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極限捜査



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【この小説が収録されている参考書籍】
極限捜査 (文春文庫)

極限捜査の評価: 4.20/5点 レビュー 5件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.20pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全4件 1~4 1/1ページ
No.4:
(4pt)

共産圏下だった頃の東欧を舞台にした警察小説の秀作

ある東欧の国の美術館館長が自殺し・・・というお話。

前作「嘆きの橋」同様、東欧が共産圏だった頃を舞台にした推理小説でした。一時期の息の詰まる様だった共産圏下で殺人の捜査をしなければならないというあまりいい仕事ではない事を主人公が熱意で追求する所に本書の読みどころがある様に思えました。

最近の警察小説が最後に国際的謀略に行き着くのに比較して、本書の場合はあまり大風呂敷を広げていない感じなので、人に依っては小味な感じかもしれませんが、この時代の共産圏時代の鬱屈した雰囲気は読み応えがるので、読んで損はないと思います。

訳はスパイ・謀略小説の訳で定評のある村上さんですが、「蒲柳の質」「陋巷」「完爾」「懸想」等といった今だとわかりにくい所もある表現もあるので、ここら辺も評価が分かれるかも。

ともあれ、読んで損のない警察小説。是非ご一読を。
極限捜査 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:極限捜査 (文春文庫)より
4167705672
No.3:
(5pt)

欠点もあるけれど

この作者の欠点は、前作も同じですが、ばたばた動いていたら偶然真相が明らかになる、主人公の思い付きがたまたま真相につながるといった、ご都合主義的な要素が強い謎解きです。
しかし、社会、仕事、家庭のいずれにおいても、鬱屈した主人公たちの姿は独特の魅力があります。特に後半1/3を過ぎたあたりからの息苦しさを覚えるような緊迫感は読み応えがあるでしょう。
単純な意味での解決では済ませないストーリーにも好感が持てます。おそらく作者の描きたいことは謎解きではなく、もっと人間的な主人公たちの姿なのでしょう。
五部作とのことなので、続編も訳されることを期待しています。
極限捜査 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:極限捜査 (文春文庫)より
4167705672
No.2:
(5pt)

第二次大戦後の東欧のソ連支配が生んだ心の闇

 本書は第二次世界大戦後の架空の東欧の小国の〈ヤルタ・ブルーバード〉すなわちヤルタ大通り(主人公の捜査官らが勤務する人民警察や国家保安局の所在地)が舞台となっています。戦後間もない東ヨーロッパの状況はベルリンくらいしか知りませんでした。本作はフィクションとして書かれていますが、作中ハンガリーがワルシャワ条約機構から自国兵士を撤退させ西側につく動きを見せ、ソ連が戦車をブタペストに進軍した出来事が挿入されています。戦後東欧史は米ソの冷戦のうねりの中では注目することが多くありませんが、このようにフィクションの時代背景として出てくることによって、興味深く読むことができました。モスクワから殺人課に派遣されたKGB局員の芸術に対する考え方など当時のソ連の共産主義思想の歪みをよく表現していると思いました。
 戦後の荒廃した都市部の様子は70年代のニューヨークを思わせました。当時の東欧での市民の心の苦悩は何か共通するものがあるのでしょうか。時代考証はしっかりしているのでしょうが、作者は治安が悪化した70年代ニューヨークをイメージしているのでは?という印象を持ちました。ストーリーは実の読み応えがある重厚な世界観が横たわっています。洋の東西を問わず人の心の闇は国、時代背景を違えても普遍的なものなのだろうと感じました。
極限捜査 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:極限捜査 (文春文庫)より
4167705672
No.1:
(4pt)

終戦間もない社会主義国家の暗部に深く切りこんだ逸品

本書のメインストーリーは、1956年の東欧の小国を舞台にした警察小説である。主人公の‘わたし’ことフェレンク・コリエザールは民警殺人課捜査官で、37才の大男である。彼は同僚らと共に、元美術館長のガス中毒変死事件を皮切りに、ある画家の惨殺事件、共産党役員夫人の失踪事件を任される。また、第二次大戦直後、連続婦女暴行殺人の捜査中に殺害された、‘わたし’の相棒だった捜査官の事件も未解決で残されている。
民主国家でない社会主義国の国家の暗部が、しかも終戦後10年余りしか経っていないシチュエーションが、‘わたし’たちの捜査に暗い影を落とす。捜査課の国家公安捜査官やモスクワから派遣されたソ連KGB局員の監視を受けながら、それでも‘わたし’は、刑事としての責務と正義を貫き、破滅を覚悟で文字通り「極限」の捜査をおこなうのだった。
また、本書は、原題の『Confession』、すなわち小説家でもある‘わたし’の『告白』小説の形をとっている。彼は妻のマグダとは離婚寸前の危機的状況にあり、愛する14才の娘アグネスのためにかろうじて踏みとどまっている。一方で文芸サークルのメンバーである人妻と不倫関係にもある。こうして本書は、サブストーリーとして‘わたし’の私生活を描くことにより、歴史、政治、犯罪といった大きなテーマのみならず、多様な面を持つ生身の人間のドラマとして、読者に迫ってくる。
‘わたし’は、息が詰まるような終戦間もない社会主義国家に生きる、捜査官であり、小説家であり、夫であり、父であり、そしてなによりもひとりの男なのである。
極限捜査 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:極限捜査 (文春文庫)より
4167705672

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