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薔薇密室



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【この小説が収録されている参考書籍】
薔薇密室

薔薇密室の評価: 3.55/5点 レビュー 11件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.55pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全11件 1~11 1/1ページ
No.11:
(3pt)

モチーフは暗黒だが物語は意外と明るい

廃墟の僧院、人体実験、薔薇の若者、黴毒で崩れた美貌、美しい劣等体、腐食銅版画法などの魅惑的なモチーフの連続に、途中で満腹感を覚えそうになるが、手練れた魔道の先達の筆に導かれて最後まで一息に読めた。
他の方のレビューにもあるように、大胆にも回収されない伏線には聊か驚かされ、肩透かしをくらった感もあるが、これも「物語を必要とするのは不幸な人間」というテーマに則った、読者のために開かれた小説ということなのだろうか。伏線の先は、不幸な読者が紡ぎ出すほかない。
思うに著者は「善い人」なのだろう。個人的には、もう少し捻くれた少数者のための小説も読んでみたいと思う。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.10:
(3pt)

(ネタバレ)ああ~…もったいない

今まで読んだ皆川博子さんの作品を知ったあとに期待を持って読むと少しがっかりする内容です。

素材はとても良いです。
ドイツ支配下のポーランド、一人残された少女ミルカ、
脱走兵、美しい瀕死の士官、薔薇の僧院、醜い薔薇男ヨリンゲル、
年をとらない青年ユーリク…などなど。

美しい薔薇と醜いヨリンゲルの描写の対比が素晴らしくホラーさながらに恐ろしさを引き立て、
ミルカとユーリクの叶わぬ恋も物語後半への期待を膨らませました。

が、後半になるとヨリンゲル視点が多く感情移入は出来ますが
しつこいくらいローラントの手記のくだりが増えますし、
ミルカが閉じ込められている部分も
進行が遅くかなり中弛みします。読んでいるとやきもきしてきます。
あの手記がナタニエル・ホフマンの創作だとわかったときは肩透かしを食らいますし、
カンのいい人ならグラツィア尼がエルゼだと予想出来ます。

ミルカは結果的に薔薇の僧院に辿り着きますが、
それは何年も経ってからで時はすでに遅く、ユーリクは旅立った後でした。
二人の恋の行方を応援して読み進めていた私としては再開してほしかったです。
彼女の失った数年間は大きすぎます。

唯一救われたのは、不幸な生い立ちとホフマンに受けた仕打ちを比べると安定した暮らしを手に入れたヨリンゲルだと思いますが、
彼だってホフマン親子に対する憎しみを抱えながら生きて行かねばいけません。

不要な箇所を除きページ数を縮めてリズムよくまとめれば最後の結末も意表をつくものになったかもしれませんし、
せめてページ数はそのままでも最後に希望を持たせてくれるお話だったら評価も変わっていたと思います。

最後まで読めたのは、皆川博子さんの骨まで溶かすような表現力のおかげでした。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.9:
(2pt)

伏線はちゃんと回収してほしい

舞台は豪華だが物語は貧弱。
大戦中のドイツ、薔薇と融合した青年、奇形の三つ子(?)、年を取らない美青年他にもおどろどろしい設定満載。
雰囲気は楽しめるが突っ込みどころが満載。
ツゴイネルの虐殺は何のため?
生き残った少年はどこへ?
薔薇と融合した美青年は何の役割も果たさない。
コンラートはいなかったことに。(思うに収拾つかなくなったからじゃないか?)
読者をはぐらかしまくり。
どうやって物語をまとめるかと思えば小説の中の創作(?)夢落ちに近いものがある。
皆川作品にありがちなのでファンは納得するかもしれないけど慣れてない人は「なんじゃこれ」でおわる。
ああ、それと密室犯罪は起こりませんあしからず。(ご丁寧に僧院の見取り図もあるのにw)
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.8:
(5pt)

不幸な人間とははたして自分の事なのではないのか。

最近になって皆川先生の作品のファンになり、次々に読んでいます。
『開かせて頂き光栄です』のようなラストの大どんでん返しのような展開はないのですが、
緻密なプロットと巧みな構成をじっくり楽しめる一冊です。思ったより長さを感じさせませんでした。
時代背景に二つの世界大戦をはさみますが、そのさなかでも作中には静謐な雰囲気があり個人的には気に入っています。
物語を必要とする人間は不幸な人間である、というテーマが何回も現れますが、その不幸な人間とははたして読み手の自分の事なのではないのかと考えさせられます。エンディングは落ち着いた雰囲気で不幸ではありませんが、それもヨリンゲルが紡いだ物語かもしれないなどと、感傷に浸っています。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.7:
(5pt)

小説だから

難しいことは、わかりませんが。薔薇人間スゴイ…。ありえないと分かっているけれど、なんだかとっても衝撃的。やっぱり星5つと思いますけど。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.6:
(5pt)

息が止まる

この本を読んでいる間は、呼吸を忘れてしまいました。息を吸うと、どんなにおいがするのか・・・
もう、すごいとしか言いようが無いです。

感想って、あらすじを書いてもしょうがないですよね?自分がどのような衝撃を受けたのか。そして、それが「気に入ったのか」。

星五つですよ、もちろん。
たぶん、人によって好みが極端に分かれるでしょう。私は、この「皆川博子」の作品は、おそらくすべて大好きです。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.5:
(2pt)

これは趣味の世界ですね。

皆川博子氏の『死の泉』は恐らく日本で唯一Lebensbornの話を扱った小説だと思うが,この『薔薇密室』も第1次世界大戦からナチスの時代までの怪しい部分を描いたもの。この人の小説のキーワードはNekrophilie,Nationalsozialisten, Juenglingsliebe,Menschenexperiment など媚薬のような毒っぽい趣味的なものがちりばめられている。そういうのがお好きな方は部分的な描写だけでも楽しめるのだろう。
人物のドラマツルギーよりも心理的な怪しい耽美観を優先する小説だと思う。本当に趣味の本だ。ただ,ナチスなどの史実に関しては沢山の事物が節操なく登場するのはいかがなものかと思います。『オリンピア』や『ヒトラー少年クヴェックス』,『メトロポリス』,『カリガリ博士』,『ゴーレム』などUFA映画の超有名どころが単なる名詞の羅列として出てくるが,あまりにも有名どころオンパレードな列挙の仕方なのでこういう何でもありの点は「おー」というディープなオタク趣味っぽくないのでつまらない。
逆に「灰色のバス」の描写が出てきても「ハダマー」は出てこない。ドイツ文学の著作名の羅列でも Goethe "Goetz von Berlichingen mit der eisernen Hand" を『鉄腕ゲッツ』というのは日本ではほとんど使わない題名である。通常の表記『ゲッツ』または『ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン』ではまずいのか?どうしても「鉄の腕(義手)をもつ」という表現が入れたかったのであろうか?著者の知識がどの程度深く,(おそらくその手の知識をもっている)読者をうならせるものかが分かりかねる心許なさがある。
文章論としての文体は確立されているので文章そのものには申し分ないと思う。そういう意味では文芸作品として瑕疵はない。
私は皆川博子氏の小説になんら批判する気は全くないが,その手の題材を取り扱う場合に,多少は感情的なもの,人間性のあるドラマツルギーを構築していただければと思う。内容が内容だけに単なる趣味的なもので充ち溢れた小説では社会倫理的に問題があると思う。(日本の小説だから許される部分はかなり多いと思う。)なぜなら私は600ページを超えるこうした作品を書く著者の熱意には尊敬をしたいと思うので,この人の作品を「キワモノ」とは言いたくないからである。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.4:
(4pt)

「物語を必要とするのは不幸な人間だ」

第1・2次世界大戦中の占領国ドイツと非占領国ポーランドを舞台に繰り広げられる壮大な迷宮の物語。作中で、「物語を必要とするのは不幸な人間だ」との詩が引用されるが、これが作品のモチーフとなっている様だ。(小説における)現実とも登場人物達の妄想とも取れる「物語」が幾重にも重なった巧緻な構成で、まさに迷宮を彷徨っている様な感覚を味わえる。

まずは、死に掛かった人間を薔薇と合体させて薔薇人間として生育するというマッド・サイエンティスト的博士ホフマンが住む"薔薇僧院"の模様が脱走兵コンラートの視点で描かれる。一転、ポーランドに住む少女ミルカの一家がドイツ軍に蹂躙される模様やミルカと少年ユーリクの交流の模様が描かれる。ここまでは、ドイツ軍に弾圧されるポーランド人の悲哀をテーマにした作品かと思いきや、ミルカが撮影技師ホフマンとドイツに同行する辺りから読者は混迷の渦に引き込まれる。ここから、コンラートの手記中で薔薇人間の一人として描かれた元男娼ヨリンゲルの一人称とミルカの一人称とが交互に挟まれる。ヨリンゲルが薔薇人間だった筈はないから、コンラートの手記は創作だろう。だが、誰が何の目的で創作したのか ? ヨリンゲルの一人称によれば彼は今でも"薔薇僧院"に住み、そこにはユーリクも居るというのだ......。

ミステリ的叙述技巧が冴えており、人物間の関係設定の巧みさと合い間って読む者を引きずり込む力がある。「物語を必要とするのは誰か ?」というテーマも最後で見事に収斂している。作者の関心が常に"人間の心(に棲む悪魔)"にある事も良く伝わって来た。第1-2次世界大戦間の時間の経過と作中の事象との間にやや矛盾がある様にも感じたが、そうした齟齬が気にならない程の重厚な作品に仕上がっていると思う。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.3:
(1pt)

実は未消化?

複雑な構成、語り手さえも自分が誰なのか認識できなくなる危うさが読者にも感染してきそうな味わいは評価。ま、後半それはマンネリ化してきて展開まるわかり、すぐ慣れますが。
死、薔薇、男娼、狂気、ナチといった頽廃耽美趣味→それを上回るネガティブイメージの累積に完全に埋もれてしまって、結果的に単なる醜いもののてんこもりに堕してます。
辛酸の中でも「善」を捨てようとしなかった登場人物に用意された幸せ→そういう話ではないと知りつつ、どうでもいいような結末に納得はゆかず。
ぺダンティックなまでに書き込まれた背景→矛盾が生じると幻想(それも薬物・脳梅のどっちかにキマリ)でかわされてしまう展開。それが何度も来るので読みながらツッコミたくなるほど。
読後感としては非常に後味悪かったです。いろいろ盛り込もうとして未消化なまま放っぽりだした感も強く、どこを楽しめばいいかも不明。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.2:
(4pt)

語りのチカラ

逃げ込んだ僧院で、瀕死の想い人を生き延びさせたいという願望から僧院の主の博士の実験に協力する男。その倒錯した語り口調は一旦途切れ、語り手は第一次大戦下のポーランドの少女に移る。日に日に悪化する戦況の中、彼女はある少年と出会う。ポーランド人であるがゆえにドイツから不当な扱いを受け、次第に彼女の家族も切迫してゆき…。
唐突に中断され、挿入されるエピソードの数々。
一体語り手は誰なのか、どこまでが創作なのか、「真実」はどこにあるのか?
史実と巧妙に絡められて紡がれる物語は思いがけない方向に向かう。
そして作品全体を貫くのが、「物語を必要とするのは不幸な人間である」という言葉。
歴史小説でありながらそうではない、と感じました。そして、もっと美に傾倒したような物語だと思っていた予想も、良い方向に裏切られました。
そして物語というものの持つ魔力にとりつかれた読者は、文字通り作者の手の平の上で踊らされる他はなく、その構成の妙といったら見事というしかなく。
私が今更言うようなことではないですが、本当にすごい作家さんなんだなと思いました。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641
No.1:
(5pt)

耽美の殿堂、物語の魔力

まず、外界との交流を絶った僧院の中で、薔薇と美青年を融合させる禁断の実験が行われている様を描く「コンラートの手記」が提示される。その後、梅毒スピロヘータの実験材料にされる元男娼と、ドイツに迫害されるポーランド人姉妹の妹の2人が、2度の大戦を背景としたナチの台頭と秘密実験のありようを交代で語る。やがて2人の語り手の人生が「コンラートの手記」をめぐって交錯する。古希を超えて、脅威の筆力である。耽美系の大御所では、谷崎潤一郎も70歳で「鍵」、75歳で「瘋癲老人日記」を著しているが、これほどの長編ではなかった。「死の泉」の冷徹さと比べると、ラストも含めて温かみを感じる。耽美・幻想世界に惹かれる方にお奨めしたいが、557頁と長く幻惑的な作品なので、読む時間をたっぷりとりたい。
薔薇密室Amazon書評・レビュー:薔薇密室より
4062125641

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