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最後の審判



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最後の審判の評価: 4.33/5点 レビュー 9件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.33pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

キャロライン・マスターズ“自身”の物語

本書は、著者の法廷サスペンス三部作の完結編とされている。前々作『罪の段階』では判事を、前作『子供の眼』では弁護士をつとめたキャロライン・マスターズが今回は主人公として3度目の登場をしているからである。
しかし前の2作とは趣が異なり、本書はじっくり読ませる“キャロライン自身”の物語になっている。またまた文庫上・下分冊の大作である。

大詰めの法廷場面で、証人たちに対して、次々と検察側の主張を覆し、論破してゆくキャロラインの見事な手腕もスリリングに描かれてはいるが、それも本書全体の4分の1ほどの部分を占めるにとどまり、全編にわたって読み応えのある“ひとりの女の物語”が展開するのである。

20年にわたり、野心に燃えてひた走ってきたキャロラインは45才。ついに大統領から合衆国控訴裁判所判事に指名される。そんな時、父からの電話で故郷のニューイングランドの町に呼ばれる。22才になる姪のブレットが殺人事件に巻き込まれたのだ。彼女はある夏の夜、マリファナとワインによる前後不覚の酩酊状態で、血まみれのナイフを持って体じゅうに血しぶきを浴びて全裸で保護される。湖畔には喉をかき切られて殺された恋人の死体が・・。状況は明らかにブレットの犯行を示していた。
キャロラインはブレットを弁護するべく、23年ぶりに帰郷する。

<現在>の殺人事件についての記述や予審法廷の場面と交錯して、キャロラインの、母を失った13才の夏と、恋人を失った22才の夏。ふたつの<過去>がふり返られており、傷ついて、2度と戻るまいと誓って故郷を後にする若き日の彼女の姿が痛々しいまでに伝わってくる。終盤で<現在>の事件の真相とキャロラインの<過去>の秘密が明らかになるが、それらはいずれも家族の愛憎が絡む悲劇的な哀愁が漂い、私はトマス・H・クックの『記憶』シリーズの各作品を想いおこした。

前の2作がカットバック式の三人称多視点で書かれ、スピーディーな展開で読み始めたらやめられない(ページターナーと呼ばれる)法廷エンターテインメントに徹しているのに対して、本書はキャロラインを中心に据えた三人称一視点が貫かれ、そのぶん文学的な深みを醸し出している。
本書は、家族が関わる殺人事件とその公判をきっかけとしてキャロラインという“ひとりの女”をドラマチックに描ききった傑作である。

最後の審判〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:最後の審判〈上〉 (新潮文庫)より
4102160175
No.1:
(3pt)

現代女性

作者は主人公でない登場人物を次回作の主人公にして、さまざまなキャラクターの主人公で作品作りを継続していっていることには「うまい」と思う。特に、処女作の「ラスコの死角」の主人公のアナーキー的で醒めたクールガイはベトナム戦争後期の精神的に熱中できず、何に対しても突き放した態度をとる当時のアメリカ国民の雰囲気が嗅ぎ分けられる。ただ、懐かしんで読むうちはいいが、現実に生きている人物像としてはインパクトは薄く、受け入れ難い印象を強く持った。作者は、その後の社会風俗の変化に伴い、主人公を変え、「うまく」表現してきている。
最後の審判の主人公は、田舎都市のイスタブリッシュメントがアメリカ人らしく激しい恋をし、悲劇をむかえ、作者の近時のテーマである過去の体験に大きく影響されながら目の前の刑事事件に対処していく、そしてその解決として、犯罪者は自殺するという内容であり、それなりに楽しめた。主人公の心的描写は作品ごとに深くなり、スコット=トゥローのように純文学思考に偏ってきているのではないだろうか。1読者の個人的意見を言わせてもらえば、もっと法廷での戦術上の駆け引きを重点的にストーリー展開してもらえるともっとこの作者を好きになります。
最後の審判〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:最後の審判〈上〉 (新潮文庫)より
4102160175

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