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シンパサイザー



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シンパサイザーの評価: 6.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(6pt)

全600ページの独白は、正直キツい

南ヴェトナムが崩壊した1975年に4歳で難民として渡米したヴェトナム系アメリカ人作家の長編デビュー作。MWA賞最優秀新人賞とピュリッツアー賞を受賞し、アメリカでは大ヒットした作品である。
主人公(最後まで、名前は出ない)は、フランス人宣教師がヴェトナム人メイドに生ませた私生児で、生まれた時から父親には認知されず、妾の子として迫害されながら育ち、南ヴェトナム秘密警察長官(将軍)に信頼される大尉として勤務し、駐ヴェトナムCIA局員からも可愛がられていた。1975年、サイゴン陥落を目前に、将軍たちはサイゴンを脱出し、アメリカへとわたる。難民として苦労しながら、将軍たちはCIAや米国保守派の助けを借りて南ヴェトナムへ侵攻する計画を進めていた。将軍の片腕として活動する主人公だったが、実はヴェトナム時代から南ヴェトナム秘密警察に潜り込んだ北ヴェトナムのスパイであり、今も親友で義兄弟の契りを結んだ北のハンドラーと連絡を取り合っていたのだった。しかも、義兄弟と誓い合ったもう一人の友人は、熱烈な反共主義者の南ヴェトナム軍人で、同じく将軍と一緒に行動しているのであった。
物語の中心は、スパイ活動と周辺の人々への愛情との亀裂をはじめ、西洋と東洋の血が流れる自身のアイデンティティの苦悩、祖国とアメリカ文化の対立、成功した革命が見せる変質への失望などなど、二つの精神のせめぎ合いと葛藤に置かれている。従って、いわゆるスパイ小説のスリリングさやサスペンスを期待していると裏切られる。言わば、ヴェトナム人の視点から描いたヴェトナム戦争小説である。
描かれている世界は複雑で、さまざまなエピソード、登場人物も魅力的なのだが、いかんせん全600ページ(文庫本2冊)がすべてが主人公の独白という構成が重苦しい。読み通すのに、かなりの気力と体力が必要だった。
スパイ小説を期待せず、現代アメリカ文学のヴェトナム戦争分野の異色作として読むことをオススメする。

iisan
927253Y1

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