腐蝕の構造
- 社会派推理小説 (19)
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森村誠一の主要な作品はだいたい読んだ気になっていたが、重要な一作をスルーしていた。1972年日本推理作家協会賞に輝いた本作『腐蝕の構造』である。 とはいえ長い小説なので「つまらなかったどうしよう」と躊躇したが、いざ読んでみると意外にすらすらと読めた。まあ長いのでそれなりに時間はかかるけれど、『野性の証明』のような退屈な長さではなかった。とても面白かった。 最初は雨村という男が主人公だと思って読んでいると、実は途中から出てくる久美子が主人公で、登場人物もエピソードもてんこ盛りだった。そのごった煮感は、映画ではなくテレビドラマ向きかもしれない。実際1977年にドラマ化されているようだ。 本格っぽさ少々、社会派っぽさ少々、でも結局は男と女のサスペンスロマンみたいな味わいは、いかにも高度成長期に書かれた昭和のミステリらしくて悪くないと思う。こういうのが嫌いじゃない人は楽しめるだろう。僕はけっこう堪能しました。 | ||||
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カップルの遭難死に端を発し、航空機事故や、原発問題や、企業の利権な、不可能殺人や、不倫が錯綜するてんこ盛りミステリ。 読み進めるうちに、どちらの方向へ連れていかれるのかわからくなってしまうという展開だ。少なからず偶然に左右されているので、あくまで物語的に愉しむべきだろう。 人の心のドロっとした部分をあからさまに描いているため、どんよりした雰囲気を漂わしてる。随所のラブラブシーンはいらないように思うが、発散した内容を一気にまとめ上げる力技は流石。クライマックスで盛り上がって、最後の一行で虚しさを感じたりする。【協推賞】 | ||||
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これは重厚な作品ですね。著者が社会派推理作家と言われる所以を作った作品で、読み応えが十分です。賞を取っただけのことは有ります。 著者は組織や団体等のグループを扱う作品が多いのですが、この作品ではそれよりも登場人物の姿や心情といったものを前面に出し、それに加えて山岳の背景をこれでもかという具合に描ききって、読者に読ませている筆力を感じます。 物語の時代背景はもう古いのですが、現代にも通ずる場面や事柄などを社会に訴えている感じがしますね。 著者の作品の中でも、スケールの大きな数少ない名作だと思います。 | ||||
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とても面白くどんどんほんの中に引き込まれました森村誠一のファンです | ||||
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1972年に刊行されました。1969年に「高層の死角」で江戸川乱歩賞を受賞した後、日本推理作家協会賞を受賞した作品です。読みどころは、なんと言っても現代その存在に国民の多くが疑問を持っている原子力発電に関する記述だと思います。濃縮ウラン製造の有意やメカニズム、又その研究に多くの科学者が鎬を削っている事、更に、それは核兵器に転用可能であり核兵器に使われるのではないかと言う危惧。 原子力発電所建設に於いては、その莫大な利権に群がる大企業や政治家達の私利私欲にまみれた姿を狡猾に否定的に書いています。更に核燃料ゴミを再利用して核燃料サイクルを確立する計画が立てられている事などを詳細に記述している処は、読み応えがあります。 半世紀も前に上記の様な利権が絡んでいた事を知ると、現在ではSTOPさせたくない存在の有る事を知ります。核廃棄物は“もんじゅ”によって再利用されるという空想のために電力会社の燃料として在庫の資産として処理されています。しかし、“もんじゅ”の計画が破綻した場合(もう破綻していると思う)それは資産上ただの産業廃棄物となってしまい、それを処分するための経費も算入しなければなりません。電力会社の決算書は、真っ赤に変わってしまいます。 本書刊行から半世紀近くを経た現在でも何も解決していない事を改めて知らされます。読後に思った事は、絶対に事故など起こしてほしくは無いと言う事でした。 本論は、そんなに難しい話ばかりではありませんが、数々のプロットで形成されていて素晴らしいものになっていると思います。先ず。航空機事故にからみ消息不明になった核技術者の夫の行方追う妻久美子の追跡行です。追えば追うほどに知らなかった夫の姿に気付き、久美子が懊悩する姿を森村氏は克明に書いていて、私も儚いものを感じてしまいました。 また核利権に絡む何者から久美子は脅迫され、身の安全まで脅かされてしまいます。ところが、ここでスーパーマンとも言える助っ人“大町”こと町田竜一が現れるのです。彼は、日に灼けた精悍な顔つきで体躯も良くガッシリし、女もてする姿でしたが、久美子の身の安全を守り、夫捜しの手伝いを申し出るのです。 大町こと町田は実に良い男で久美子を支えます。久美子もしだいに大町に惹かれていってしまうわけです。実際当時、森村誠一氏の事務所に大町(町田)宛に多くのファンレターが来たほどだったそうです。彼の正体はラストで明かされますので、是非!本書を読んで下さい。 本書は600頁にも及ぶ長編なので、あまり梗概に終始してもいけませんが、二人のこの後はサスペンス劇場なみに展開してゆきます。取り分け久美子から夫を奪った恋敵とも言える冬子は美貌の持ち主で、久美子は終始その存在を気にかけ悩み苦しむのですが、冬子は権力者の娘にも関わらず意外にふしだらな処があり本書の初めと終わりでは全く印象が異なってしまう処が作者の意図有りです。美女は二人要らないって事ではないでしょうか? 書きそびれそうになりましたが、もちろん森村氏十八番の高級ホテルも物語の設定の中に数々出てきてきます。デート、密会、官僚の徹夜資料の作成現場として等。その一つでは密室殺人事件が発生します、誰が関わった事件かは差し控えます。でも、これは残念ながら現在では必ずしも密室とは言えないかもしれません。森村氏の作なら通常は高層階で起こるはずですが、なぜか低層階で起こった事件で、このトリックは少し弱そうです。勿論、現在での話です。 日本推理作家協会賞を受賞した本書ですが、中身は推理小説であり、社会派小説であり、追跡行(冒険)あり、サスペンス、ラブロマンスありの多彩なジャンル含めた長編でした。世紀のベストセラーは、今でも全く色褪せていない事を感じました。 新しいものばかりでなく、こういった作品も是非読んで下さい。何故かと言うと本書が発行された時、私は中学生で正直言って理解出来なかったからです。原発の事などは、今は良く分かります、だから尚更です。歴史上の傑作です! | ||||
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