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夜がうたた寝してる間に
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夜がうたた寝してる間にの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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『夜がうたた寝してる間に』は、異能を持つ3人の生徒たちが普通の学校で体験する、机が教室から放り出されるという事件の謎に迫る物語です。この作品は、異能ミステリという魅力的なコンセプトを掲げながらも、そのポテンシャルが十分に引き出しきれていない部分があると感じられました。 まず、物語における異能の使い方についてです。異能が存在する世界観がしっかりと設定されている一方で、その能力が物語のトリックや展開に十分に結びついていないように感じました。異能がもっと物語の核心に関わり、プロットと密接に絡むことで、さらに強力なドラマを生み出すことができたのではないでしょうか。たとえば、主人公の「時を止める」という異能について、物語終盤で使用される場面には少し必然性が薄く、カタルシスが不足しているように感じました。この能力がもっと感情のピークに合わせて効果的に使用されることで、物語により緊張感や驚きを与えることができたかもしれません。 次に、事件そのものについてですが、ミステリとしての深みにもう少し工夫があれば、より引き込まれる展開になったかもしれません。異能の持ち主たちが社会から偏見の目で見られる描写は物語において重要な要素ですが、事件の真相やその動機にもう少し意外性があれば、物語全体がさらに魅力的になったと思います。読者に「次に何が起こるのか」という期待感を抱かせるためには、もう少しプロットにサスペンスや意外性を加えることが効果的だったかもしれません。 また、異能を持つキャラクターたちの「生きづらさ」が描かれている点は非常に魅力的です。彼らの悩みや苦悩がしっかりと描写されており、そこにリアリティを感じました。ただ、その悩みや苦悩が物語全体にもう少し有機的に反映されていれば、さらに深みが増したのではないかと思います。例えば、主人公が時間を止める能力の代償として他人より早く年を取るという設定は非常に興味深いものでしたが、その設定が物語の展開にどのように影響しているかが少し曖昧な部分がありました。もし過去のエピソードや、能力を使う理由が明確に描かれていたなら、キャラクターの行動に対する読者の共感をより強く引き出すことができたのではないでしょうか。また、テレポート能力を持つ元陸上選手の苦悩についても、もう少し深く描写されていれば、キャラクターに対する感情移入がさらに促されたかもしれません。 SF的な側面についても、異能に対する科学的な説明や世界設定の掘り下げがあれば、物語全体の説得力がさらに増したと感じます。特に、時を止めた際の「空気の重さ」といった描写には興味深い要素がありましたが、それをさらに深く掘り下げることで、物語の中で「この世界のルール」をより読者に理解させることができたのではないかと思います。設定されたルールに基づいて物語が進行することで、物語に一貫性が生まれ、読者もその世界観により没入できるようになります。 また、対話の冗長さについても少し気になりました。キャラクター同士の会話が物語の進行を妨げることなく、むしろ推進力として機能する形で配置されていれば、読者がよりスムーズに物語に入り込むことができたかもしれません。異能や事件の謎解きに重点を置き、対話を効果的に使うことで、物語のテンポを保ちつつ、読者を飽きさせない工夫が必要だったと思います。 総じて、『夜がうたた寝してる間に』は、異能という独自の要素を持ちながらも、それをミステリやキャラクターの掘り下げに十分に生かしきれなかった部分が惜しい作品です。しかし、異能を持つキャラクターたちの生きづらさや、彼らが抱える苦悩には非常に興味深いものがあり、それらをうまく引き出すことで、さらに感動的で奥深い物語にすることができたのではないかと思います。今後、この設定を活かしてさらに深く掘り下げられた作品に出会えることを期待しています。 | ||||
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