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パラドクス・ホテル



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【この小説が収録されている参考書籍】
パラドクス・ホテル (創元SF文庫)

パラドクス・ホテルの評価: 3.50/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

(2025-80冊目) 時間旅行が可能となった世界を舞台にしたSFミステリー長編

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 2072年、時間旅行が実現した世界。時空港(タイムポート)に併設されたパラドクス・ホテルでジャニュアリー・コールは警備主任を務めている。ジャニュアリーはもともと時間犯罪取締局の調査官だったが、未来や過去を幻視する時間離脱症を患って退職を余儀なくされた。
 空港の買収話が持ち上がり、世界中から購入希望者が会議のために集まってくる。だがジャニュアリーはホテルの客室に転がる死体や自分の銃殺シーンを幻視し始める。ホテルでこれからいったい何が起ころうとしているのか。やがてホテル内で時間の流れが乱れだし、事態はいっそう混沌の度合いを増していく……。
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 アメリカの作家ロブ・ハートによるSFミステリー長編です。
 時間旅行を利用して過去に遡り、未来を都合よく改変しようとする輩が出るのを防ぐのが時間犯罪取締局の調査官の務めです。しかしこの小説は、主人公が縦横無尽に時間旅行をして犯罪者を取り締まる冒険活劇はほぼ出てきません。何しろジャニュアリーは既に退職した身で、今はホテルの警備主任に過ぎません。奇妙な事件は現在起こっていて、それを過去に遡るわけでも未来に飛び立つわけでもなく、今この時点で解決を目指すのです。

 文庫本で500頁を越える長編小説で、ジャニュアリーの人物造形にかなりの紙数が割かれています。血気盛んなジャニュアリーがホテルの警備員の職を続けているのは、ホテル内に留まっている限り、事故死した恋人メーナを幻視し続けられることがわかっているからです。時間旅行が可能なのですから、ジャニュアリーが過去に戻ってメーナの事故死を防ぐことは技術的には造作もないことですが、元調査官としてそれが許されないことを知って苦悩します。
「ここからトラムで五分のところにあるマシンを使えば、わたしは過去に戻り、自分でガス管をチェックできる。メーナにあの晩はあの厨房に行くなと、警告することができる。でも、それをやってはいけない。わたしが命がけで守ってきた、あのいまいましいルールがあるんだもの。そんな葛藤が毎日繰り返されてきた」(298頁)

 それにしても作者は相当仏教を学んだのでしょう。若い女性を背負って川を渡った禅の老僧と若輩僧の問答話が出てきます。禅の入門書でわたしも何度か読んだことのある有名な逸話です。さらには輪廻と涅槃(ニルヴァーナ)の関係や、菩薩(ボディサツトバ)の仏教上の立ち位置も懇切丁寧に説明されています。時間旅行やAIロボットなど高度な科学文明の物語の中に、こうした東洋の唯心論が挿まれるのは、奇妙に心地よい気がします。

 物悲しくも美しいラストシーンが待っています。心の痛みを抱えて生きていたジャニュアリーにとってそれが幸せなものであればよいのですが。
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 この書から連想して以下のSF小説を紹介しておきます。

◆ポール・アンダースン『タイム・パトロール』(ハヤカワ文庫SF)
:時間旅行が可能になった世界で、過去に遡って歴史を改変しようとする犯罪者を取り締まるタイムパトロールの活躍を描くSF短編集です。痛快無比の冒険活劇が読めます。続編として上下二巻本の長編『タイム・パトロール/時間線の迷路』がありますが、すべて絶版になってもう何年も経っていることが大変残念です。

◆ロバート・シルヴァーバーグ『時間線をのぼろう』 (創元SF文庫)
:2059年の春、時間旅行技術を利用して観光客を様々な時代に案内する旅行ガイド〈タイム・クーリエ〉の職に就いた24歳のジャド・エリオットが主人公のSF小説です。ジャドはギリシア系の血を引くアメリカ人。ビザンティン帝国の歴史の知識を生かして、12世紀の十字軍遠征や14世紀の黒死病が猖獗を究めた時代、15世紀のコンスタンティノープル陥落の瞬間などへ大勢の観光客を案内していきます。その途上で自分の祖先にあたる女性プルケリアと恋に落ちてしまい、大きな事件が巻き起こっていくのです。

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パラドクス・ホテル (創元SF文庫)Amazon書評・レビュー:パラドクス・ホテル (創元SF文庫)より
4488620116

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