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ねじまき少女



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ねじまき少女の評価: 3.12/5点 レビュー 49件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.12pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全23件 21~23 2/2ページ
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No.3:
(5pt)

エコSFという意味不明なださいキャッチをはねのける傑作

SFのさほど熱心な読者ではないのですが、久々に大満足しました。

遺伝子操作で誕生した性奉仕をする日本人少女アンドロイドというキャラクター、石油枯渇後のアジアという舞台。設定だけ見ると20年前にウィリアム・ギブスンが書いていてもおかしくなかったような。
けれども状況を小出しに明かしながら熱気と疾走感を増す作風ははるかに受け入れやすいです。また当初は深く人物像に分け入り感情移入を期待する作品ではないのかと思いましたが、だんだんそれぞれの思惑や痛み伝わってきます。
そして何よりねじまき少女エミコの鮮烈な印象とともにストーリーにぐいぐい引き込まれます。
その意味ではかなりメインストリームに近いと思います。ジャンルSFに興味のない人でも、海外作品で非日常的設定の小説に抵抗のない方なら楽しめるかもしれません。

私は上下巻を同時購入しましたが、気に入らなかったときのために上巻だけまず購入しようと考えている方、上巻を読み終わる頃には一気読みしたくなっている可能性が高いので、下巻を買うかどうかの判断は280ページくらいまでにつけておいたほうが良いです。

ただ、なんでこの傑作に「エコSF」なんて訳のわからない、しかもださすぎるキャッチを付けたのか...なんでもエコを謳えば興味を惹くと思ったのでしょうか?こんなひどいキャッチをはねのける作品のパワーに逆に感服します。
ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118094
No.2:
(5pt)

スゴい。本年度翻訳SFのベスト1かも。

ヒューゴー賞など主要な賞を総ナメにして、翻訳前から評判が高かったこの作品。帯には『ニューロマンサー』以来の衝撃って書いてあったが、私にはニール・スティーヴンスン『クリプトノミコン』以来の衝撃だった。

バチガルピの作品は、SFマガジンに掲載された短編・中編は読んだことがあり、かなり気に入ったのだが、いよいよ満を持して長編が登場した。

石油が枯渇し、主要なエネルギーが「ねじ(!)」になっていたり、遺伝子改良の技術が発展している近未来の世界で、水没の危機にあるバンコクを舞台としたSF。帯のエコSFっていう文言は気に入らないけど、エネルギー危機にある世界の政治や経済を創造力豊かに描いている。

まだ、上巻だけど、面白くて面白くて読むのが止まらないくらい引きこまれた。『クリプトノミコン』ではコンピュータ、こちらは遺伝子と、違いはあるけれど、ポストサイバーパンク(ちょっと古い?)の匂いがする私好みの作品だ。アジアを舞台にするのもちょっと似ている。

アジア、しかもタイといえば、リチャード・コールダーの『デッドガールズ』なんかも思い起こさせる。「ねじまき少女」のエミコもそんな感じだ。

こりゃ、スゴイ作品だ。上巻しか読んでないけど、今年度の海外ベストSFの上位に来るのは間違いない。いや21世紀に書かれたSFで私が読んだものの中でも、洋の東西を問わず、ベストに近い。うーん、スゴイなぁ。
ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ねじまき少女 上 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118094
No.1:
(5pt)

猥雑な未来都市を主役にした、滅法楽しいエンターテイメント大作

エコSFという疑問だらけのキャッチフレーズや、喧伝される「新たな世界観」などよりも、これはまず何より、全編に溢れる猥雑なエネルギーが素晴らしい、滅法楽しいエンターテイメント小説であると思う。

ハッタリと活劇に溢れた手に汗握る群像劇なのだけど、個性的な登場人物たちはしかし、あらゆる要素が過剰に溢れかえり、汗や廃棄物や食物や充満し交錯する欲の臭いに溢れた未来都市・バンコクの一要素。
小説の主役は都市そのものであり、それが何よりの魅力。

石油枯渇後の社会で、遺伝子操作された象もどきがやはり遺伝子改変のゼンマイを回し「カロリーをジュールに」してエネルギー供給というハッタリはなんとも楽し過ぎる。
遺伝子操作を軸に食物流通(を基礎にエネルギーその他も)を支配し平然と国家も覆す国際企業の人員が「カロリーマン」と呼ばれているセンスも光る。

なお、題名になっている日本産の遺伝子改変新人類の一員であるトンデモ奉仕奴隷「ねじまき少女」が「日本人より日本人らしい」とか何とか言われているような、各所に見られる歪んだジャポニズムは笑って流そう。
一昔前のサイバーパンクでも読んでいれば、十分以上に耐性はついている筈。

それと、上下巻合わせて一枚絵になる表紙は鮮烈である一方、最大の魅力であるところの都市の猥雑なエネルギーがいまいち感じられないようにも思えるけど、それも「あえて」の表現なのかもしれない。

なお、ねじまき少女エミコについては「ご主人様」との関係でエイミー・トムスン『ヴァーチャル・ガール』だとか、奇形の美しさということで「人類補完機構」のク・メルだとか、新人類や人間の似姿ということでディックのシュミラクラだとかヴォクトのスランだとか。
諸々例に挙げつつ、新人類だとかフランケンシュタイン・コンプレックスだとかあるいはジェンダー云々とかの各文脈に載せ、色々とぐだぐだ言うこともできそうです。
個人的にはおよそ気乗りしませんので、詳しくはやりませんけれど。
ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:ねじまき少女 下 (ハヤカワ文庫SF)より
4150118108

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