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死者の心臓



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【この小説が収録されている参考書籍】
死者の心臓 (ハヤカワ文庫―ミステリアス・プレス文庫)

死者の心臓の評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

タイトルは仰々しいが雰囲気は実に和やか

今回の舞台はエジプト。とうとう出るべくして出た舞台だ。どういう経緯で彼の地へ行くことになったかといえば、今度はエジプト学研究所の宣伝用ビデオにナレーターとして出演するためにその撮影に同行することになったという物。いやあ学者というのは色んな仕事があるもんだね。確かにアメリカの、例えばディスカバリー・チャンネルとかで、そういった類いの学者が時に斜め45度の角度から自分の研究所でインタビューに答えていたり、あるいはアフリカのサバンナにある岩に斜めに腰掛けてカメラ目線でしたり顔で解説する光景をよく見かけますな。

閑話休題。
物語は例によって例の如く、エジプトを訪れたギデオンとジュリー夫妻がロケ地に向かうナイルクルーズ中にその研究所々長が殺され、そしてさらにその研究所の裏で古い人骨が見つかるという、正にギデオン行くところ、常に骨ありを地で行く内容(ま、これが売りなので仕方が無いが)。
今までもそうだったが今回は特に観光小説の色合いが濃く、事件発生までが本当に長い。作者はエジプトの風景とエジプト人の奇妙な慣習と考え方に筆を多く割いており、恐らくこれは現地取材成果した賜物だと思うが、そのため、事件の部分が後ろに押しやられていると云える。これは近年の作品も同様で、特に『密林の骨』などはこの傾向がさらに推し進められ、骨の鑑定は最後の方に少しだけ出てくるような始末である。したがって本書における事件はなにやら添え物のような感じであり、後半駆け足のように解決に向かう感じがしないでもない。
ただこのシリーズは核となるミステリとは全く関係のないこの外側の部分も非常に面白いので、退屈しない。逆にこのまま事件など起きなければいいのにとミステリ読みとしては矛盾した気持ちにまで陥ってしまう。特に今回はアメリカ人ギデオンから見たエジプト人の考え方などが非常にウィットに富んで(ちょっとした悪意も味付けされて)、語られて、それが非常に面白い。この辺の特殊な考え方は現在アジアの異国の地に住むと、あまり不思議でもなくなってきている。それも一理あるなぁと逆に感心するくらいだ。ただやはりこういう考え方、文化の違いがあるからこそ、人は異国へ旅立つのだなぁと思っている。

最後に恒例となったタイトルについて言及しておこう。本書の原題は“Dead Men’s Hearts”。なるほど直訳すれば『死者の心臓』となるのであながち嘘ではないが、本書には骨は出てきても心臓については全く出てこない。本書の内容から見てもここは『死者の心』と訳すのが妥当だろう。まあ、心臓の方がインパクトあるけどね。

Tetchy
WHOKS60S

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