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白夜行
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白夜行の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.18pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全711件 501~520 26/36ページ
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TV化されたので内容をご存知の方も多いだろう。小学生時代に殺人を犯した男女2人の20代後半までの人生を時代の風俗と共に描いたもの。2人の間の交情・心理描写は一切せず、2人と周囲の人間の行動を冷徹に描く事で読者の想像力に訴える手法を取っている。 だが暗い。ひたすら暗い。救いがない。作者はどういう意図でこの小説を書いたのだろう。まさか、「小学生の時に事件を起こしたんじゃ、後は暗い人生を送るっきゃないよねぇ〜」ではないですよね。ヒューマンな「秘密」の後だけに、逆に人生の暗黒面を描こうとした訳ですか ? その方がブンガク的だと。しかし、事件の後、取るべき選択肢は幾つもあった筈なのに手前勝手に「白夜行」に突入したのは主人公達のワガママでしょうが。結末で、女を救うために自らの身を投げ出して警察に連行される男の姿を、冷酷に黙殺する女の有様をブンガク的だと考えているようでは作者のお里が知れるというものだ。 | ||||
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東野圭吾さんの小説は以前、「秘密」を読みましたが、これはほろ苦い恋愛小説で読後、切なさが残りました。 しかし、この「白夜行」は哀しくて、切なくて、やり切れなくて、人間って何だろう?とか家族って何だろう?その絆は?と随分と考えさせられた小説でした。主人公2人を決して弁護する気はありませんが、白夜の下でしか生きてこれなかった彼らの悲しい運命は何とも哀愁漂うものがあります。どうして、もっと楽に生きれなかったんだろう?どうしてもっと素直になれなかったのか?絶えず、疑問がつきまとう二人の人生でした。どんなに社会的に成功しても、決して幸福にはなれない、安堵の思いは訪れない、と分っていて、次々と周囲の人間を陥れ、犯罪に手を染めていく二人を誰が止めることができたんだろうか・・・? この本は、決して勧善懲悪でもハッピ−エンドでもない話なので、自分の精神状態が落ち込んでいるときは読まないほうがいいと思います。ですが、少し、人生について考えたいと思ったら、この本が何かを教えてくれるかもしれません。 | ||||
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あまりに暗く過酷な話なので、残念ながら最後まで感情移入できなかった。 けど話自体は、面白く麻薬的なまでに、昭和時代に引きずり込まれた。 フロッピーとかマリオとか懐かしいなあ。 さすが理系出身作家だ。盗聴や偽造犯罪、科学捜査の描写はリアルだ。 おかげで防犯雑学が、少し身に付いたお得感はある。今ならネットバンク とか要注意だろな。ホリえもん事件沖縄怪死を連想した。 読み終えた今、徒労感で一杯だ。一気読みだったが後味はキツイ。トマト ジュースだな。しばらく気持ちの整理ができそうに無い…。なんか心の筋肉 にスゴイ乳酸ため込んでしまった感じ?しばらく心肉痛だ。 PS●ドラマも気になったけど。読み終えるまで決してアクセスしない方が 良い。dvd一話のあらすじを目にするだけでアウトだった。 ●浦沢『MONSTER』好きな人ならハマるでしょう。無機質だけど カリスマ主人公なら→アゴタ『悪童日記』。以上の本は子供向けでない。 | ||||
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日本の誇るページターナーの傑作。 重厚かつ緻密な物語であり、読み出したらページをめくる手が止まらないだろう。 絶対のお勧めであるが、読み終えた後には、巨大な喪失感が残る。 単純なエンターテイメント小説とはいえず、気軽には読めない重みを持っている。 覚悟を決めて、ひどく魅力的で、せつなく恐ろしい物語の世界に入ってきてほしい。 | ||||
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一気に読みました。時代設定がTV版と異なり、最初の事件発生がオイルショック時の70年代初めで、自分の子供時代と重なり懐かしさも覚えながら(?)読み進みました。「読ませる」という点において作者の力量を感じました。他の東野作品も興味を持ちました。 | ||||
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「一切ドラマを見ないで」小説を読んでください。 この本が特殊なのはその書き方にあります。主人公二人の第一人称での語りが一切ありません。そういった技法なら過去にもあった、という方もいらっしゃるかもしれませんが、この本が他と違うのは、その効果が無限大ということです。語られないことで、二人の思い、キヅナ、悲しみ、喜び、を想像しなくてはなりません。 が、それが、読み手それぞれに、自分の心に正直に、「ソウゾウ」できるのです。 脚本のような語り口が、恣意的であり、クレバーだと思いました。 一度、味わってみてください。 | ||||
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テレビドラマでは表現しきれない二人の内面、強さ、弱さ、ずるい人間らしさも絶対本を読むべきです。ドラマ化しないほうが私としては人物像を描くうえでよかったともおもいます。ドラマを先に見てしまった方は、これを機会に東野圭吾さんの作品を読んでください。世界に引き込まれますよ。 | ||||
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あらすじとしては、ある殺人事件に絡んだ少年・少女が成長していく過程のなか での事件を淡々と。 最大の読者に考えさせる点は雪穂の太陽に変わるものが何だったか? ですね。 「一日のうちには太陽の出ている時と沈んでいるときがあるわよね。それと同じように人生にも昼と夜がある。もちろん実際の太陽みたいに、定期的に日没と日の出が訪れるわけじゃない。人によっては、太陽がいっぱいの中を行き続けられる人がいる。ずっと真っ暗な深夜を生きていかなきゃならない人もいる。で、人は何を怖がるかというと、それまでに出ていた太陽が沈んでしまうこと。自分が浴びている光が消える事をすごく恐れてしまうわけ。今の夏美ちゃんがまさにそうよね」 言われていることは何となくわかった。夏美は頷いた。 「あたしはね」と雪穂は続けた。「太陽の下を生きたことなんかないの」 「まさか」夏美は笑った。 「社長こそ、太陽がいっぱいじゃないですか」だが雪穂は首を振った。その目には真摯な思いが込められていたので、夏美も笑いを消した。 「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはないけれど、あたしには十分だった。あたしはその光によって、夜を昼と思って生きていくことができたの。わかるわね。あたしには最初から太陽なんかなかった。だから、失う恐怖もないの」 ここがこの小説で一番言いたいことでしょうが、内容に入る前にかっこいいセリフですね。ほんとに考え付く作家さんは普段何考えてんねん。 僕が今ここまで読んだところでの感相としての雪穂の太陽に代わるものですが、自分の才能・美貌といったところなのかとおもいました。小学生のころから売春をさせられ、周りの環境には恵まれていなかったが、私にはそれを変えてこれるだけの力があった。私の周りには始めから大切な人物(太陽)はなかったから、失って怖い人物・事柄はない。といったところかなぁ。 そう考えると、雪穂に一番利用されたのは亮司ということになります。ドラマだと2人は好き同士ということらしいですが、それはおいておいて。 そうすると、子供の頃に亮司が父親を殺したのも、雪穂の策略なのでは?と考える事はできませんか。図書館でたまに会う少年に自分を助けさせる。2人の関係は最後までわかりませんが、最後に亮司が死んでも表情を変えなかった、雪穂の状態を考えるに太陽は亮司ではないと考えるのがだとうのような気がします。 | ||||
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意識しているかどうかは別にして誰もが多かれ少なかれ持っている心の暗部を白日の下に晒し、「さあ!あなたには彼女のような心の闇は全く無いと言えますか?」と、問われているような作品になっていると思います。「私には心の闇なんてこれっぽっちもありません」と断言できる人がいったいどれくらいいるだろうか? 幸運にも、これまで意識あるいは経験することがなかっただけで、いくつかの条件さえ整えば心のヒダの奥底に隠されている、ある種、人間の持つ本質の一つ“意識下の闇”が現れてしまうのでは?・・・・などと考えさせられます。 話の根幹に過不足無く枝葉をつけてあり、情景・状況描写を含め、見事な仕上がりの作品だと思います。まるでモーツアルトの作曲したオペラのように、このような作品をいつも書ければ楽しいでしょうね・・・・。著者の卓越した才能が感じられます。 愛し合う二人が最悪の状況に置かれ、このような結末を迎えざるを得なかった運命的必然を言う読者もおられるかもしれませんが(ある種の純愛)、著者がこの本で言いたかったのはその様な、ありきたりなものではないと思いますし、そう信じたい。 | ||||
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雪穂と亮司、2人の主人公のストーリーは、DNAの2重螺旋のように密接に絡み合いながらも決して交わることなく進んでいきます。2人にまつわる非常に多くの登場人物はすべて必要に応じて登場し、複雑に2人のストーリーに絡んでいきます。電車で読んでいると手が疲れてくるほど分厚く重い文庫本ですが、無駄な描写はほとんどなく、とても緻密に構築された物語だと思いました。 ただ個人的には、その暗すぎる内容、ご都合主義的な登場人物の心理描写、ドラマの脚本のような淡々とした語り口、消化不良感のあるラストなど、どうしても好きになれませんでした。小説の中ぐらい、もっと救いのある物語を読みたいです。 物語としての完成度は高いと思いますが、個人的な感情も加味して☆2つ。 | ||||
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『レイクサイド』の時に、東野圭吾さんの本が、つまらない・がっかり…という印象があったのでどうかな〜と思いつつ読むと、すごく面白かったです。 最初は時代設定がすごく古くて驚きました 雪穂と亮司の関係がとても痛かったです。 「白夜行」の意味が分かるともっと痛いです。 ドラマを観てないので間違ってるかもしれませんが、原作の方がいいように思います。原作の方が彼らの犯罪に関して、色々匂わせつつも明言しません。ラストシーンも知らずに読んだ方が緊迫感があります。 雪穂も、亮司も、もっとドロドロとした世界にいて、影があって、犯罪を重ね続けています。その分救いのない二人だけの世界で。。。 ドラマを楽しんだ方にもぜひ読んでもらいたいです。私もドラマを観てみようと思います。 | ||||
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日本人作家の作品(特にミステリー)があまり好きではなかったのですが、『白夜行』を読んで考えが180℃変わりました。雪穂や亮司の何気ないセリフ、でもそこにある深〜い意味がわかったときは涙が出ました。ドラマも見ましたが活字でも感情移入してしまいました。<あたしの上には太陽なんてなかった・・・・・>というところの雪穂のセリフは深すぎて、そしてキレイすぎて何度読んでも泣けてきます。 | ||||
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文庫にしてはボリュームがありますが、 一気に読み終えてしまいました。 ただ、読後、その内容に圧倒され しばらく放心状態に陥ってしまいました。 時間にゆとりがあるときに読んだほうがいいと思います。 大袈裟でなく、そうしないと、生活に支障をきたすかもしれません。 非常にお勧めしたいのですが、 その観点から見ると、多忙な ビジネスマンにはお勧めできないのかもしれません。 それほど、のめりこんでしまう作品です。 | ||||
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緻密な構成と主人公二人に圧倒させられました。主人公二人の主観は全くないのですがそれでも彼らの内面がよく伝わり、共感や感動が得られました。 この本はどういうジャンルの本なのかと言われたら私はダークな純愛小説だと断言します。それは雪穂のこの台詞があるからに他なりません。 「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。太陽ほど明るくはないけど、あたしには十分だった。」 この台詞が二人の絆の強さを表していると思います。だからドラマ版の(見てはいないのですが)公式ページで雪穂が太陽のような篠塚に惹かれたという文を見て正直怪訝に思いました。 二人の絆が純粋すぎるあまりにとても痛々しくて、そこに引き込まれました。最後は亮司には逃げ切って欲しかったなぁとも思いましたが、太陽の代わりを失った雪穂の背中に切なさを感じます。 白夜の中で手をつなぎ続けている二人の姿が眼裏に浮かびました。 | ||||
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東野圭吾氏の作品を数多く読んでいますが、私としてはベスト3に入る作品であると思います。 オイルショックの1973年に物語りは始まり、800ページに渡る長編小説の中で19年間を描いています。小説の中で、カセットテープに書き込んだパソコンソフト、PC9801、スーパーマリオなど、当時流行ったものが登場し、懐かしく読めました。 世の中には、この作品の主人公のように、研ぎ澄ました目で"のほほん"と生きている人たちを陥れる人たちがいるのでしょうね。 主人公の少女と関わっている人たちが次々に不幸になっていくところあたりは、浦沢直樹氏のMONSTERのような感じです。ドキドキしながら、読み進みました。 私は、ドラマを見ていませんでしたが、小説を読んだ後にドラマを見てみたいと感じました。 | ||||
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長いけれど一気に読めました。海外在住なのでドラマは見てません。 読んですぐに「永遠の仔」と似てるなぁと感じたのは私だけではないよう。最初にそこにはまると、結末が安易に感じるのが残念なところ。 犯罪の手口や人を狡猾に陥れていく様にはハラハラしますが、いろいろといいたい部分も。実母と愛人は、私だったら過去の写真が出てくる以前に、別々に事故死させるなぁ、とか。最初から雪穂の「闇」に気づいていた一成をもうちょっと懐柔させることもできたんじゃないの、とか。 他の人も書いてますが、動機の部分が結構安易かな、と。児童虐待経験から冷酷に犯罪を犯すというのは、実際に虐待経験をサバイブしている人々にたいして失礼なのでは、という気持ちも。(もちろん、実際にそのような経験と犯罪率の間に統計的に相関があるんでしょうが) 何度もおきるレイプ犯の実質主犯格が美しい女性というのは、まぁあまりに陳腐で読者サービス?という感じでした。 文句色々書いたけど、「次に何が起きるのか」と期待させて一気に読ませる筆力はさすがです。 事件の時代背景として重大事件や風俗を盛り込んでおり、謎解きというよりは2人の主人公の犯罪半生記を追う「現代版ボニーアンドクライド」、と言う感じです。 いつかは東野さん流に、実際に起きた凶悪犯罪を小説化して欲しいなと思います。主人公2人を一人称で語らせず、周辺観察による乾いた人物描写のみで浮き上がらせたことで却って事件の凄みが増してます。読者に想像の余地を残すこの書き方は良かったと思います。 | ||||
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ドラマでこの本の事を知り、読み出したんですが、ドラマを見る前に読みたかったです。 本では第三者的立場で事件のことや、二人のことを書いてあるんですが、 ドラマでは、雪穂と亮二の二人が主に話を進めていくので、それぞれの思いや気持ちが事細かに表現されていました。 私としては、事件に対して二人が思うことなどを、文で読み取ったり、自分で想像したりしたかったんですが、 ドラマを見ていたことで、その時の二人の思いなどがドラマの台詞のまま頭に入ってくるので残念でした。 しかしドラマも本も面白いことは確かなので見てみるべきだと思います。 ただ本を先に読むことをお勧めします。 | ||||
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ドラマを見てから原作を読んだのですが、どちらも甲乙つけがたいほどの素晴らしさでした。 不思議に原作を読んでいるときにドラマの影響はありませんでした。主人公の顔も特にドラマの俳優と重なりませんでしたし、まったく別のものとして読むことができました。 それほどに、両者がそれぞれその媒体の持つ特性を十分に発揮した完成度の高い作品となったからだと思います。 小説では主人公は直接に自分の信条や考えを語ることはなく、読者は実際に起こった事件や、主人公が時折もらす本音や他者を評価する言葉などから推察するしかありません。 しかし、それだからこそ、言葉や行動の一つ一つに重みが増し、読者は見落としや聞き漏らしをしないように注意深く読むことになり、衝撃的な結末に至るまでの主人公の心の動きを様々な角度から推察することになります。 そして、それは読者それぞれの人生観を反映させる余地を残しています。だからこそ、読者は主人公に感情移入し、現実離れした状況設定にもかかわらず、自分の人生を投影させることになるのです。 読み終わったあとには、自分自身が悲しくも切ない人生を生ききったような放心状態におかれます。 人間の欲望を商品化し売り渡した結果が、魔物を産み落とし、魔物として生きることを運命付けられた主人公たちが、誰にも頼ることができず、自分たちに降りかかる火の粉を自分たちだけで振り払いながら生きた人生。 その出発点は純真な心と邪悪なものへの憎悪だったのに・・・。 | ||||
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長い文章量にもかかわらず、全然飽きを感じなかった。 各章ごとに語り手が変わるが、それぞれの登場人物の心理描写も見事。 しかも、語り手のいずれもが主人公の2人ではない人物という作り方もおもしろかった。 主人公2人のアンダーグラウンドな世界を、それ以外の登場人物が地上から描き出すというスタイルの文章は非常におもしろく、トリックも精巧で、日本の文学界のトップレベルのミステリーという感じがした。 | ||||
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評価についてだが、星5つでは足りない、と思う。 沢山本を読むわけでない。毎月何冊かの目に留まった本を読んでいるにすぎないので大したことではない。 が、恐らく、何年かぶりに「そのことで頭がいっぱい」になる小説に出会った。久しぶりの感覚だった。 東野圭吾ってどうなんだろう…?と思いながら気怠くページをめくっていたら、それからひと時も本から離れられなくなった。 とにかく一つの事件に、たくさんの怪しげな謎や複線が潜んでいる。登場人物のちょっとした表情、物体のほんの少しの変化にも作者は丁寧に触れている。 そしてそれらは、まるでパズルのピースのように読者に少しづつ与えられていく。 単行本はびっくりするくらいの厚さだが…私が音をあげなかったのは、詰め込まれたピースが、無駄なく一本の線で結ばれて、 流れるように最終結末へと連れて行ってくれたからだ。 作者は、沢山のピースを用いて、結局、ただ一つのことを形作るに過ぎない。 それは、この小説の主人公、亮二と雪穂という二人の人間。 彼らの秘められた関係。強い、奇跡的にまで強い、男女の関係。 二人の心うちがどんなものだったのか、読者が最も知りたいそこだけが、最後まで、ピースとして与えられない。 読者が必死の思いで作り上げてきたパズルは、そこだけが空っぽ、未完成。 一番大切なピースが欠けたこの小説が見事に成り立っているのは、それ以外の要素があまりに緻密に組み立てられているからだ、と思う。 空いたピースの部分には、読者の数だけの、亮二と雪穂がいる。 そして、未完成のパズルは、完成されたものよりずっと、読者の心に強く入り込むのではないだろうか。 きっとなかなか忘れられない小説になるだろうな、と思った。 | ||||
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