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犬はどこだ



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【この小説が収録されている参考書籍】
犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこだの評価: 3.78/5点 レビュー 41件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.78pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全41件 21~40 2/3ページ
No.21:
(4pt)

性犯罪、苦手な人はやめた方がいいです

確信犯的に、青春を黒さ、痛みで色つけちゃう、米澤氏の作品でも、
内容の変転ぶり、後味の悪さは群を抜いてます。

青春ミステリと思わせておいて、・・・すごいオチつけてます。

ただ、性犯罪がメインで、主人公がまったく無力という話なんで、覚悟して読んでください。
印象に強く残り、いい出来だとは思いますが、実は性犯罪ネタだったので気分悪くなりました。

できれば、続編読みたいなぁ。主人公二人組は魅力的なんで。
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No.20:
(3pt)

続編を読みたい

犬探しの脱サラ調査屋が、いつの間にか本格的な「事件」に巻き込まれていくという話。

 冒頭のけだるい軽い調子や一人称の語り口は古典部シリーズを彷彿させる。評者は筆者独特の文体が好きなのでこれはよし。
 しかし、筆者はミステリーとしての「作りこみ力?」が弱く、本格ミステリーを狙った本書ではその点マイナスになる。
 もう少しライノベ系にすれば良かったのでは?
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No.19:
(5pt)

挫折したひとたち

一度、人生に挫折して再起を図ろうとしている、そんな25歳の男が主人公です。読者である私も塞ぎこんだ時期があるので序盤から感情移入しつつ、読み始めました。

 事件が深まるにつれ徐々に元の自分を取り戻していく主人公:紺屋。気力を失っていた紺屋とは対照的にあこがれに向かって突き進む相棒のハンペー。そして行方不明になっている人物の残した手がかりから見えてくる脅え・不安。物語が進むにつれ、事件部分以上にそういった三人の図式に人としての在り方を深く考えさせられました。そうした感情を最終的には『ミステリ』の部分にも見事に昇華されるのだから、終盤での驚きといったらもう。その作者の技巧に感動しました。

 これまでの米澤さんといえば、学生主体の青春ミステリ作家だと思っていたので、作家として新しい一面を見た気分です。
 
 

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No.18:
(4pt)

意外とよかったかもしれないな

調査事務所<紺屋S&R>にふたつの依頼が舞い込んできた。ひとつは、佐久良且二から依頼を受けた孫の桐子の失踪事件で、もうひとつは、百地啓三から依頼を受けた古文書の由来の解読である。前者の依頼は、所長の紺屋長一郎が担当し、後者は助手のハンペーが担当する。次第に2つの依頼がシンクロすることになるのである。

正直言ってよかったと思う。紺屋とハンペーがもっと蜜に情報交換すればいいのになと思った。ポイントは、ネットでの書き込みである。桐子を追い詰めることになったのは、ネットだし、紺屋が依頼を達成できたのもネットである。最後はあっけないという感じもしたが、余韻を残す終わり方ということでいいのではないかとも思った。

続編の刊行が予定されているようだが、現在まだ刊行されていないみたいである。続編も読んでみたいなあと期待させる。

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No.17:
(3pt)

犬好きのジャケ買い欲求をついた?タイトル。「巧い」ミステリー本。

犬好きが「ジャケ買い」ならぬ「タイトル買い」したくなる本(笑)
米澤氏は、「巧い」作家さん。話の運びもミステリーも文体も、読みやすくて巧い。読書やミステリーが大好きで、書き慣れている人だなと思う。

病気のため脱サラし、田舎に帰って「犬捜し」を専門とする調査事務所を開設した私立探偵・紺屋は、なぜか開業初日に失踪美女捜しの依頼を、2日目に古文書捜しの依頼を受けてしまう。
美女捜しをするのが紺屋、古文書捜しをするのは高校の後輩で調査事務所の職員(になった)ハンペー。

2人の一人称語りとチャットやHPの語りでもって謎解きが展開。2つの依頼は実は絡まりあっている。

米澤氏の本は『インシテミル』『クドリャフカの順番』に続く3冊目。強烈なオチはこれら2作と同様。ミステリーとしても主人公の成長物語としても読める。
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No.16:
(4pt)

キャラとテンポと逆転がいい

「インシテミル」や「ボトルネック」「古典部シリーズ」等と同様に、文章が上手く読みやすい。
主人公:紺屋やハンペーのセリフも実にいい。個人的には紺屋の「ははあ」は気に入った。
GENと紺屋のチャットもリアルだし、ハンペーのなにげに出来のいい調査ぶりも良い。
一部の人が指摘している通り、重要な鍵がチャット相手から得られたり、失踪人の抱えているトラブルが
ネット絡みだというあたりは見ようによっては安易に見えないこともない。
しかし、最後の「逆転」は最高に読み応えがあるし、一見頼りない、無気力な紺屋が意外な
推理力、洞察力の持ち主であることも頼もしかった。

ますます米澤氏のファンになってしまった一冊であった。是非続編をお願いしたい。
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No.15:
(3pt)

犬はどこにいる?

タイトルに釣られて買いましたが、犬はまったく出てきません。最初は物語がどのように進みつながるのかまったく見えず、はらはらイライラしましたが最後に見事などんでん返しが待っていました。オセロの盤面で一気に形成が変わったときのような爽快感があります。
ハンペーもいいですが、紺屋のタフさが印象的でした。設定からするとちょっと強すぎる気もするのが個人的には残念でした。でも主人公が逡巡ばかりしていても爽快感がなくなるのでこれは致し方ないのでしょうね。構成の妙を味わう作品だと思います。
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No.14:
(2pt)

文章はうまいが設定やストーリーが安易でミステリになっていない.

「犬探し専門」の探偵が人探しを依頼され、失踪の謎に迫っていくお話.失踪した女性の調査と平行して、村の古文書の調査も受けることになるが、探偵助手が扱う本件がメインの失踪事件の伏線であることが見え見えというか強引な設定。また、失踪した女性のトラブルがネットのチャット仲間から簡単にわかるのもあまりに安易。探偵は何もしないのに情報が勝手に舞い込み知らないうちに失踪者の意図を見抜くなんてあまりな展開にがっかりした.これなら素人探偵でも謎は解けるだろう。作者が味方なのだから。ブログとストーカーという展開もありきたりだし、探偵が危険を冒して殺人を止めようとするのも理解不能。作者がミステリファンで本格物を書きたいのはわかるが、自分の実力を考えて作品を作るべきでは?中途半端なミステリ作品より、古典部や小市民シリーズの続編を望む.
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No.13:
(4pt)

失踪に秘めた覚悟

新規開業した調査事務所に舞い込んだ失踪人の捜索と古文書の調査.
若い女性の失踪にまつわる真相の解明と,古文書の成り立ちという2つの謎を軸にストーリーは進む.
インターネットトラブルという時代感と取り入れた真相はなかなか面白いし、
オンラインコミュニケーションを利用した真相究明と,図書館で資料をあたるという対象的な調査方法の対比も面白い.
ハードボイルドとかニヒルというより,むしろ投げやりにすら見える主人公のキャラクターには好き嫌いもあると思う.
しかし,失踪の真の目的と,その覚悟にぞっとするとともに
それを助けたいと思う主人公の姿に,
些細なことで努力の成果を放棄せざるを得なくなった者同士の無力感や絶望感,そして共感がよく表現されている.
ただ,米澤氏の作品としては初めて大人が主人公なのであるが,
一定の知的水準があってまがりなりにも多少の社会経験も積んだ成人男性としては,
世界観やキャパシティに広がりが感じられず少し物足りない印象を受けた.
理屈っぽい高校生がそのまま大人になったような,とでも言えばよいだろうか.
カッコいいヒーローでなくてもよいが,もう少し懐の深さみたいなものが表現できていたら・・・,とそこが少し惜しい.
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No.12:
(4pt)

犬探し専門の調査事務所を開業、ところが・・・

脱サラをし、犬探し専門の調査事務所を開業した主人公
ところが、舞い込んできた依頼は失踪人捜しと古文書の解読だった
今まで、学生を主人公にした青春ミステリを書いていた著者
その著者が初めて成人男性を主人公に据え、新境地に挑んだ意欲作!
宮部みゆき著「火車」を彷彿させる作品だった
個人の行方を調査する点や最後の最後に対象者が出てくる点など
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No.11:
(5pt)

結末はまるでホラー

銀行員を辞めた主人公、犬探し専門の探偵を開業したが、人捜しを請け負う事になる。
しかも、すぐに一人の社員も出来たが、それぞれが別の依頼を調査しているのに、繋がりが見え隠れする。
この繋がりに当初は両人が気付かなくて、やきもきとさせられるが、それもプロットの一部なのだろう。
途中から、サイバーストーカーの実態が浮かび上がってきて、物語の輪郭が明らかになってくる。
この物語の本領は、ここから終盤までの間の緊迫感と、予想を覆す結末だ。
否、結末が得られた後にも、強烈な緊迫感の尾を引く。
この結末は、本当に怖い。
爽快感とは程遠い結末だが、巻末の解説によると、続編の出版も計画されているらしい。
この作品なら、しばらくシリーズ化されても面白いと思う。
主人公は早く、犬を手に入れた方が良さそうだ。
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No.10:
(4pt)

こんなはずではなかったのに

『さよなら妖精』、『ボトルネック』、『古典部シリーズ』と読んできました。米澤作品初の大人が主人公の小説とのことで、期待と不安が半々で読み始めましたが、これが期待以上に面白かったです。
 主人公の紺屋長一郎は東京での挫折を経て故郷へ帰るわけですが、想定外の依頼を不本意ながらも受け入れてしまうところ、押しかけ助手を雇う羽目になるあたり、どこか無気力な淡々とした性格設定は今までの米沢作品の主人公たちと共通していて既視感がありました。
 しかしハンペーは意外。彼の語りが始まったときは驚きました。(今までになかったキャラなので) 探偵への憧れを熱く語り、行動力もある。ハンペーが行き当たりばったりに、でも案外うまく調査していく様子は楽しめました。
 この二人の交互の語りで話は進んでいきます。最初は全く無関係に思われた依頼の調査結果をつき合わせて見えてきた事実、そしてその結末に待っていた真相とは…。
 さくさく読めたわりに、やはり高校生が主人公ではないので事件はかなり重たいです。読み終えて一晩たって余計に怖くなってきました。恐怖感が後を引く…さすが米澤作品です。
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No.9:
(4pt)

なんとなく新しい、探偵小説

青春ミステリの旗手との呼び声高い米澤らしい、なんとなく新しい、探偵小説。都会生活になじめなかった主人公が地元に戻り、犬探し専門の調査事務所を開く。しかしそこにやってきた依頼は、人探しと歴史調査だった。そこから始まる、意外なクライムサスペンス。
作品全体として、伏線のはりかたが巧い。読者にわかるように書くことで、登場人物がいつそれに気づくか、というハラハラドキドキである。
主人公の紺屋とハンペー、主観が交互に入れ替わる構成になっているのだが、ここに大きなヒミツや叙述トリックがあるのでわっ!と思いながら読んでいたがそうではなかった。この構成はそれぞれの登場人物が知っている情報が別だけども、読者は両方知ることができる。そのため読者自身は謎解きができるという仕組みのヤツである。それでいて、ちょっぴり意外な驚きの結末。最後は、米澤作品らしい終わり方であった。
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No.8:
(4pt)

なるほどねえ

 2005年に出た単行本の文庫化。
 犬探し専門でやっていこうと探偵業を始めたのに、なぜか陰惨な事件に巻き込まれてしまうというハードボイルド。
 犬探しの小説家と思って読み始めたのに、いつまでたってもそんな話は出てこない。犬好きの私としては、不満の残る一冊であった。まったくタイトルのとおりだ。
 それはともかく、ミステリとしては面白かった。古典部シリーズなんかより、ずっと良く出来ていると思う。ラストのドンデン返しも見事。一気にすべてのモヤモヤが解き明かされ、爽快だった。
 シリーズ化の予定とのことなので、次作はぜひ犬の話を。
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No.7:
(4pt)

ひねりを利かせた洒落たプロットの妙。気が利いていて、面白かったなあ

 佐久良桐子(さくら とうこ)という失踪人を捜す羽目になった<私>こと紺屋長一郎(こうや ちょういちろう)。一方、小伏(こぶせ)町の古文書の由来を調べることになった<俺>こと半田平吉(はんだ へいきち)ことハンペー。本来、犬捜し専門の調査事務所「紺屋S&R」の所長と所員であるふたりの調査が、章ごとに、ほぼ交互に記述され、それぞれの調査の線が微妙にクロスしていくところ。気が利いていて、面白かったなあ。殊に、サブの事件かとばかり見えた古文書の解読調査の中に、意外や、メインの事件と思しき失踪人調査につながる鍵が潜んでいたところ。そこに、ひねりを利かせた洒落たプロットの妙を感じました。
 登場人物ではこの人、探偵に強い憧れを抱いているハンペーのキャラがよかったですね。型にはまった調査をしていく紺屋に対して、無鉄砲で出たとこ勝負みたいな調査をしていく割にきちっと結果を出すハンペー。小気味がいいっていうかな、痛快な気分になりました。「俺って、しっかり、探偵してるぜい」みたいな満足感にハンペーが浸るところなんか、思わずくすりとさせられたりして。
 『インシテミル』『ボトルネック』、そして本作品と読んできて、この作家のミステリは面白いなあと。眠っていた脳の回路が活性化されるみたいな。すっきりとして読みやすく、趣向を凝らした作品の妙味。注目していきたいミステリ作家のひとりになりました。
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No.6:
(5pt)

“自衛”のための「弱き者の砦」

とある事情のため、職を辞した25歳の青年・紺屋長一郎が
犬専門(!)の調査事務所〈紺屋S&R〉を開き、再起をはかろうとする物語。
(ちなみに〈S&R〉とは〈サーチ&レスキュー〉のことです。)
著者の作品としては、はじめて成人が主人公を務めます。
人物造形や設定、文体は樋口有介氏の諸作を彷彿と
させますが、よりドライで現代的な雰囲気です。
本作において大きなテーマとなるのは、ネットという
環境下で増幅され、連鎖していく人の悪意です。
現代においては、第三者であったつもりが、いつのまにか
当事者にされ、理不尽な暴力にさらされる可能性がある――
という現実の酷薄さに、今更ながら戦慄をおぼえさせられます。
もっとも、何事にも「闇」があれば「光」もあり。
本作では、ネットの「善」の象徴として、紺屋のチャット仲間・GENが登場します。
紺屋にとってGENは直接の面識こそないものの、あらゆる相談に親身に応じてくれる存在。
そもそも紺屋S&Rも、彼(彼女?)のアドバイスをきっかけにはじめたものです。
こうしたGENの人物造形は、著者の〈古典部〉シリーズに登場する折木供恵と通底
しており、作中に直接姿は見せないけれども極めて重大な示唆をもたらす存在
――いわば〈彼岸の人〉として形象化されているといえるでしょう。
本作はシリーズもので、続刊も予定されていますが、上記の事情から、
今後GENが作中に姿をあらわす可能性はほとんどないといえます。
しかし私としては、実は紺屋とGENが過去に面識があって……という展開も
おもしろいかなあ、などと妄想を逞しくしてみたりもしていますw
ともあれ、シリーズ第2作『流されないで(仮)』の刊行が待ち遠しいです。
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No.5:
(3pt)

ご都合主義が引っかかる

05年07月刊行の単行本を文庫化した作品です.
青春ミステリなど,学生をメインにした作品の目立つ著者ですが,
本作の主人公は25歳.ややハードボイルド調なのが印象に残ります.
物語は,ふたつの事件をこの青年と助手の若者が調べるのですが,
それぞれ別々に進み,こまめな視点や場面の切り替えが特徴的です.
ただ,いつもは若者っぽい(?)軽い感じのやり取りの目立つ助手が,
彼のパートに移った途端,急に大人びてしまうのに違和感を感じますし,
ほかにも,必要とは思えない冗長な表現や説明が多いのも引っかかります.
また,チャットを使って見えない相手と事件の推理などを交わすのは,
著者のほかの作品でも見られるのですが,少しずるいかなという印象で,
ピースが続々とはまっていく終盤ともあわせ,ご都合主義に感じられます.
そのため,いわゆる『どんでん返し』とも言える事件の真相についても,
どこか傍観者のような,外から読まされている感が抜けないのが残念です.
犬はどこだ (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:犬はどこだ (創元推理文庫)より
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No.4:
(4pt)

ラストの展開に言いようのない恐怖が・・。

犬探し専門ではじめた探偵のもとに「失踪人の捜索」と「古文書の解読」の依頼が。最初はあまりやる気ではなかったが、弟子入り(?)してきたハンペーとともに分担して仕事をするうち、二つの事件は奇妙にリンクし始めて・・・。
だがこの二人、お互いにお互いの事件をほとんど報告しないため、リンクしている事に気づいていないところが面白い。軽快なタッチで書かれているためスラスラ読めるが、後半は前半の陽気さというか脱力感が一変する。ネタバレになるので書けないが、前半のなんでもないように書かれている些細なことが、後半で一気に繋がっていく。全く無駄のない前半の伏線の張り方に脱帽です。
ラストは下手なホラーよりもかなり怖い。どういう風に怖いかはぜひ読んで確かめてほしいですね。
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No.3:
(4pt)

米澤作品初の大人主人公!!

 最近自分の中で人気急上昇中の米澤穂信の文庫最新作です。
 今までの米澤作品は主人公が中学生・高校生・大学生くらいの割合と若い層で、内容的にも青春小説といっていいほどの瑞々しさが全編に漂っていました。それが、本作はソフトとはいえ「探偵」が主人公のハードボイルドですからがらりと路線が違います。まぁ、「犬探し」を主体にした探偵事務所をひらこうとしているあたり、普通のハードボイルドではないですが、それでも、ある意味、米澤んさの本では主人公が学生でないというだけでも大きな路線変更です。
 また内容の方も、二つの関係なさそうな事件(まぁ、これは探偵助手がしっかりしていれば最初から一つの事件として認識されるわけですが)が一つに重なっていく展開であるとか、一冊で一冊の長編であるとか、彼にしてはいろいろと新機軸を試しておられます。
 結果としては、それが成功しており、個人的にはこの路線でも(青春小説はそれはそれでまた書き続けて欲しい)たくさんの小説を書いて欲しいなと思いました。
 ストーリーは、主人公の紺屋一郎が探偵事務所を開設するところから始まります。彼は、犬探し専門の探偵事務所を開いたつもりだったのですが、広告をうったりする前に、知り合いからの紹介の依頼が「失踪した女性の捜索」「村に伝わる古文書の由来調査」という全く別のものになってしまいつつも成り行きでそれを受け入れます。主人公の紺屋は、社会生活からドロップアウトしてしまった自分の社会復帰のために始めた探偵稼業なので、それほどこだわりがないのです。しかし、この二つの事件が思いの他シリアスな展開となっていき、最期の最期には米澤さん得意の大推理が始まり、予想外のどんでん返しのある本格ミステリとなっています。
 感触は丁寧に作り込まれたお菓子のようですが、中身はけっこう本格。ちょっと違いますが、方向的には、北村薫とか加納朋子とかああいう感じの丁寧なミステリ作品です。
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No.2:
(3pt)

鮮やかにして論理的な逆転劇

本書は「このミステリーがすごい!」で’05年国内編・同点第8位にランクインした作品である。
都会生活での思わぬつまずきから故郷へ帰った紺屋(こうや)長一郎25才は、犬探し専門の調査会社を開くが、開業早々舞い込んできた依頼は、想定外の、失踪人の捜索と古文書の解読だった。
紺屋は押しかけ助手のハンペーこと半田平吉と分担して初仕事に乗り出す。
失踪人の捜索を担当する‘私’こと紺屋と、古文書解読の調査を担当する‘俺’ことハンペーの視点が章ごとに交互に交錯して、一人称で語られ続いてゆく。
いかにもテキトーそうなハンペーが、意外にマジメに仕事をこなす姿はユニークだし、紺屋がはじめは病み上がりで意気が上がらないが、失踪人に対して自分の姿を投影しながら、次第に真剣に捜索にのめりこんでゆく様子はなかなか読ませる。
著者はライトノベル系出身とのことだが、文章にもスピード感があり、登場人物たちのキャラクター造形も若々しくて好感が持て、テンポ良く読み進むことができる。
そして二人の調査はいつしか微妙にリンクしてくるのだが、本書の一番の見どころは、“追う者”と“追われる者”が一瞬にして反転する、鮮やかにして実に論理的な逆転劇であろう。
このプロセスをして本書は「このミス」第8位という評価を得たのだろうと思う。
それにしても彼らは、こんな調子でいつ、本来希望する「犬探し」ができるのだろう。ぜひ続編を読んでみたい。
犬はどこだ (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:犬はどこだ (創元推理文庫)より
4488451047

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