷昌光、伊東潤などの作品は歴史小説、吉川英治、藤沢周平、佐伯泰英、山本一力、宮部みゆきなどのそれは時代小説となる。歴史的事実に重きを置くか、歴史を小説の背景にとどめるかが、両者の分岐点だと思う。 『叛鬼』の主人公は、長尾景春という室町時代中期の実在の武将であるが、この時代の歴史の専門家以外で、この名を知る人は少ないだろう。景春の憧れの存在であり、景春が幾度となく挑戦しても跳ね返されてしまう文武両道の武将として、江戸城築城で有名な太田道灌が姿を現す。そして、道灌を上回るスケールの大きな人物として、小身から成り上がり、後北条氏の祖となった北条早雲が絡んでくる。道灌(景春より11歳上)と早雲(景春より13歳下)は私の好きな歴史上の人物なので、彼らが登場してきた時は、嬉しくなってしまった。 室町時代中期というのは、中央においては、足利将軍家で、幕府管領の細川氏で、そして関東では、古河公方(足利一門)と堀越公方(足利一門)で、関東管領の山内上杉氏と、その一族・扇谷(おうぎがやつ)上杉氏で、さらに、管領の家宰(家老格)の白井長尾氏と惣社長尾氏で、跡目相続の争いがあり、謀略や裏切りなど何でもありの勢力争いがありと、内訌が絶えなかった。白井長尾氏の嫡男・景春は、主君の上杉顕定に叛旗を翻したのを出発点として、生涯、「叛鬼」としての道を歩み続けたのである。 著者は、景春を「下剋上」の嚆矢と位置づけている。そして、「下剋上」の最大の大物は早雲と言えるだろう。「新たな時代は静かに胎動を初めていた」のである。一方、道灌は、武将として非常に優秀で人望もありながら、「下剋上」には距離を置き、主君・上杉定正のために大きな貢献をなし続けたのに、遂には、道灌の実力拡大を恐れ、その声望を妬んだ定正に謀殺されてしまうのだ。 上質の歴史小説って、本当に面白い。 | ||||
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著者の作品は気がつけば5冊以上は読んでいるはずだが、舞台は常に関東地方で、時代は戦国時代辺りというのが共通点だ。そして主人公は常に余り知られていない武将だ。従って主人公は華々しい武勲を上げたり、偉業を成し遂げることはまずなく、思うに任せぬ人生を歩んでいくケースが多く、本書もまさしくこの共通点にぴったり当てはまる作品だ。 主人公の長尾景春という名前は初めて耳にしたが、この一般の歴史小説に名前を見ることはまずない主人公が実は波乱に富んだ生涯を歩んでおり、それを著者はうまく描いている。胸のつかえが降りるような爽快さはないが、噛みごたえがあるスルメイカのような味のある作品だ。 | ||||
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本書は室町終盤から戦国初期にかけて、関東一円を舞台に勇躍した長尾孫四郎景春の生き様を描いた作品です。物語は寛正7年(1466年)景春の祖父・景仲の遺言を承け、山内家の新たな頭領に上杉顕定(越後守護・上杉房定の次男)を迎える場面から始まります。この時景春の胸裡に微かに芽生えた「若き頭領への侮蔑」を看破されたことが、両者の間に根深い不信感が生じた一事として描かれています。 後に顕定と叔父・忠景に山内上杉家家宰の座を逐われた景春は、文字通り「叛鬼」として関東各地を転戦していくことに成ります。 作品の構成としては景春主観の物語とそれに付随した関東戦国史が交互に語られています。 また内容は必ずしも史実を忠実に扱ったものでは無く、改変を通して各人物の思惑や対立色を浮彫りにしていく演出が為されています。 史実厳守を求める方には少々お勧めし辛い作品では有りますが、関東戦国史を扱った内容としては読み易い部類に入るでしょう。 | ||||
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関東は、応仁の乱以前から、戦国時代が始まっており、新たな時代の開拓者として、長尾景春を主人公とした作品だった。私は彼を”長尾景春の乱”の首謀者で、太田道灌に討滅された程度にしかとらえていなかったが、この作品により、戦国時代の時代の先駆者、そして、地に根差した真の武士のしぶとさ、目的追求の真摯さが感じられた。 今まで知られていなかった、先駆者に光をあてて作品化した、伊東潤先生の力を改めて頼もしく、今後の活躍を願わずにはいられない。 | ||||
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顕定に叛き、背中を追いかけた太田道灌とも戦い、負けても負けても諦めず、戦い続け、新しい世を作るという信念を持ち続けた、長尾景春。ページをめくると、著者お得意の合戦シーンがこれでもかこれでもかとめいいっぱい繰り広げられる。要所要所に説明が付されているので、なるほどと思いながら読むことができた。 新しく時代を生み出そうとすれば、破壊しかないのかもしれない。その破壊を一人で背負った長尾景春。彼が先鞭をつけなければ、その後の歴史もなかったかもしれない。 説明はすごくわかり易くてよかたけれど、途中少し読むスピードが遅くなった。中だるみ的な感じになったが、辛抱強く先を読み進めれば、後は一気に読み終えてしまうことだろう。 この作品を読んで、あわせて文庫の『疾き雲のごとく』を一読すれば、関東戦国史を知ることができるだろう。後北条氏が台頭するあたりまでこの2冊を読むことで理解が深まると思う。 この作品を読んで、切羽詰ったところでも諦めないで信念を貫く所がすごく共感でき、感動した。 | ||||
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室町時代の末期に守旧勢力に疑問を持ち、戦国時代という新しい幕を揚げた長尾景春の生涯をダイナミックに描いた歴史小説。 主君の関東管領山内上杉顕定に叛き、かつて兄と慕った太田道灌との激闘、さらには自分の倅との戦い等長尾景春の凄まじい戦闘シーンが著者の得意技で描かれてる。歴史背景などの説明も所々にあり、読みやすい。 | ||||
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