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マーティ(人狼の四季)



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【この小説が収録されている参考書籍】
マーティ (学研ホラーノベルズ)
人狼の四季 (学研M文庫)

マーティ(人狼の四季)の評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

キングのお話と迫力あるイラストを楽しもう!

キングが怪奇コミックスの鬼才バーニ・ライトスンと組んで著したヴィジュアル・ホラーブック。
キングにしては珍しく、全編でたった200ページにも満たない。しかもその中にはふんだんにライトスンによるイラストが挟まれているため、文章の量もこれまでのキング作品では最少だ。

そんな試みで書かれた作品のモチーフは人狼。つまり狼男の物語だ。実にオーソドックスな題材である。
かつて『呪われた町』で吸血鬼を、お化け屋敷をモチーフに『シャイニング』をキングは書いたが、そのいずれもが上下巻の長編だったのに対し、人狼を扱った本書は上に書いた中編の部類に入る分量である。

物語も実にシンプルでメイン州の田舎町に突如現れた人狼による被害について月ごとに語られる。
鉄道の信号手、本屋の経営者、名も知らぬ流れ者、凧揚げに夢中になって犠牲となった11歳の少年、教会の掃除夫、食堂の主人、町の治安官、豚舎の豚、妻に暴力を振るう図書館員。毎月決まって満月の夜に惨劇は起きる。
その中で唯一の生存者が車椅子の少年マーティ。彼はおじから貰った爆竹で抵抗して命からがら逃げだすことに成功する。

1月から12月までの1年間を綴った人狼譚。キングにしてはシンプルな物語なのは話の内容よりもヴィジュアルで読ませることを意識したからだろうか。その推測を裏付けるかのようにバーニ・ライトスンはキングが文字で描いた物語を忠実に、そして迫力あるイラストによって再現している。
1月から12月まで、それぞれの月の町の風景と、人狼が関係する印象的なシーンを一枚絵で描いている。特に後者はキングが描く残虐シーンを遠慮なく描いており、背筋を寒からしめる。特に人狼の巨大さと獰猛さの再現性は素晴らしく、確かにこんな獣に襲われれば助かる術はないだろうと、納得させられるほどの迫力なのだ。

この小説で教訓があるとすれば、まず大人に対しては、子供の話にきちんと耳を傾けるべきであるということだろう。往々にして子供は大人が知らない世界を見ることが出来、そして真実を語ることがあることを忘れてはならない。

一方子供に対しては、大人に頼らず、子供には自分で始末を着けなければならない時があるということだろうか。人狼というまともに立ち向かえば勝ち目がない相手、つまり途方に暮れてしまうほどの困難に直面した時も知恵と勇気を使えば克服できる、既に少年はその能力を秘めているというメッセージが込められているともとれる。

小さな町に訪れた災厄を群像劇的に語り、そしてその始末を一介の、しかも車椅子に乗った障害を持つ少年が成す、実にキングらしい作品でありながら、決して饒舌ではなく、各月のエピソードを重ねた語り口は逆にキングらしからぬシンプルさでもある。そしてキングにしてはふんだんにイラストが盛り込まれているのもまたキングらしからぬ構成だ。
それもそのはずで、解説の風間氏によれば当初イラスト入りカレンダーに各月につけるエピソード的な物語として考案された物語だったようだ。しかしそんなシンプルさがかえってキングにとって足枷になり、7月以降はマーティを登場させ、人狼対少年という構図にしてカレンダーに添えられる物語ではなく、中編として最終的には書かれたようだ。
だからキングらしくもあり、またらしからぬ作品というわけだ。

一方シンプルな語り口と秀逸なイラストの組み合わせということで考えると、少年少女向けのキング入門書とも云うべき作品としても考えられるが、それにしては暴力夫が出てきたり、女性との性行為についても語られるので正直子供に読ませるには抵抗がある。いやはやなんとも判断に困る作品である。

しかしそんな考察は無用なのかもしれない。文章とイラストで存分に狼男の恐怖を味わうこと。それが本書の正しい読み方と考えることにしよう。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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