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人間の証明
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人間の証明の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.49pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全80件 41~60 3/4ページ
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黒人刺殺事件と失踪事件が直接繋がるわけではなかったり、 終盤の展開はいくらなんでもやりすぎだろうと不満がないわけではないが、 そういった点を吹き飛ばすほどの人間ドラマはまさに圧巻的 瀕死の重傷を負いながらもホテルの屋上を目指した男の理由、そしてラストの犯人とのやりとりは 心に迫ってくるものがあった ただああいう展開にしたかったのなら、二人目の殺人はいらなかった気がしないでもない まあ、それでもこの作品は社会派ミステリを代表するレベルといってもおかしくはない一冊だろう | ||||
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昭和52年、東京の高層ビルの展望レストランで一人の黒人ジョニー・ヘイワードが殺された。彼が残した言葉「ストウハ」と「キスミー」。そこから棟居刑事は西條八十の詩になぞらえた悲劇的な事件を紐解いていく。 ジョー山中が亡くなったのをきっかけに読了。 このストーリーの登場人物は追われるものも追うものも、誰もが家族や昭和という時代の被害者だ。 そういうものに対する憎悪やそれでも家族や人間を信じたいという葛藤の中でそれぞれの登場人物が動いていく。 いくつかの事件が並行して進んでいき、それはそれで面白いが、全ては棟居刑事が容疑者八杉恭子の人間性に賭けるというラストの為の壮大な布石の様に思えた。 棟居刑事のあの有名な「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね...」の詩の朗読。それに応えて落ちる八杉が語る真相。ジョニーが刺された場所から高層ホテルまで向かった本当の理由...。このラストシーンをipodで購入した「人間の証明のテーマ」を聞きながら読んだ私は、職場の休憩時間なのに号泣した。。。 人の醜さ、憎悪、そしてその中に隠れながらも小さく光っている愛、人を信じる心を描いた昭和の最高傑作。 映画も原作も文句なく素晴らしい。 | ||||
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森村誠一さんの他の本は読んだことは無くどうも堅いイメージが あり気後れしていたのですが、この本は読んで良かった…! 読者を飽きさせないストーリーの構成力、意外?にも富んだ美しい情景描写、 そして何よりこの作品に対しての作者の並々ならぬ情熱を感じます。 タイトル通りの「人としてなんたるか」の作者の筋の通ったまっすぐな思いに読後、爽快感さえ感じました。いいお話でした。 私は子供の頃この映画のCMをいやというほど見た世代ですが、 同じ世代で未読の方にぜひ読んで欲しいです。 | ||||
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すべては自分本位、そして欲によって起こされること… ちなみにこの事件の一部に関しては 棟居警部にも関連があります。 ただし、よく読んでいないとその驚くべく事実は 逃してしまうので、お気をつけて。 すべては一人の自己保身から始まったのです。 それがなければ、すべての事件も起こらなかったのです。 そしていたずらに人も殺されることもなかったのです。 ですが、事件は起こってしまいました。 そこには多くの涙も流されました… 特にある人の死の真相は あまりに読む人に重い影を落とすでしょう。 もしもその人に優しささえあれば、 その栄誉に寄りかかることを拒否をする意思があれば… でも残念なことに人弱いもの。 楽なほうへと流れてしまうものです。 ただし、この作品の結末は あまりにも強すぎましたね。 最後の数行のそれと相成って。 暗いお話です。 人の醜さを否が応でも 見せ付けられるので読む際には覚悟の程を。 | ||||
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文学と映像の融和への挑戦。今では当たり前だが当時は斬新であった。当時の角川氏が、いかに先見の明があったかを端的に示すあとがきに感激した。大衆を仕掛けに嵌める男の力技、色気、閃きというものはこういうものなのだ。日本がバブルに突入しようとしていた輝いていた時代の話。帽子、熊、詩集、と謎解きのアイテム、点と点が線につながり、事件解決に導かれる。印象的な帽子の形をしたホテルとは、かつてのホテルニュージャパンを想定していたのだろう。今はもうない。今、その面影を求めるのであればニューオータニだろう。裏の紀尾井ホール側に小さな公園があるのを思い出し、イメージに近いなと想像した。当時、大人はまだ戦争の記憶を引きずっていた。戦争の苦しみを忘れるために、経済成長の延長線上に幸福があると信じていた。そういう時代はもう終わった。最後、各々の登場人物は、過去を思い出しながら人としての良心を取り戻す。殺される2人の外国人。一人は母親に殺され、もう一人はニューヨークで理不尽に殺される。ただ、2人が人生の幕引きを自分で悟りながら相手を恨むでもなく死んでいく描写に、この小説の斬新さがあったのだろう。この時代の人たちは自分の気持ちに素直だ。シラを切ってもウソはつかない。インターネットの情報の薄さに慣れきった今の若い人にこそ読んでもらいたい。文化を切り開く人間の想いと情熱。多くの人に愛された小説は、軽快な中にも骨太の精神が宿っている。文化は作り手のみならず、読み手も一緒に育てていくものだ。今でも充分に耐えうる読んで楽しい一流のエンターテイメントである。 | ||||
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ストーリー展開に引き込まれました。 人と人のつながりを考えさせられ、切なさも残るストーリーでしたが良かったです。 これをきっかけに森村作品をいくつかまとめ買いしてしまいました。 | ||||
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母子の愛情、人の欲望、主人公の過去等、見どころはたくさんあります 最後にそれらがパズルのピースがはまるように話が繋がっていく様はすばらしいの一言です。 ストーリーは基本的に静かに進んでいくのでしんみりと読みたい方にオススメです。 | ||||
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角川文庫というひとつのブランドが昔あり、読んだ。こどもにとっては非常に分厚い内容であったが、沖縄問題からニューヨークと場面展開が広がり、かなりかっこいい小説であった。推理小説のような展開もまたよし。その後、映画を見る。なかなかよくできている。 小説としての完成度の高さがあり、想像や跳びこまれた運転手の言い草など、映画では表せない細かい描写がある。映画の原作本をよく事が多くなったが、いかに映画は時間の制約があるため止むをえないが、端折ってストーリーを展開させるという感じが否めない。小説の手法、読み方もなんとなくこの本から学んだように思う。子供は童話や漫画から影響を受け、おとぎ話で話が展開することを楽しんでいたが、初めて現実の社会は面白いと感じさせてくれた。 | ||||
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1970年代の小説なので、いろいろ今とは違う。けれどこの時代の小説やサスペンスって本当にレベルが高かったのでは?と思わせる作品。 まだ戦争や貧困の記憶がいろいろな人に残っている時代だからだろうか。 意味の解らないものではなく、情緒も心の深淵もつたわるが、それを比較的ドライな筆調で進めていくのが、森村誠一のいいところだと思う。 今まで読んできた小説の多くが、くどいけれど、伝わってくるものは少ない作品が多かったことに気づかされた。 テーマも良い。素晴らしい作品だった。 | ||||
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この本を読むのに遅すぎることはありません。むしろ年を取ってから読むことをおすすめします。なんの情報も入れなく読むのがいいですね。読む前には、よくあるお涙頂戴モノだろうと思ってましたが、違いました。いや泣きますが、これはそんな読者を見下した小説じゃありません。感動させようとして書いたのでは感動しません。一つ一つの言葉が良心をついてくる作品です。いい本とは読み終わったあとに良心が癒されるものだと思います。※著者があとがきで同時テロのことに言及していたので調べてみたら、まだご存命なんですね。(2010年5月30日現在) | ||||
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私が子供の頃に、映画が上映されていますが、残念ながら映画は見ていません。 映画になったことや、森村誠一があまりにも有名であることなどから、逆に私自身がこの小説を避けていた嫌いがあります。 今回たまたま本屋で手にとって読んでみたのですが、「意外に良かった」というのが率直なところです。 理由は2点。 ・登場人物同士が絡み合う背景(若干、「無理やりじゃないか」と感じる部分もありましたが) ・タイトルの「人間の証明」が、一人ではなく色々な人物に関わってくること この小説が書かれてから相当な年月が経っていますので、現代のミステリーに慣れた人には「物足りない」と感じられるかもしれません。 私も多少の物足りなさを感じました。 しかし、その物足りなさ以上の読後感を抱かせる作品だと思います。 悪魔の飽食 新版―日本細菌戦部隊の恐怖の実像! (角川文庫 も 3-11) こちらもオススメ | ||||
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私がこの小説の映画化作品を見たのは小学生、あまり子供に見せたくないと言った母でしたが私は話に引き込まれていきました。 小説を読んだのは中学生の頃。 いまだ昭和の当時、この小説の中の人物の犯した罪をやりきれず、胸がかきむしられる、そんな感覚が私の中にさえありました。 純粋に母を求めた薄幸な青年の気持ちを痛いほど感じながら。 平成になってから見たドラマはなんと薄っぺらい、平成の世にはもう失われてしまったのか、あの小説や映画の中に漂っていた、誰の背中にもずっしりの乗っていたはずのあの重さは・・・と唖然としたものです。 己の過去が露になる事を怖れて息子の命をもみ消した母と、母への思いをこめた詩集を手に、母に殺害された息子。 事件の因縁が、人間の深い愛を浮かび上がらせます。 もうこの感覚は今の世の中ではじかに感じることが出来なくなったのでしょうか。 映画の中にも外にもあったはずの、あの当たり前の愛情と憎悪がこんなにも濃く、獣性すら感じさせてしまうようになったとは・・・。 | ||||
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1977年、本作が上梓され、まもなく角川映画のブロックバスターの担い手として 連日、ジョー山中氏の主題歌とともにCMがオンエアーされた事を思い出します。 確かに、当時も角川映画への毀誉褒貶は色々取り沙汰されはしました。 しかし、今までのエンタメにはないパワーは感じてましたね。 私にとって本作は、文庫本それも推理小説というジャンルを初めて手に取った 一冊でした。 物語は1人の黒人青年が、東京のホテルで謎の死を遂げるところから始まります。 それを発端にジグソーパズルのように複数の場所で事件や人間模様が交錯します。 前半は少々消化不良な展開もありましたが、やはり“霧積”のくだりは 情緒豊かに、森村氏のペンも冴えて来るのがわかります。 スカイラウンジのあるホテルでの殺人事件と鄙びた山間の温泉宿のコントラストが 見事に物語に余韻をのこします。 登場人物ひとりひとりの過去と人としての証・・・。 巻を覆うころには、不思議とそれぞれの人間模様が違和感なく受け入れられました。 雄渾な筆致でしたね。 漢字の特に固有名詞に英語のルビがふられているのも 当時、まぶしく思った記憶があります。 何年かに一度必ず読みたくなる一冊です。 | ||||
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角川映画第2弾として、昼夜TVスポットで宣伝されていた頃、 中学生ながらこの書を読んでいた。 今改めて精読すると、やはり小説としての面白さに満ちている。 心理描写、旅先での感傷等、作者の初期作品にある 「反社会的なセンチメンタリズム」に彩られ、現代では日本の状況と なってしまったニューヨーク・ハーレムの哀感などは 独りよがりのハードボイルドには無い、作者の力量が感じられる。 ただ、評価した上で改めて感じたことがある。 まず、松本清張との相似点。単純比較はできないが、「砂の器」 「ゼロの焦点」とは物語の枠組みが似ている。 また、棟据のイメージがどうにもつかみどころがない。 映画の松田優作でも、TVの林隆三、竹之内豊でもない、 なにか粗暴な狼のようなところが話の面白さの中に入り込んでいない。 でも、再読に値する小説であることは保証する。 | ||||
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私が若いころは横溝正史氏の小説に入り込んでました。その横で,従姉妹が森村誠一氏の小説を読んでたわけですが。そのころは全然関心がなく,今になって「人間の証明」を手に取りました。読んでみて,数十年前が舞台であるにもかかわらず,新鮮な感覚にひたり,そして吸い込まれるように小説の中に入っていきました。人間描写も鋭く,共感する面も多々ありました。人間の性,,でしょうか。人の一番恥ずかしい人間性を中心になって描写している点は今もなお感銘できるところではないでしょうか。数十年前であろうと,数万年前であろうと,「人間の証明」で書かれてる「人間」は今もなお存在し,そんな人間がいる事に苦悩する人もいるわけですから。実際事件にもなってます。 人間性を軸に,母と子、家族,男女の性……この小説というこの枠で膨大な内容を書かれてる事自体に脱帽です。そして日本だけではなく,アメリカにも及ぶこの小説にまたまたインパクトを感じてました。 久しぶりに感動のひたった本の一つです。 | ||||
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「母さん僕のあの帽子どうしたんでしせうね?」で始まる母と子のひと夏の思い出。作者が学生時代に訪れた霧積温泉の旅館で貰ったお弁当の包み紙に印刷されていた西条八十の詩を題材に書き上げた作品。 その詩があまりにも素朴で情景を思い浮かび上がらせる内容である為に、より一層悲しい結末になっている。 この小説に描かれる少年は優しい母との思い出がかけがえのない宝物であり、その宝石を胸に時代の移ろいを理解しながら死んでいく。刑事が真相を突き止め、犯人の自白よって真相が明らかになるという今では古典的とも言える小説の展開であるが、一世風靡した森村誠一の正統的な一押し作品である。 | ||||
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1977年の本書初版発刊後も、著者はおびただしい数の作品を世に問い続けている。 それらの作品で共通している事は、それぞれの作品には、描かれるテーマが明確であるという事だ。 近年の著者の作品は、犯人を追及するというより、社会派小説としての、壮大なスケールを呈しているものが多い。 本書では特に、人間臭さが巧みに盛り込まれている。 原点的な本書は、様々な人間模様が複雑に交錯して、盛りだくさんの内容だ。 本書では、物語が、日本とニューヨークの間を往復するのも面白いし、 ニューヨーク警察のケンの様な骨のある刑事の振舞いも見物だ。 感慨にふけると、現在も著者の作品中で活躍する棟居刑事は、歳をとらない。 本書が著かれてから、およそ30年を経た現在でも、棟居刑事は30代のままだ。 現在までの間に、棟居刑事の身の上には、色々な悲しい出来事があったが、さらに凄味が加わっている。 最近の著者の世界は、時代小説や大河小説にも、バリエーションが広がる。 それでも、著者の作品に付きまとう人間臭さは、本書と同様だ。 企業小説的作品ですら、人間臭さが見え隠れする。 つまり本書は、著者の作品全体が持つ「人間臭さ」を証明していると言える。 ひいては、本書は「森村誠一の証明」と改題する事すら可能だ。 | ||||
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1977年の本書初版発刊後も、著者はおびただしい数の作品を世に問い続けている。 それらの作品で共通している事は、それぞれの作品には、描かれるテーマが明確であるという事だ。 近年の著者の作品は、犯人を追及するというより、社会派小説としての、壮大なスケールを呈しているものが多い。 本書では特に、人間臭さが巧みに盛り込まれている。 原点的な本書は、様々な人間模様が複雑に交錯して、盛りだくさんの内容だ。 本書では、物語が、日本とニューヨークの間を往復するのも面白いし、 ニューヨーク警察のケンの様な骨のある刑事の振舞いも見物だ。 感慨にふけると、現在も著者の作品中で活躍する棟居刑事は、歳をとらない。 本書が著かれてから、およそ30年を経た現在でも、棟居刑事は30代のままだ。 現在までの間に、棟居刑事の身の上には、色々な悲しい出来事があったが、さらに凄味が加わっている。 最近の著者の世界は、時代小説や大河小説にも、バリエーションが広がる。 それでも、著者の作品に付きまとう人間臭さは、本書と同様だ。 企業小説的作品ですら、人間臭さが見え隠れする。 つまり本書は、著者の作品全体が持つ「人間臭さ」を証明していると言える。 ひいては、本書は「森村誠一の証明」と改題する事すら可能だ。 | ||||
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「母さん 僕のあの帽子 どうしたでせうね・・・ママー ドウ ユー リメンバ〜♪」 70年代、角川書店のメディアミックス戦略にのり、現在までに770万部も売れた (売った)、作者の代表作。その後も何度か映画化やテレビドラマ化されている。 あまりに有名な作品なので、逆に読むのを敬遠していた。 読んでみると、物語の本筋には関係ない、単なる死体発見者のディティールを 詳細に記述していたりして、ああ、やはり森村氏の作品だなと、妙に安心してし まった。 人なら誰しも、せつなく心を揺さぶられる西条八十の詩をモチーフにする事に より、推理小説としての単なる謎解きに終わる事無く、深く人間性を追求した 作品となっている。逆に言えば、この詩が無ければ、この作品は成り立たない。 クライマックスの人間の証明をする部分では、容疑者に対し冷酷に西条八十の 詩を読んで聞かせる刑事の方こそ、人間では無いと思ってしまった。 確たる証拠を固められず、容疑者の情に訴えて自白を引き出すというのは、 警察の捜査としては邪道だろう。 それに、登場人物の人間関係も出来すぎている。 まあ、そんな事は気にせず、哀しくせつない物語を、じっくり味わうのが、この 作品の正しい読み方だろう。 「母さん 僕のあの帽子・・・」 うう、きたないよー、反則だよー、と思いつつも、この詩を使った作者の勝利だ。 | ||||
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大ベストセラーになったり映像化されたりした有名な小説は、今更なかなか読む気持ちに なれず、結局読まずじまいでそのままになってしまうことも多い。 この本も私にとっては、ずっとそんな存在だった。 先日「NHKその時歴史が動いた」で江戸川乱歩が取りあげられていた。その番組内で インタビューを受けていたのが森村誠一さんだった。インタビュアーの質問に対し、 的確にそして何より誠実に言葉を選んで語っているように感じ、その人柄と言葉を使う 作家としての居住まいに惹かれた。 そしてそれが本を手に取るきっかけとなった。小説の吸引力及び著者の魅力である。 「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」という西条八十の詩集を遺した黒人は、 一体誰に殺されたのか? 幼少時の経験から人間不信に陥った棟居刑事が事件を 担当し、子を思う母の人間性に賭けて事件を解決に導く。 棟居刑事が追う黒人殺人事件解明、妻をひき逃げされた夫が妻の不倫相手と協力して 進める犯人探し、逃げる犯人に家庭環境についての述懐、この三つを軸に物語は展開 していくが、妻、夫、母、父、子、また不倫相手といった様々な立場にある人間の心理や 本音が細やかに描かれており、単なる推理物でなく人間模様を描いた作品としてとても 深みがある。 被害者がスラム出身であったため、海外の社会事情や操作体勢も詳しく描かれており、 事件が明るみに出るにつれ、棟居のトラウマとなった事件にかかわる人物がわかったりと、 本筋を支えるエピソードも大衆小説の旨みを充分味わわせてくれる。 | ||||
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