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花腐し



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【この小説が収録されている参考書籍】
花腐し
花腐し (講談社文庫)

花腐しの評価: 3.85/5点 レビュー 13件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.85pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全9件 1~9 1/1ページ
No.9:
(4pt)

じとじとと湿った物語 さらりと爽やかな文体

〇 ひとつは風情ある作品名に惹かれ、もうひとつは詩人松浦寿輝が書いた小説ということで、どれどれと読んでみた。作品名のようにじめじめと雨が降り続いているような雰囲気が充満した物語。それでいながら文体にはジメついたところがなく、さらりと爽やかだ。この文体が魅力かなと思った。

〇 ストーリーは、倒産の瀬戸際に追い込まれた40男が、たまたま知り合った同じように風変わりな男と交流し、同時に昔の同棲相手との生活を思い起こすというもの。情緒があって叙情的だとも言えるし、すべてが男に特有の身勝手な幻想だとも言える。作者には主張したい思想があったわけではなく、こうした気分を描きたかったのだろうと思う。そうだとすれば成功している。

〇 とは言え、これはひとむかし前の古びた叙情だ、デジタル時代には振り向かれないだろうなと思ったのだが、なんと2023年に綾野剛・柄本佑で映画化されたというではないか。こういう気分はまだ受け入れられるのかな?
花腐し (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:花腐し (講談社文庫)より
4062751216
No.8:
(5pt)

注意! クセになります(笑)

昨年末に『巴』を読んでからこの作者にはまってしまい,これが5冊目.これも良かったので,さらに『そこでゆっくりと・・・』を注文してしまった.中毒症状ですな(笑).
花腐しAmazon書評・レビュー:花腐しより
4062103796
No.7:
(5pt)

思った通りの商品でした

欲しくて探していた商品だったのですが期待通りで
大変満足しています
花腐しAmazon書評・レビュー:花腐しより
4062103796
No.6:
(5pt)

こんな素晴らしい本が「1円」なんて

2000年以降に芥川賞を取った小説を今さながら買い求め読んでいるが

その中でも心に残った作品のいくつかの一つだ

アパートの追い出しをかけに訪れた部屋で居残る住人と追い出す側の主人公・・・

ほんの半日の物語だ・・・

空っぽになったときに本当に見えるのが「心の花・・・・」

もちろん自分自身が空っぽの奥深い境地など垣間見えないだろうけど

そこまでにいく心象風景・・・

自分の一言が恋人を死なせた考える主人公・・・・

素晴らしい作品だと思います
花腐しAmazon書評・レビュー:花腐しより
4062103796
No.5:
(5pt)

小説は空間芸術である。

三浦雅士が松浦寿輝にとっては、「小説は時間芸術でなく空間芸術でなければならない」と云っている。
時間芸術の小説を体が受け付けなくなって久しいが、成程これは抵抗なく読める。
それは、過去・現在・未来という通俗的時間の流れでなくて、謂わば過去、現在、未来は「今」に蝟集している空間である。
人類は、人工の時間より遥かな時間をそのように過ごしてきたはずだ。分節しない世界で。

花腐しAmazon書評・レビュー:花腐しより
4062103796
No.4:
(5pt)

松浦テイスト

この作者の世界はけだるく沈みがちであり、くぐもった心象にエロスがたちこめている。
 どうにもならない人生、悔やみが積もってゆく時間。そういうのを書くのが得意な詩人であり小説家なのだ。当人は東大教授のエリートだが、内面では破れ寂れた言葉世界を抱いているのだろうか。
 吉田健一や吉岡実の影響も指摘される。イメージと情緒豊かでかつ退廃的でずるずる続いてゆくところが似ているかもしれない。
 世界の中の確固とした行動が拮抗するというような、小説の力とはまた違う。やはり小説を書いていても詩人なのか、したたるようなけだるさ、あやしげなゆるやかさが感じられる。
花腐しAmazon書評・レビュー:花腐しより
4062103796
No.3:
(4pt)

人生の途中で“彳(たたず)む”小説

「ひたひたと」「花腐し」の二編が収められている。二編に共通して出てくる象徴的な言葉「彳(たたず)む」。松浦寿輝の小説は、人生の途中で“彳(たたず)む”小説である。「ひたひたと」で主人公はこんなふうに語る。「時間っていうのね、流れないんです。~残留している。人間の記憶なんていうものはね、その場に現にあるもののことなの。思い出じゃないんだ。イメージでもない」。つまり、過去も現在も「全部いちどきに今ここにいる」。日常の忙しさにかまけているとそれに気が付かない。でも、人生のある瞬間、過去への回路がいきなり開けることがあるものだ。ずっと親友だと思っていたあの男のことを実は出遭った時から憎んでいたこと、そしてあの男も自分のことを憎んでいたのだろうという確信。今はもうここには存在しない女が、想えば何時のときも自分を赦してくれていた、それなのに自分はいつもその女を傷つけていた、という悔恨。
 「ひたひたと」の“とまれみよ”、あるいは「花腐し」の“フリダシニモドル”。そんな人生を“彳(たたず)む”べき時のサインに人は果たして気付けるかどうか?松浦寿輝の小説、それ自体も、そんなサインのひとつのような気がする。
花腐しAmazon書評・レビュー:花腐しより
4062103796
No.2:
(4pt)

人生の途中で“彳(たたず)む”小説

「ひたひたと」「花腐し」の二編が収められている。二編に共通して出てくる象徴的な言葉「彳(たたず)む」。松浦寿輝の小説は、人生の途中で“彳(たたず)む”小説である。「ひたひたと」で主人公はこんなふうに語る。「時間っていうのね、流れないんです。~残留している。人間の記憶なんていうものはね、その場に現にあるもののことなの。思い出じゃないんだ。イメージでもない」。つまり、過去も現在も「全部いちどきに今ここにいる」。日常の忙しさにかまけているとそれに気が付かない。でも、人生のある瞬間、過去への回路がいきなり開けることがあるものだ。ずっと親友だと思っていたあの男のことを実は出遭った時から憎んでいたこと、そしてあの男も自分のことを憎んでいたのだろうという確信。今はもうここには存在しない女が、想えば何時のときも自分を赦してくれていた、それなのに自分はいつもその女を傷つけていた、という悔恨。
 「ひたひたと」の“とまれみよ”、あるいは「花腐し」の“フリダシニモドル”。そんな人生を“彳(たたず)む”べき時のサインに人は果たして気付けるかどうか?松浦寿輝の小説、それ自体も、そんなサインのひとつのような気がする。
花腐しAmazon書評・レビュー:花腐しより
4062103796
No.1:
(4pt)

文学の香り高いが

芥川賞受賞の表題作は、若い頃に亡くした同棲していた女性の面影を長く引きずっている中年男が主人公だ。経営するデザイン事務所が倒産寸前となり、莫大な借金を抱えて人生にも行き詰まろうとしている男は、大久保のマンションに居座る男の立ち退きのを迫るように借金主から頼まれる。居座っている男は、幻覚を生むキノコを部屋で栽培している風変わりな男だが、立ち退きを迫るはずの主人公とこの部屋の主は妙に息投合してしまう。人生の下り坂にかかった二人の男、その男の栽培するキノコの幻覚に取り付かれた若い女性といった登場人物に作家は、自らの人生観を語らせる。作者は詩人であり、本編は小説とはいうものの話の筋立てより、登場人物達の心象の描写がメインだ。共感を呼ぶ部分も多いものの!、いささか冗長でパターン化された心象風景という印象を受けてしまうのは何故だろうか。やはり、この手の日本的な文学としての小説は、難しいということだろうか。表題は万葉集にある「卯の花、腐(くた)し」からとられたものだ。長雨の中で卯の花は腐っていくことを歌ったものだが、やはり生きながらにして腐っていくという感覚に対する陶酔はやはり詩人ならではのものだろう。腐るという感覚の中に、この主人公の過去の風景が混濁していく。それは、同棲相手の女性とのささいな思い出であったり、幼い日の心象風景であったりと、正に詩人的な感覚で語られる。
花腐しAmazon書評・レビュー:花腐しより
4062103796

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