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ロスト・アイデンティティ
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ロスト・アイデンティティの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.25pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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この本を読む前にジェフリー・アーチャーの本を読んだのですが、どうもしっくりきませんでした。 アーチャー氏の本は読みやすく、何冊も読んでいるのですが、白人中心の世界でスノッブ感が満載で鼻に着く、予定調和的でワンパターンな内容に飽きてきていました。特に、この何十年の間に英国の人種の構成も変わってきているので、時代に合わない内容が多くなってきていると感じました。 あまり英国からのワクワク・満足する小説に出会えないなあ、と思ったのですが、久々にこの小説はおもしろかったです。 マイノリティながらも徐々に社会に溶け込んでいるイスラム教徒の視点から、英系イスラム系以外の人が知らないこと、感じたことがないことが分かりやすく描かれています。 しかも、章が比較的短く区切られているので、話がダラダラしていないのも良かったです。 | ||||
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前半はムスリム青年の日常が描写される。やや、退屈に思えるところもあるが、後半は一気に読ませる。ターニングポイントは、メロン(果物)の登場あたりからだ。 | ||||
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イギリス在住の作者クラム・ラーマンはパキスタンはカラチ生まれ。一歳で英国移住、ロンドン育ちの現在はIT企業会社役員、という珍しい肩書の新人作家だ。本書は、作者お馴染みの、ロンドン西部の移民率が高い自治区にあるハウンズロウに育ったムスリムの青年たちの日常からスタートする。 主人公のジェイ・カシームは麻薬の売人だが、友人の一人は警察官、もう一人はテロリストキャンプにまで参加する民族主義者。再婚相手ができたばかりの母は冒頭からカタールに引っ越ししてしまい、父なし子のジェイは、初めての独り立ちを迎える。 本書はそうした環境下で、青春小説、成長小説としての基盤を持ちながら、大枠ではイスラム・テロを主題として扱ってゆく。ジェイは独りになった途端、麻薬の元締めに追われ危機を迎え、MI5のテロ対策室メンバーから唐突なスカウトを受ける。 そう。これは青春小説であると同時に、スパイ小説でもあり、最後は大掛かりなテロ計画とそれを阻止しようと動くMI5や、その中心になぜか巻き込まれてしまったジェイを描く壮大な冒険小説でもあるのだ。平凡な警察小説でもミステリーでもなく、今時珍しいれっきとしたスパイ・アドベンチャー・アクション! 最初に言うべきだったが、本書は、ひとたびストーリーに入り込むとなかなか読みやめることができなくなる超面白本である。 ハイテンポな描写力。見知らぬ情報世界の闇の深さ。テロの裏側へのスリリングかつ初心者主人公による潜入の奇抜さ。警官やテロリストであるご近所の友人たちとの駆け引き。そして主軸となるテロ計画への導線と時間単位での息を飲むその結末。それら、スケールある題材やアクションを、離れた第三者視点の中に、二十代の若者の視点を交えながら描き切っているところが秀逸なのだ。 面白いのは、ある部分はジェイの一人称で、ソフトかつ時にはユーモラスな視点で移民たちの文化、家族の歴史を綴ってゆく部分。それとは逆に、三人称で描かれるMI5を含めた大人たちの側からは、ジェイの勧誘に至る経緯や、テロの実行に至るスピーディな流れが、物語に変則的なリズムを与える。ジェイの内と外と、まさに両側から描かれる立体感である。どうにも緊張と面白さに震えるこの最終部分がたまらない。 さらにラストのラストは、ショッキングだが、あとがきを見てなお唖然! ネタバレに触れそうなので言えません。ここでは、次作の翻訳も決まっているとのこと、その作品への期待感と強い好奇心とをお伝えできれば、と思う。 ☆もう一つ気になる視点からのレビューを以下に追加します! おかしいかもしれないが、ぼくの印象では、主人公ジャヴィド(ジェイ)・カシームは、ムスリム版『傷だらけの天使』木暮修である。舞台は英国。イスラム過激派のテロ組織という、木暮修には荷が重いくらいの相手だが、彼を起用するのはジェイムズ・ボンドが在籍したMI5。世界中で一番有名なスパイアクションの胴元なのだ。 そうなるとスケールとしては『傷だらけの天使』よりずっと大掛かりじゃないか、との声が聴こえてきそうだ。しかし、そうでもない。主人公は、大人になり切れていない不幸な家庭の一人息子だ。でも愛の対象であるママはどんな形であれ存在しているのは、木暮修よりずっと有利に働く。でも彼が生業としているドラッグ売人は木暮修の探偵助手という職業より、ずっとずっと腐敗していて、かつ危険だ。 何も『傷だらけの天使』と比較しなくても良いのだろうけれど、読むにつれますます比較したくなってくる。きちんとした将来が見据えられない青春の時代、傷ついた心が求める何ものかを、利用する誰かがいて、利用される若い主人公はすべての傷を負い、叫ばざるを得ない。そうした環境自体が両方の作品を印象として繋ぐのだ。そして愛せる。ここは重要ではないだろうか? 両作品に通停する魅力の在処として。如何? | ||||
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ハウンズロウをいう街で、しがない売人をしているノリの軽い男ジェイ。 とある任務を帯びてイスラムのモスクに潜入し、次第にある計画の核心に迫っていく。 イギリス人とパキスタン人、という2つのアイデンティティに引き裂かれながら、苦悩に満ちた作戦の行きつく先は・・・というストーリー。 序盤から中盤はコメディタッチや軽妙洒脱なセリフ回しもあって笑いながら読めるのですが、後半になってジェイの苦悩が深まるにつれ、読者もきっとジェイと同じく悩むことになると思います。 人生の不条理さをコメディ要素で包みつつ、サスペンス要素も忘れない。 登場人物もキャラが立っているし、最後の最後まで凄い展開が続きます。 海外では続編も出ているようなので是非読みたいですね。 ハーパーコリンズさんは、早川書房に次いで、最近良いアクション・サスペンス小説を出してくれているのでうれしいです。 「黒き荒野の果て」も非常に面白かったです。 | ||||
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30年以上連絡がとれなかった方から突然の小包が届きました。 中身はこの本。 ご自分が訳をしたとのこと。 添えられた便箋を読み、あの頃を思い出し色々と溢れてくるものがありました。 これから読みます、きっと面白いと思います! ※中身のことじゃなくてすみません(^^; | ||||
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主人公ジェイのとぼけた魅力ななんとも……時に笑わせられ、時に泣かせられた。ただ、クライマックスではジェイが手を下す形にしてほしかった。結局最後は傍観者的になってしまったのが、やや肩透かしだった。でも続編もあるらしいので期待大! | ||||
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「ロスト・アイデンティティ "East of Hounslow"」(クラム・ラーマン ハーパーBOOKS)を読み終えました。 舞台は、ロンドン西部。エスニック・マイノリティーが多く暮らすハウンズロウでムスリムとして生まれ育ったジェイが主人公。ストーリーは、ドラッグを売り、快楽を貪り、BMW(ビーマー)に乗る彼の青春物語のように推移していきますが、ドラッグの密売容疑で逮捕された彼にMI5のパーカーが接触を謀ります。物語が反転し、スパイ・スリラーの様相を呈してきます。司法取引によって罪を帳消しにする代わりにジェイはエージェントとして、ムスリムのテロ組織へと潜入することになります。 作者はパキスタンから英国に移住後、この地で育ったそうですが、今までのスパイ・スリラーに新しい視点を盛り込み、私が知らなかった世界の<ヒューマン・ファクター>を教えてくれます。まるでジェイが勉強会の主催者アル・ブカラから、或いは訓練キャンプの教官・ムスタファからムスリムの教えを、ジハーディストとしての心得を教わるように。 ジェイの親友たちとのヒリヒリするような心の交流、MI5のハンドラー・パーカーとの愛と確執、英国にいながら居場所を失い、どこから来て、何処へ向かうのか?、失われたジェイのアイデンティティが向かう先は、遠いイスラマバードなのか?そして、その先には、巨大な暴力の渦が待ち構えています。 スリラーとしても二つの<中ぐらいの>驚き(笑)が用意されていて、作者の物語作者としての才能を感じ取ることができました。そして、タイトルが美しい。そこにはスタイベックのネガのような物語として、「父子の物語」が横たわっています。 未消化な要素がいくつか残されているようですが、それらは次の物語へと継承されていくのでしょう。次の翻訳を期待したいと思います。 | ||||
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主人公ジャヴィド(ジェイ)はイギリスで生まれ育った28歳のパキスタン人。一応イスラム教徒(ムスリム)だが、モスクへ通うのは週1回、マリファナを吸い、酒を飲み、肉を食べる。同属が多いコミュニティで過ごしているため、特に差別を受けた経験はない。こっそりドラッグの売人をしているが、母親と二人暮らしの穏やかで気のいい青年である。 そんな彼が、モスクを他教徒に荒らされた事件をきっかけにして、相反するふたつの組織に引きずり込まれ翻弄されていく。何故? 背景に何が? ジェイ「人生の岐路?おれってそこに立ってるの?」(No.2097)「自分のアイデンティティを求めて悩んでいるような感じ?」(No.2105) →パーカー「そう、それだ」「ぼうず」 といったような、無邪気で愛嬌のある会話が前半はおもしろかった。 しかし起こっていることはかなりシビアで、ジェイも次第にそのことを認識し、彼なりに懸命に任務を果たそうとする姿が何とも愛おしい。 近年イスラム教過激派によるテロが各国で起こったことから、私もイスラム教にはあまりいいイメージを抱いていなかったが、本書を読んでいて、彼らの西欧諸国に対する恨みつらみには「もっともだ」と納得できる。最近ではコロナウイルス蔓延をきっかけに、アジア人がヘイトクライムを受けているし。 しかしだからといってこんな極端な行動に走るのはどうかと思うのだが、洗脳、人種的傾向、若気の至り等によるものなのだろう。 クライマックスシーンは、ちょっとできすぎ感とお粗末な印象を受けたが、実際こんなものかも、とも。 そして衝撃のラスト…! いろいろな感情がよぎった。 さらに、あとがきによると原書でシリーズ三作目まで刊行されているとのことで、これにも驚き!たいへん興味深く、★4.5にアップ。 デビュー作とのことだが、いい内容だった。全般的に退屈しなかったうえ翻訳も上手く、読みやすかった。表紙カバーの青年がイメージに合っていて、いい。 余談だが、ここでも日本車は粗末な扱いで、実際そうなのかもしれないが、何だか腹立たしい。レクサスだけは高級車扱いだが。 | ||||
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