■スポンサードリンク


案山子の村の殺人



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
案山子の村の殺人 (ミステリ・フロンティア)

案山子の村の殺人の評価: 3.22/5点 レビュー 9件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.22pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(1pt)

ミステリー以前に読者を惹き付けるものが無い

★ 長文レビュー失礼 ★ 

「二度に亙る〈読者への挑戦状〉」という惹句に魅かれて購入しましたが、わざわざ「二度」に分けている意味ナシでガッカリ。一度目と二度目の間に何かしら読者の予測を覆すメタ的な仕掛けでもあるかと思ったけど、まったくの期待ハズレ。

他の人の指摘にもありますが、私も読んでいて感じたのは、とにかく「読者を惹き付けるものが無い」という事。ミステリアスで心躍る謎やドンデン返しも無く、二人の探偵役の主人公も淡白でキャラとしての魅力に欠け、すべてにおいて淡々とした印象で盛り上がり所が皆無。

まず最初の殺人事件が起きて物語が動き始めるまでが長く、紙幅の半分近くも掛かっている。それでいてこの前半部の大半は「登場人物の紹介」と「舞台になる村の状況説明」に費やされているだけで、読後に印象に残っているシーンがほとんどありません(主人公が村に付いてから村内を見て回り、宿や温泉で村人と会話してたくらいで、いったい150頁も何を読まされたんだっけ?というくらい内容が薄い)。

後半に差し掛かっても読むスピードが上がらず、真相が分かる直前ですら退屈で一端手を止めて数日空いてしまったほど。ラストも「え?これで終わり?」と言った感じで、何の余韻も感慨も湧かない終わり方(それまでに登場人物のドラマが無いため、誰が犯人であっても何も驚きが無い。真相を読む前に、登場人物の誰が一番意外性があるかと思って冒頭の人物表を眺めたけど、誰でも同じだな、としか思えなかった)。

そして今作のメインである「案山子の消失」と「雪密室」ですが、単に「事件現場に立ってた案山子が消えた」というだけで、多少の興味は惹きますが、やはり本格ミステリーの謎としては地味で、不可解さや不気味さと言った魅力に乏しい(せめて謎として出すなら「案山子の首がすべて持ち去られていた」とか、「案山子の代わりに死体が立てられていた。そしてその死体が消えた」くらいはやってくれないと)。雪密室も今あえてやるなら余程の改革や意外性が欲しい所ですが、そうした工夫も見られず、単に「雪に足跡が無い!」ってだけの平凡な状況と、予想以上にどうでもいい真相にガッカリ。

★ ↓以下、少しネタバレ含みます! 未見の方は要注意。★

そもそもあんなトリックを使用する必然性が弱いですし、何より不確実(ちゃんと作動するか、作動しても急所に当たるか、当たっても即死するとは限らないし、その間に助けを呼ばれるかも知れない、被害者が偽祠をスマホで撮影してSNSに投稿しているかも知れない、あんな怪し気な祠を確実に開けてくれるか分からないし、結局「いつ見に行くか」は本人次第なのでアリバイ作りとしても不確実、等々)。

そのトリックの後始末も手間や時間の掛かるもので、誰かに目撃される危険性があり、もし見られたら言い訳が効かない作業なのに、アレを回収して神社の蔵に隠すまで誰にも見られなかったと言うのも、さすがにご都合主義すぎます。

そしてさらに問題なのが、誰が犯人でも意外性に繋がらないドラマの無さと、どうでもいい逆恨みレベルの動機。だから真相が語られても「あっそ」としか感じられない。基本的に謎解きミステリーにホワイダニットは不要とは言え、「謎」自体がつまらない上に、こんな取って付けたようなお粗末な動機ではやはり納得感が得られません。

また探偵役である主人公の二人にとって被害者は無関係な人間という事もあり、謎を調査する過程での緊張感や切迫感が何も感じられません。本来は「次は誰が殺されるのか?」という村人同士の疑心暗鬼によるドラマなどが描かれてしかるべきでしょう。雪に閉ざされる村の孤立感や恐怖感も無いし、やはり主人公にとっても「謎を解かなければヤバい」という緊迫感が欲しい。

従兄弟同士でミステリ作家という設定も、作者がクイーンのファンだからと言う理由以外に二人である必然性が感じられず(二人だからこそ出来た役割分担による調査や推理があるべきでは?)、また、どちらも妙に「いい子」キャラで個性や面白味に乏しい。穿った見方をすれば、昨今のポリコレに抵触しない無味無臭のキャラといった印象。あとキャラ名も微妙に読みづらいものがあり、「真舟(まふね)」とか「旅路(たびじ)」など、出て来る度に「ましゅう…、じゃなくて"ふね"か」とか「りょ…、あ、"たび"か」となってしまい無駄にイライラさせられます。"たびじ"の発音も、「た↑び↓じ↓」なのか、「た↓び↑じ↑」なのかどっち?イライラするわ(笑)。

謎解きの論理性はあるので、実際は★1つほどの駄作という訳でもないですが、あまりにもそこ以外の要素(提示される謎、登場人物の個性や魅力、ストーリー展開、真相の意外性、緊張感や恐怖感の演出、等)に魅力が無いのが致命的。ミステリーに限らずですが、やはり大事なのは読んでいて「これからどうなるんだろう」とか、「こんな不可解な謎に論理的な解決があるんだろうか」というワクワクを感じさせてくれる事ではないでしょうか。この作品にはそれがありません。

若い作家さんなのですから、変にこじんまりとせず、まず何かひとつでも「新しいものやインパクトのあるものを提示してやろう」という気概をこそ見せて欲しかった。不遜な物言いで恐縮ですが、今後に期待する意味でも苦言を呈させて頂きました。何かしら今後の執筆の参考になれば幸いです。
案山子の村の殺人 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:案山子の村の殺人 (ミステリ・フロンティア)より
4488020232
No.1:
(2pt)

面白くありません

新人の方なのでしょうから伸びしろを考える余地はありますが、私には「壁本」でした。エラリー・クイーンに傾倒することを隠さず、その模倣を前面に打ち出す作家さんはほかにもいますが、この方たちの作品に共通するのは「ひとりよがり」なこと。ミステリー好きの読者はみなクイーンが好きだと思っているのか、あるいはそうでない人は読んでくれなくていいと思っているのか。自分の世界だけで愉しみ、読者を楽しませるという姿勢がまったく欠如している。犯人を論理的にあてる→この人が犯人。だから何。この作品のメインの謎は「雪密室」。それと、主人公が二人組の作家でクイーンが好きとくれば、読む前からどんなテイストの作品か想像がつき、そしてその通りだった。「謎」の不可思議さも、論理も、まったく新しさがなく、いつもどおり登場人物はすべておざなり。とにかく素人臭さが最後までついて回る。シリーズのようだが、自分の生活を延長させたような世界観で作品を構築するのはやめた方がよい。いわゆる「新本格」と呼ばれる作家のなかにも、クイーンの世界観をもちこんで離さない人ーたとえばA・Aなどーがいますが、この人の作品で未だに面白いと思える作品に出合ったことがない。
 比較するのは問題でしょうが、たとえば島田荘司の今年の長編において提示される「謎」の魅力的なこと。最初に提示される謎が大きいだけに、着地はいつもすこしガクッなんですが、それでも最後まで読者を放さない話術は、やはりこれが作家力というものかと思わせる。着地が多少期待をはずしても、最後まで面白いと思わせてくれる作品は、それで十分になりたつ。自分の世界観を読者に説明し続けるような作品は読んでいて疲れます。本当は★一つにしようと思ったのですが、それではあまりだと思い二つにしました。ちなみに、読者への挑戦状はやめた方がよい。素人の遊びに金を払わされているような気持になる。もともと作者は、犯人をあてさせないように工夫をして書いているのだから、推理の条件は意図的に隠されているわけで、作者と同等に論理的思考ができるように提示されているはずはないのですから。
案山子の村の殺人 (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:案山子の村の殺人 (ミステリ・フロンティア)より
4488020232

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!