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マリオネットK さんのレビュー一覧
マリオネットKさんのページへレビュー数78件
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第二次世界大戦直後、1940年代後半のニューヨークで発生した連続絞殺事件。
犠牲者の数が増えると、絞殺犯にはやがて新聞紙上で、被害者を殺害した絹紐を尻尾に見立てた<猫>という異名がつけられた。 被害者はニューヨーク市民であること以外は年齢、性別、人種、職業、素行全てがバラバラで共通点が見えず、無差別に行われる連続殺人にニューヨーク全土は絞殺魔<猫>の恐怖に包まれる…… 一見異常者による動機なき無差別殺人だが、その裏に犯人の真の動機や意図があるはず…… というホワイダニットな作風はクリスティの『ABC殺人事件』を意識し、挑戦しているような所がうかがえました。 (実際『ABC事件』の根底に関わる部分のネタバレに近い台詞もあるので、未読の方は先にそちらを読むべきだと思います) しかしもちろん真相は全く違った形が用意されていました。 連続殺人犯<猫>に対する、ニューヨーク市民の恐怖によって発生するさらなる問題や、 名探偵という存在があるがゆえ、殺人をはじめとする悲劇が起こる、所謂「後期クイーン問題」に対する、クイーンの苦悩が描かれるなど、見所の多い作品です。 完成度も高く感じ、楽しく読めました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『百鬼夜行シリーズ』の中でも特にブ厚い、文庫版で1300ページ超のボリュームの大作です。
舞台は雪山の奥深くに、時間を忘れたかのようにたたずむ禅寺、「明慧寺」。 そこは地図にも寺院名簿にも記録は無く、日本中の仏閣は全て知り尽くしていると言っても過言ではない京極堂ですらその存在を知らないという「幻の寺」だった。 寺では多くの僧たちが日夜修行の日々を送り、外界とは隔絶された独自の「社会形態」が構築されていたが、突如僧たちが次々と異常な形で殺害されていく事件が起こる…… 今回も作者の知識量に感服させられます。 「禅」や「仏教の宗派」などについてとりあえずさわりだけでも理解したいなら、この本を読むのが一番ではと思ってしまう一冊でした。 登場人物たちの文字通り「禅問答」的なやり取りも非常に読んでいて面白かったです。 また、これまでの同シリーズ作品同様、題材はシリアスかつホラー調でありながら、個性的な登場人物のやり取りは、随所にユーモアも効いていて相変わらず楽しいです。 このシリーズのレギュラーキャラでは、自分はやはり榎木津が一番好きですね。もうこの人が登場してるだけで無条件に面白い! 舞台が物理的に完全に外界と隔絶されているわけではなく、警察の介入は普通に行われているため、クローズドサークル作品という括りには当てはまらないですが、社会的に外界から孤立した禅寺という空間や、次に誰が殺されるのかという恐怖感など、物語の雰囲気的にはクローズドサークル的な楽しみ方も出来る一作でした。 しかし、本格ミステリという観点で見ると、長さに関係なく物足りないです。 特に何かトリックが弄されてるわけでもなければ、犯人もロジックの元導かれるわけでもなく、理屈で言えば「誰が犯人でも良かった」形だった気がします。 改めてこのシリーズは会話や薀蓄や雰囲気をゆるりと楽しみながら読んでいくもので、「長いけどがんばって読もう」などと考えず、読みたい人が読みたいから読むべきだと思いますね。(まぁ本来それはこのシリーズに限ったことじゃないんですが) ▼以下、ネタバレ感想 |
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「夢の島」「イクル君」「カネゴン」「りさぴょん」などのニックネームが出てきた途端、「なんだこいつら、『密室殺人ゲーム』でも始めるのか!?」と思いましたが、彼らは遊びじゃない真剣な人殺しの相談者達でした。
もはや通常の二人の間だけの交換殺人では足がつくとばかりに、トランプを用いて四人の間で行われる交換殺人という題材で、犯人各々の事情、思惑が絡み合う、言わば群像劇倒叙ミステリーと言える作品です。 四人の犯人と四件の殺人、これだけで事件の複雑化は必須ですが、まったく無駄のない構成で冗長にならず綺麗にまとまった話になっています。 綿密なロジックの元に導き出される結末はクイーン的なものを感じさせられました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルの通り『そして誰もいなくなった』のオマージュ的作品です。
舞台は孤島ではなくクルーザーになりますが、その名前が「インディアナ号」なのをはじめ、招待者が「宇野(UNO)氏」だったり、随所に『そして誰もいなくなった』のオマージュが溢れ、あの作品が好きな人ならそれだけでニヤリとさせられてしまいます。 展開もまるで元ネタをなぞるかのように一人ずついなくなっていき、テンポの良い展開で物語りは進み、それだけである意味面白いのは約束されているわけですが、あくまで元となる作品あっての面白さかなぁ、と思うところはありますね。 しかし当然結末は違った形が用意されています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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一年前のクリスマス。建物全体が完全な密室状態となった洋館「金雀荘」の中で6人の男女がまるで童話の「七匹の子ヤギ」を見立てるかのような他殺死体が見つかった。
さらにその6つの死体は、最初に殺した者を次の者が殺し、その者をまた次の者が……と順番に殺し合ったかのような痕跡が残るまさに怪事件であった。 その謎の解明のために犠牲者の従兄弟にあたる面々は事件の起こった金雀荘に集まるが、そこで今年また新たな事件が起こる……!? という、複数の時系列で構成される、ホラー、サスペンス要素の強めの本格推理小説です。 トリックやロジックの一つ一つは既存の作品の流用・応用感があるのですが、作品全体の組み立てが非常によくできていると感じました。 過去の事件の検証段階はちょっと退屈な感じでしたが、徐々に現在進行形の脅威が迫ってくる流れになると緊迫感があって良かったです。 読み終えてから、また冒頭の序章を読み返すとその意味が理解できるという構成も洒落ていますね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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エルキュール・ポワロシリーズの第二作目です。
よく言われますがタイトルがセンスないですね。死体がゴルフ場にあったというだけで、作品の真相も特徴もゴルフ場やゴルフにはほとんど関係がなく、原題にしろ邦題にしろもうちょっとなんとかならなかったのでしょうか。 初期の作品ということもあり、特に目新しさや派手さはない小ぢんまりした話であろうと予想していたのですが、二転三転する真相に驚かされ、百年近く前に発表された作品ながら良い意味で予想を裏切られました。 ポワロの「這いつくばって足跡やら細かい証拠を探すのは犬のすること(意訳)」という偉大な先輩探偵をこき下ろすかのような挑発的な言動が面白かったです。そしてまさにその地面を這って細かい証拠を探す捜査方法を取る、ポワロのライバル的存在となるジロー刑事(日本人ではない)が登場しますが、読者目線ではもう最初から猟犬ならぬかませ犬にしか見えず、何も魅力を感じない正直失敗キャラでした。 そしてそんな男に対してポワロがそれなりに不機嫌になって対抗意識を燃やしたり、事件の解決に金を賭けたりするので、なまじ結果が見えているだけに逆にポワロの方も人間が小さく見えてしまうのが残念です。 二作目ということでまだポワロのキャラがあまり固まっていないのか、いい年して割と血気盛んさが目立つポワロは後のシリーズの、尊大さや皮肉屋な面はあるものの基本的に寛大な紳士という彼のイメージとは微妙に違うように感じました。 アンチホームズ的な発言が出た一方で、ホームズシリーズの二作目の『四人の署名』と同じくシリーズ二作目が、ワトソン役のヘイスティングスのラブロマンス作品でもあることは、一種のホームズリスペクトなのかな?と思いました。 しかしヘイスティングスはそれこそ十代の少年かという見境のなさで、気になる女のためなら部外者を勝手に現場に連れ込んで証拠品紛失のきっかけを作るわ、挙句の果てには彼女のために故意にポワロの邪魔までするわ大暴れです(笑) 無能どころか探偵の脚を引っ張る、ある意味二作目にしてワトソンを超えた男になっていますね。 当時の既存のミステリーに挑戦するかのような、他人に書けない作品を書こうというエネルギーを感じる反面、ただやはり後の作品に比べれば、まだ作りなれていない感もあり、この時はクリスティ女史自身も良くも悪くも若かったんだなと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「人を殺して喰らう」という噂がある巨大な楠の生える豪邸にて起きた怪死事件に御手洗が挑むという、横溝御大っぽいタイトルの通りオカルトホラーテイストが漂う『御手洗潔シリーズ』第五弾。
このシリーズはまず五作目まで全てカラーの異なる作品というのが凄いですね。 現在進行形の連続殺人事件と平行して戦前から残る人食い楠にまつわる怪死事件の謎に挑み、殺人事件だけでなく暗号解読や、はたまた飛行機に乗って舞台を海外のスコットランドに移すなど、非常にもりだくさんな内容で、分量がかなりありながら中だるみ一切なしの大作です。 真相を解明すればそれで良しとはしない、御手洗の単に変人なだけではない人間的な器の大きさが感じられることや、ヒロインのエレナの魅力などもあり(最初はあまり印象が良くないですが、徐々に奥ゆかしさや健気さが感じられるのがいいですね) 単純に「娯楽作品」としてのストーリーの面白さなら、ホラーテイストに加えてこれまでの同シリーズのいい所取りをしたような作品で、『占星術殺人事件』よりずっと面白いと言ってしまってもいいと思いました。 ただ、トリックの出来ですとか真相のロジックについては粗や不満点が多く、推理小説としては今までの同シリーズで一番出来が悪いと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「ミステリは好きだけど、今更海外古典はちょっと…でもシャーロック・ホームズぐらいは押さえておくべきか…」
という人がいましたら、とりあえず『ボヘミアの醜聞』『赤毛組合』『まだらの紐』などの特に人気・知名度の高い作品が収録されているこの一冊をお勧めしたいと思います。 順序的には『緋色の研究』『四つの署名』の次の作品になりますが、これから読んでも特に問題はないかと思います。 実際当時の世間的にもこの短編集が大反響を生んだことで、前二作も一気に注目度が上がった形と言われているようです。 殺人事件だけではなく、かなりバラエティ豊富な短編がそろっており。 現在に至るまでの推理小説の大体のパターンはすでに作られていると感じるのが凄いですね。 以下各話ごと個別の評価と感想です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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東野圭吾氏の作品の中では人気知名度ともにあまり高くはないですが、個人的にはそこそこ好みの話でした。
回廊亭と呼ばれる、一風変わった旅館で起こった過去と現在、二つの事件の謎を巡る物語で 主人公の女は、自身が巻き込まれ全てを失った火災に関し、調査と復讐のために一切の過去を捨て、事件の現場であり当時その場にいた人物たちも集まる、「回廊亭」に老婆に変装して潜入します。 主人公は過去の事件の真相を追い、犯人を探るとともに、自身も復讐者として犯人となる、いわば一作で倒叙にしてフーダニットな作品です。 決して長くはない話ですがその中に複数の謎、真相、仕掛けが絡み合い、濃い内容でした。 ただ、せっかくの面白い建物である回廊亭の設定はさほど活かされているとは感じず、建物を利用した面白いトリックなどを期待する話ではありません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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冒頭からアイルランドの南北問題を扱った社会派ミステリのような印象を受けますが、それはあくまで舞台設定を整えるためのようなもので、本質はクローズドサークル物の本格ミステリです。(クローズドサークルになる理由がちょっと変則型ですが)
全体的にデビュー作としては非常によく出来ていて面白かったと思います。 単に犯人を当てるだけのフーダニットでない作品で、終盤で次々明かされる真相は心地よかったです。 ただ、主人公の日本人のフジの不自然で無駄な完璧超人描写に正直うんざりします。 作者の自己投影臭がプンプンします。 まして他の登場人物がみんな外国人の作品で日本人が無双するとか正直読んでる方が恥ずかしいです。 基本的にはよく出来ていて面白い作品だと思うだけにホントここだけ惜しいです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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簡単なあらすじを書くのも難しければ、なんと感想を書いたらいいのかも難しい……いろいろと濃い小説でした。
何が事実で何がそうでないのか読んでいてわからなくなってくるのですが、すべては綿密なロジックによって真相へと導かれる、数々の謎と理論によって紡がれた本格推理の物語だと感じました。 そのクドさに合わない人は合わないし、好きな人はとことん好きなんじゃないかなぁと思った作品ですね。 他の人も言っていますが主人公のまだ若いのに「わし」という一人称や、やたら「~っすよ」という口癖はなんか違和感覚えてちょっと苦手でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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金田一少年のノベライズシリーズ4作目。
ノベライズシリーズの最高傑作とされてる前作の『電脳山荘殺人事件』と 実写版映画の原作となり、原作漫画含めシリーズ初の海外に舞台進出した次作『上海魚人伝説殺人事件』 に挟まれ正直地味な位置づけの作品です。 舞台も殺害方法も原作漫画にこれまでにもあった話に似ているような所があり、あまり読者の印象に残らない作品かなぁという所ですが メイントリックが2つ設けられているのは評価したいし、地味に良作だと思います。 読むのに時間もかからないですし、クローズドサークル好きなら、読んで損しないのではないかと。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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道化師の格好をした殺人鬼が女性を狙うという、10歳ぐらいの頃に学校の図書館で読んで凄い怖かった話。
最近読み返してみましたが大人になった今でもやはり怖かったです…… ピエロの恐怖を書いた話といえばスティーブンキングの『IT』が有名ですがこれはその40年以上も前、その『IT』のモデルとなったキラークラウン、ジョン・ゲイシーが生まれるより前の作品です。 この時代にピエロを恐ろしい存在として書いた作品は日本はおろか、世界的にも稀だったのではないですかね? (道化師をそのユーモラスさを逆手にとった恐怖小説の始祖はおそらくポーの『ちんば蛙』でやはり乱歩の小説の『一寸法師』がその影響を受けていますね) ホラー小説としてはすばらしいと思うのですが推理小説としてみるとちょっと……と言いたい出来です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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雪に閉ざされた天文台を兼ねた館に集められた5人の探偵。
そしてそこで起こるバラバラ殺人事件。 ゲーム『ダンガンロンパシリーズ』のスピンオフ作品ですが、原作の予備知識は全く要りません。 むしろ完全に独立してるストーリーなので、そっちを期待した人の方が面食らうかもしれないです。 挿絵つき、美少女2人が主役、ラノベ・ティーン小説的な文章、2時間弱で読める中編といった文章量、と滅茶苦茶読みやすい作品です。 しかし、その内容は侮るなかれ最初に述べたあらすじの通り、極めて王道な本格推理小説で、「物理の北山」と称される北山氏に恥じない、理にかなったトリックも光る良作です。 この作品は推理ドラマや推理漫画などで、普段本とか殆ど読まないけど、推理小説にも興味を持った、という超ビギナーが身近にいた時、私は『十角館の殺人』よりも『そして誰もいなくなった』よりも、まず先にこれを薦めたい、と思うぐらい初心者におすすめの作品だと思います。 なので、有名作品というわけではないですが、「初心者におすすめ」タグをつけさせていただきました。(ついでに「クローズド・サークル」タグも) |
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劇団員の若者たちが吹雪に見舞われ、たまたま迷い込んだ幻想的な雰囲気を持つ豪邸。そしてそこで繰り広げられる連続見立て殺人。
……という非常に直球なクローズドサークル本格推理小説です。 700ページ超という読み応えのあるボリュームで、設定を見ただけで好きな人にはたまらないでしょう。 読み終えての印象としては、本当に終始まっとうな本格推理小説で、綾辻氏の作品としてはやや「大人しい」印象です。 ボリュームこそありますが、『館シリーズ』ほどの大掛かりな仕掛けやどんでん返しはなく、良くも悪くも無難にまとまっている作品だと思いました。 綾辻氏は普段の自分に求められているような全体に大きな仕掛けのある個性的な作品より、奇をてらわない、王道をつきつめたような作品を書きたかったのがこれなのかな、と感じました。 あるいは『館シリーズ』でやれないことをやった結果、極めてまっとうな推理小説となったのかもしれません。 率直な感想を言えば、出来は悪くないですが物足りなさを感じ、期待していたほどでは……といったところです。 好みのシチュエーション補正も含めて個人的評価は7ポイントとしました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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