■スポンサードリンク


そして、海の泡になる



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
そして、海の泡になる
そして、海の泡になる (朝日文庫)

そして、海の泡になるの評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

バブルに踊ったのは奴隷か、自由人か?

日本のバブル経済を象徴する女性として有名だった「尾上縫」の生き方を主題にした長編小説。関係者へのインタビューを中心にしたルポルタージュ的手法で書かれた物語だが、伝記でも人物記でもなく、時代に規定されて生きざるを得ない人間を描いた社会派ヒューマン・ドラマである。
大阪の料亭の女将ながらしばしば「神のお告げ」が的中したことにより多くの金融・投資関係者を魅了し、「北浜の天才相場師」と呼ばれた朝比奈ハル。バブルが崩壊すると破産、さらに詐欺罪で刑を受け獄中で死亡した。その服役中に同房になり、彼女の世話をしていた殺人犯・宇佐原陽菜が出所後、ハルから聞いた話と関係者へのインタビューで小説を書こうとするという証言小説の構成で綴られる物語は、ハルの人生が波瀾万丈、印象的なエピソードに彩られているため、それだけで面白い。しかし本作は、単なる正しい伝記を目的にしたものではなく、宇佐原陽菜がハルの生き方に自分を重ねてゆくことで「奴隷の自由か、自由人のろくでもない現実か」を追求する実験作でもある。
最後の方で謎解き、意外な真相が出てくるもののミステリーとしては平凡。バブル経済の時代とコロナ禍の時代を重ね合わせ、個人が自由であることとは何かを考えながら読むことが、本作の楽しみ方である。

iisan
927253Y1

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!