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虐殺器官



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虐殺器官の評価: 4.03/5点 レビュー 369件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.03pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全43件 41~43 3/3ページ
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No.3:
(3pt)

羽ばたくジャンボ?

虐殺器官である。機関ではない。
このタイトルの音から来る印象のせいか、当初国際的な殺人組織が暗躍するスパイものかなと思ったが、そうではない。虐殺する器官とは何か?目や鼻、胃や腸の如きが虐殺するとはどういうことか?この奇妙なタイトルが、文字通り物語の最大のテーマとなる。

“見てきたようなウソをつく”
司馬遼太郎氏に言わせれば、時代小説家の本分らしいが、これがSF作家となればどうなるだろう?“あり得るようなウソをつく”?どちらにしてもSF(サイエンスフィクション:科学的ウソ)という言葉自体、矛盾が含まれているのに、それをこのように遠大な小説に仕立てるというのは、相当な労力だっただろう。SF作家は、現況の最先端テクノロジーの延長としていろんな小道具を考案するが、その場合ある程度の説明義務が生じる。例えば“料理を加熱する”という場合、一般的な小説ならば、文字通りそのままの表現か、或いは“レンジでチンする”などでいいかもしれない。しかしこれがSF的表現となると、“マイクロ波で食材内部の分子を加速させる事により、火を使わずに加熱する装置”という長ったらしいものになる。それは単に道具のメカニズムに留まらす、社会システムや衣食住を含む我々の日常すべてにわたる。このような説明は物語の進行の緊迫感を殺ぎ、読者を興醒めさせてしまう恐れがある。クラークやアシモフなどの巨匠ならば、SF的とはかくなるモノかと納得してしまうだろうが、こちらはそういう手合いではない。事実僕は、この作品中のカタカナ語に対するカタカナのルビにはウンザリしてしまったが、熱心なSF読者ならこれが作者の最小限の説明なのだと、ピンときたかもしれない。

しかしながら、僕にとっては瑕疵ともいえるこれらを差し引いても、余りある魅力がこの作品にはある。それは精緻な状況設定だ。高度に情報管理された社会。それは9.11以降、もう一つの惨事を経た未来社会が、テロ対策のために選択したシステムだ。同じ情報管理された社会を描いた「1984」とはモチーフが基本的に違う。さらに民間軍事請負業者、途上国の現状の先にあるさまざまな紛争と虐殺、幼年兵という概念。これらが圧倒的なリアリティーでもってこちらに迫って来て、否応なく読者の首根っこを結末まで引っ張っていく。

だがしかし、僕のような年齢の者にとってはどうしても受け容れられない記述がある。ヒロシマの神話の崩壊という表現だ。作者はこれを”制御可能になった核”というふうに言い直したが、僕はそうじゃないと思う。ヒロシマ、ナガサキの被爆を、”神聖にして侵しがたいが遥か昔の絵空事”のように扱っているようだ。そしてあろうことか、ボスニアの美しい都市を消滅させてしまったことだ。これが遥か未来の荒唐無稽なお話ならまだ許せるだろう。しかしながら前述の通り、この卓越した想像力から描き出された近未来は、恐ろしくリアルなのだ。ウソは巧妙なほど罪深い。小松氏の選に漏れたのも、ひょっとするとこのあたりに理由があったのかもしれない。

どちらにしても、めったに読むことのないジャンルだけに、新鮮な読書器官、じゃなくて読書期間だった。ただどうしても理解できないのは、筋肉質のジャンボジェットだ。鋼鉄の航空機が羽ばたくとは、どうしてもイメージできない。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)Amazon書評・レビュー:虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.2:
(3pt)

面白いとは思いますが…

SF素人の意見です。
タイトルにある「虐殺器官」とは何かという発想は斬新で面白いと思いました。
さらに、なぞの男をめぐる追跡劇は緊迫感があってよかったです。
しかし、ドラマが若干しょぼい。
SFをガッツリ読む人には面白い世界観や小道具があって、飽きさせないのかもしれません。しかし、SF素人が読むとその面白さはあまり感じないので、やや飽きます。全体の展開も、場面がよく変わる割に話の進行は漫然としていて、それほど上手いとは感じませんでした。また、章毎の繋がりにかけるという面も見逃せません。
単純に小説の面白さだけを抽出した場合、評価はまあ普通といったところでしょうか。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)Amazon書評・レビュー:虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.1:
(3pt)

自分は価値がわかっていない?

文庫化されるまで待ってみたけど・・・

ミイラ取りがミイラになる話。
そんな感想しか出てこないのだが、これは自分が全く内容を読めてないってことなのだろうか。

世界各地で発生する民族虐殺の原因が一人のアメリカ人であり、彼を暗殺する役目を受けた諜報機関員が語り手で、彼から見た景色が次第に真実を明らかにしていく、といったストーリー。
結局はテロの被害者であった人間が、言語によって、人の脳内に存在する破滅衝動を解放させる方法を見つけ出し、それを使用することで、自分と同様テロによって同じ想いを味わう被害者を出さない為に、あくまで自衛を目的として、将来的にテロリストを生み出す土壌をもった新興国を内戦状態に導き、自国(アメリカ)を守ることが目的であった・・・という、普通の話に収束していたので、逆にあっけに取られた。
よ〜く読めば、世界の守護者を自ら任じるアメリカの現実世界と重なる矛盾した行動に作者の皮肉な感覚を感じることもできる。

確かに面白いし、読みやすいし、一機に通して読み終えた。
だけど日本SF大賞受賞作で、このSFを読め!の2008年度第1位という前評判から、どんなに凄い物語だろうと、少々身構えて読み始めたのが、肩透かしを食らった気分である。

だからこそ、自分は、この作品の価値が全然わかっていないのか?という恐れのような感情が湧き出てしまった。

なかなかに自分を悩ませる一冊だったな。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)Amazon書評・レビュー:虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841

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