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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数154件
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最後に意外性を用意したりとミステリのテイストを楽しめる面白い読み物といった印象でした。美術にはとりわけ知識も豊富ではなく美術館に足を運んだことも正直一度もありませんが、そんな自分にも楽しく読める内容で著者の絵画に対する
思いなどが素直に伝わってきます。はるか昔に生き生涯を終えた人のことに関してあれこれと知識として知るというのは個人的には好ましく楽しいと感じます。芸術に命を捧げた人たちが居た、そんな人生を選択し送った人たちの声が間近に聞こえるようなそんな気がしました。天才だったのか日曜画家だったのか評価が定まらないルソーを主人公にした謎解きミステリとした感じもこの本の良いところだと思います。真贋を競う二人の人物にも縁がありそれらが物語の幅を広げることになっていてそれぞれの人物描写が緊迫感を生みだすストーリーは読み応えがあります。ハッピーエンドとしたのもこの本には当然で次を読んでみたいと思いました。次は真絵を主人公にした新しい冒険の旅を読ませて欲しいと思いました。 初めて読んだ作家であり本でしたがこの本に限っては自分の好みの範囲でした。 |
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人間消失と密室殺人とあるが、これで興味を惹かれ本を手にした人はまんまと騙されることになる。そんな仕掛けが隠されたストーリーである。登場人物14名でこの中から殺害される人物が2名。わりとシンプルな構成とストーリー。
だが事件の目撃者であり語り手として読者をこの物語に誘う人物には少し問題がある。それはマドンナの存在で彼はこのマドンナにひと目惚れしてしまう。このため結果として彼の眼は少し曇った状態で廻りを、事件を見るようになる。 当然読者も彼の目線になって物語を追うわけだから同様に少し目が曇る。作者の緻密な計算の上での書き方で伏線もさりげなく見せられるため中々気付かない。物語の舞台となる土地や時代背景など興味深い史実など用いながら女性らしい精細な筆致で情景や雰囲気を表わしていてとても読み易い。ことの真相には意外性は充分で二人の人物の態度やもの言いもそれはそのとうりで無理なく筋が通っていて、結果として真相に近づくヒントでもありまた逆の作用にもなっている点が興味深い。心理のアヤなどをうまく使い読者の目くらましになっているところが作者の技を感じる。本国刊行年が1945年であるが今読んでも色あせず楽しめるミステリと思う。語り手のダンバー大尉は精神科医で関係者の格好、顔つき、仕種、経歴、会話の内容などからあれこれ分析するのだがその彼に依ってミスリードされる読者という構図がこの本のすべてだといえる。こう書いたからといってこのミステリの面白さを阻害するとは思えないので興味のある方は一読をおススメ。 |
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【ネタバレかも!?】
(3件の連絡あり)[?]
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五つの短編が収められた本書。影の主役に花を据えて書かれたミステリです。特筆なのは、その情感たっぷりの文章です。これは最近の自分の読書傾向からすると、とても新鮮でした。美しい古典文学のような話し言葉や周りの
情景を映し出す言葉の数々。悲哀に満ちた時代を写す物語。そして意外な裏側の本当の形。今読んでも色あせないむしろ新鮮な気持ちで読める五つの物語。表題作の戻り川心中がある意味怖い話でその近松の世界のような雰囲気が 崩れる有様はとても異様で驚きます。どの話も花が絡んでいますが、花の命をモチーフに人の心と心情をうまく絡めたストーリーです。こういったミステリも楽しむことはとても有意義であると思います。 |
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ビジネスエリートの物語。でもミステリじゃあない。けっこうシビアな話で読後感はあまりよろしくない。各人の視点でストーリーが進み、ある秘密が明らかになってくるが最後は水戸黄門とか大岡越前とかの感じで終息する。これって
著者は少しの必要悪も世の中には有るべきではない、そう云いたいのかなと感じてしまう。多少世間の荒波にもまれた身としては世の中「だったら良いのにね。」と思ってしまう。清廉潔白な成功者ってそうはいないだろう。程度の差こそあれ ダークサイドに足を踏み入れなければ企業のトップには上り詰めないだろうと思うがどうだろう。激烈な競争社会で勝ち残るのは何かを犠牲にしなければ出来ないはずだ。悪魔に魂を売るのも選択肢の一つだと思う。今、現実社会でも ある会社の問題が話題になっている。文字どうり会社の存亡に係わる問題だ。なぜこうなったのか、誰の責任なのか。ノホホンとサラリーマンは気楽な稼業と考えている学生がいたらこの本で目が覚めるだろう。説得力のある物語を読ませてくれる 作家だ。 |
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先に「アルバトロスは羽ばたかない」を読んでいた。そのためパターンが解かっていたのだけれど、それでもなお楽しめたのは筆者の力量が並ではない証拠だと思う。児童擁護施設「七海学園」を舞台にした連作ミステリの
形になっていて、それぞれのエピソードで謎の解決は付くのだけれど、最後の章でこれまでの話がすべて繋がり大きな謎が隠されていたことに読者は気付く、そんな仕掛けのあるストーリーとなっている。パターンが解かっていたと 書いたのはこのことです。コージーミステリ+社会派といった格好だけれど、その舞台に選んだ養護施設の子供たちの生活と抱える問題をサラリと見せるので、読んでいて心が重くなることも無くしかし考えさせることになるので、この辺は 作者のアプローチの仕方の上手さだと感じる。登場人物もみんな生き生きと描かれ、読んでいてその様子の画が自然に頭の中に映し出された。文章を読んで頭の中に情景が映し出されるのはその文章とこちらの感情というか気分がその文章と シンクロしているからだと思う。これは面白いなと感じながら読んでいる時に多くあることなのでこの本も自分にとって面白い本と云える。ミステリをかたどる謎は他愛も無いといえばそうかも知れない、だが登場人物にそれぞれの役割が キチンと与えられており、まず読み物として面白いそんな感想を持てる内容です。ななかわかなん、何の意味を隠したペンネームなのか少し気になる。 |
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この本のキーワードは、過去のトラウマ、新薬開発、名前、親子の確執、誘拐犯、そんなところ。云ってみれば、あの本とこの本を上手くミックスさせたような内容だ。具体的な本のタイトルを書くとそれでネタバレに繋がる
ので書けないけれど、要するに斬新なアイデアのもとに書かれた誘拐ミステリではないけれど、とてもミスリードが上手くドンデン返しが効いているストーリーだということ。実際に地の文ではキチンと正直に書かれているのだが、読んでいる コチラはまったく気付かなくてすっかり騙されてしまった。まぁ。その辺のテクニックは中々のものと評価できる。文章も読みやすく人物の書き分けもしっかりしているのでスラスラ読める。ただ、伏線は周到に張ってあり読後にその辺の 上手さに感心するのも事実。良く出来たミステリと評価できる。その意味ではもう少し話題に上っても良い作品ではないかと思った。この著者のファン以外に読まれないとしたらもったいない作品だと思う。 |
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ホラー大賞受賞作だけれどありきたりのホラーの内容ではなく、ミステリの味付けもした内容でとても面白かった。語り口の岡山弁の表現も効果的で雰囲気にピッタリ合い子供のころ大人から聞かされた昔話のような感じがした。
怖いのは物の怪でも怪異でもなく人の心と貧しい社会だという、そのリアリティが断然読む物に迫ってくる。応募作の「ぼっけえ、きょうてえ」の他に書き下ろしの三編が収められているがこの三編もすごい内容で、この人の筆力に 圧倒される。すべての物語が読み応えがありなんともいえない読後感を持つ。京極夏彦とはまた違う世界の話しだけれどこういった物語は好きだ。単にホラー小説と思って手に取らない人にはおススメしたい。人それぞれ違うだけれど ある種の感銘は受ける物語と思う。 |
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筒井康隆に「富豪刑事」があるので「貴族探偵」とくれば二番煎じの感は免れないと思うけれど、設定はともかく五編すべてが麻耶雄嵩らしいトリッキーなスタイルの物語で読み応えがある。相変わらずミステリにおける約束事
とかタブーなどを逆手にとったような一癖も二癖もある内容で、たったひとつの事柄が完璧とおもわれた形を破壊する様など上手いなあと感心する。そう、ファン心理が行う行為が致命傷になる「こうもり」などね。 この人の短編はあまり読んだことがないけれど、この本に収められている五編はみんなレベルの高い作品でロジックで解決を図るという遊びがとても楽しい。「ウィーンの森の物語」など単純な話だけれど実はロジックだけで この絡まった紐を解いていくのはかなりの高等テクニックだと思う。限定された人数を白か黒かロジックで証明する執事がすごい。文章も摩耶雄嵩ってこんな書き方をするんだったかと感じたほど物語を読ませる部分は読み易い。 ミステリらしいミステリが収められたこの本はミステリファンなら読まないことがミステリだ。 |
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ジャンルでいえば倒叙ミステリになる内容で、犯行を隠そうと必死に策略を巡らす妻と愛人二人の様子が描かれている。しかし、最後には明らかになってしまうというお決まりのパターンだけれど、その過程がどれほど読み応えがあるかが
この形式の勝負どころだ。結論からいうとかなり良く出来ている。二転三転する調べる側と隠そうとする側の攻防がとても上手く書かれている。単なる失踪の状況であれば警察は介入してこないので世間の目は誤魔化せると考えていた 妻と愛人だったが、継母と義兄が雇った探偵が色々と調べ始めて不審の目を妻に向ける。この探偵を遠ざけるために苦肉の策で警察が公開している身元不明者の情報を探り死んだ夫に会う死体を探し出して失踪した夫だとすることにした。 しかし、しつこい探偵のせいで事態は悪くなる一方。その他にも妻にとっては思いがけないことが次々と明らかになって追いつめられていく。最後の裏切りにもちょっと驚かされるが伏線はちゃんとあった。迷走する妻と愛人だが二人の駆け引きが このミステリの醍醐味で倒叙ものは最近あまり見ないのでけっこう楽しめて読んだ。事態があれこれ動く要素も考えられていて探偵の個性も強くできばえは中々と思う。 |
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クックとくれば「緋色の記憶」なんだろうけれど、この「沼地の記憶」も似たようなスタイルの物語だった。年老いた元教師が過去を回想するという手法で物語が始まる。何かで読んだけれどクックという人は展開の激しいスピーディな物語のミステリは自分では好きでないので、このような時間をゆっくり辿っていくようなものを書いているといっていた。これもフラッシュバックのように過去の出来事を回想し徐々に全体像を見せていくというスタイルである。ときおり現在の生活の
様子が描写されているが、それが伏線とはまったく油断も隙もない。ただ、誰もが予想する展開を裏切りそっち?と面食らわせてドキドキさせておいて肩透かしの末に何となく想像した結果をひっくり返したりとミステリのツボを得た ストーリーの上手さは今回も楽しめる。品の有る上質な文章も健在でバタバタした展開のミステリに疲れたらこの人の本がおススメです。 |
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金田一の世界のような本格的ミステリです。舞台は明治の時代です。北村 薫の「鷺と雪」も昭和初期の時代のお話でしたが、あれは単に物語の舞台として背景としての設定でした。これは明治時代という設定自体が内容の根幹に係わってくる
お話です。理由は、そうです現代では昔懐かしい本格ミステリは書き様がないからです。今の世の中では余りにも制約が多すぎます。交通が遮断した山荘で起きる連続殺人。警察の介入はなく助けを呼べない孤立した状況。このシチュエーション だけでもサスペンスが盛り上がります。しかし、ケータイやパソコンで情報が直ぐにも外部に流れます。ミステリは成立しません。ならば時代を遡るしかありません。伊藤博文公の書生だった二人が探偵とワトソン役になって連続殺人の謎に 迫る物語です。政界をうまく泳ぎまわり利権を手にしていた男に脅迫状が届き、やがて屋敷内で首を切断された死体で発見されます。捜査に乗り出した二人ですが、次々と殺人が続きます。広大な屋敷にいる妾四人と座敷牢に閉じ込められている男。シチュエーションはこれ以上ないミステリ色満載です。死体を発見し隣の部屋に全員を集めて探偵が警官を呼びに行く。ワトソン役が全員を見守っているとやがて警官が来る。隣の部屋の死体を確認しに行くと首が切断されていた。いつの間に・・・。何故? 最後に六人の犠牲者がでても探偵はこれまでの出来事に16の謎が有るといいます。確かに不可解な謎が16もありますがこれをどう説明するのか最後のページまで興味は付きません。前作は読んでいませんが探偵とワトソン役のこの二人の様子や雰囲気も懐かしいミステリの世界で、続編を用意しているのでしたらこのままこの世界感で書き続けて欲しいものです。これはこれで成功と感じる内容でした。 |
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始めにお断りしておきますがこれはミステリではありません。よってここで読後のレビューを書くのはサイトの趣旨からは逸脱していますが大変面白い本でありますので敢えて書きます。「ささらさや」を読んで
この作家の作品に惹かれたのでこの本も手にしました。超リアルな題材を扱っているのですがこれが痛快で楽しく笑いありホロリとさせたりとエンターティメントとして上々の作品です。編集者としてバリバリ働く女性が 主人公で担当の作家からブルドーザーとあだ名されるほどですが、その生き方にはある種爽快感があります。のほほんと苦労知らずに生きている人がいたらこの本を読むように意見したい気分です。缶コーヒーのCMじゃないですが、 世界は誰かの仕事で出来ている。そう、そのとうりです。お笑い芸人の言葉にあるように小さなことからコツコツとです。リアルな話ですが真正面から取り組んでいます。専業主婦もフルタイムで働く主婦も子供がいれば避けられない 問題です。七つのお話で構成されていますが男は一歩家から外に出ると七人の敵がいる、という有名な言葉に引っ掛けて主人公の山田陽子が遭遇する、あるいは自ら招くトラブルを真摯にそして面白おかしく描いています。群れない、井戸端会議に夢中の女たちを軽蔑する、そんな真っ直ぐで独自のポリシーを持った陽子ですが簡単に敵を作ります。ケンカ上等の精神ですが陽子も云っているように多くの無駄話のなかにたった一つ重要な情報が入っている。それを逃しているのは自らの生き方の所為とはいえやはり悔やまれるとそんなプチ教訓などもあります。女性の住む世界は男社会とは別に厳しいものですがその処世術なども学べるような気がします。視点を変えればサラリーマンの立身出世物語にも通じるような爽快感があります。群れないといっていた陽子ですが最後には知り合った愉快な人たちとしっかりネットワークを作っているところも笑いを誘います。ラスト七人目の敵から言われます七人の敵がいる・・・その後の言葉を知っている?されど八人の 仲間がいる。ラスボスとの気持ちの良い会話で七つ目のお話が幕を閉じますが、この作者のますますのファンになった自分を自覚しました。おススメです。(特にこれから結婚する若い女性に、子育てとは何か?それをこの本で学んで下さい)。 |
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初めて読む作家の本って、ある意味ギャンブル気分。当たりかハズレかどっちだろうと不安を抱えながら手にする。これは読んで正解の本だった。まぁ冒頭から謎全開で始まり家探しも説得力ある話で、フゥーンなるほどとしか云えない。
この辺の読者を納得させる筆力はたいしたもので物語への期待が膨らむばかり。ひとつの作品に散りばめられた謎も贅沢でこれは着地はどうするんだろうと心配になるほどいろいろの謎が提示される。収束も破綻無くまとめられていて緻密な プロットを構築しているのがすごいと感じる。ちょっと島田荘司に似た文章でしっかり読めるのには安心した。これほどのネタを使ったミステリを書く人とは思わなかったので万馬券とは云わないまでも高配当を手にした気分。 他の作品も読もうと思った。未読の人にはおススメ。難を云えば冒頭に出てくる弁護士の川路が妙な言葉使いをして戸惑ったがこの点に作者は何の説明も無い。これはシリーズもので川路弁護士はシリーズキャラクターなんだろうか? その辺が少し違和感があり最初はちょっと読みづらかった。しかし、ミステリとしは上出来で最後まで楽しめた。こんな作家が居たんだというのが素直な感想。 |
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樋口真由消失シリーズよりは間口を広くしたというか、読者層を下げたような感じだけれど、少し笑いの要素を多くした青春ミステリとしてこれはこれでより多くの人に受け入れられる作品じゃないかと。五編が収められているが
それぞれ工夫を凝らした謎を見せて、あっさり答えを出す探偵役の眉目秀麗成績優秀の変態がオモシロイ。細かな点まで計算された書き様で安心して読める作者の力量が心地よい。ビギナー向けのようでもあるが、そこそこ毒もあり それほどノー天気なお気楽ミステリじゃないと。この作者のファンなら手にとって読んでみるべし。 |
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まず、訪問販売についてのいろいろな問題部分が書かれている。これは主人公が事件に入り込んでいくきっかけになるところなので、相手の手口とかずる賢さがしっかり丁寧に描かれている。要するにオレオレ詐欺的な犯罪を構成する
訳で、一般的な市民はキチンとした対処をしないと相手の思う壺にはまることになる。そうならないためにどうすべきか、そんな教えになる良い書き方だと思う。そして隣室のトラブルに係わった主人公は仕事としてアパートで餓死した親子の様子をリポートしているうちに、悪質な訪問販売を繰り返すグループが凶悪な殺人事件を起こしている事実に行き当たる。現実社会でもオレオレ詐欺や振り込め詐欺の犯罪をシンジケートを組んでやっている犯罪集団が居る。小説の中では騙され何もかも失った人が、復讐のため知恵を絞り用意周到に計画して相手を騙し失った物を取り返す、そんな内容が共感を呼び爽快感に繋がる訳だ。しかし、彼らは何の罪もない人たちをターゲットに大切なお金を騙し取っていく。ある意味とても許しがたい犯罪である。こういった犯罪に加わっているのが同じ人間であるという事実にやりきれなさ以外に何もない。ただ楽して人より金を手に入れたい。金を手に入れるためなら何も考えない。そんな人間の心の内は何がどうなっているのか非常に興味深い。脱線したがこの訪問販売のグループも主犯格は居るがメンバーがその度入れ替わり痕跡を残さないようにして捜査の手が及ばないようにしている。この連中も無機質な自分勝手な行動原理を見せ現実の詐欺集団と同じ描き方をしているので、読んでいると非常に腹立たしく、我知らず物語り世界に入り込んでいて苦笑する。けっこう展開の上手さ人物の動かし方の上手さがあり読みふける。ラストはともかく目の付け所が上手いなと感じる著者の姿勢で、ミステリとしてもこれはこれで面白い一冊と評価できる内容だ。 |
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閉じ込められた山荘。ゼミ仲間のメンバー4人全員に殺意があった。15年の時効寸前に現れた一人の男が語る言葉。あの時の真犯人は俺だ。そんなシチュエーションで始まるストーリー。
誰がどうやって犯行を?それがこのストーリーの核。大仰な文章がいただけない。もっと宮部みゆき氏とかの文章などを見習うべきだ。でも、手垢のついたジャンルに挑む精神には敬意を表したい。 ドンデン返しの連続になる後半は楽しみながら読んだ。トータルで云えば自分はこういったものが好きなので面白かったと評したい。 このトリックに先例があるかどうか分からないが良く考えられていると思う。 この手の話が好きな人にはお勧めできる。一読の価値はある。 |
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けっこう長い。文庫で上・下巻に別れている。行方不明になった同級生と同じ班だった六人のその後の人生がメインストーリー。かなり理屈っぽい文章で様々な人生を送る六人が描かれているが、そういった点が物語りに入り込みやすい。
この人の筆致はこの物語にあっている。何故同級生は消えたのか、何故二十年後に彼女から私を覚えていますか?などとメールが届くのか?ミステリが好きな人にはこのシチュエーションには食指が動くこと間違いない。 なかなか上手い設定で物語を作るという印象だ。六人それぞれに降りかかる災難。それは自然なのか必然なのか。消えた同級生の出来事を引きずっている六人。シンプルに云うと消えた理由と送られたメールはそのつながりは破綻無く こちらの胸に届く。誰もが秘密を守った結果であると言える。しかし、最後の章でそれが明らかになるまで少々長いと感じる。六人の人生を描きかったのだろうが、交差する事件にしても少しご都合主義的な流れが見える。 しかし、ストーリーテラーとしての印象を持ったのでこの他の作品にも興味を持った。機会が有れば読んでみたい。この作品に限って云えばミステリとしては、そう読んでいてワクワク感はないが面白い物語を読んだと言う印象でした。 |
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ただ家に一晩泊まってくれ。探偵は二人で。そんな奇妙な依頼を受け向かった家では家人は何も語らず二人は酒を飲んで寝てしまう。しかし、明け方大きな音で目覚めた二人が見たものは切断された四つの死体。床は血の海で部屋に入らず
一旦引き上げ探偵事務所の所長を連れて引き返すと、死体も無く部屋の床もキレイになっていた。殺害した死体を秘密裏に処理すれば犯罪は発覚しない。何故二人の探偵に見せその後隠したのか?これが冒頭見せられる謎。 興味を引く設定ではある。創元推理文庫の大幅改稿による作品で読んだ。ネタバレになる危険が多いのでアレコレ書けないが冒頭の謎の意味も犯行の動機も一貫した流れで、最後の真犯人の指摘も意外なところに居てサプライズ感が強いし、 伏線もいろいろ張り巡らせてありキチンとしたミステリではある。細かい点はおいといてけっこう楽しめた。個人的には好みの作風である。 |
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創元推理文庫で読んだ。上・下巻に別れていてけっこう長い。幻の絵画ロンドにまつわる連続殺人事件の物語。絵画と言えば花やポートレートのような人物画とか印象的な街並みを描いた風景画を想像する。しかし、その一方で
死生観を表わした宗教的な意味合いを持つ残虐でグロテスクな画もたくさん有る。時の権力者たちに依って描かされた、あるいはおもねって描いたその様な絵も歴史的に存在する。このロンドも狂気のような絵画として知る人がホンのわずかという 幻の絵画となっている。魅せられた人たちに起こる忌まわしい事件。謎の人物からの個展の招待状。そこには有名な絵画を模した死体が用意されていた。主人公もロンドに魅せられた若い学芸員。幻の絵画ロンドとは。 抽象的な表現が多いが絵画にまつわるエピソードをいろいろ語り、事件に巻き込まれた主人公の行動を追う展開が上手く描かれていて眼が離せない。 それほどまでに画に魅せられる気持ちがいまひとつ理解出来ないのはこちらが凡庸なせいでしょうが、熱くなるその世界の人間の気持ちは正確に描写されている。初めてのミステリとしては良く書かれていると思う。 異質の作家の異質なミステリという事ですか。 |
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