慟哭
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初版刊行(参考)
種別
長編
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お気に入りにされた回数
67回
読書済み登録回数
495回
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あらすじ
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評判
慟哭の評価:
7.41/10点 レビュー 34件。 A ランク
慟哭の総合評価:
7.19/10点 レビュー 295件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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1993年の鮎川哲也賞の候補になり落選しながらも刊行されることになった貫井徳郎氏デビュー作である本書はその年の『このミス』で12位にランクインするなど好評を以て迎えられた作品だ。
そんな期待値の高い中で読み進めた本書だったが、最後まで読み終わった感想は微妙というのが正直なところだ。
さて本書は北村薫氏をして「書きぶりは練達、世も終えてみれば仰天」と驚嘆させたと当時評判だったが、確かにその内容と筆致はとても新人の作品とは思えないほどどっしりとした重厚な読み応えを備えた作品だ。
本書は幼女連続誘拐殺人事件の捜査を進める警察の話と心に大きく空いた穴を埋めるために新興宗教へとのめり込む30代の男性の話が並行して語られる構成で進む。
まずメインの警視庁捜査一課のキャリア出身の佐伯課長が陣頭指揮を執る捜査の内容は新人とは思えないほどの抑えた筆致で、キャリアとノンキャリアの確執、もしくはキャリア同士の確執、さらには佐伯の微妙な生い立ちと現在の立ち位置など縦割り文化が顕著な警察組織の中で軋轢を上手く溶け込ませ、よくもデビュー前の素人がここまで書けたものだと感嘆した。
それは後者の新興宗教にのめり込む30代の男、松本の話も同様で、新興宗教の内情とそこに所属する人々の描写は実に迫真性に満ちている。この細やかな内容は経験しないと判らないほどリアリティに富んでいる。
街中で幸せを祈らせてほしいという修業に興味を持った松本が出くわす、マンションの1室で行われる講話、そしてひっきりなしの入会の勧誘、更に合宿と称した監禁状態での洗脳行為に暴利としてか思えない高額な参加費やテキスト料。
これらは作者自身が実際にその手の新興宗教の集会や講習、そして合宿に自腹を切って参加しないと書けないことばかりだ。もし彼が実際に入会したのであれば、新人賞の応募作品でここまで金を掛けて取材したことになり、その気合の入り方には驚かされる。
また新興宗教が実に“おいしい商売”であることも詳らかに書かれる。
本書が刊行された90年代初頭の時点で日本に存在する新興宗教の数は23万にも上っていたことや元手がかからず、出版物やグッズ、財施などでどんどんお金が入ってくること、宗教法人であることから税の優遇措置を受けており、さらに33種類に亘る収益事業を許されていること。
浴場業、料理飲食業、遊技業、遊覧所業、貸席業、理容業、美容業、興行業、不動産販売業、倉庫業、駐車場業、金銭貸付業とほとんどの業種が網羅されている。
これらは巨大な宗教団体が政治内部にも強いコネが古来からあることからこれらの優遇措置が認められてきた悪しき風習と云えるだろう。
ただこれほど読者の共感を得られない主人公も珍しい。
どうにもこの男に対して嫌悪感が先だって罵詈雑言が止まらない。
微妙な読後感の後に訪れたのは一人の身勝手で無能な男に対する大いなる憤りだった。
▼以下、ネタバレ感想