ブエノスアイレス午前零時
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「ブエノスアイレス午前零時」とは,いやにしゃれたタイトルだなと思ったら曲名だったのですね。てっきり南米のブエノスアイレスで午前零時に何かが起きるのかなと想像していました。ブエノスアイレスはいいとして,「午前零時」の意味が作中で説き明かされるのかと思いきや全く出てきません。音楽,中でもタンゴなどの知識がない人にとっては,何これと思ったことでしょう。わたしもそうでした。作品中にカタカナが出てくるたびにネットで検索しました。特に後半は,カタカナ言葉のオンバレードです。もしこのカタカナ言葉を抜いてしまったら,この作品はスカスカではなかったかと思いました。一般の読者は,南米の曲やダンスなどについてそんなに詳しくはないでしょう。カタカナ言葉が出てくるたびにイライラして煙に巻かれたような感覚を持ちました。また,あともう一つ登場人物のミツコは痴呆として描かれています。痴呆という言い方は,今では認知症と置き換えられます。ミツコは,物忘れや現実と空想とがごっちゃになっているところが描かれています。この作品はミツコの言動とそれに対するカザマの応答が作品の基軸になっています。ミツコの言動にわたしたち読者はだれも反論できません。触れられません。ただ,近くから見ているだけです。なぜなら痴呆という特質からの言動ですからどうしようもありません。書いてあるとおり「ああそうなんですね」としか言いようがありません。作者は,敢えて痴呆の人を登場させることによって読者に文句を言わせないように仕組んだのでしょうか。 | ||||
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雪深い山中の温泉宿で働く男と認知症の老女のお話。芥川賞選考委員の評価は高かったが僕の読解力では難しかった。表題作と併録されている『屋上』も、日常に倦んだひねくれた男が主人公なので、そこに入り込めれば面白いかもしれない。 | ||||
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雪深い温泉宿で働く、都会から故郷に戻ってきた男・カザマ。鬱屈したものを抱えながら、毎日同じルーティーンを繰り返す。 その中で、都会の空気をまとってやってくるダンスサークルの、熟年の男女。本来なら未練の残る都会の雰囲気を感じることができるはずなのに、男は嫌悪しか感じない。その象徴が盲目の老女・ミツコ。震えるほどの嫌悪を感じながら、カザマはダンスに誘う。旅館のスタッフだから、というだけではないのだが。 「ブエノスアイレス午前零時」というピアソラの曲が、カザマが感じる閉塞感をさらに助長する。さすがは芥川賞受賞作。 | ||||
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全体的に書き過ぎということがなく、極めて抑制の効いた、乾いた文体で書かれている。特に 屋上 という小説は、作者が意図的に語り手の名前や具体的な来歴を全く書かない。個人的には好きな書き方だった。書かれていない部分について、少し考えたり。そういう楽しみがある。 藤沢さんは わざと書かない。 良くも悪くも 表層の戯れ というものが流行っていた頃の小説である。 | ||||
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第 119 回芥川賞受賞作。 雪深い農村の温泉旅館を舞台に、従業員のカザマと、そこを訪れた盲目の老女ミツコのささやかな交流を描いた作品。痴呆が進んだミツコは、自身の華やかなりし頃、ブエノスアイレスで暮らした往時にいる。旅館のダンスホールで、カザマはミツコとタンゴを踊りながらブエノスアイレスの夢幻を垣間見る ... と簡単にまとめてしまうとこういうお話し。 Uターンで故郷に戻ったカザマは、ひなびた旅館に職を求めた。宿泊客の社交ダンスの相手を務めることに辟易としながらも、殊更不平不満を表すこともせず、淡々と日々を過ごしている。周囲の人々とはどこか冷めた距離感だ。そんなカザマが、横浜で娼婦をしていた70過ぎの老女の手をとりダンスに誘う。 従業員だからでも、同情しているからでもない。その理由は語られないが、東京の広告代理店で働いていたカザマは、今の日常に閉塞感を抱いていたのだろう。カザマの日課である温泉卵づくりにそんな鬱屈した思いが凝縮されているように思える。輝いていた頃に思いを馳せているミツコに、カザマが自身を重ねわせているのかもしれない。 そこはかとない哀しさと美しさを感じる作品である。 | ||||
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