キドリントンから消えた娘
評判
キドリントンから消えた娘の評価:
3.72/5点 レビュー 25件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全60件 21〜40 2/3ページ
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キドリントンから消えた娘の評価:
3.72/5点 レビュー 25件。 B ランク
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次から次へと推論が組み立てられていく様が圧巻。ひとつの題材の見る局面を変えるだけで、こんなに物語のバリエーションが作れるのか?!と驚いてしまう。この推論のスクラップアンドビルドにより捜査も煮詰まって、ジグソーパズルの絵が何となくわかりそうなもんだが、まったくわからない!それもまたすごい。モースと一緒に悩み、想像し、仮説をたてる楽しみ!その点は正統派のミステリ小説の楽しみと言えると思う。
他方の楽しみは、モースと女性の関係である。誰か特定の女性と、というのもあるかもしれないが、私が注目したのはもっと観念的な「女」。モースvs「女という魅惑的な存在」。
モースは自制のきく人間だが、女性の美に魅惑されるのは、やぶさかでないスタンスで彼女らを眺めている。モースの視点で語られる時、強い磁力に抗う彼の姿がある。出家僧のような積極的自戒などアホらしい、女性の美を受け入れる、そのまっとうさをモースは自覚して悪びれないように思う。しかし彼は悪徳刑事ではないので、自嘲しつつ踏み入らないのだった。
あまりに目まぐるしく推論が林立するので、結末ですぐに事件の全容を掴むことが出来ずまごついた。 でもそんな事は気にならないくらい、物語全体から立ち上る色香に酔った。1冊目『ウッドストック行最終バス』の感想では、ターゲット層の中年男に向けたセクシーな愉悦を盛り込んである…と私は断定したのだが、この2冊目ではそんな風に思わなかった。相変わらず、美しい悪魔と駆け引きを楽しんでいるようなモースだが、情熱が盛り上がったり、捜査の都合や部下のルイスの視線を気にして我に返ったりする彼の姿が克明かつ切実で心を寄せてしまう。
「殺人事件じゃなきゃ仕事しない!」とダダをこねるモースはホームズ的だ。けれど大人しい年配女性を尋問して怖がらせた後、彼女をリラックスさせる魔法も使える。自分の女性遍歴を振り返り、独り身の現在すこし苦い酒を飲む。
わたしは事件の全容を早く知りたい!犯人をつきとめたい!という欲求にかられてミステリを読んでいる場合が多い。結論をいそぎたい気持ちになる場合もある。けれど本作はそればかりでなく、モースが次に何を言い出すのか。何をしでかすのか。女性といい感じになったりするのか。と常にワクワクして飽きる暇がなかった。
モースが関係者に会って事件の鍵を得るという展開ばかりでなく、感情的ななにかを持ったというだけのパートもある。また関係者視点で断片的で思わせぶりなシーンを描き出すこともある。それらは簡潔でわかりやすく書かれているのだが、なぜか印象に残る言い回しなど、退屈しない魅力がある。
一面では悪の塊のように言われているあの人も、本人の述懐や描写を読むとあまり憎めない。他者から見た残酷なほど客観的欠点、対する本人の心にある好き嫌いや自分像、それはピッタリと重ならないものだ。そういう物事を単純化しない表現に好感を持つ。
この事件は悲劇的な側面もあるし、喜劇的側面もある。このあいまいで人間味を存分に味わう気分がとても好きだ。推理小説で文学の味わいもある。コリン・デクスターの作品をもっと読みたいと思った。