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ばいばい、アース
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【この小説が収録されている参考書籍】
ばいばい、アースの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.02pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全48件 21~40 2/3ページ
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最近、売れに売れている冲方丁氏。この作品は、彼のスニーカー大賞受賞後第1作ということ。私自身は、この本が2000年12月に単行本として出版されたときには、まだ著者の存在も知らなかったが、『マルドゥック・スクランブル』以降、彼の作品を読み続けていて、かなり自分好みの作者であると思い、この旧作も文庫化されたのを知り、読んでみた。 もともとSFファンではありながら、あまりこういった剣と魔法がでてくるようなファンタジー作品を読む機会が少なかった自分には、彼の描く世界観や登場人物、設定などに戸惑うことが多かったが、この長大な小説を読むにつれ、だんだんとその魅力に惹きこまれていった。 ストーリーとしては、そんなに劇的な展開が続くわけではなく、むしろ、この長さにしては、シンプルと言ってもいいぐらい。しかし、あえて説明を省略したような世界の描き方によって、読んでいるうちにだんだんと、この不思議な世界の成り立ちの謎に夢中になってしまった。 結末を話すことは出来ないけど、主人公ベルの活躍の華々しさの影に見え隠れする、この世界の成り立ちと今後の有り様の描写こそが、この小説のメインテーマであるように思う。そこが気に入った。 読むのに疲れたけど彼のファンとしては読んでおくべき重要な作品だと思う。 あわせて巻末の大森望氏の解説もこの小説、そして冲方丁という作家の解読に役に立った。 | ||||
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最近になって作者にはまった。だから読者としてはまだ日は浅いが…。毎日数冊ずつ本を読み続けることを止められないような読書中毒患者としては、中毒になるだけの作品や作家に逢うのが如何に難しいか…。兎に角、読んで面白いと思った作家の作品は一気にまとめて読んでしまう。読むものがなくなってしまうと、次は別の本を読みながら、ひたすら新作を待つ。その中で最近はまってしまった作家の一人にこの作者がいた。正直麻薬みたいな作品群だ。内容についての云々も有ることは有るのだが…。その感想の詳細は本の解説の中に既に十分書かれていた。「解説」中の三村美衣、鏡明両氏の評もまた同様。全て言い尽くされていたようで、重ねて書くのもネ…。だから別の感想を…イヤ、内容もさりながら、兎に角あとがき、解説が面白かった!あとがきや解説を読みながら笑ったのも久しぶり。丁さん(名字の方の漢字変換が出来ないので、失礼ながら…)の作品は色々考えながら読まなくてはならないが(私の頭が既に固くなっているのか?)、イヤ普通の文章を拝見してもなかなかの表現力で、エッセイ的なものを書かれても買いかな…なんて。 濫読であるにもかかわらず、本来余りSFには手が出ない私が非常にはまってしまった作家は、多分高橋克彦さん以外は丁さんぐらいじゃないかなぁ?高橋克彦さんは別にSFだけの作家じゃなく、大変多彩な作家で大ファンだけれど…。丁さんの作品は正直かなり頭と想像力を働かせながら読まなくてはならないが、年齢に関係なく幅広い読書層が楽しめる作品がより多く生み出されることを願っている。 | ||||
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文庫本四冊に分かれる、この大長編SFファンタジーも第3巻に来て、物語が急展開。王国、そしてこの世界に対して、その有り様に疑問を持った者たちにより、挑まれようとしている。 善と悪、正と邪の境界が曖昧になる中で、主人公のベルたち剣士は、何と闘おうとしているのか。この世界を統べる神の意図はなんなのか、剣と魔法というよくあるファンタジー小説を装いながら、著者は自らが築き上げた王国、そして世界を脱構築、破壊しようとしてる。 彼の描くこの世界、そしてベルを初めとする登場人物の魅力もさることながら、著者のその意図に惹きこまれるようにして、読んでしまった。 セリフ回しなど、独特なところもあって、慣れるまで読みづらいところもあるけど、この不思議な物語に耽溺してしまうような魅力がある。それが、この作品だけではなく、冲方丁氏の作品に共通する魅力でもあるのだけど... 次巻では、この長い物語も結末を迎えるはずだけど、どのようなエンディングを迎えるのか、全く予想がつかない。読む前からドキドキするなぁ。 | ||||
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4分冊のうちの第2巻。剣と少女と魔法を題材としたSFファンタジー。最近、売れている冲方丁の第2作の文庫化である。 第1巻の最後である戦闘が終わり、つかの間の休息に浸る主人公の少女ベル。アドニスとなにやらいい関係になりそうだったが... 剣や魔法のアクションシーンはあまりなく、第1巻の荒々しさは影を潜めているが、ベル、そしてアドニスの関係と、彼ら自身の自分との闘いが落ち着いた感じで書かれていて、かなり読ませる。 今まで、冲方丁のファンと言っておきながら、あまりライトノベルとか読んでこなかったが、彼の作品はどれも彼らしい世界観やセリフなどがきちんと盛り込まれているので、読む価値はありそうだ。ばいばい、アースもあと2巻。そのあとは、未読のライトノベルも読んでいこうと思う。 | ||||
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最近、かなり来ている冲方丁の旧作の文庫化。2000年に上下巻の単行本として出版されたが、今回の文庫化にあたり、四分冊とされた。今回はその四分冊のうちの第1冊目。 第1冊目ということもあり、まずはこの物語の舞台となる不思議な世界と主人公であるベルについて紹介される。 人々は、ベルを除いて、さまざまな動物の形をしており、ベルは剣の修行を重ねていたが、あるとき、自分と同じ種族を探しに旅に出ようとする。都市へ向かったベルだったが、そこで剣士となり、「外」との戦いに駆り出されるのであった... と、前半部分は、ほぼその紹介に終始し、後半は、ベルが挑む初めての戦いについての記述になっている。まだまだ、この世界がなぜこのような形で構築されたのか、その理由は明らかにされていないが、この本のサブタイトルにあるように、主人公ベルが、その「理由(ことわり)」を明らかにするものとして、今後活躍していくのだろう。 冲方丁の小説はマルドゥク・スクランブル以降はよく読んでいるんだけど、それ以前の作品は未読のものが多い。これから読んでみたい。 | ||||
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全編通しての感想は4巻に書きます。 ここではネタバレしない程度に、1巻の感想です。 面白いことは面白いのですが、、、 他の方が書いているほど壮大でも深くもないと思います。 どこかで見たような世界を、どこかで聞いたようなキャラクターが、 よくある展開のシナリオに沿って進んでいく話しです。 上記は、この本を否定しているわけではなく、王道ということです。 ストーリーの王道は、なぜ王道となるか。それが面白い(一般的に好まれる)からです。 この本では、まるでその王道から離れているように見せかけるマジックとしてルビ(ふりがな)を使っています。 筆力の無さ(本文内で表現できていないこと)をごまかしているように感じるルビでした。 前述したように、王道の話しなので普通に面白いです。 ですが、私はおすすめしません。 全巻読了後の私の評価は、ひいき目に見て星1個です。 この1冊で完結ならばおすすめできるのですが。 | ||||
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全編通しての感想は4巻に書きます。 ここではネタバレしない程度に、2巻の感想です。 1巻よりもつまらなく感じました。 ひょっとして、この後どんどんつまらなくなっていくんじゃないか。という予感を感じた一冊です。 個人的好みによるところが大きいのですが、主人公の仲間が強すぎです。 1巻では、役立たずな奴がそれなりに頑張るところもあったのですが、 今回は、レベルが1上がった、クラスチェンジした、最強になった、って感じです。 元々才能があった的な表現はあるのですが、みんながみんな一個壁を乗り越えると最強キャラになります。 一斉に成長します。みんな一緒に右上がりのグラフです。しかも直線のグラフ。 成長ってそんなん?いや、文章ですから限界があるのは分かりますけど。。。 せっかく、単行本で4冊分もあるのだから、 成長にムラがあったり、逆に弱くなる奴もいたり、 延々弱いままの奴がいたり、と思ったらここで来るかー、とかある方が面白くないですか? 成長には、目に見えるものもあれば、見えないものもある気がするんですが。 結果、力まかせに話しが作成されています。まあ、書き手にはその方が楽なんだろうけど、どうなん? 人の心の機微、微妙な成長過程を描くことのできない筆力の無さかなと感じました。 1巻では、ほどよく使われた万能薬。ここにきて、やばそうな雰囲気をものすごく出してます。 | ||||
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全編通しての感想は4巻に書きます。 ここではネタバレしない程度に、3巻の感想です。 その場の思いつきで放り込んだようなアナグラムが・・・最悪。 レットイットオーの大合唱って・・・、笑っていいところなんですかね。 この巻になると無必要ルビの悪臭がとても鼻についてきます。 物語の中の必然性によるものでなく、無理矢理な色づけによるものなのだとはっきり感じます。 なんだろうな、この上滑り感。 王道ファンタジーと見せかけて途中から独自性を出そうとした結果、 うまくキャラクターとストーリーの調整できなかったので、作者の都合のみで文章化した感じでしょうか。 この方の書く(少なくとも本小説の)友情、愛情は、表面のみひろった偽物にしか感じられないです。 なんでこんなに嘘っぽく書くのでしょう?意図的なのだとしたら理解できない。 | ||||
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一巻では気に入らなかったアドニスが、2,3と巻を追うごとに段々好きになってくる。 自分だけのちっぽけな世界をひたすら懐疑しうろつき周る彼の情けなさが、僕自身に重なる。 隣で笑う少女はどんどん前へと進むのに、自分は心も体も、同じ場所に張り付き続ける。 「がんばれ引き籠り野郎! とりあえず動け!」 でもまぁ、ヒッキーの王様だ。忠実な「殻」バンブーはいつまでも養ってくれるし、ベルも何かと構ってくれるし。あやかりてぇよ。 しかし憧れる女の子とは同じ道を歩めず、ベルと並ぶには彼女と離れ敵対するしかないという「動機」は納得でき、そして哀しい。 結局は「殻」を出て自身に溢れる「懐疑」を、世界を否む異端の刃とすることで、アドニスは初めて自分だけの剣を……闇の剣ではあれ……獲得する。 2巻では、彼が自分の世界の狭さと貧しさを、すべてを捨て失ってから初めて気付くシーンが心に迫った。 「運命はいつも手遅れになってから、俺に和解の手を差し伸べる……」 現実では、犠牲や痛みと引き換えないと成長できない場合があまりに多いものだ。 | ||||
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非常に読みづらい。ページを開いてしばらく読んで抱く感想はそれだ。SFとファンタジーをないまぜにした様な世界観であるにもかかわらず、ちっともそれが説明されないことがその理由の一つだろう。 月瞳族、月歯族、弓瞳族などという登場者たちの種族から、動物的特徴を備えた人間的生物が住まう世界であることは分かる。剣の国、財貨の国などから、いくつかの社会集団が形成されていることは分かる。ところが、これを読み下すとなると、決闘許可証(=ドックタグ)、財貨(=デナーリ)、世界を穿孔せよ(=デュルヒ・ブレッヒェン)などと様々な言語でのルビが振られていて、何がなんだか分からない。 しかし、主人公が自らの理を求める過程を追いながら、とりあえず最後まで読んでみると、何となく分かった様な気分になってくる。まるで、物理学者がいまここにある世界から物理法則を読み解くように、考古学者が遺物から過去の事象を推測するように、少しずつ、少しずつ、物語の世界が自分の中で出来上がっていく。 だからこれは、世界を創造するための物語。この先にどんなお話が作られるのかは誰も知らない。 | ||||
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はじめのうちは面白くて読んでいたけど3 4巻になるとマドロッコしくなって飛ばし飛ばし読んだ世界観と恋愛感情が面白いはずなんだけれどつまらない尻つぼみに、外の世界に飛び出したい主人公気持ちばかり拡大されてて面白くなくなって残念 | ||||
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4巻末尾にある作者後書きが全てを物語るというか、凡そ作家たるものこのくらいの暴挙を通すくらいの図太さが無ければ、異才とは呼ばれないんだろうという程度の異色作。 違う言い方をすると、どうせ文学的地平の限界を試すならジョイスとベケットから始めればいいんじゃね? とも思えるけれど、書いちゃったものは仕方無い。寧ろ発表時の上下二巻合計6090円也、という如何にもマニア向けな体裁の方が、この作品の形としては真っ当でしょう。これをわざわざ文庫にしちゃうのはどうなんだろう。 話としては、合理的に解釈しようなんてしちゃいけないという約束にまず読者が同意出来るかどうかからスタート。領土欲でも物欲でも名誉欲でも無くただ単に己を証すため、という甚だ不謹慎な理由で剣と魔法に訴えるイカれた戦士たち。そんな荒唐無稽が通るのもこれが誰かの夢の中にも似た箱庭遊園地の中の物語だから。従って最初から最後までリアルな動機は出て来ず、そもそも必要と看做されていない。大変パワフルなメタ小説という評価は出来るけど、その割には大事なプロットが英語のアナグラム頼みだったり突然シラーの「歓喜に寄す」におもねったり、妙に卑近なんだよなあ。まあイメージと言葉の力に酔える読者であれば幸せ。 ただ、主人公が何処までも真っ直ぐなので、読後は元気になるという効能はありますね。 | ||||
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マルドゥック・スクランブルを読んで結構面白いと感じ、 〜ヴェロシティでは、何だこの読み難い文章は、と少し落胆しました。 これを読むと、ヴェロシティとは違う意味でまた読みづらい。 なにやら、熱い思いを紙にぶちまけたようで、文章が 練れていないように感じました。 おいしくなりそうだけれどもまだ渋柿かな?といった感じ。 お話の構成については、3巻を読んで、これ本当に収拾つくの?と思ったら、 案の定私に取ってはやや中途半端な感じで終わってしまいました。 ここで終わるんなら文庫で4巻もかける話じゃないよなぁ、 というのが正直な感想です。4巻かけて10巻の物語に対応 できる土台を作りましたが、土台の構築で終わりました、 という様に思えます。 部分的には気に入ったところも沢山あるのだけれども、 全体像が期待はずれだったことで、星は3つとしました。 熱い文章が読みたい時には良いかもしれません。 | ||||
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00年刊行の単行本を4冊に分冊した4冊目,最終刊になります. 物語,そして『世界』を巻き込んだ戦いも結末を迎えるのですが, 剣を振るう主人公はもちろん,まわりの仲間たちの行動,決断には, 興奮して熱くなるというより,ゾクゾクするような感覚をおぼえます. また,互いに惹かれつつも結ばれない主人公と『敵』となった相手. この『悲劇』を起こすことになってしまったその本当の『理由』には, 哀しさだけでなく,なんとも言えぬいじらしさのようなものを感じます. そしてエピローグ.新たな世界へ旅立とうする主人公を描きつつも, 前夜の仲間たちとのバカ騒ぎや,別れの場面をこまめにはさむ演出が, 歩きはじめた主人公の回想とも重なり,とても効果的な印象を受けます. また,新しい世界への期待感と,孤独だった自分に帰る場所ができた喜び, これまでに得た多くを抱きながら,多くの余韻を含ませる最後もキレイです. やや曖昧なところが残り,スッキリとしない感があるのは否めませんが, シリーズをとおして描かれた世界観には,最後まで圧倒されつづけました. できれば2度3度,またはじめから読み直してみたいと思わせられる作品です. 余談ですが,単行本刊行時のことを綴った文庫版のあとがきも興味深いです. | ||||
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面白さでは★5つですが、読みやすさという点で★を一つ引かせてもらいました。 作者の密度の濃い世界を絞り込んだような作品です。 世界観がひどく独特な上、主人公が違和感と感じない点は当たり前の出来事として描かれていくので、(たとえば鉄にユリ科など植物の属性があることや、魚や動物は花とよばれるなど)慣れるまで少し戸惑いを覚えます。 しかし、戦闘シーンの緊迫感と迫力、そして読者を何ページも引っ張る流れは本当に面白いです。また、言葉遊びが多く、あーこれはこういういみなんだという発見をする楽しみがあります。キャラクターの魅力も百点満点。 わからないというもやもや感を気にせずに先に読みすすむことができる人にはお勧めです。 | ||||
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00年刊行の単行本を4冊に分冊,その3冊目になります. ある人物の復活,そしてそこから動き出した『できごと』は, 前巻からおおよそ予感できたものの,それでもやはり悲劇的で, 舞台となる王国をも巻き込んでいく様子は,登場人物だけでなく, その王国の存在自体にも興味が惹かれ,その行く末が気になります. また,これまで孤独,疎外感を感じながら生きてきた主人公が, 仲間というものを心地よく感じ,大事に思う姿が印象に残ります. それでいて,その仲間たちとの別れをにおわせる終盤のやり取りは, 物語がおわりに近づいていることを,大きく意識させられるようです. ほかでは,作中で執りおこなわれるいくつかの『儀式』が神秘的で, アナグラムと絡めた造語なども,改めてその世界観に引き込まれます. ただ,物語が長いせいか,同じ表現が目立ったのは少し気になりました. | ||||
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00年刊行の単行本を4冊に分冊,その2冊目になります. 前作(1作目)の終盤がちょっと壮大だったせいもあってか, 序盤のうちは,その後日談のようなしずかで落ちついた流れ. ただ,ある『できごと』をきっかけに,物語は大きく動きます. 特に,舞台となる王国の秘密とともに語られたある人物の, 悩み苦しみながら『飲まれて』いく様は,ゾッとするようで, その間の,主人公とのなんとも微妙な関係がせつなくて悲しげ. そして,そこからの『再生』と『覚醒』にも興味が沸いてきます. また,心身ともに傷ついて苦しむ主人公はあまりに痛々しく, 己の内面の変化に戸惑い,その心情を爆発させる姿が印象的で, 仲間とのやり取りも,1巻を読んでいればなおひびいてくるはず. つづきものながら,1冊ごとにキレイに締まるのも好印象で, これから先,本作で起きたいろいろがどう影響していくのか, 新たな人物や残されている謎も含めて,期待をさせてくれます. | ||||
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00年刊行の単行本を4冊に分冊,その1冊目になります. 剣と魔法の世界を舞台にしたファンタジ作品になるのですが, 舞台や登場する種族,またアイテムもとてもよく練られていて, その不思議な世界観には,あっという間に引き込まれていきます. それを補足する『ルビ』の多さは,やや読みづらくはあるものの, その一句一句がとても印象的で,慣れればそれほど気になりません. また,著者の初期の作品とのことですが,その割には粗さも目立たず, むしろ,これで初期かと,その内容の濃さにおどろかされてしまいます. 分冊,しかも1冊目のため,文字どおり『はじまり』の位置づけですが, 中盤からの『見せ場』では胸が躍り,しっかりと満足させてくれますし, 1冊目としてこの世界を『おさらい』するにもよかったのではと思います. イラストがないため,これらの世界が『見えづらい』部分はありますが, そのぶん,いろいろとイメージをふくらませて読むことが楽しくなります. 主人公の出自やこの世界のことなど,まだわからないことばかりで, 少しの含みを持たせて締めるラストも,つづきを気にさせてくれます. | ||||
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「蒼穹のファフナー」、「マルドゥック・スクランブル」等で知られる冲方氏の作品です。 ハードカバーのこの本はすでに販売されておらず、図書館にでも行かないと読めないでしょうね。かくいう私も図書館組です。 なのでこの文庫化は非常に嬉しいものです。いやもう、やっとうちの本棚にベルが来てくれます。いやっほう! 上記の作品から入ったかたは、まず世界に驚かされるでしょう。剣と魔法です。機械なんて影も形もありません。 しかし、冲方印の言葉遊びは変わらず。「愚者」をザ・ナッシング、「疑うもの」をクエスティオンなど、見事なまでの変換がされています。 1000Pあまりの大作、それでいてスピーディーな展開は、ついつい次のページをめくらせ、いつの間にか時間が過ぎてしまいます。 ただし難点が無いわけでもない。スピーディー過ぎて付いていけないときがあるのです。それを差し引いても☆4、心の中では4,5といったところです。 次は「微睡のセフィロト」、でればいいなぁ・・・ 追伸、ベルの絵がイメージとちょっと違う。 ちと幼すぎやしないか? | ||||
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鮮やかなカバーに興味を引かれて手に取ったが、中身は上下あわせて1000頁を超える日本的ファンタジーの大作であった。 時代は不明だが多分遠い未来、場所は地球ではなく多分月、登場人物は主人公の少女ベルを除いては、人間ではなくすべて獣人で、ギリシャ神話から出てきたマーメイドやケンタウルスの一種がいるかと思えば、不思議の国のアリスの世界のラビットがでてきたりと、様々な種族がごたまぜになった不思議な世界が舞台となっている。 更には使われている用語も独特で、漢字を英語やドイツ語やギリシャ語でフリガナをふる奇妙な言葉が多用されており、例えば「愚者」を“ザ・ナッシング”、正義を“トップ・ドッグ”と読ませたりと、フリガナという仕組みのある日本語でなければ不可能と思われる不思議な言葉が次から次へと登場し、これがこの世界の異様さを更に際立たせている。 少女ベルが自分がこの世界にただ一人の人間として存在する理由(ことわり)を求めるのが本書のテーマではあるが、その方法が“唸る剣”ルンディングを振るって、この不思議な世界で奮戦することにあるため、中身は剣と魔法が飛び交うファンタジーだ。戦闘シーンは1対1の剣の対決もあれば部隊単位の集団戦もあり、夢枕獏の世界を彷彿とさせるかなり迫力がある場面が展開される。 このようなとてつもない世界を作り上げ、かつ最後に謎が解けるまで物語が破綻することなく最後までまとめる作者の力量には恐れ入った。 | ||||
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