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対岸の彼女



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【この小説が収録されている参考書籍】
対岸の彼女
対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女の評価: 4.24/5点 レビュー 355件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.24pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全290件 281~290 15/15ページ
No.10:
(4pt)

負け犬とか勝ち犬とかじゃなくて

女という生き物は、幼少時代から徒党を組み、自分がどこかのグループに属さないと不安になるという性質がある。自分たちと異質なものは受け入れない排他的な集団性により、些細なことをきっかけに仲間はずれが始まる。それは、学校、職場、子供を連れて行く公園でと、延々と続くのである。そんな嫌悪したくなるような女の性質をありありと暴露しながら、女同士の友情を描いた作品。公園で他の母親と馴染めず、働くことを自分に課すが、「働くことの意味はあるのだろうか」と自問自答する平凡な主婦、小夜子。30代は小夜子の視点で、高校時代は小夜子の雇用主である葵の視点で、交互に物語が進行し、最後に癒合するという面白い構成。小夜子と同じ30代子持ち主婦である私にとって、小夜子の視点で描かれた箇所は、友人の打ち明け話を「うんうん」と聞いているような感覚であった。その合間に断片的に描かれる高校時代の葵とナナコの友情がきらきらと眩しかった。高校時代のナナコは人間的に魅力があり、この小説の大切な要となっている。葵のその後の人間性に大きな影響を落としているのもよく読み取れる。対岸の・・・という題名からか、負け犬と勝ち犬が対立しているかのような宣伝が見られるが、そんなことは度外視した真の友の価値を問う物語であることは、読んだ人にはよくわかるはず。
対岸の彼女Amazon書評・レビュー:対岸の彼女より
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No.9:
(4pt)

確実なコミュニケーションの時代のエイシング

直木賞選考委員の渡辺淳一氏が「…これまでになかった純粋な女性小説」と評していましたが、若さが眩しい時期を過ぎた女性の現在位置をリアルに示す一作だと感じました。主人公の二人の女性は、ショットバーでカクテルを飲むような世界とは無縁の生活を送っています。人気女性作家にありがちな「癒し」の要素が薄まり、著者の中に「女性のしたたかなさ」が確かな根をはってきているような印象を受けました。主人公たちが、自傷的なナルシストを時代を経て、人間関係を探求するフィールドに立とうとしている姿を著者に投影するのは読者に許される自由でしょう。本作は、三歳の愛娘が公園で同年代の子供とコミュニケーションできないところから始まります。コミュニケーションの不全が本作の全体を覆っています。昨年の新潟県中越地震の震災現場では高齢者世帯のコミュニティやネットワークの問題が重要課題とされています。しかし、その模範となるモデルはいまだ未完成です。クライマックスで主人公は「なぜ歳を重ねるのか」を自身に問い、一つの見識を語ります。本作に描かれたハッピーエンドは、不確かな人間関係を始めることです。しかし、それで本当にハッピーとなるのか、答えは定かではありません。「不確実なコミュニケーションの時代のエイシング」に挑む新直木賞作家の今後に注目したくなる一作です。
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No.8:
(5pt)

帯広告にひかれて読んでみたが

内容は違うけども、一揆に読み終え久々に本を読んで泣いてしまいました。葵の気持ちも、沙代子の気持ちが痛いくらいに理解できました。文中、所々でそう思うよ実際という事が、本当に多くて心から共感できました。なぜか、心がちょっと元気になりました。他の角田作品も呼んでみたくなりました。
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No.7:
(5pt)

良かった。これで太宰治も浮かばれる…。

もう去年の「蛇にピアス」だの「蹴りたい背中」だのをものともしない、一気に読み進めたくなる面白さ。我々が待っていたのはあんな小中学生の作文ではなく、こういう文学作品だったのだ。以前、「蹴りたい背中」のレビューで、私は「走れメロス」の著者である太宰治について語った。太宰治は芥川賞がどうしても欲しく、土下座してまで頼みこんだ。が、彼の没後、彼がそんなにしてまで欲した芥川賞の栄冠は、二十歳にも満たないお子様に受賞されてしまう始末…草葉の陰から太宰氏を始め、歴代の文学作家達が悔しがっていることだろう…と。結局、去年は作品内容云々よりも受賞者のルックスがメディアに注目された。別に我々は美少女作家を見たいのではない。面白い文学作品が読みたいのだ。あの勘違いぶりには、絶句したものだ。とは言え、今年はさすがに「美少女高校生が芥川賞受賞!」などというふざけたことはなかった。いや、よかった、よかった。
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No.6:
(5pt)

女性のみならず全ての人間に読んでもらいたい。(年齢問わず)

近年まれに見る大傑作でした。人の生き方まで視野に入れ、その上で物語として上質である本作は「本好き」と自称する全ての人必読です。人と人との関係をこれほど明確に表現した書物と出会ったことがありません。みんな人間関係で悩みます。男も女も、老いも若きもみんなです。しかし、本書のナナコの言葉は我々全てに勇気を与えてくれます。ほんとその通りです。本当に大切なものをみんな探しているんです。その大切なもの探しの中で、人間関係が絡み合ってきます。下手すると我々は自分の大切なものを守ることより、ただのつながりだけでしかない大切でない人間関係を選んでしまうことがあります。そんな選択をしてしまう迷える我々に対して、本書にはその答えのきっかけが詰まってます。本当です。考えます。繰り返しますが、高校生以上の全ての人、必読です。
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No.5:
(4pt)

コドモも大人も楽しめる

途中で登場人物の学生時代に飛ぶので、あらら?と思ってしまいましたが、学生時代の描写は不可欠でした。ずっしりきます。いじめ問題にしても、「ここにはわたしの大切なものは一個もない」からと、何があっても平気な顔をしている女の子がかっこよかった。大人になったからといって その手の問題から開放されるわけでもないので、こういう芯の強さは大事だし、この本はあらゆる世代に読まれてほしいと思います。ママ友だちの関係を学生時代の軽いイジメと同一視していて、大人になってからの人間関係にうんざりしている人が読むとまた違った味わい方もできるかもしれません。結婚するのが嫌になってくるような、奥さんのやる気をそぐようなことばかり言う男にしても、いやーな感じのリアルな描写たっぷり。「太陽と毒ぐも」以上に濃いお話でした。
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No.4:
(5pt)

信じられる女友達って…

ひとりぼっちが怖い(友達がほしくてたまらない)ふたりの30代女性の日常や記憶が入れ子になって描かれた話。3歳の我が子を「公園デビュー」させることに失敗した小夜子。その失敗の原因が自分の人間関係ベタにあると感じて、その超克のために働きに出ようとする。そこで同い歳の葵に会う。葵は会社経営者。葵もまた「ひとりぼっち」であることを恐れる心性が強い……。人はなぜ一人になることを恐れ、他人と群れようとするのか。配偶者がいても、子供を持っていても、女友達がいないということが耐えられない女たち。その根にあるものは何なのか、おぼろげにみえてくるような作品である。
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No.3:
(5pt)

友達の意味

帯やら新聞広告では「子を持つ女とそうでない女」の対立?みたいに書かれていたが全然違うと思った(いい意味で)。友達の意味について心底考えさせられます。確かに今、三十路半ば前、兼業主婦ただし派遣、子供1人のみ、のある意味小夜子そっくりの私に友人と呼べる人がいなくなっていることに気づく。日々の家事、育児、仕事、雑事に忙殺されている。友達と呼べた人がまったくいなかったわけではない。だけど彼女らはかつてのナナコのように遠い存在、連絡すらとれないものが多いのだ。家庭という殻の中で、ママ友という名の仮想友人?に囲まれた小夜子みたいな主婦はたくさんいると思う。そしてまた葵のようなひともきっといると私は思いたい。「なんのために年を重ねるのか」と小夜子や葵のように自問しながら、もしかしたら逢えないかも知れない、そんな稀有な、存在を求めて、生きていくのかなあと切なくなった。恋人を見つけるよりも、夫を見つけるのよりも、ずっとずっと、友達を見つけることのほうが難しいと感じるこの頃の思いに、この本はすこしでも支えになってくれた。願わくばこの本を読んだひとと語り合いたいと思うのだが・・・?
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No.2:
(5pt)

角田さん直木賞受賞お目でとう!!

角田光代はこの近年見事な成長で執筆してきていた。小説だけに留まらず、エッセイでも、彼女にしか書けない文章を生み出した。その作品は水面を描く天才と言える。水面の上も下も、彼女にかかると描いてしまうのだ。この作品も、改めて考えると類似作品がありそうなのだが、何故かない。それは、女でしか書けない世界で、かつ綺麗事にしない彼女の力量がこの作品を際立たせているからだと私は思う。物語は高校生と30代の時期を交互に進む高校生で主人公である楢橋葵は、30代では主人公田村小夜子の雇用主である女の世界は暗黙の了解で流れる空気がある高校生になっても、30代を迎えてもその空気は消滅しない女性同士仲良しに見えても、その環境下だけの仲良しなのだ限定された親密度で、過剰な親密度は彼氏へ向けるこの登場人物達は、その女の友情に器用に立ち回れない友情が存在することを密かに信じている故に、ぎこちない言動でいじめの経験を持つそんな葵と小夜子が人生経験を踏み30代で知り合う葵には世間を騒がせた事件が高校生の時あった小夜子はその事件を知ってどう行動するのか?葵はこれからも背負う過去の噂とどう折り合いをつけるのか?形にならない、女が目を背ける友情の問題を焙り出した見事な本
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No.1:
(5pt)

脆く、儚く、確かなもの

どんなに言葉を尽くしても、その言葉にはあまりにも多くの意味がありすぎて、そしてそれらの不確かな言葉の無限の組み合わせによる会話は、理解しあうための道具としてはあまりにも絶望的な気がします。人間という生き物は、人と人とが本当に理解しあうための道具をまだ手にできていないのかもしれません。相手のことを本当の意味で理解なんかできないし、また自分のことを本当の意味で理解してもらうこともできない。けれど、そんな関係であるにもかかわらず、ときに人はお互いの中にある種の同じ感情を共有できることがあると思うのです。「友情」というのもそのひとつなんだと思います。もちろん「友情」と一口で言っても、種類は多様です。相互理解など必要としない、ただ携帯電話の登録メモリーの数を稼ぐためだけの友情もあります。それは、友達の数で自分を計る尺度のようなもの。お互いの上に成り立つのではなく、自分のためだけの友情。けれども、まれにではあるけれど、お互いがお互いを同じように必要とし、同じ場所へ行きたいと願う友情。そんな友情が生まれることがあるんです。人間同士の心の深い部分でのつながりとは、あまりにも脆く、儚い。けれども、そこには確かな手触りを持つ何かが生まれることがある。それはもう奇跡といっても良い気がします。そんな友情のお話です。読んでいて、泣きそうになりました、ぼく。
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