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正雪記
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【この小説が収録されている参考書籍】
正雪記の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.91pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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上下巻合わせてのレビューです。 日本史はマニアというほどではないが、江戸時代の反乱には少し興味がある。 特に由井正雪は、横山光輝が二度も漫画に起用しているので、前から心惹かれていた。 歴史小説として読んでみたかったので、ちょうどよかった。とはいうものの、正雪という人物には記録がほとんど無いらしい。本書も歴史小説というよりは伝奇時代小説である。 上巻は染屋職人のせがれ小太郎が、出世を夢見て江戸にやってくるところから始まる。 徳川幕府によってたくさんの大名が潰され、巷には浪人が溢れかえっていた。 彼らの困窮ぶりは悲惨の極地であった。小太郎は浪人救済のために生涯を捧げることになる。 島原の乱では浪人たちを指揮して手柄を立てようと試みるが、松平信綱の陰謀に潰され、命からがら脱出する。 下巻では正雪と名を変え、軍学師匠として大勢の門弟に慕われる。 埋蔵金を探し当てたり、様々なタイプの美女や美少女が周囲を彩ったり、大衆時代劇の王道展開が続く。 それなりに面白いけど、心に響くものがない。 本書の正雪は、反乱の首謀者ではないのだ。決起しようとする若者を止めるばかりで、行動しない。 終盤に紀伊家にある提言をするのだが、またもや潰される。 徳川の浪人政策は、放置というより積極的な絶滅を狙っているようだ。 武器と武力を持つ集団は将軍家だけで良いと考えたのだろう。 それならば浪人が反乱を企てるのも当然だと思うが。歯がゆいなあ。 書かれた時代と掲載誌が「労働文化」であることを考慮すると、権力者に対する抵抗と挫折を描きたかったのだろう。主役が正雪ではハッピーエンドになるわけもないが、大衆エンタメとしては暗すぎてカタルシスに乏しい。 | ||||
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時代小説で歴史を学ぶのはナンセンスなのだが、歴史上の人物に抱く勝手なイメージは 時代小説や時代劇から影響を受けることが多い。 ぼくにとって、由井正雪とは江戸時代の世間を騒がせた大悪党なのだった。 というのは、時代劇では悪役として描かれるし、子供の頃に読んだ歴史こぼれ話では、江戸時代では、御上の威光というモノはすごく、犯罪人ですら「御用」と声がかかれば、「申し訳ごぜえませんでした」と素直に縛についたのだと書いてあった。 鼠小僧と由井正雪だけが、「御用」の声にも耳を傾けず、刃を傾けたとか。 由井正雪とは、とんでもない悪人なんだとイメージしていたら。 何のことはない。不平を募らせる浪人のリーダーだったのではないか。明治初期の西郷隆盛と同じだし、うまくいけば、革命家として名をはせたわけだ。革命は失敗に終わったけど。 という事を教えてくれたのが、この正雪記。何せ 由井正雪の乱は描かれていないのだ。 他の作家の書いた由井正雪だと、もっと野心家だったのだが、こっちでは えらく立派な人だ。 | ||||
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山本周五郎の眼差しはいつも変わらない。その弱者への勁くて優しい眼差しがこの小説では江戸初期の浮浪化した浪人たちへ向けられ、彼らを救うために腐心する由井正雪と磐石な幕府の基礎を築くため不逞浪人たちを駆逐しようとする「知恵伊豆」松平信綱との対決という構図になっている。しかし、別の面では、江戸へ出て軍学者の石川主税助の下で修行に励んでいた久米与四郎が由井正雪になっていく一種のビルドゥングスロマンとも読める。しかしそれでは、起承転結の承の部分つまりさなぎが脱皮して蝶に生まれ変わる過程の描写が十分でないように思うのは評者の勝手な思い入れであろうか?それはともかく、正雪の生涯の恋人ともいえる石川はんの「底知れぬ知恵と勇気」そして正雪の、「徒労感」に打ち勝つ行動力など、周五郎ワールドから一歩を踏み出した展開、そして浪人救済のための蝦夷地入植などのちの田沼意次の政策を先取りし、埋蔵金や島原の乱など全体に伝奇的要素もふんだんに取り入れた仕掛けの楽しい作品に仕上がっている。蛇足ながら名作「さぶ」もお忘れなく。 | ||||
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