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極楽征夷大将軍
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極楽征夷大将軍の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.15pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全71件 61~71 4/4ページ
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足利尊氏、直義と高師直を中心に鎌倉幕府の後期、建武の新政、室町幕府の成立、そして室町幕府の内紛を描いている。あまり興味のなかった時代(室町時代)かつ人物(尊氏、直義)だったが、魅力的に書き上げている。著者は昔のハードボイルドアクション系からかなり方向性が変わってきているが、うまく変われているという印象を持つ。 | ||||
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なかなか出てこない足利兄弟を軸とした話なので楽しみにして読んだ。 わかりずらいあの時代の、全体の流れを学ぶには良い小説だと思う。 しかし、人物の描き方が薄すぎる。 堅物で、諸事をさばく才能に溢れ、兄思いの弟、直義はまあ良いとして。肝心の足利尊氏の描き方が、能天気でいつも世間に流され、底抜けのお人好し。そのせいで人が皆就いてきた、という設定は、あまりに人物像として軽薄過ぎるように感じた。 何事をも己の裡に放り込んでしまう事から頭陀袋殿と渾名されたという設定(蒼天航路の劉備のパクりだろうが)は良いと思うし、現にそのような人物であったろうとは思う。 その頭陀袋の中の虚に、皆吸い込まれていく吸引力、そこにあるはずの強烈な人間性というものが全く描かれていない。 ただ単に底抜けに人がいい源氏の棟梁、というだけで、全国の名だたる武将達が皆、我先にと従うというのは話が強引過ぎないか? さらに作者はこのように言う。 「尊氏は、我ら現代人によく似ている。確固たる生き方の規範を持たず、現世での苛烈な野心も、我が生に対する使命感のようなものも格別にはなく、それゆえに自己の不在という虚しさに折り合いを付けることも叶わないまま、時に無気力になり、欲望が剥き出しの時代の中に漂い続ける。存在の希薄さ故の、自己矛盾を抱え続ける。」と。 この見立てに関しては、私は完全に間違っていると思う。 現代人に対する評価としては概ね賛成する。しかし尊氏がこのような人間だったと、この作者は本当に考えているのだろうか!? 現代人のように根なし草の如くに生きている人間に、本当に日本中の人達が熱狂すると!? 私は、足利尊氏は現代人とは真逆の人であったと考える。 優柔不断であり、自分の利益や時に己の生命までも簡単に投げだそうとする事から、今では「メンヘラ征夷大将軍」などと言われたりするが、 果たして、現代に、己や身内の為でなく、世の為に全てを投げ出す覚悟の人間がいるのだろうか? 某国の首相など、子供にどうして首相になろうと思ったか聞かれた時に、「一番権力があるから」と答えていたではないか。 多かれ少なかれ、皆同じようなものだろう。「今だけ金だけ自分だけ」、それが現代人を端的に表す言葉ではないか。 現代だけでなく歴史を見回しても、また世界を見ても、国を統べるに至った人物でこれ程自己の権力、利益、名声への欲求と離れて生きた人間がいただろうか? 現代の日本、いや世界で、本当に必要な人物は、足利尊氏のような人物である、そう強く確信している。 そういう点、少しこの小説は物足りなく感じた。 | ||||
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世の中の無常、矛盾、人の心の虚ろな来し方行く末を文章を読んでいて感じた。 垣根涼介さんの時代ものはなかなか読み応えがあり、次作も楽しみです。 | ||||
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何とか最後まで読み切ったが、尊氏を‘うつけ’とした設定がはっきり言って不愉快で、何度か挫けそうになった。 この設定のせいで、度々尊氏に対して師直や直義が呆れ返るが、この二人の呆れ返る反応のワンパターンさに読んでいるこちらもうんざりしてくるし。 師直が死んだ後に覚醒した尊氏はよかったので、そこまでの尊氏の描き方が本当に残念だった。 確かに尊氏には理由の付けづらい行動があるが、その理由が‘うつけ’というのは短絡的過ぎると思った。 あと、小説とは言え、尊氏が「うん。」と返事するか?円心も「あは。」って笑うか? けっこうな量で歴史的な出来事は丁寧に時系列に沿って書いているので、まだまだ鎌倉幕府滅亡から南北朝時代についてあまり手に取ったことがない方なら読んでみてもいいかもしれない。尊氏が好きな方にはお薦めしない。多分、何度も腹立たしい思いをする。 | ||||
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今まで、吉川英治「私本太平記」や海音寺潮五郎「武将列伝」を読んで、足利家の嫡子と信じていた尊氏や弟直義が庶子だとする冒頭に驚かされる。裏付けがあるのだろう。本書は尊氏・直義・高師直のトリオで足利幕府を設立する過程を細かく描いている。兄弟のいさかいの原因の一つに尊氏の妻の言動を配置したあたり納得できる。竹ノ下合戦や師直没落前の戦況、足利直冬の戦績などが克明に記されているのも嬉しい。ただ、親王任国上野には上野介迄しかいなかったはずだが、上野守が頻出するのは残念ながら信用性に水を差す。 | ||||
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著者の鎌倉〜南北朝期の時代背景に対する付け焼き刃感を感じて途中で読む気しなくなった。 序盤から、槍の稽古、槍働きなど、槍を使った表現がしきりに出てくる。生母の実家の出自の低さを表現するのに「左兵衛督」を持ち出す。この時代に興味があり、あるいはドラマや小説に親しんでいる方なら、かなりの違和感を覚えるはずだ。 | ||||
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面白かったです。高校で長年歴史を教えて来ましたが、知らないことだらけでした。尊氏、直義、師直の人格もよくかけていますね。もしかしたら、高家が執権になっていたかもと思います。この小説は、私の高校時代の日本史の恩師に読んでもらおうと思います。ちなみに恩師は、大学1年の時に、志賀直哉が犬の散歩をしていたのを見たという方です。 | ||||
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垣根涼介の新作は、足利家の視点で太平記の時代を描いた、格調高い歴史小説である。より正確に書けば、足利直義と高師直からみた、鎌倉幕府の末期から滅亡、建武の新政、室町幕府の成立、そして幕府成立後の内紛(直義と師直との対立、尊氏と直義の対立)を、流れるように描いている。傑作である。 吉川英治「私本太平記」を読んだのは随分昔であるが、太平記の時代は多焦点的で、なんとなく取っ付きにくいと感じてきた(NHKの大河ドラマでも、この時代を取り上げたのはおそらく一回しかないし、視覚的なイメージがないということもあるだろう)。多焦点的というのは、物語の叙述が、ある時は足利尊氏に、ある時は後醍醐天皇に、ある時は楠木正成に、そしてある時は佐々木道誉にフォーカスして、あちらこちらに行ったり来たりしているうちに、話の筋道が見通しにくくなってしまうということである。また、北朝側か南朝側かどちらに感情移入したらよいかもはっきりしないので(どちらにも大義がありそうでもあり、なさそうでもあり)、それも、私のなかで、取っつきにくさを感じる要因かもしれない。 この垣根涼介の新作は、足利家の動きを克明に描き、足利家の視点から時代全体を俯瞰することで、多焦点的な動きを一つの焦点に固定した。そのため、多くの人が好きかもしれない佐々木道誉は殆ど登場しないし、後醍醐天皇が隠岐に流されるときの児島高徳の「天勾践を空しゅうすること莫れ 時に范蠡なきにしも非ず」も出てこない。しかし、足利家の視点で描くことで、この時代の複雑な政治過程や人間関係はすっきりし、物語は流れていく。そして、作者の達意の文章があり、引き込まれていく。 もう一つ特筆すべきは、尊氏、直義、師直の3人の人間像が、極めてしっかり、現代的な形で丁寧に造形されていることである。高師直についても、非常に公平に描いており(ステレオタイプ的な極悪人には描かれていない)、直義と師直の政治姿勢や立場を中立的に対比していて、だからこそ、終章で師直が追い詰められていく様は、とても胸が締め付けられる。そして、終章での、晩年の尊氏の成長の描き方は、作者の人間に対する深い洞察を感じさせるものになっている。第3章まで読み終えた扉の向こうに、もう一つ、奥行きのある物語がある。 私は、これまで、垣根涼介作品を、「光秀の定理」(角川書店、2013年)、「室町無頼」(新潮社、2016年)、「信長の原理」(KADOKAWA、2018年)、「涅槃」(朝日新聞出版、2021年)と読んできたが、今作品が最も素晴らしいと感じた(「涅槃」のような、変なノイズもなかった)。評価は「最優秀の作品」の☆5つとしたが、☆5つを上回る価値があった。これは私の書いた59番目のレビューである。2023年6月7日読了。 | ||||
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足利幕府成立がよくわかります。 私の先祖も出てきて面白く読めました。 | ||||
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すごい1冊。室町幕府創設の立役者たちの時代背景、生い立ち、人物関係そしてドラマが全て詰まった1冊。 室町時代には、イメージとして何か釈然としないものがまとわりつく。応仁の乱などはその象徴だろう。では何が釈然としないかと言えば、それは善悪の対立構造の分かりにくさと、当事者の打ち出す理想への共鳴の無さではないだろうか?正確には、大した理想や理念もないのかもしれない。源平の戦い以降の流れを汲んでいることは間違いないだろう。鎌倉殿以降の歴史は、泥々の内輪の権力闘争の歴史で、特に時代をどうこうするイデオロギーには乏しい。 その流れを汲んで、室町時代もそのイメージが付き纏うなか、作者は良くぞこの足利兄弟に着目したなぁと感心せざるを得ない。この兄弟の面白さには、本流じゃないところから成り上がった成功の興奮、兄弟で力を合わせた美談など、人々を魅了するストーリーに溢れている。兄弟のキャラもわかりやすく、惹きつけやすい。北斗の拳で言えば、雲のジュウザ、ドカベンで言えば殿馬、例えが古いが、飄々キャラの兄と頭がキレる弟の組み合わせ。そして支える高兄弟などもキャラがわかりやすい。 歴史のうねりの中で登場する人物たちもキャラが濃くわかりやすい。赤松円心、楠木正成、新田義貞、そして何より後醍醐天皇だろう。 本前半の足利兄弟中心に旧体制である執権制度北条鎌倉幕府を倒していく過程と、後醍醐天皇という悪質なやり手に向かっていくそのスピード感と高揚感の描き下ろしはとにかく圧巻で面白い! しかし残念ながら、この兄弟の歴史は、鎌倉殿の13人と同じ方向をなぞって行ってしまう。そこからは、人の恨みつらみや面子や立場や対話の欠如からの誤解ばかりからの対立が蔓延り、誰と誰が何のために争っているのか、分かりにくくなる。それは歴史がそうだったのだから仕方がない。足利兄弟には、時代と人の心を掴む理念とそれを広めるプロデュース力が足りなかったのかもしれない。 しかしこの本は、そんな歴史を凌駕するほど濃く、そして面白い1冊だった。足利尊氏と直義兄弟のことをより知りたくなり、赤松円心や楠木正成も然り。そして高兄弟も今後より新たな歴史的発見と解釈が増えてくるのでないか?と推測する。応仁の乱には気が向かないが、作者は今まであまり陽の光が当たらない室町時代の一番興味深く面白い部分にスポットライトを当てられたのではないだろうか?今後ここにより注目が当たるのではないだろうか?分厚い一冊だったが、あっという間に読み終わった。鎌倉幕府の終焉と室町幕府の始まりについてもよく分かるようになった。 | ||||
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何を見てもよくわからなくなって読み飛ばしてしまい、理解できない室町幕府の創世期の物語。 建武の新政とか北朝擁立あたりまではグイグイ引っ張ってくれて面白いです。 でもやはり、筆者も、観応の擾乱あたりになってくると物語るのに飽きてきたのか、あるいは史実を小説化するのに手に余ったのか、段々とストーリー展開が雑になって来ます(実際の歴史の展開も、ゲーム・漫画っぽくなってますが)。 最後の最後まで尊氏が、歴史的にはグダグダの中でありながらも活躍し続けたことについても、小説のストーリーとしては都合良すぎで、そのように活躍する布石の描写は薄いかなと。 長編ですが、歴史と同様、後半はグダった作品でした。個人的には、信長の原理を最後に、垣根先生の歴史小説のキレが衰えてる気がします。 | ||||
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