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虚けの舞



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【この小説が収録されている参考書籍】
虚けの舞―織田信雄と北条氏規
虚けの舞 (講談社文庫)

虚けの舞の評価: 4.25/5点 レビュー 24件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.25pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全5件 1~5 1/1ページ
No.5:
(3pt)

歴史小説を味わいましょう

織田信長の次男である信雄(おだのぶかつ 作品中では出家した名前である常真)と、後北条氏の3代目当主北条氏康の4男である氏規(うじのり)という、小説ではほとんど扱われない人の話です。
信雄は秀吉の小田原合戦に改易され、浪々の身ながら家を再興したいと考え、プライドを捨てて行動します。
氏規は関東に絶大な権勢を誇った後北条氏が没落した後に、北条の血筋を残そうと努力します。
信長の息子で血筋は良いが凡庸な信雄。血筋、能力共に優れているが運に見放された氏規の人物描写が良くできています。
最初の頃は、2人を別々の小説にした方が良いのではないかと思いましたが、終盤の小田原合戦で二人が激突します。構成の妙を感じました。
没落した人の悲哀が身に染みてくるようで、歴史小説を堪能できます。凡庸なところが自分とも重なって思えてしまいます。
小説としての完成度は高いと思いますが、やはり二人は別々に、姉妹本とした方が良かった気がします。
また、信雄は秀吉の朝鮮出兵時の頃には1万8千石を与えられて、”復活”していますが、関ヶ原の戦いの時には西軍に付いたため、再度改易の憂き目に遭っています。
しかし、家康の時代に5万石を与えられ再度”復活”するという浮き沈みの激しい人生を送っています。信雄の子孫は現代まで続いています。
本小説では、第1回朝鮮出兵までしか書かれていないので、尻切れトンボ感はぬぐえません。
ぜひ、信雄一代記として新しい小説を書いて欲しいものです。
虚けの舞 (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:虚けの舞 (講談社文庫)より
4062775204
No.4:
(3pt)

二人のその後のドラマ。

戦や政治に敗れ家を失った、北条氏規と織田信雄。
生きる意義を失いつつも、血を残すためだけに生き続ける。
二人がたどった道が異なることから、豊臣政権内での扱いも異なり苦悩する二人。

ストーリーは朝鮮出兵さなかの肥前名護屋城下で、お互いの過去をフラッシュバックさせながら進みます。
当然ながら、何か劇的な展開があるわけでもなく、
ドラマチックな展開を期待する人には辛い本かもしれません。
戦国時代の本を読み飽きた方にとっては、この斬新な切り口は新鮮です。
戦場で大手柄を上げることも、また華々しく散ることも出来なかった、いわゆるこの時代の敗者というものが、
いかに生きづらい世の中だったのか、その片鱗を垣間見る思いです。
虚けの舞 (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:虚けの舞 (講談社文庫)より
4062775204
No.3:
(3pt)

惜しい

織田信雄と北条氏規2人の物語。信雄、氏規の話が交互に過去現在と交錯して物語は進んでいきます。話はいいのですが焦点がぼやけ気味な気がして、どちらか1人に話を絞った方がよかったのでは?と思いました。
虚けの舞 (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:虚けの舞 (講談社文庫)より
4062775204
No.2:
(3pt)

『虚けの舞』 伊東潤

『虚けの舞』 伊東潤

伊東潤の『虚けの舞』を読んだ。『黒南風(くろはえ)の海 加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』に続き伊東潤作品を読んだため、朝鮮出兵の戦闘描写は「さすが!」と感心させられた。今回の作品も文禄の役を背景に、戦国期落した織田信雄(おだ・のぶかつ)、北条氏規(ほうじょう・うじのり)という二人の主人公が登場する。

文庫版の解説を池上冬樹という文芸評論家が書いているが、彼は『虚けの舞』を「「負け組」の男たちの気高さをしかと捉えていて印象深い」作品と云い、あるいは「(『虚けの舞』は、信長の子でありながら凡庸なために没落した織田信雄と、鬼謀を持ちながら小田原の役を戦ったため落した北条氏規の)二人の人生の対比に焦点をあてているものの、もっと大きな存在として秀吉が浮かび上がる」と、評している。だが、この作品の解説として本当にこれが適切かと、正直首をかしげてしまった。

作品自体も―思い切ったところで終わり、且つ初期作品らしく文学というより「歴史好きの趣味本」といったおもむきが強いため、作者が描きたかった「高み」に実は到達していないのではないか……という感じがした。

戦国―織豊時代のみを切り取ってみれば、織田信雄、北条氏規は確かに「負け組」と言えるかも知れない。しかし織田信雄の血は、出羽天童藩・丹波柏原(かいばら)藩として―また北条氏規の血は河内狭山藩として、江戸期に残り、家はともに明治維新まで残っている。―絶大な力をほこった豊臣家が、大坂の役で絶えてしまったのに、だ。

勝ち・負けはひとの視点と気持ちのありようでいくらでも変わる。飽くなき欲望のなかに身を置き続けなければならなかった権力者より、「ささやかでも『生き続ける』ことを望んだ男たちの姿」をこそ本作は描きたかったのではないかと思う。

本当の意味で《生きる》そして《幸せ》ということをテーマにした場合、それは壮大な「文学」に昇華するはずである。この作品がばさっと切れるように終わるのは、実は伊東潤が、自分の志を描ききるなら―織田家・北条家の話にして関ヶ原、大坂の陣……なろうことなら幕末まで辿らなければ済まないかも―と、気づいてしまったからではないか、と、思う。

書きようではそれが可能な着想であったことは間違いない。歴史上「凡庸」とか「悪人」とか「卑怯者」というひとをわざわざ取り上げて、「実は彼は素晴らしかった」と力説する作家を散見するが、この手の作品はその作者の力みがだいたい臭みになって数行読めば嫌になってしまう。

『虚けの舞』は織田信雄のみであれば奇をてらったようにも感じるだろうが―凡庸な男は凡庸として描かれているし―北条氏規を配したことで「血を絶やさぬことに生きる目的をもった男」たちの群像劇としての土壌を得、好感のもてる作品にしあがっている。この続編として、織田家・北条家が関ヶ原・大坂の陣をどう生き抜き、大名家となったか読んでみたい。
虚けの舞 (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:虚けの舞 (講談社文庫)より
4062775204
No.1:
(3pt)

『虚けの舞』 伊東潤

『虚けの舞』 伊東潤

伊東潤の『虚けの舞』を読んだ。『黒南風(くろはえ)の海 加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』に続き伊東潤作品を読んだため、朝鮮出兵の戦闘描写は「さすが!」と感心させられた。今回の作品も文禄の役を背景に、戦国期落した織田信雄(おだ・のぶかつ)、北条氏規(ほうじょう・うじのり)という二人の主人公が登場する。

文庫版の解説を池上冬樹という文芸評論家が書いているが、彼は『虚けの舞』を「「負け組」の男たちの気高さをしかと捉えていて印象深い」作品と云い、あるいは「(『虚けの舞』は、信長の子でありながら凡庸なために没落した織田信雄と、鬼謀を持ちながら小田原の役を戦ったため落した北条氏規の)二人の人生の対比に焦点をあてているものの、もっと大きな存在として秀吉が浮かび上がる」と、評している。だが、この作品の解説として本当にこれが適切かと、正直首をかしげてしまった。

作品自体も―思い切ったところで終わり、且つ初期作品らしく文学というより「歴史好きの趣味本」といったおもむきが強いため、作者が描きたかった「高み」に実は到達していないのではないか……という感じがした。

戦国―織豊時代のみを切り取ってみれば、織田信雄、北条氏規は確かに「負け組」と言えるかも知れない。しかし織田信雄の血は、出羽天童藩・丹波柏原(かいばら)藩として―また北条氏規の血は河内狭山藩として、江戸期に残り、家はともに明治維新まで残っている。―絶大な力をほこった豊臣家が、大坂の役で絶えてしまったのに、だ。

勝ち・負けはひとの視点と気持ちのありようでいくらでも変わる。飽くなき欲望のなかに身を置き続けなければならなかった権力者より、「ささやかでも『生き続ける』ことを望んだ男たちの姿」をこそ本作は描きたかったのではないかと思う。

本当の意味で《生きる》そして《幸せ》ということをテーマにした場合、それは壮大な「文学」に昇華するはずである。この作品がばさっと切れるように終わるのは、実は伊東潤が、自分の志を描ききるなら―織田家・北条家の話にして関ヶ原、大坂の陣……なろうことなら幕末まで辿らなければ済まないかも―と、気づいてしまったからではないか、と、思う。

書きようではそれが可能な着想であったことは間違いない。歴史上「凡庸」とか「悪人」とか「卑怯者」というひとをわざわざ取り上げて、「実は彼は素晴らしかった」と力説する作家を散見するが、この手の作品はその作者の力みがだいたい臭みになって数行読めば嫌になってしまう。

『虚けの舞』は織田信雄のみであれば奇をてらったようにも感じるだろうが―凡庸な男は凡庸として描かれているし―北条氏規を配したことで「血を絶やさぬことに生きる目的をもった男」たちの群像劇としての土壌を得、好感のもてる作品にしあがっている。この続編として、織田家・北条家が関ヶ原・大坂の陣をどう生き抜き、大名家となったか読んでみたい。
虚けの舞―織田信雄と北条氏規Amazon書評・レビュー:虚けの舞―織田信雄と北条氏規より
4779111390

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