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(短編集)
私が語りはじめた彼は
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私が語りはじめた彼はの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.86pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全35件 21~35 2/2ページ
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村川教授を取り巻く人間達により、静かに淡々と、村川との係わりによって歪んでいった人生や気持ちが語られていきます。冒頭は文章が硬く感じ、読みずらかったのですが、読み進めるうちに様々な語り手たちの気持ちに共鳴できる部分を自分の中に発見し、引き込まれていきました。語り手たちが村川による影響を引きずりつつも、最後にはそれぞれ歩みだしてゆく部分に救いを感じました。 | ||||
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寝盗った者と寝盗られた者。その間に、寝盗られた者を裏切った者がいる。 裏切り者と寝盗った者は、物語のはるか遠景で二人だけの幸せに浸り、ほとんど不在である。この本は、裏切られた者たちが、紡ぐ連作だ。 一方的で、理不尽で、裏切りは、愛と自尊心の両方を傷つける。その嘆きが、読んでいて息苦しい。 思っても思っても想っても思っても、思い知らせることのできぬ思いは無駄であっても、時間がすべてを私ごと過去にと追いやることができる。 裏返せば、この喪失だけが残されたもの、誰にも奪えぬ私だけのもの、私の一部になったあなた、死ぬまで抱く愛のようなもの。 その傷つきは消えることはなくとも、もっと他の他者に関わりあうこともできる。裏切りをどうでもよい思い出の一つにしてしまうことも。 裏切られたという受身で無力な自分に、主体性を取り戻す。かすかな希望を最後に感じた。 | ||||
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この男 つまり私が語りはじめた彼は 若年にして父を殺した その秋 母は美しく発狂した 上記の詩からインスピレーションを受けた著者が綴る連作短編小説。 村川教授によって微妙に人生を狂わされた人々。 妻、愛人の夫、教え子、息子…… 彼らが自分の人生を、そして村上教授の人物をそっと語っていく。 まず文体。かなり繊細な雰囲気をかもし出しているのに芯はかなり強い。静かで強い表現力にびっくり。ここまで実力者だったとは…!! 三浦しをん恐るべし。 登場人物たちは皆どこか歪んでいる。 でも最後にはみんな自分なりの選択をし、先へ進んでいく。村川教授の影を振り切るように。影なんか最初からなかったかのように。 あるいは影を全部受け入れるかのように。 読んでいて、なんともいえない妙な連帯感を感じた。ああ、そうそう嫉妬ってそういう風にするんだよねとか、その歪みが魅力に感じたりするんだよね、とか。 明暗を併せ持った雰囲気のある小説でした。 長く続いた雲間から曙光が差す寸前のような。 純文学が好きな人は絶対はまります!! 建物が爆発したり猟奇殺人が起こったりはしないけど、心がゆっくり動くのが感じられる本でした。 | ||||
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この男 つまり私が語りはじめた彼は 若年にして父を殺した その秋 母は美しく発狂した 上記の詩からインスピレーションを受けた著者が綴る連作短編小説。 村川教授によって微妙に人生を狂わされた人々。 妻、愛人の夫、教え子、息子…… 彼らが自分の人生を、そして村上教授の人物をそっと語っていく。 まず文体。かなり繊細な雰囲気をかもし出しているのに芯はかなり強い。静かで強い表現力にびっくり。ここまで実力者だったとは…!! 三浦しをん恐るべし。 登場人物たちは皆どこか歪んでいる。 でも最後にはみんな自分なりの選択をし、先へ進んでいく。村川教授の影を振り切るように。影なんか最初からなかったかのように。 あるいは影を全部受け入れるかのように。 読んでいて、なんともいえない妙な連帯感を感じた。ああ、そうそう嫉妬ってそういう風にするんだよねとか、その歪みが魅力に感じたりするんだよね、とか。 明暗を併せ持った雰囲気のある小説でした。 長く続いた雲間から曙光が差す寸前のような。 純文学が好きな人は絶対はまります!! 建物が爆発したり猟奇殺人が起こったりはしないけど、心がゆっくり動くのが感じられる本でした。 | ||||
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「しをんのしおり」を読み、作者の三浦さんに親近感を覚え彼女の作品を読む ようになりました。「私が語りはじめた彼は」は全体的につなぎが凄くしっかりしていて、そのスムーズさに読んでいて心地よさすら感じる構成でした。でもちょっと腑に落ちない点は物語を取り巻く人物の軸となる教授像というものが、なぜが安易すぎなくはないかということ。最後に教授の告白があるともっと明確になるのでしょうが、そこは読者にお任せしますということなのでしょうか。 それから気になったことを一つ。他の作品を見ても思うのですが登場人物の名前がなかなかイケてます。子供の名前に悩んでいる親御さんがいらしたらぜひ 参考にしてみてはいかがでしょうか? | ||||
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とはいかないだろうか。 魅惑的な題名と物語の内容がまずあっていないと思う。 大学教授、村川という男を取り巻く女たちの物語。だが、その村川のキャラが不透明であるのだ。岩井俊二の『リリイ・シュシュのすべて』のように、キーとなる存在を完璧に隠蔽するならすればいい。そうすれば、そのたのキャラがもっと色濃く浮き立つ。あるいは、もっと村川というキャラを立たせるかである。この状態では中途半端な印象が否めない。 語り口はなかなか好感が持てるが、時々変にくどくなるのが難点。 実力ある作家だと思うので、さらに精進してほしい。 | ||||
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不倫の恋という欲望に生きた男・大学教授の村川。この作品は村川の奔放な欲望によって人生を振り回された助手、娘、不倫相手の夫など“村川以外”の人々の人生だけを描いているのが特徴的です。軸になるのはあくまで村川。しかし、村川は決してどの章の主人公にもなることはない。一人の人間の人生が、本人の知らないところでどれほどまでに他人の人生に影響を及ぼしているのか・・・。どんな人生にも他人との関係というのはつきもので、切り口を変えてしまえばいろんな側面が見えてくる。とても面白いところに目をつけた小説だと関心しました。洗練された美しい文章。著者は私と同世代のはずですが、その才能に圧倒されました。 | ||||
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不思議な感覚の本です。作中で語られていく、一人の男と、一人の女。しかし物語の主軸は彼らではなく、彼らと関わった、あるいは彼らを知っている人たちです。こんな書き方をすると一人の男と女について、各々の人物が静かに語っていく印象を受けますが、そんな形式ではありません。つまり、語りの文章ではないということです。文章の質は高い。かといって、硬質な文章ではない。美しいと形容するのが似合う文章です。愛があれば、すべてなのか?性格の不一致、考え方の決定的な相違、などが男女の間にあっても、両者に愛さえあれば、愛という器さえあれば、すべてを喜びに還元することはできるのか?自分を、周囲を幸福にすることはできるのか?現代の氾濫する愛に対して、作者は静かに愛をおさめる容器を示唆してくれます。 | ||||
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~三浦しをんさんの作品を初めて読みました。なんというのか、面白いというのか、不思議な魅力の小説です。物語はグロテスクな「二千年以上前の話」をプロローグにして始まります。そして、現代に戻り、5人の男たちの目を通して一つの物語が紡がれていきます。弟子、娘婿、息子、殺し屋、婚約者、そして再び弟子。それぞれには全く無関係な5人の男~~たちに一人称で語らせることによって、ある男と女の人生の流れを追っていきます。通り過ぎてゆくものと、忘れられないもの、その二つを引きづりながら生きていく男と女が描かれていきます。それは、虚無でもないし、みちみちた生きることの歓びでもない。惰性でもなければ、情熱でもない。不思議な感覚です。構成力、そして文章力とも秀でた作品だ~~と思います。そして、この装幀もいい。~ | ||||
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昼ドラのようなどろどろにも飽きた。いわゆる「純愛」にも飽きた。そんな人が辿り着く境地がこの本ではないかと思う。人はいつまでもきらきら輝く恋愛ばかりしていられないし、溢れるような愛だっていつかは停滞する。どんな熱湯だっていつかは冷めるのだから。それでも、人は激情が冷めた後も生きていく。熱くも温かでもなく、それでも冷たくもない、常温の空気のような愛を抱いて。その常温を深く美しい文章で綴ったのがこの物語だ。愛憎劇には飽きた。もう純愛にときめく歳でもない。そんな波打つことのない静かな人生も、こんなに美しく綴ってもらえるならば、悪くない。 | ||||
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これを映画とかドラマとかにしてほしくない。と思う。エッセイでは、たのしく痛快な三浦氏が、この作品では別人のように、美しく鋭い文章で読者を惹きつける。一文一文をグッと噛み締めて読んでいきたい作品。ストーリー云々よりも、私は彼女の文章力というか、文章という名の芸術をこれでもか、というほどに堪能しきることができた。 | ||||
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美しい文章、うまい文章、というのはこういうもののことを言うのだと、実感した。 文章自体美しく、そして、内容も痛みを伴った美しさ。 村川という男女関係に奔放な大学教授を核とした6つの短編集。 村川自体は直接登場することなく、彼の存在によって人生に影響を受けた人々の人生が描かれている。 その6つに共通するのが身体のどこかにあけられた穴。 美しくも痛ましい穴が、彼らの中に開いて、そしてそれを自覚しつつ彼らは生きていこうとする。 あるものは虚しく、あるものは強い意志の元に。 ラストにはとくにラストらしい終わり方。 最後はうまくきれいに終わらせてくれるあたりもとても良い。 それが、とってつけたような簡単なわざとらしい感じになっていないのも、この人は本当にうまい作家なんだなぁと思わせる。 すごい。作家って、そう簡単になれるもんじゃない、と、自分との才能の差を実感させられる。作品。 | ||||
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ぐいぐい引きこまれて読みました。帯の金原瑞人氏の絶賛の言葉がなくとも、(帯が過剰に誉めている場合は、大抵半信半疑で読み始めるのですが)充分満足できる作品だと思いました。 暴露や殺人?絡みのミステリーの要素あり、愛を巡る心理的展開あり、軽さに流れ過ぎない程よいテンポに引っぱられて、全6章を一気読みでした。 章ごとに関係する人物が重なっていき、その関わりのおもしろさに、どこで繋がるのか?どう決着がつくのか?と、一人先走ってしまうほど。 「かつて、たしかに愛は存在した。」・・・帯のその言葉が、読了した時点で立ち上がってくるのです。愛を奪う者と、奪われたものとの間にある確執。そこから飛び出ることで、精神の安定を保とうとする元の妻。父を奪われたことで、人を恨むことを覚えた子供たち。章が進むにつれて、様々な謎が重なりあい、絡みあい、登場人物たちの内的世界の描写に魅惑させられました。人の心の襞、多面的な愛の様相、凄みをおびた執心、壮絶さ。暗くほとばしるような愛の物語を、三浦しをんさんは、語りきってくれました。 | ||||
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題名はある詩人の作品の一部を流用したものだそうだが、とても美しく心に残ることばだ。ふと我に返ると、背表紙の題名に突き動かされている自分に気づく。以前「ロマンス小説の七日間」(角川文庫)を読んだことがあったので、ぼくの中における三浦しをん観が180度ひっくり返った。ある大学教授がキーパーソンとなって様々な愛のかたちが描かれている。些細なことかも知れないが、男と女がいて、爪を切る場面があって、「月を切る」という表現が出てくる。ハッとさせられるような研ぎ澄まされたことばが到るところでスポンと作品全体におさまっている。ストレートには描かれていない愛の断面に、ぴったり添うような不思議な情緒を醸し出していると思う。読み終えたあと、心の中が静かになった。 | ||||
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~そこには彼を愛する人がいた。心底愛してしまった人がいた。けれども彼だって、愛される限りの人ではない。彼も、求め愛した人なのだ。でもそれだけでは足りないらしいのだ。結晶、残骸、予言、水葬、冷血、家路という連作短編集。三浦しをんの日本語が好きです。強く信念の通った一つの言葉が語り手を通して伝わってきます。~~それは辞書にも百科事典にも表せません。彼女の特別なものなのです。だから私には語れません。ただ、読んでください。~ | ||||
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