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陽炎の市
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陽炎の市の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.12pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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シリーズ2作目。 命からがら逃げだしたダニー一派が、サバイバルから一転する。 映画「ゴッドファーザー」の内幕を描くようなハリウッドの虚々実々が描かれており、自身映画化作品があるドン・ウィンズロウだけに、ウィットとブラックユーモアが効いた文章でハリウッドが描きこまれる。 映画ファンだと、実名もどんどん出てくるので実に楽しめる。 ただ、「犬の力」などの3部作を期待すると、趣がだいぶ違って中だるみに感じるかもしれない。 鮮やかな出だしで始まり、ラストも上手くつながっており、巧みなプロットに多彩なキャラの絡み合いを楽しめる。 | ||||
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ウィンズロウが最後の作品として世界にプレゼントしてくれる三部作は第二作。第三作は執筆中とのことなので、一年に一作、書いては出版するというけっこうリアルタイムかつ歴史的作業なのかと想像する。翻訳者も出版社スタッフも綱渡りな作業だろうが、内容的にも、作家ウインズロウのラストワークとしても、あまりに重要な歴史的三部作に携わる多くの方のGood Jobに敬意を表しつつ、大切に本書を手に取る。 旅行業をしていると本に費やす時間が実は途切れ途切れで得られにくいのだが、8月に入ってようやく連続休暇が得られたので、二日くらいで一気に読ませて頂いた本作。分厚い作品だが、『業火の市』で故郷を追われた主人公ダニー・ライアンとその一行がウエストコーストに辿り着く状況と、そこでもまた張りつめる緊張と生死を賭けた日々に瞬く間にのめり込んでしまう。 テンポが速いせいか、ぐいぐい読み進む。とはいうものの、登場人物の多さが読みにくさに繋がるので巻頭の人物表を百万回くらいめくりなおさねばならないのは前作と同様。何せ人間関係図は、この物語にとって大変重要なものだし、それぞれの人間関係の矢印は、いつでも裏返ったり引っくり返ったりし得る信用のならないものだからだ。スリリングで緊張感いっぱいの登場人物表。 タイトルの「陽炎」は原語では”Dreams”。ちなみに具体化するとそれはハリウッド・ドリームだ。銀幕の世界。主演女優の魅力。札びらが舞う世界。夢という名の鉱脈が眠る土地。 売れっ子映画女優の作品撮影に燃えあがるサンディエゴ。ダニーたちが辿り着いた太平洋の岸辺にある世界。メキシコの闇カルテルやFBIの権力闘争、そしてロードアイランド州プロヴィデンスに遺してきた敗北の過去。勝者イタリアン・マフィアの追撃の恐怖。ダニーは空っぽであるかに見える。組織はばらばらに解体したかに見える。しかしダニーが持ち去ったマネー(大半は海に投棄したとは言え)への追撃網は緩まない。緊張した逃走ドラマのさなかで、ダニーたちは身を隠す。新天地カリフォルニア。 売れっ子女優ダイアン・カーソンの描き方が独特でウィンズロウらしい。そして映画製作現場の活気も、そこに寄せられる札束の気配も、男たち・女たちの欲望も。ダニーの母親はクールでリッチで悪女だが、それでも母親であり、ダニーの守護神でもある。ダニーの腹心のアルター・ボーイズは歩く凶器みたいなもので、スリリングな存在だ。いや、すべての腹心、部下たちが同じようなものかもしれない。何しろ彼らはギャング組織。影を踏んで歩く組織なのだ。 そしてこの三部作はギリシャ神話に基づいた物語だと言う。ウィンズロウ人生最後のチャレンジ。運命の渦に巻き込まれ錐もみ状態になったダニーの運命は未だこの作品まででは半ばまでしか語られていない。全く幸福とは別次元に転がっているかに見える主人公ダニーと彼に近づく者たちの不幸が際立つ。ダニーの彷徨の人生は、煌びやかに輝くと思うと、次の瞬間には闇に閉ざされる。血の匂い。硝煙の匂い。銀幕の夢。ドラッグの眩暈。命の儚さ。いつも摑みきれなかった愛。 本作もまた読後の興奮冷めやらぬところは前作同様。本当にドラマティックなクライマックスを予感させる最終作(本シリーズだけではなく、残念ながらウィンズロウの最終作)まで一年。今日のところは終わっちゃいない。気長に待つとしよう。 | ||||
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ダニー・ライアン・サーガ三部作の二作目を読み終えました。もっと早く取り掛かる予定が遅くなりました。読んでしまうとしばらくドン・ウィンズロウを読む機会がなくなるが故に先延ばししていました。私の思いっきりの悪さは、一作目の「業火の市」(2022/5月)でアイルランド系、イタリア系を問わず業火に焼かれてしまうマフィア・メンバーの下っ端以下でしょう(笑)。だから何をやっても早死にしてしまう。 一作目でアイルランド系マフィアのダニー・ライアンは血で血を洗う抗争の末、すべてを失い(すべてを捨てて?)、プロヴィデンスを去り、幼ない息子・イアンと共に西へ西へと向かいます。“詰んでしまった“事に気づいたダニーは自分を捨てた母親・マデリーンの力を借りることを余儀なくされます。イアンと生き残るために。 そして、米国政府機関との「握り」を経てメキシカン・カルテルがらみのヤバい仕事を成功させ、あろうことか1990年代のハリウッドへと足を踏み入れる事になります。陰から陽の世界へ。しかしながらギャングは所詮ギャング。束の間の安息を経て得られたものは、過去から亡霊のように立ち昇る新しい戦争と新しい「罪悪感」。より肥大化した「自我」が新たな地獄への道往を呼び寄せます。 今回もまたストーリーの詳細を書き記すつもりはありませんが、ロード・アイランド州、プロヴィデンスで起きた「業火の市」が映画「プロヴィデンス」となって蘇り、あたかもその映画はドン・ウィンズロウ自身が「業火の市」を微細に解説した指南書のような効果を見せながらそのストーリーを逆サイドから照射して見せてくれます。それは新しい経験でした。 そして、最終・22章の絢爛たるグルーブ。その酩酊感。それはアート・ケラーの戦争を描いた作者のもう一つの「詩」の結晶と言っていいでしょう。 三部作の最後「荒廃の市 “City of Ruins”」(2024年夏)が今から待ち遠しい。 □「陽炎の市 “City of Dreams”」(ドン・ウィンズロウ ハーパーBOOKS) 2023/6/26。 | ||||
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『業火の市』の続篇で、三部作の2作目。 内容は紹介にある通りで割愛する。 率直に述べると、ちょっと期待外れで1作目ほどのハードさや、わくわく感に欠ける。ストーリーの流れ上必要なのであろうが、ハリウッドの映画界云々関連は冗長で中だるみにも感じた。おもしろくないわけではないのだが、私がウィンズロウ作品に求め期待しているのが息をもつかせぬハードボイルド的なものだからなのだろう。 加えて主人公ダニーは1作目終盤から逃亡する立場になり身を潜めていたはずなのに、恋をした相手が女優であるためダニーもメディアに取り上げられるようになる。彼は愛に目がくらんで開き直ってしまい、堂々と被写体になり所在を明らかにしてしまう。いつだって控えめで賢く冷静な判断ができていたはずなのに、これがダニー?と彼らしくなさに違和感を覚えた。 結果としてもちろん案の上……なのだが。 終盤はバタバタと展開し、エンディングの読後感はよかった。きっと3作目では残された問題あれこれで1作目のようなハードさが戻るのだろう、次作が楽しみ! と、読了後は思ったのだが、巻末の「次作一部抜粋」を読むと “人生観” 等、またもやちょっと退屈そう。 ドン・ウィンズロウも年をとったということか。 そして何よりもショックなことが! 解説によると、ドンが本三部作の完結をもって作家引退を宣言しているというのだ。 だめだ! だめだ! ぜひ考え直してほしい!!! | ||||
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