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(短編集)

北極星号の船長



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【この小説が収録されている参考書籍】
北極星号の船長 <ドイル傑作集2> (創元推理文庫)

北極星号の船長の評価: 4.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

ちょっと古めかしいのは否めない

ドイルのホームズ物でない短編集。東京創元社はドイル・コレクションと銘打ってシリーズで5集刊行した。これはその第2集。
収録作品のうち、「大空の恐怖」、「北極星号の船長」、「樽工場の怪」、「青の洞窟の恐怖」、「革の漏斗」は新潮文庫の『ドイル傑作選』シリーズで既読だが、その他6編は未読作品で今回購入の動機となったのもこれらが気になったため。

今回収められた作品は大きく分けて3つに大別できると思う。①「怪物譚」と②「超常現象物」と③「奇妙な味物」。①は初めの方に収められている「大空の恐怖」、「北極星号の船長」、「樽工場の怪」、「青の洞窟の恐怖」の4編が該当し、②は「革の漏斗」、「銀の斧」、「ヴェールの向こう」、「火あそび」、「寄生体」の4編、③は「深き淵より」、「いかにしてそれは起こったか」、「ジョン・バリントン・カウルズ」の3編が当たる。
①はそれぞれ高空領域、北極、未開の島、洞窟と未知の領域が多く潜んでいた時代において誰も見たことのない怪物が潜んでいる、誰も遭遇したことのない奇怪な現象に囚われるといった古式ゆかしい形式のお話。②は過去の因縁がを宿した物や降霊会によって起こる奇怪な現象といった内容でこれも特に目新しいものでもない。③は偶然によって起こる出来事や皮肉な結末、悪女譚といった理屈を超越した話。これも19世紀ごろでは斬新だったのだろうが、今となっては・・・という域を脱していない。

総合的に判断すると、一昔前の怪奇短編集と評せざるを得ない。個人的には最後に読んだ「寄生体」が興味本位でかけられた催眠術が次第に主人公の主体性を乗っ取られていく様子をつぶさに語っており、現代にも通じる怖さを持っていると感じた。特にラストの主人公が催眠術師を殺害しに行ったときに当人が既に亡くなっていたこと、道中、教授仲間の一人とすれ違ったことが色々な想像を巡らさせられ、手法としても優れていたように思う。
またホームズ物がワトスンの手記であるように基本的にこれらの短編もドイルは誰かの手記、日記といった一人称記述物の体裁を取っており、おそらく作者自身、これが作品にリアリティをもたらすものだと考えているようだ。確かにクライマックスまで徐々に徐々に盛り上げていく効果はある。

今回の短編集シリーズは多分にコレクターズ・アイテムになるであろうが、まあ、「五十年後」といった優れた作品もあることだし、ドイル作品コンプリートの一環としてこれから付き合っていこう。

Tetchy
WHOKS60S

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