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三たびの海峡



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【この小説が収録されている参考書籍】
三たびの海峡
三たびの海峡 (新潮文庫)

三たびの海峡の評価: 4.13/5点 レビュー 46件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.13pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全46件 21~40 2/3ページ
No.26:
(2pt)

筑豊にて

たまたま筑豊で生活する機会があり、この作品に巡り合いました。 良かったですが、帚木さんはどの人物のどんなところに共感されたのか、 伝わらなかったのが残念です。 もちろん私自身の読み込み不足もありますが…
三たびの海峡 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:三たびの海峡 (新潮文庫)より
4101288046
No.25:
(5pt)

素晴らしい作品です。

この小説は、終戦前の昭和17,18年代(1942,1943年)という激動の時代に、九州の炭鉱で起こった事を中心に描かれた、一人の朝鮮人の男、河時根の生涯に関する物語である。
河時根は、朝鮮から日本への強制労働者として騙されて連れてこられ、九州の炭鉱労働者としての家畜以下の待遇での重労働を強いられる。管理者である日本人労務者(山本)からの虐待を受けた同僚の何人かは死に追い込まれた。
命からがら逃げ出した河時恨は、恋に落ちた日本人女性(千鶴)と韓国に戻るが、「倭奴の女」を連れて帰って来た弟に対し、実の兄からはとても冷たく扱われてしまう。娘を引き戻しに来た千鶴の父親によって、やむなく千鶴とまだ赤ん坊の息子(時朗)との別れを余儀なくされる。その後、男は30年間日本に背を向け、釜山で実業家として成功し、再び自分の『使命』を果たすために日本に渡ってくる。その生涯を、激動の時代と共に描いた小説。

日本と韓国に横たわる非常に重要なテーマであり、多くの人が触れたがらないテーマでもある。
私の関心は、「河時根を、3度目の海峡に突き動かしたものは何だったのだろうか。」という点だ。河が、自分の生命を賭してまで、遂げたかったその想いとは何なのか。

炭鉱で自らの同胞達を死に追い込んだ、皮肉にも同じ朝鮮人であった、炭鉱労務者の
朝鮮人を殺害する予告を残した遺書をかつて愛した日本人女性(千鶴)の息子に充てた文書で、この小説は閉じられている。

時代小説は、歴史の断片を単に年表から追うだけでなく、確かにその時代を生き抜いた人々の思いを、当時の社会情勢を映しながら、ありありと登場人物の人生を描いてくれる。本小説では、主人公である河時恨の姿を通して、当時の日本社会の有り様が、克明に描かれている。

 著者の冷静な視点は、主人公のそれと重なり、現代に生きる我々に、命の意味、使命の意味を問いかける。

正直、この小説を読むまでは、私は日本と韓国に横たわる問題を考える時、また韓国の政治家が、嫌日的な発言をし、過去を反省しろという発言を聞くたびに、それを自国内の国民の不満の矛先を日本にすり替えるためだけの手段としてか思っていなかった。

一体私のような若い世代(20-30代)の日本人の中で、どのくらい強制労働についての事実を知っている者がいるのだろうか。少なくとも私は知らなかった。私達日本人の無関心な態度は、当時を知る朝鮮人からすると、とても看過する事の出来ない、傲慢な態度であったのだろう。

「日本の近代化を百年に渡って支えたのが炭鉱ですし、そこで働いた日本の民衆がおり、数々の災害と争議があり、戦前・戦後には、連行されて強制労働をさせられた朝鮮人がいたことを率直に伝えるのです」

3度目の海峡を渡った河時恨はこう言う。
「大切なのは炭鉱で生き死にした人間の性津を再現して見せる事です。」
「歴史に埋もれさせてはならない。興和寮も当時そっくりに立てて、どういう衣服を着せられ、どういう布団にくるまり、どういうものを食べていたのかを知らせてやるのです。見学者が実際に泊まり、実体験を出来るようになれば、さらに有意義です。」
「2つの国の人々が、そこで悲しい過去を検証し合えば、二度と同じ轍を踏むことはないはずです。」
「お前には不幸な歴史を繰り返さないためにも、海峡を挟む。二つの民族の優しい架け橋になってほしいのだ」

最も近くて遠い隣国と言われる、日本と韓国。海を隔てて隣合うこの2国間で起きた出来事に目を向け、前を向いて懸け橋となる人が一人でも多く出ることを願い、自分もそうなれればと思っている。
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4101288046
No.24:
(5pt)

凄く面白い!!

一気に読みました。
凄く面白いです。多くの人に読んでほしい本だと思います。
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No.23:
(1pt)

まったくダメダメ

話しが重すぎる割に内容が乏しい。
全きの期待外れの内容でした。
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4101288046
No.22:
(5pt)

在日の幼な馴染みを思い出しました

小学校にも中学校にも強制連行された2世がいて、仲良くしたり、けんかしたりと懐かしい思い出です。
その友の親の世代にこの小説のようなことが起こっていたのでしょう。戦争というこの世で一番憎むべき愚行の結果です。
こんなご時世だからこそ、改めて不戦の誓いを立てさせてくれる秀作です。某首相は・・・きっと読んでないでしょうねー。
各自の持つ政治姿勢に関わらず、必読の作品でしょう。「逃亡」と並ぶ帚木 蓬生の戦争文学です。お勧めします。
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No.21:
(1pt)

何が言いたいのか?

韓国人が大好きな方はぜひお読みください。
そうでない標準的な日本人にとっては、全く持って退屈極まりない作品です。
戦争体験も炭鉱労働も実体験のない作者の「妄想小説」です。
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No.20:
(2pt)

読者は気をつけて

作者は冷静に事態を綴るふりをしているが、かなり感情的。読者はまず、筆者の思想的背景を理解してから読書に取りかかった方が良い。でないと、心酔気味の筆者に洗脳されてしまうからだ。
本書は、一応朝鮮人による強制連行を書いてはいる。ただし、強制連行が日本人によるものと思いこんで読む場合には、強制連行の酷さに照準が当たり、「どこの国の人間が実際に強制連行を行ったのか」を読書中に忘れてしまいそうになる。大宰治の人間失格にのめりこむメンタルあたりの読者は簡単に「さも、日本人が、連行を行った」かのように読んでしまう危険が高い。
よく読めば、強制連行の後の日本での待遇は、在日または通名と思われる人間がしたとの記載はある。だが、労働場所が日本企業としている点で、卑劣な行いを労働者に働いた人間が、まるで日本企業の命令の元に労働者への仕打ちを黙認したかの印象を与えられる。
他、同作者の「逃亡」も読んだ。こちらは、日本内部での国家の命令に従っていた人間が使用済みになると同時に、逆に忠誠心を誓った国家から追われる羽目になる不条理な話である。確かに、現代でも同様なことは企業でも起こっているだろう。
だが、両作品に共通する問題は、日本または日本の責任者を弾劾するために、個人のネタ、真偽かが定かでない点をまことにしやかに語っている点である。
とにかく、仮に読むなら、メンタルの上で一線をひくか、歴史的な事実にそこそこ造詣を深めた後に読むべきだ。でなければ、著者の狙い通り、自虐的史観点を植え付けられる危険がある本書である。
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No.19:
(1pt)

ファンタジー小説

強制連行という空想を広げたいのか
知っていてわざとやっているのか
この小説の内容を本気で信じているという人が
いることが問題。
たとえば、ミステリで殺人が起こっても
現実の世界では起こっていないということを
知っている。
しかし、この作品を読んで強制連行を本気に
してしまう。
これはあってはならないことだ。
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No.18:
(4pt)

よくできた小説。
今の書き手にはこの小説は書けないだろう。


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No.17:
(4pt)

こんな歴史の側面があったのか

この本は反日小説のようですが、
反日というより、日本人によって、
朝鮮半島から描かれた知日小説です。
かつて、日本は韓国に朝鮮総督府を
作り、
勝手に
山林税を作って納めろと言い、
払えなければ没収して、
日本人に払い下げろ
と言った時代がありました。

1895年に日本政府は宮中に軍隊と暴徒
を送り、当時の皇后であった閔中殿を
殺害しました。対韓侵略の立役者だった、
伊藤博文はハルピン駅頭で安重根
によって射殺されました。

この小説は主人公『河本』が昭和18年に強制連行されて
日本に来て、辛酸を舐める話から始まります。
最下層の炭坑で悲惨な1年あまりを送り、敗戦後に
命からがら日本から逃げ帰った男。
朝鮮名、河時根が50年たって、自分の命がそろそろ燃え
尽きることを機に、苦しい中に死んで逝った同胞の
弔いと、戦前の歴史をまだとどめている "ボタ山"を巡って、
当時の犯罪?!を何とも思っていない政治家たちに真っ向から
立ち向かって、あの戦争の後始末をつける。

日本人が悪いとか、韓国人が悪いとか
を言う事が如何に愚かであるか。
と、同時に国名は違っても、同じ人間であるなら、同じ心がある。
隣人や隣国との争いの中で自分の有利だけが国是になっているこの世界は
とっても難しいんだということがわかります。

この作家は虐げられた人を描くのが巧いですね。
別の作品の《国銅》も素晴らしい。
国銅は最期のページを読み終わって涙が止まらなかった
ですが、この作品も同じでした。

この作品で私は思います。
『韓国は悪い、
あの人は韓国人だ。
だから、あの人は嫌いだ』
という考え方はしたくないですね。
そして、私たちは近代史をチキンと
勉強しなければいけないですね。

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No.16:
(5pt)

日本人なら知るべき歴史

この国に生まれた以上、正視しなければならない歴史がある。そしてそれは、日本人にとっては歴史であっても、朝鮮半島の人たちにとっては、決して「歴史」ではない。現在に続くものである。

植民地支配、強制連行、そして戦後の歩み、それぞれ精緻な筆で書かれている素晴らしい作品である。このような作品が日本人の手によって書かれたことも大きい。

朝鮮半島と日本の関係がギクシャクし始めたのは、秀吉の朝鮮侵略を除けば、明治維新以降のことである。なぜ、そのようなことになったのか、その理解を大きく助けてくれる小説といえよう。


ただ、主人公には歴史の語り部として一生を送って欲しかったようにも思う。あのような行動に出てしまわざるを得なかったのも理解できるが、貴重な証人として生き続け、語り続けるという流れが、私にはいいように思う。



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No.15:
(4pt)

戦時下の朝鮮強制連行

タイトルの言葉は承知しており、本件に関して特に本などから知識を集中して取り入れたことは無かった。朝鮮を併合して日本語を強制的に使用させる植民地政策をとった日本が朝鮮の労働者を強制して働かせたことは常識の範疇かも知れない。欧米の覇権国であればどこの国も特にアフリカ、南米、アジアの植民地で実施していたことである。ソ連などは占領国の人間だけでなく自国民も数知れず強制労働を強いていた。これらの事実はノンフィクションとして発表されたり、小説などに纏められて来たが、加害者の国が決して真実を公表することはなかった。誰も残虐な自国民の過去や仕打ちを暴かれたくないので知らないことがハッピーという訳である。日本でも勇ましい戦記やお偉い高官達の活躍物語は溢れ返っているが、兵隊がのさばり人権のかけらも無かった風潮の中で悲惨な境遇におかれ死に追いやられた悲劇は数え切れない。昨今では、強制したり命令したりした覚えは無いと、古い過去の事など忘れてしまったと言うことのようだ。朝鮮人強制連行についても、日本人によって事実が詳しく公表されることは余り無かったのではと思われる(単なる憶測かも知れないが)。まして、韓国や朝鮮の人達が記録など公表するとも思えず、たとえ出来ても無視されるのがオチ。賠償訴訟が行われているが、関心は薄い。このような状況で本書が書かれたのは驚かされる。日本の作家がそれなりの調査や準備を行った末、ある一人の主人公の物語の語ってくれたものと思う。小説なので典型的なストーリーになっているのではと思われるかも知れないが、真実らしい統計データがあるならば、強制連行者の死者数割合をもって小説の事例を評価することができるのではないかと。日本独特の軍国主義の中で特に貧しい者、弱い者、朝鮮人、中国人などがどれだけ虐待されたのか、本書が想像力を養う材料を提供してくれる。
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No.14:
(5pt)

真っ直ぐ日本に向き合いたい

目を背けたい歴史がある。個人レベルなら自身で消化する事も可能だが、国となると難しい。この作品は右でも左でも無く、当然ナショナリズムの押し付けでも無く、日本人が朝鮮半島側の目線で日本に真っ直ぐ向き合い描かれている。歴史の隅に置き去りにされた多くの事柄に、再度目を向ける必要性を感じさせられた。昨今情勢が激しく動いているが、何はなくとも手を取り合いたいものだ。
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No.13:
(5pt)

日本人なら是非読んでおきたい

数年前から友人に薦められていましたが、人の薦めには素直に応じるべきと読んでみてつくづく感じました。まさに目から鱗、事実に近いと思われるこれらの歴史を知らず生きてきたことが日本人として非常に恥ずかしいです。
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4101288046
No.12:
(5pt)

戦争小説として

最高レベルと思う。起承転結のバランスは好き嫌いは分かれる所である。特に後半からラストは不自然さを感じる方もおられるかも。しかし傑作に違いなく主人公の現在と過去が交差しつつ振り返られる半生は過酷で切ないものである。 日本人として知っておくべき事が描かれている。また、著者が実生活においてこだわられていると思われる細かな生活描写が素晴らしい。家族、肉親、あらゆる人間関係が交錯する人間ドラマでもある。是非手にとって頂きたい。
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No.11:
(5pt)

海峡をこえる

近くて遠い国と言われた日本と韓国。両国の間に忌まわしい歴史があったことは十分認識していますが、戦後何十年経ってもそのことにこだわる韓国や朝鮮、中国といった国に対して嫌悪感を抱いたことがあったことも確かです。しかし最近になって五味川純平氏の「人間の條件」や本書を読む機会があり、改めて軍国主義であった日本と日本人が中国人や朝鮮人に対して行った虐待行為について真剣に考える機会を得ました。両国の将来を考えると、いつまでも過去の歴史にこだわってばかりでは困りますが、「過去のことは水に流して」と一言で言えるような歴史でないことも確かだと思います。これから10年、20年経つとより一層、先の世界大戦の歴史は風化していくことは確かですが、少なくとも戦争によって死んだのは徴兵された兵隊や爆撃を受けた日本人だけでなく強制的に日本に連れてこられ、牛馬のように働かされたり、拷問を受けた韓国・朝鮮の人々がいたことは忘れてはならないと思います。
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No.10:
(5pt)

リアル!

 これは小説なのか?ノンフィクションなのか? とにかくどちらでも充分通用する読み物です。
 私の父親は山口県出身で、戦中朝鮮人の同級生がいて、戦後半島に帰国してしまい、それ以来音信不通らしい話を何度も聞かされ、そのせいかヒトゴトと思えないくらいリアルな話として 内容に埋没しながら読んでしまいました。
 惜しむらくは、ラストの展開だけがリアリズムに欠け、「小説」を意識させてしまう。
とは言え、これだけの取材力にまずは驚愕。学者顔負けではないだろうか?
 
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No.9:
(4pt)

最後が…

内容を知らずに読み始めました。私はお隣の朝鮮という国をあまり知りません。
しかしこの本を読んでいると、その知らないはずの国がぼんやりと
見えてくるような気がしました。これこそが読書の醍醐味だと思いました。
アリランという言葉、聞いたことはありましたが、
文中で読んで、これほど胸に訴えかけてくる歌だったのかと思いました。
あまり馴染みのない国、人でありながら、
ぐいぐいと引きつけられて読み進めてゆきました。
最後に、市長?候補か何かをやりこめた演説?ではスッキリとしました。
しかし最後に、親しかった人のリンチが明らかにされたことにびっくりしました。
それまで書かれなかったことが不自然だし、隠す必要はなかったのでは?
そして最後の最後の殺し方が、インスリンというのもちょっと脱力しました。
しかし読み応えのあるいいお話だったと思います。
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No.8:
(5pt)

なぜ、三たびの海峡なのか。四たびの海峡はなかったのか。

なぜ、『三たびの海峡』なのか。
このテーマが全てを語っている。なぜ「日本海峡」を主人公は渡らざるを得なかったのか。
一回目は強制であった。主人公は父に代わって大日本帝国の九州の筑豊に行くことを選ばされた。二回目。日本敗戦後、恋人と共に故郷に渡った。三回目。主人公は復讐のために、自らの意志で渡った。四回目は無い。克明にきちっと、情報収集することができた著者、ハハキギ氏の原作に出会ったときの驚き。これほど、生々しく語ることのできる人は福岡の出身者だ。
著者の略歴は、さておき、現在精神科医。具体的。筆致を押さえて書き続ける。この力量は凄かった。内容は文句なし。俺も、こう生きたいと思う男の怒り。復讐するは我にあり。戦時中の話しとしてこれほど明確に描かれた作品に出会ったことはない。流涙。泣いた。
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No.7:
(5pt)

秀作です

最近,帚木蓬生の著作に出会い,少しずつ読み進めるようになりました。これまでに,「三たびの海峡」,「逃亡」(上・下),「閉鎖病棟」,「白い夏の墓標」,「ヒトラーの防具」(上・下)(いずれも新潮文庫)を読み,帚木文学の魅力に引き込まれています。主人公をはじめとする個々の登場人物の描き方が巧妙で,必要以上に美化していないところがよいと感じます。主人公の人間像として共通しているのは,歴史の波に翻弄されながらも,時代というものを受け入れ,力強く生き抜こうとする意志,そして,根底のところで人間の良心を深く信頼しているという点でしょうか・・・。
「三たびの海峡」は,吉川英治文学新人賞に輝く,氏の出世作ともいえる作品です。主人公の河時根は,太平洋戦争の戦時下において,朝鮮から北九州の炭鉱に強制連行され,様々な屈辱と暴力を受け続けます。同僚が度重なる暴力に耐えかねて逃亡し,さらなる暴力によって殺害されるということの繰り返し。河時根もついに日本人労務者を殺害し,自らも逃亡します(以後,生涯他人を殺害した事実を悔やみ,怯え続けます)。新たな炭鉱での千鶴との出会いと密会・・・。二人で朝鮮への帰国を果たしますが,故郷での差別と突然の別れ。どの場面も「省略」というものがなく,丁寧に登場人物の心情を描いています。
同僚の金東仁らと労務に対する団体交渉の場で歌った「アリラン」の一節が,哀しく心に響きます。朝鮮と日本の民衆史を知る上でも大変参考になるかと思います。三浦綾子「銃口」(上・下,小学館)を思い出しました。
三たびの海峡 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:三たびの海峡 (新潮文庫)より
4101288046

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