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(短編集)
リリエンタールの末裔
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リリエンタールの末裔の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.22pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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4作品が収録された短編集。 タイトル作は、大部分が水没した地球を舞台としており、著者の終末観につらなる作品である。4作品に通底するのは、ロマンに魅せられた人々、になるだろうか。 背中に鉤腕を有する青年の大空への憧れ『リリエンタールの末裔』、昏睡状態ものの内面を視覚化すると『マグネフィオ』、海洋探索装置とシンクロし変容したオペレーター『ナイト・ブルーの記憶』、高精度に時を刻む石『幻のクロノメーター』。 『幻のクロノメーター』は、18世紀ロンドンを舞台に、時計職人が手に入れた奇妙な石にまつわる物語。虚実入り混じったスチーム・パンク的作品。素晴らしい。 | ||||
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SFって、もっと尖った、 マニア向けジャンルだと、 ずっと思ってました。 上田早夕里さんの本を読むと、 SFとは、 すべてのジャンルの架け橋だと、 教えてくれます。 ファンタジーにも、 ミステリーにも、 ホラーにも、 純文学にもなりえると、 『魚舟・獣舟』で、 ガツンと教えていただき、 本作ではなんと、 伝記のような物語までも、 SFは内包できるのだと、 またガツンとやられました。 実在の人物もですが、 空想上の、それも、 『魚舟・獣舟』と世界を共有する、 自身の創作のなかですら、 伝記の味わいは出せるのだと。 これは、衝撃でしたし、 この味が出せる作家は、 そうそういないぞと、 感動しました。 さらに、 コメディぽいものや、 ラブストーリー、 料理などの職業ものまで、 著者様は手広くやられていると。 もう、全部買います。 今ちょっと、 積み本が300冊くらいあって、 さすがにもう積めないので、 減ったら買います。 ちゃんと新品で。 作家さんを応援したいですし、 自分だけの本にしたいので、 新品で買います。 そして新品で買ったからには、 ちゃんと客として、 感じたままをレビューもします。 ダメならダメと、 ハッキリいいます。 大好きな作家でも、 コテンコテンにけなすことも、 もちろんあります。 でもこの作品は、 素晴らしかった。 斬新で、個性的で、そして、 読ませる力がすごい。 アマゾンさん、 在庫の確保をぜひ、 お願いします。 最近、映画や漫画が、 少し、購入ソフトとしては、 過渡期の低迷を見せているので、 小説は、それも紙の小説は、 (データでなんて買ってられるか!) 今が売りどきだと思います。 ぼくも今、 一番買っているのが紙の本です。 それも文字表現の。 アマゾンさんは配送はヘタですが、 オススメはうまいので、 どんどんすすめてください。 積み本の先には、 後で買うリストが、 これまた270冊くらいあります。 いつになったら読み終わるんだ? でも、 本が積まれているうちは、 読み終えるまでは生きていたいなと、 思わせてもらえるので、 どんどん今後も積みます。 そして、読んで楽しみます。 | ||||
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四篇収録の作品集である。表題作は「オーシャン・クロニクル」の世界で空に憧れる少年の話だ。 夢が拡がるようで閉鎖的な変な話だ。 『マグネフィオ』は昏睡状態の患者の脳波を視覚化し、 『ナイト・ブルーの記録』は深海ロボットと操縦者が感覚を共有する。 どちらも脳の拡張が新しい世界を開くというテーマだ。 現実の宇宙開発や深海開発は頭打ちだけど、こちらのほうがまだ望みがあるかもしれない。 『幻のクロノメーター』は架空の英国を舞台とする技術開発史だ。職人志望の少女が語り手である。健気でかわいい。架空歴史としてはやや反則ぽい要素もあるのだが、まっすぐな情熱と世間との争いがしっかり描かれており、 読みごたえがある。結末が大好きだ。本作のおかげで評価がドカンと上がった。 | ||||
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オーシャン・クロニクルシリーズの「リリエンタールの末裔」を読みたかったのがきっかけ。嬉しい誤算だったのは、どの短編作品も掛け値なしに面白かったこと。個人的にはオールタイムベスト級である。また、「リリエンタールの末裔」や「幻のクロノメーター」は男が一生をかける夢や仕事についての物語であり、単純な行動ではあるが男としてこのような生き方に共感を覚える。特に「幻のクロノメーター」については、途中から登場する一つの石が人類の文明を変えてしまうようなものになり、自分の想像をはるかに越える展開にセンス・オヴ・ワンダーを感じた。ずるいくらい楽しませる作品である。 | ||||
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なんだか説明ばかりを長々と読んでいる感じで私にはあまり向いていなかった。 | ||||
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テーマは可視化、ないしは具現化かな、と、読みしなにはおもっていた。 民族の誇りを内包した背中の鉤腕をフルに利用した飛翔。脳の機能障害を補完するためにうみだされた、水盤上に脳波で描かれる磁石の花を見せる装置。無人探査機の触覚と感覚を超えて身体的にシンクロした科学者。天体と同レベルの精度でときを刻む時計を世に送り出す職人の生涯。 繊細で美しい機械を媒介に、感情や思い、願いを増幅させる人間たち。その具現化がここで追い求められたテーマであり、その中心を担うのが人間の叡智たる科学でありマシンであろう、そんなふうに読み進めていた。 すべてを読み終えて振り返ると、それら、物語のど真ん中に据えられたはずのマシンたちは実は一様に脇役であることに気づく。実際にマシンで実現したいものは、対人間であればいともたやすく日々のなかに埋没される感覚だったり、人間が創り出した虚栄心や競争だったり。マシンで補強してまで希求する人間の欠乏感が、すべての根っこなのかもしれないと。 喪うから、求める。 喪うことができるのはそもそも存在していたからであるが、関係や感情、思いを元に戻し得るかといえば、物理と違って常に質量保存の法則が及ぶべくもない。しいていえば可塑性・可逆性の問題であるはずなのだ。だがここにでてくる登場人物たちはみな一様に、とにかく足りないパーツを埋めればなんとかなる、と、単純な足し算を律儀に繰り返す。あるものはひたすらに時計を作り、あるものは死にゆくものを触り、という具合に。 科学をベースにしながらも上田作品が繊細でしなやかなのはおそらくは、そのせいであろう。優美に詳細に生み出された科学の粋を尽くしたマシンたちは、あえて人への随意性を要件とされずに、人に柔らかにおもねる。 さいごの短編は、ことさらに丁寧に読んでいただきたい。実際の人知と科学に、人とのつながりとファンタジーを詰め込んだ、まさに白眉。 硬質な骨組みにしなやかな肉をまとった、優しいマシンたち。 そうか科学はこんなにも、甘やかでいとおしい、あたしたちの隣人、だったのか。 | ||||
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技術の進歩で人間の意識や感覚がどう変容していくか?といったテーマで展開される中短篇が4本。 中でも白眉は最後の「幻のクロノメーター」だろう。 著者のこれまでの作品の多くは、技術水準の面で現代から近未来のテクノロジーを前提にしたものだったが、本作は18世紀イギリスを舞台にクロノメーター開発に携わった時計職人を主役に据えたもので、過去の技術を対象にしている。 SFの仕掛けとしてもむしろ昔懐かしい類かと思うが、技術の進展が個々人に与える影響ではなく、社会にどんなインパクトを与えるのかを描くのが眼目なのだろう。もともとは大工にすぎない時計開発者と王室天文官との軋轢があり、新分野を開拓するパイオニアの奮闘が家政婦の少女の目から語られる。 かつての主だった時計職人への暖かい眼差しが、ストーリーを明るい基調で支えている。 表題作「リリエンタールの末裔」も同様にテクノロジーとしてはハンググライダーが登場する。被差別民である少年が富裕層にしか許されない「空を飛ぶ」行為に踏み出すことで、冷酷な海上都市の社会と向き合わなければならなくなる。 主人公が未知の世界に一歩を踏み出す高揚感がすがすがしく、冒険小説のような味わいがすばらしい。 本短編集は主役級の登場人物がみな何らかの形で新技術の開発に関わるので、小川一水あたりの作風に通じるものがある。『第六大陸』など、技術と社会の関係を描く作品を気に入った方なら、非常に楽しめるのではないかと思う。 | ||||
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SF短編4本を収録 小松左京賞でデビューした関係か、ハヤカワJA文庫に初登場 「リリエンタールの末裔」 『華竜の宮』と同じ世界を舞台にした作品 主人公の一族は背中に鉤腕を持つ一族 彼らはそれを利用し、体重の軽い少年期に植物で作った翼を用い空を飛ぶ遊びに興じる 主人公は成長し空を飛べなくなるが、その体験を忘れられずにいる 都市部に出稼ぎに来た主人公は格差や差別にさらされながらも、空を飛ぶ夢を追い続ける 中盤は重苦しい雰囲気ですが、ラストは爽やかでした (ただし、その後に待ち受けている主人公の運命は相当過酷なものになるのかも・・・) 海洋SFを多く書いている著者ですが、今回は「空」でした ちなみに、リリエンタールとは実在の人物で航空パイオニアの1人とのことです 「マグネフィオ」 昏睡状態の夫の内面を装置を用い視覚化しようとする女性とその女性に報われない想いを寄せている男性の話 特定のトリガーにより特定の触覚や視覚が鮮明に思い出される技術に話は着地する 香水(嗅覚)を題材にし、失踪した妻の思い出に浸る男性を描いた『美月の残香』は幻想的なミステリーでしたが、本著はその作品をSF的に仕立て直した感じでした 「ナイト・ブルーの記録」 既読の為、省略 「幻のクロノメーター」 18世紀のロンドンを舞台にした作品 航海用の高精度な時計開発の様子を描く 実在の時計職人ジョン・ハリソン 等が登場し、伝記的な要素も SF的な仕掛けももちろん用意されています | ||||
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短編3、中編1。 「リリエンタールの末裔」は、『華竜の宮』外伝。本編と全く違う少数民族の少年が空にあこがれるリリカルなストーリー。 アニメの「エウレカセブン」を思い出した。 「マグネフィオ」「ナイト・ブルーの記録」は、マン・マシン・インターフェイスを軸にした断章のような作品。 中編の「幻のクロノメーター」は一転して、19世紀イングランドの並行世界を描いたもの。 どれも魅力的。でも、私は「リリエンタールの末裔から最も鮮やかな印象を受けた。 | ||||
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