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監獄島



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監獄島の評価: 8.00/10点 レビュー 3件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

至高の超大作B級ミステリ

まるでジョン・ディクスン・カーが現代日本に蘇ったがごとく、21世紀の世において、あざといまでの古典的本格ミステリの魅力溢れる世界を展開する、シャルル・ベルトランシリーズ第二弾。
今回の舞台は題名の通り、巨大な監獄が建てられた孤島というクローズドサークル作品。
上下巻合わせて1000ページ超の大長編です。

名探偵として名高いパリ警察予審判事ベルトランは、脱出不可能と言われる孤島内の刑務所にて大きな陰謀が渦巻いているという内部告発を受け、調査チームを結成し島へと乗り込む。
そこにはかつてベルトランが逮捕した凶悪天才犯罪者ボールドウィンを初めとして、一筋縄ではいかない犯罪者たち、そして一筋縄ではいかない看守たちが待ち受けていた。
そしてそこでボールドウィンの脱獄騒動が起こったのを口切りに、次々と謎と驚愕に満ちた連続殺人事件が発生する……

前作の『双月城の惨劇』も「こういうのが好きなんだろ?」と言わんばかりのあざとさがたまらない作品でしたが、今作はそんな前作をさらにパワーアップ、ボリュームアップさせたような一作。
上下巻合わせて1400ページ近い、クローズドサークル作品としてはおそらく『人狼城』と『暗黒館』に次ぐぐらいの超大作なのですが、その長さに相応しいだけの密度とバラエティに富んだ中身で、決して間延び感や水増し感を感じさせない内容です。
この作品は作中で殺人事件が二桁近く起こります、死にまくりです。
しかしそれに加え、その殺人事件のほぼ全てにそれぞれ、密室や人間消失というなんらかの不可能状況が付随しているというとんでもない作品。
その結果作中で登場するトリックは細かく数えれば両手で数えても足りないのではというレベルです。
もっとも数は多くても、どれも「どこかで見たようなトリック」「使い古されたようなトリック」の流用感は否めないのですが、ここまでやられるともうそのチープさやお約束ささえも逆に魅力と感じてきます。

それだけたくさんの殺人劇とトリックだけでもお腹いっぱいになれるのですが、主人公と因縁のある天才犯罪者の脱走劇や、刑務所内の陰謀の謎、真相の二重三重のどんでん返しなどが用意されており本当に豪華な作品ですね。
2つ3つの作品にも出来たであろうプロット、ネタを惜しげもなくつぎ込んで一つの大作にしたことを何より評価したいと思います。
(ある意味2つ3つの6,7点の作品が合体することで9点の作品になったような感じでしょうか)

ただはっきり言ってこの作品はB級感プンプンです。
先述したトリックの流用感もそうですし、既存の作品のパクリかオマージュか……とギリギリに感じるラインのネタが多く感じました。
(その作品を実際に作中やあとがきで名前を挙げているのが「あくまでオマージュ、リスペクトですよ」と言い訳してるっぽい)

そして気になったのは、前作に比べて文章が下手になってないか?という点です。
前作はあえて、海外翻訳物のように淡白な雰囲気を出したような文章と感じたのですが、今作は書きなれていない新人のような文章と感じました。
特に気になるのは、特定の登場人物に対し「傲岸不遜な~」という表現が作中で10回以上は使われたのではないかと思える所で、実際、その人物が傲岸不遜なキャラであったのは事実ですが、ここまでしつこく書かれると、むしろ記述者キャラの方が性格が悪く思えてしまいます。
加えてそのように記述者はそのキャラに悪感情を持っているのですが、同時に「この時ばかりは彼に同意した~」という表現も作中に再三にわたり登場し、「いや、この時ばかりはこの時ばかりはって、お前この数日で何回こいつに同意してんだよ」と突っ込みたくなります。

というわけで総合すると、決して出来が悪いわけではないのですが、良くも悪くも本格ミステリのエンタメ要素に振り切ったチープなB級感漂う作品のため、気取ったミステリ通や、ミステリにミステリ以上の文学的価値を求めるようなお堅い読者には薦められないです。

人によっては「子供だまし」と断じたくなるような作品かもしれませんが、それでも私はこういうのが大好きです。


▼以下、ネタバレ感想

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マリオネットK
UIU36MHZ

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