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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数271件
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読中、前作「仮面病棟」と同じ舞台だと言う事に気付いて、まずびっくり。
こういうサプライズというか気づきは嬉しい。 相変わらずのスピード感ですが、こうなると「何かある」感満載。 前作を思い出しながら、そして色々警戒しながら読んでいたら思いの外時間がかかってしまった。 という意味でも、前作は先に読んでおくべきかな。 ピエロの出すミッションをクリアしていきながら、爆弾の仕掛けられた病棟から脱出を目指す、という展開になりますが、登場人物が医療関係者という事もあって、ミッションクリアに手術をさせるなど、なかなかに斬新。ただ、1つ1つのミッションをクリアが早過ぎるのか、どこか軽くて「命をかけての」脱出ゲーム感に乏しい。 また犯人を含め、登場人物に医療関係者らしい、冷静さや落ち着きのある人物がいないってのも難点。 前作と同じ舞台にした、というアイデアに+1点。 |
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聴覚障害者をテーマにした作品は、有川浩さんの「レインツリーの国」を読んだ事があります。
聴覚障害者の日常の不具合や誤解、生き辛さを描いたレインツリーに対して、こちらはミステリーの体を取り、不条理や厳しさを描いていています。 その分重いです。 ろう者ではなく「ろう者に近い、ろう者を理解できる健常者」を主人公にして、一方的な押し売り感を出さず、ほぼ中立的な立場で語らせていて上手いと思いました。 かなり辛いラストを予想していましたが、上手くまとめましたね。 |
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タイトルから「ガリレオシリーズ」だと思っていたのですが違いました(汗)
構成や展開はさすが、という感じなんですけどラストがね。どうしても尻すぼみになってしまっている。 何とも東野圭吾さんらしい作品ですかね。 東野圭吾デビュー30周年記念作品という事で気合も違ったはずですし、理系ミステリ作家の本領を遺憾なく発揮できそうな題材だったんですけどね。 SFっぽい内容になってはいますが、数学者ラプラスが提唱した「ラプラスの悪魔」が基にあるはずで、全くの絵空事でもないはず。 作者なら、もう少し深く掘り下げる事ができたはず。どこか浅い。 また、個人的にタイトルにも違和感がありますね。 魔女はどこに? あの彼女が魔女なの? |
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作者初読。
冒険小説かつスパイ小説。 読後にこれがデビュー作だと知って驚いた。 読み手を引き込ませる筆力の高さもそうですが、私が一番驚いたのは題材でしょうか。 雑誌のフリーライター時代に得た知識からでしょうか。 北方領土を舞台にしたソ連のスパイが云々話で、今読むと時代が違うからでしょうか、物語の設定が難しくてよく理解できませんでした。 主人公が国家規模の陰謀に巻き込まれるのですが、何故彼が選ばれたのか、そして何より何故ここまで命かけなきゃならんのかが。 なので、高評価とまではいかないのですが、ただ他の作品も読んでみたい。 そんな気持ちにはさせてくれましたね。 |
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ハードボイルドです。
北の僻地での偽造家族による偽装生活、それを罠に悪をおびき寄せる、でいいのかな。 妻を亡くした元公安の主人公が、利用されている使い捨てな存在ってのを理解していながら、その偽装生活の中で徐々に生まれる家族の絆ってヤツを原動力に再び戦う決意をするっていう物語。で、この作品の一番の売りポイントはやはり「絆」かな。 疑似家族の中に生まれる家族の絆も当然ですが、前の飼い主から虐待を受けていたドーベルマン・マクナイトと主人公の絆もね。 こう聞くと如何にも面白そうですが、如何せん登場人物たちの関係性が非常に難しく、誰が味方で誰が敵なのか、更には主人公たちが何故ここまで執拗に追われるのか少し分かりづらいんですよね。 警察公安以外に2つの組織が絡んできます。これが複雑ですごく分かりづらいんです。 面白いかどうかは、それが理解できるかどうかにかかってると思います。 「今、何がどうなってるの」「こいつは味方なの敵なの」 しっかり読んでるつもりでもわからなくなるんですよね。ここは減点材料ですね。 |
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バンドに没頭する高校生の青春モノです。
私自身この手の分野に全くの門外漢という訳でもないのですが、もしこういうのに全く興味ない、っていう方が読んでも問題ないかなと思います。 要はコテコテじゃないってことです。 というのも、選曲にしても誰もが一度は聴いたことがあるでしょう、ていうメジャーな曲ばかりですし、ライブの臨場感が伝わる描写もないですから、格好良さの押し売り的なところがありませんしね。更に、演者のテクを感じられる描写もないので、何を言っとるのか分からんっていう表現もないでしょう。 で、実は、ラストも予想通りの展開。ミエミエだったのですが、これが実に面白かった。シンプルなのが良かったのかな。 メンバのキャラも良かったんだけど、脇役連中の配置、役割が絶妙だったなぁって思います。 |
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この作者さんは、直木賞受賞作の「流」に次いで2作目でしたが、二番煎じという感じは否めませんでした。
この作品は3人の中学生の苦悩を描いた物語。 「流」は少年たちの「成長」物語でしたから、その辺り異なっていて、どっちが面白いか、というのも人それぞれだと思います。 「流」にも犯人探しなミステリ要素が含まれていましたが、この作品は、30年後その主な登場人物3人のうちの誰が殺人鬼となったのか、というミステリっぽい手法を含めています。 前半は、「流」と同じパターンじゃねーか、って読んでましたから、後半少し盛り返したんですけどね。 この作品を「流」より先に読んでいたら、評価は逆転していたでしょう。 要は、先に読んだ方が、1点多いって感じになると思います。 |
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文庫化される際に「さよならドビュッシー前奏曲(プレリュード)」と改題された訳ですね。
その方が絶対に売れるでしょう(笑) ドビュッシーにも登場した某人物のスピンオフの連作短編集ってところでしょうが、いやいや上手く繋げたなぁ。 こういう広がりは楽しいですね。 最終章の「最後の挨拶」ってタイトルは、ドビュッシーを既読であれば、どことなく洒落て聞こえます。岬洋介も登場しますよ。 この最終章で1ポイント加算です。 勿論ドビュッシーは先に読んでおきましょう。 |
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「日本沈没」を彷彿とさせる災害小説。
兎に角スケールがでかいです。 専門用語が多々出てきますが意味を十分理解できなくとも、そのリアルな描写に圧倒され十分怖さは伝わります。 単行本で600頁超えの大作ですが、正直これでも足りないくらいです。 というのも、これだけの極限状態ながら醜さを顕にする人間が一人も登場しないっていうところにはやはり違和感を感じました。 命からがら逃げる主人公視点が多すぎて、本来ならもっと深掘りして色々な角度から描けたはずだったのでは、と。 最後に、日本再生への道が示されますが、そこが沈没しちゃってもう何も出来ない作品とは違うところ。 だったら、アイデア提示で終わるのではなく、そこも描いて欲しかった。 1000頁は必要な作品でしたね。 |
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座間味くんシリーズの短編集。
このシリーズは、これぞ石持ワールドって感じですし安定してますね。 個人的に好きなシリーズでもあります。突き抜ける感じはないですけど・・・ 「月の扉」にも登場した大迫警視長と(将来を嘱望されている)女性巡査に座間味くんが加わって、食事中に、 「昔こういう事件があってね」という警視長、「勉強になります」という女性巡査。 で、安楽椅子探偵座間味くんが意外な一言を吐いて終わるという毎回同じパターン。 意外と飽きないのが不思議。 タイトル作は秀逸でしたが、以前読んだ「心臓と左手」と比較してかなりこじつけが・・・というか、強引な作品が目立ちましたね。 まぁ「こじつけ」はこのシリーズの代名詞でもあるんですけど・・・ 今後、リアルタイムの事件に対峙する座間味くんも見てみたいなんて思いました。 今「月の扉」を読み返したら面白いかも知れないなぁ。 |
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20年前の幼児誘拐事件の犯人の娘が大手新聞社に内定というスクープに対し、事件を犯し窓際に追いやられている元記者が、20年前の誘拐事件の真実を解き明かすという物語。
まぁ例によって例の如く、警察が20年かけて解明できなかった事件を、捜査素人たった一人で・・・っていうのには無理があります。 しかも、その元記者が何か突飛な手段を使ったというのなら分かるんですが、至ってオーソドックスな取材の中から・・・って感じですしね。 それともう1つ、この作品には欠点があって、読中から、結末だけは予想できてしまうんですよね。 誘拐された子が殺された、死体で発見された、なんて記述が一切ないわけですから、普通想像がつきますね。該当者は一名です。 そうなると、ほぉ、作者さんはここで、事件を複雑に見せようとしているな、なんてのが見え見えになっちゃう。 意外な犯人のつもりだったんでしょうけど・・・惜しいですね。 でも、凄く面白かったんですよね。 同じ乱歩賞受賞作の「13階段」とか「天使のナイフ」に似た雰囲気はあります、というのは少し大げさかな。 この2つの名作同様、人物をよく描けていると感じたんですが、やっぱ名著の条件の1つですよね。 |
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法医昆虫学捜査官シリーズの第4段。
まぁどうでもいいですけど、カバー絵の赤堀涼子は36歳に見えないのですが・・・ このシリーズでは、犯人が一番狂気に満ちてましたかね。 タイトルから、「村のしきたりや風習を守るための・・・」的な物語を勝手に想像して読んでいたので、ラストは「あれっ?!」な感じになりました。 この人が犯人だろう、とは何となく想像はついていたのですが、違った調理法を見せられた感じ。 でも、ガッカリしたわけではなく、これはこれで面白かったですね。 赤堀同様、ある分野で突出したスキルを発揮できる人物だったので、ラストのせめぎ合いはかなり見所ありました。 もう少し、例えば駆け引きとか、派手に魅せる事もできたとは思いますが・・・ でも、このシリーズでは一番かな。 |
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横溝正史ミステリ大賞を受賞したハードボイルド作品。
コテコテのハードボイルドは苦手なのですが、この作品はノリが軽くてテンポも良いので読みやすいです。 ノリが軽いっていうか、「言葉選び」という点で凄くセンスを感じさせますね。 そしてやはり印象的なのは、(作品タイトルにも繋がるのであろう)「虹の種」の話。 要するに「悲しみを背負った人達を幸せにするために戦う主人公」の話をハードボイルドに描いている訳ですが、挿入されたその「虹の種」の話が、作品のとんがってる部分を弱めてるというか、上手く言えないんですが、すげー効果生んでるように思えました。 恐らくは作者の創作だと思うのですが・・・まぁだとしても、だとしなくても、これがデビュー作っていうのにはちょっと驚きです。 ラストで主人公より真相が明らかになるシーンは、私自身も読んでて違和感ありましたし、他のレビューとか見てみるとやはり賛否両論のようですね。 でも、個人的にそういう趣向の作品じゃないですし、まぁいいんじゃないかと。 |
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作者初読。
「怒涛のどんでん返し、一気読み注意」 帯にはこういう表記がされています。 確かに2時間で読み終えましたが、「怒涛」じゃなくて「見え見え」ですぜ。 他のレビュアーさんも似たように感じた方が多いようで、キャラ設定にしても、プロットにしても、まとまっているとは思うのですが、こじんまりまとまり過ぎで、全体的にどこか物足りないです。意外性もなかったですしね。 特に不満だったのは、凄い悪事をはたらいている人物が、しかも元々主人公より上の立場の人間でありながら最初から最後まで「弱すぎ」で、巨悪さを感じられなかったこと。 犯人の目的が何となく予想できた状態で読んでましたので、主人公に対する危機感とか、殆ど感じられませんでしたね。 作者は現役の医者という事ですので、医者にしか描けない仕掛けや世界観などを是非。 そんな分かりやすく説明なしでも今の読み手は付いてこれると思うので。 |
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赤堀涼子シリーズの2作目。
5作目→1作目→3作目という順番で読んできたこのシリーズですが、それ程困ることはありません。 今回はウジ虫さんの活躍は少なめでとんぼさんです。 って、別にウジ虫に期待しているわけではないのですが、1作目の反響がすごすぎて控えめになってるのかな、とかも考えてしまいますね。 その分、少し物足りないのですが・・・(笑) 但し、今作は虫の力がなければ絶対に解決してない難事件でしたね。 そういうプロット思いつくのも凄いって思います。 |
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今マイブームの作家さんのデビュー作にて乱歩賞受賞作。
「呪い」がテーマで、主人公が、殺人の被害者にかけられていた呪いの謎を追っていくというお話。 歴史、風習、信仰なんぞの薀蓄を垂れ流されても疲れるだけですが、主人公に軽くそれを語らせているので助かりますね。 被害者の孫娘を主人公のパートナーに置いていますが、この頭の回転の早い女性をパートナーにおいているのも効いてますね。 ですので、「呪い」という言葉から想像できてしまう気味悪さやおどろおどろしさはそれ程感じません。 しかし迫力あり、何故か読後感もよしです。 やはり、この作者侮れません。 |
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「月の扉」の続編というか、大迫警視と座間味くんのその後を描いた7本の短編集です。
二人が酒を酌み交わしながら話題にするのは、既に決着した事件。 ラストの「再会」を除けば、解決済みの事件を覆す安楽椅子探偵という毎度同じパターンだし、また「こういう解釈も可能」の域を超えていないのですが、何れも見事な反転でキレを感じますね。 話を複雑にせずシンプルなのが逆にテンポを生んでいる感じがします。 因みに、パターンの違う、ラストの「再会」も、ある人間の人物像を反転させてるんですよね。 相変わらず上手いな、って印象です。 |
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法医昆虫学捜査官赤堀涼子シリーズの3作目。
良くも悪くも相変わらずの安定感ですが・・・それにしても、レビューを描きづらいシリーズだなぁ。 今作の赤堀は水死体の第一発見者。 赤堀が第一発見者ならでは、の展開はなかったのですが、今作は解剖医の見解を覆す活躍を見せます。 今作は水死体を扱うため水中生物がメインで、残念ながら蛆虫は少なめ(笑) なので「虫の声」を聞いての驚く推理、というこのシリーズ最大の面白味が影を潜めてますかね。 あと、岩楯、鰐川のコンビがあんなハンパな連中に窮地に陥るというラストの展開は不要かな。 |
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相変わらずリーダビリティはいいですね。
1枚のフロッピーディスクにおさめられた50を超える手記を順に読んでいく事になります。 登場人物達が代わる代わる登場してきてなされた証言が記されています。 作者の代表作の1つである「ラバー・ソウル」と同じ構成なのですが、その証言、矛盾しているにもほどがあります。 それはもう読み手を混乱させるにも限度があるってもんで、ここまで来ちゃうとオチは読めてしまいました。 まぁ、ワープロとかフロッピーディスクで分かるように、かなり昔の作品でもありますし、今読んでしまうと、ネタの鮮度と言うかなんというか、「古い」というのが正直な感想でした。 が、さすが井上夢人さんですねぇ。そんなオチで終わらせてないです。 最後にもう一捻りあるっていうか、ラストのほんの数ページで作品に更なる奥行きを持たせることに成功していますね。 ちょっとしたことなんですけどね。 「古っ」で終わってしまうのとは読後感がかなり違う気がします。 |
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