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Tetchy さんのレビュー一覧
Tetchyさんのページへレビュー数902件
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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上下合わせて1000ページ強の超大作でしかもクーンツにしては文字のぎっしり詰まった作品で、なんと読むのに3週間弱を費やしてしまった。とにかくクーンツは冒頭が素晴らしく、今回もその例に漏れない。夢遊病の作家、突然遁走の危機に見舞われる若き女医、神を信じられなくなった神父、暗闇恐怖症のモーテル経営者など、一見何の関係もない彼ら・彼女らがある1つの場所に収斂していく手並みは流石。
ただ、なんかシドニー・シェルダンの作品を読んでいるような各登場人物のエピソードが非常に長く感じたのは確か。彼らの抱える悩みがある1点に収束していくのをクーンツ特有の「出し惜しみ文体」でちくりちくりと小出しにしていくのだが、とにかくくどい(まあ、その内容は結構面白いのだけれど)。 冒頭はサイコ・サスペンス、続いて軍事スリラーに、そして最後はSFと、かなり贅沢な作品であるのは間違いなく、当時としてはクーンツの集大成的作品だったのかもしれない。しかし、最後がいやにメルヘンチックな締め括り方をしていたのと、やはりどうにも無駄に長いという感が拭えず、総合的には平均的な佳作だと結論に至った。面白くないわけではないんだけどねぇ…。 |
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正直な話、SFでこれをやるかという驚嘆がまず最初だった。本編はユリアンがイゼルローンに移住してからヤン艦隊が初出動するまでの約4ヶ月間を日記形式で綴っているのだが、問題はそこ。
よくもまあ、これほど多種多様な内容を描いた物だと感心する。しかも所謂我々が住む日常的空間を想定した小説ならば作家という職業上、4ヶ月分の日記を考えるのはつまり自分の日常生活と照らし合わせて使えるものをピックアップしていけばよいのだが、これをSFでやるとなると世界観が作者の頭で描いた仮想空間であるため、迂闊な事を書いてしまうと矛盾や決してありえない事が生じ、収拾つかなくなると思われる。 しかし、そこを危なげなく処理している辺り、見事としか云いようがない。確かに各登場人物とのやり取り、日常生活のエピソードなどはSFとは関係ない部分も案外あったが、やはりイゼルローンからハイネセンへ捕虜を運ぶエピソードを物語の核に持ってきて、作者はいささかも恐れず、真っ向から勝負してきている。また膨大な登場人物が登場する本シリーズにおいて実はほとんど名のみでしか紹介されていない人物、特にリンツ、イワン・コーネフなどは如何に人間くさい人物かも記されていて、物語、いや彼らに深みが増した。 しかし、本作はいつもの10星よりもランクを下げて8ツ星とする。理由は本書にも書かれているが、物語の構成上、ユリアンの1人称叙述であるのはともかくとして、ユリアンの妄信的なまでのヤン崇拝の様がちょっとくどかった。 作者としては彼の親愛の度合いを伝えたかったのと、ヤンとユリアンの絆の強さを示したかったという意図があったのだろうが、ちょっと食傷気味。 |
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奥付の日付を見ると「平成五年十二月十日 初版発行」とある。この年限り行われた「角川ミステリコンペ」に出展された文庫書下ろしで装丁も当時のものであり、かなり貴重な一冊である。
古書的趣味はそれぐらいにして内容であるが、これが実に折原らしい。事実上のデビュー作である『倒錯のロンド』の系統に連なる作家志望の主人公が織り成す虚実入り混じった叙述ミステリで、本作も縦横無尽に現実と虚構との間を練り歩く。 前半は若手美人作家南野はるかを中心にしたドタバタミステリだが後半は彼女の存在を架空の者としながらも現実の者と肯定するメタミステリの様相を呈していく。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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クーンツにしては、という云い方は失礼かもしれないが、複雑なプロットの物語でかなり読むのも苦労をした。タイムトラベル物の一つなのだが、とにかく複雑な構成。パラドックスに関してかなりの時間を費やして考察を行った節があるのだが、最後の敵クライトマンがクリーゲルのチャーチルとヒトラーに対して行った工作が成功した後にも存在していたのは何故?などという疑問もある。
先に読んだ『奇妙な道』にアイデアは似ていると思う。特に防戦に失敗して主人公が死亡した後に、別の手段でやり直しが効くところは正にそっくりだ―まあ『奇妙な道』の方は何度も何度も繰り返され、アンフェアな印象があったのだが―。 しかし、いつものクーンツ作品と違い、事件解決後の後日談があるのも珍しい。ここまでするのならもう一つサプライズがあっても良かったかなとも思ったが。しかしローラの半生を丹念に描くところなんかはシドニー・シェルダンの小説を読んでいるかの如くで、特に『ゲームの達人』が発表された年とこの作品が発表された年とを比較してみるのもまた一興だろう。 |
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今回の天藤作品も粒揃いの傑作ばかりで、嬉しくなる。今回は特に構成に凝った作品が多かったような印象が強いのだが、振り返ってみると実際に構成が凝っていたのは中編の「日曜日は殺しの日」と「死神はコーナーに待つ」のみだった。ということは如何に印象が強かったかという証左になるわけだ。
特にこの2編は所謂倒叙物の体を成しており、大体犯行の目星がついているのだが、それを約100ページ強を費やして何を書くのだろうと思いきや、自明の理だと思われていた事件が他人が探るに連れ、全く予想外の証言や真相が出没し、正に頭の中を揺さぶられる感覚がした。著者の企みは正にそこにあり、読者にストーリーのあるべき方向を示唆させ、先入観を抱かせることで真相を覆い隠してしまう、この効果が物凄かった。 また他の作品も非常によく、ちょっと狙いが浅かったかなと思わせる表題作はともかくとして、今流行の “日常の謎”ものである「父子像」やミステリアスな結末の「背面の悪魔」、ストレートな「女子校生事件」、実に深い余韻を残す「三枚の千円札」など今見てもすぐに内容が思い出せるものばかり。 一番良かったのは、人間の厭らしい部分を描いても後期の長編群のように嫌味な印象を全然感じなかったこと。どこか人間を観る目に以前よりも優しさが感じられ、読後非常に爽やかだった。 天藤作品も残るはあと一冊。う~ん、読みたいやら、読みたくないやら。 |
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プロットは及第点だろう。登山中の事故で瀕死の重傷を負って自信を喪失した登山家がある事件を切っ掛けに困難に立ち向かいその自信を取り戻していくというストーリーに加え、連続殺人鬼、事故の際に身につけた千里眼の能力など、クーンツの味付けが溢れているし、殺人鬼が1人ではなく、2人が同一の犯行を行うというアイデアも秀逸だろう。
さらにマンハッタンのビルを山に見立て、垂直降下するアイデアも主人公の設定と見事に呼応し、素晴らしい。 しかし、どこか響かない。 名作『ウィスパーズ』や『邪教集団トワイライトの襲撃』に見られる何処か神経を泡立たさせる何かがないのだ。有りか無しかといえば有りだが、文庫で十分だというのも事実だ。 |
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セイヤーズ初体験である。
本作は当初 “シャーロック・ホームズのライヴァルたち”と銘打った東京創元社の企画物の1つで独自で編んだ短編集であったらしい。それが長年に渡って繰り広げられ、そして今も継続中のセイヤーズ完訳の第一歩となるとは不思議なものである。 正直な感想を云えば、驚きました。島田荘司氏が本格の定義として提唱している「冒頭の怪奇的・幻想的な謎、そして後半の論理的解明」を正に実践しており、こんな本格が過去、西洋にあったのかと再認識させられた次第。ドッペルゲンガーに悪霊憑き、そして首のない馬車とゴシック風味満載である。色々読みこなした現代においてはそれらの結末は想像の範疇で瞠目させられるものではないにしろ、これほどのものがまだあったことが素直に嬉しい。 読書期間中、第1子誕生と忙しいこともあり、睡魔に負けてほとんど憶えていない短編もあるが、全体的に好印象だった。 |
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前作『奇妙な道』とは打って変わってこちらは純粋な短編集。クーンツ得意のモダン・ホラーからファンタジー、幻想小説とその趣向は様々。
全7作の内、最も印象的だったのは最初の「フン族のアッチラ女王」と表題作。特に前者は植物のような宇宙生命体の侵略物語がどう題名に結びつくのかが興味深く、その趣向に1本取られた感じだ(結局、内容的には大したことはないのだが)。後者は家に現れる地下への階段というモチーフが秀逸。つまりこれこそが主人公の心の闇の深さのメタファーとなっており、人の悪意の底知れなさを仄めかして終わるラストも良い。 その他特殊な両手を備えた男の哀しみを描く「オリーの手」、実験で知能を備えた鼠の恐怖を描いた「罠」、異世界から来た熊の私立探偵とその異世界と現世との比較が面白い「ブルーノ」など前述のようにヴァラエティに富んでいるがずば抜けた物がないのも確か。最終巻の『嵐の夜』に期待。 |
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天藤作品を連続して読む前は、『遠きに目ありて』、『大誘拐』、『鈍い球音』しか読んでないがため、それらに共通する宮部みゆき氏を髣髴させる温かみを彼の作品の特徴だと思っていた。しかし、『善人たちの夜』、『わが師はサタン』までの長編を読破するにあたり、意外にも人間の持つ欲望の意地汚さ、卑しさ、小賢しさを全面に表出させ、女性を凌辱する話も多いことに気付かされた。その傾向は『死角に消えた殺人者』あたりから顕著に見られるようになった。ここに作者の転機があるように思う。
なぜこんな話をするかというとこの短編集がどうもその時代あたりに書かれた片鱗を覗かせるのだ。その特色が表題作の「われら殺人者」から見られる。文庫の裏表紙にかかれた梗概からは天藤お得意の見知らぬ者達が力を合わせ、目的を成すといった奇妙なチームワーク物のように思えたが、意外や意外、何とも泥臭く、後味の悪い結末だった。 最後の2編、「崖下の家」、「悪徳の果て」はもう人間の最も厭らしい部分を見せ付けるような結末で正直、今でも震えが来る。いや、今にして思えばジュブナイル物だろう「幻の呼ぶ声」も結構児童向けにしてはシビアな内容であるから、ここからかもしれない。 結構次作を読むのが怖かったりする。 |
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久々の、本当に久々のレナードである。『ラム・パンチ』以来だから4~5年ぶりか。そしてやはりレナードは面白かった。
とにかく登場人物が洒落ている。活きている。どんどん引きずり込まれる。フォーリーのクールさは映画版のジョージ・クルーニーぴったりだし、キャレンの凛々しさは確かにジェニファー・ロペスだなぁ。本作ではフォーリーは50前、キャレンはどうやら白人という設定みたいだがこのキャスティングは素晴らしいと改めて思った次第。 まあ、観ていない映画の話はこれくらいにして、とにかく車のトランクの中に銀行強盗と女連邦官が一緒に閉じ込められるというワン・アイデアがこれほど面白く働くとは思わなかった。水と油の職業の者同士が恋に落ちるというパターンは山ほどあるが、これほど奇抜でしかも説得力のあるシチュエーションは初めて。ここから織りなされるそれぞれの思いの道行きが大人のムードを醸し出しながらも初々しさを持ち、そして再び出会った時に爆発的な化学反応を起こす、このストーリー・テリングはやはり超一流。スラングを多用し、また地の分に台詞を同化させたレナード・タッチもふんだんに織込まれ酔い痴れました。 ただ2人の恋の盛り上がり方に比べ、結末がドライで呆気なく幕引きになるのが残念。 あとやっぱり『ゲット・ショーティー』の奇跡的な構成が記憶に残っているのでそれを超えられるほどのものがなかったのも物足りなかった。 ともあれ、レナード作品の翻訳再開は非常に嬉しいし、どんどん読みたい。どうか作品紹介が今後も続きますように。 |
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上手いなぁ!たまにはハードボイルド物も書けばいいのに・・・。センスあるよ~!
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ラストはこの上なく切ない。この胸に残る気持ちはちょっと長引きそうだ。
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負けました。このような気持ちにさせられるなんて。
題名もいい。 |
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ミステリー色はさほど濃くなかったが十分楽しめた。安心して読める作品。
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各短編のクオリティは低くないものの、突出したものがないと感じる。次回に期待します。
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良い!と云える佳作。相変らずのアイロニックな文体が躍動している。
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最後の三冊目にしてやっと通常の読物として満足できるものが揃い、ほっとした。
「革の漏斗」、「サノクス令夫人」以外はどれも標準点である。特に最後の「ブラジル猫」は友人を地下墓地に巧みに迷い込ませた「新しい地下墓地」のパターンを応用し、ひっくり返させ、更に夫人の振舞いにダブル・ミーニングを持たせてアクセントをつけている。 異形物の「大空の恐怖」、「青の洞窟の怪」は『ロスト・ワールド』の作者である面がよく出ており、物語作家ドイルの面目を保った感がある。 これでドイルの作品は最後になるが、全般的な感想を云えば、世評の高い『バスカービル家の犬』、『緋色の研究』や短編「まだらの紐」、「銀星号事件」などよりもあまり巷間の口に上らない『恐怖の谷』の方が読物としてレベル的にも断然面白かったのが非常に印象に残った。やはりホームズ譚は世の中に紹介されすぎなのだろう、世評高いものはもはや手垢が付きすぎた感があり、新鮮味に欠ける。 そしてまた『緋色の研究』や『四つの署名』、『恐怖の谷』に挿入される犯人判明後の挿話がすこぶる面白かったのも新たな発見であった。この挿話では文体から既に別人と化しており、本質的にこの作者が何を書きたかったのかをあからさまに示しているようだ。 最後に最も残念だったのが悪訳の多い事。日本語で読みたいのだよ、私は。21世紀でもあるし、改訳するのが潮時でしょう。 |
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