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台北プライベートアイ
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台北プライベートアイの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.41pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全22件 21~22 2/2ページ
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文藝春秋文藝出版局のツイッターによると、故天野健太郎さんが陳浩基の『13・67』脱稿直後に次の華文ミステリーはこれ、と推していたのが本書『私家偵探 PRIVATE EYES』だったといいます。同じころにこの作品に注目していた翻訳家がもう一人。それが今回『台北プライベートアイ』を翻訳した舩山むつみさん。もともと英語の文芸作品や社会学などの書籍翻訳を手掛けてこられ、英語・フランス語・中国語の通訳案内士の資格も持つ彼女ならではの巧みな翻訳でテンポがよく、丁々発止の会話が心地よいです。台湾語や難解な仏教用語が散りばめられているかかわらず、一気に読めてしまうのは原作の面白さに加えて翻訳者の力量でしょう。Youchanさん装画の表紙はGoogleのストリートビューで正確に位置関係を再現して描いたものだとか。主人公が台北の街を縦横に駆け巡りながら物語が展開するので、行ったことのある人ならリアルに情景が浮かぶのではないでしょうか。また、本書は主人公による台湾人論や比較文化論が非常に面白く読みごたえがあります。横溝正史の『蝶々殺人事件』からの引用もあり、日本のミステリーが台湾で広く読まれていることを実感します(日本の出版社ももっと華文ミステリーに注目してほしい)。ラストは主人公の心を覆っていた厚い雲の隙間から光が差してきたことを予感させるエンディング。続編がすでに台湾で出版されているとのこと、ぜひまた翻訳出版されることを願います。 | ||||
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<台北101>がオープンする前の台北を訪ねたことがありましたが、空港から台北市内へ向かう沿道の景色は懐かしさのようなものに満ち溢れていました。市内を歩くと迷路のような道に迷い、台北から淡水へタクシーで向かいましたが、窮屈な助手席の私は夥しい数の車、バイク、自転車が無秩序に暴走している最中、生きた心地がしなかった(笑)。バーズアイで見た時、もしかすると秩序なく動いているように見える光景は、実は大いなる安寧秩序に裏打ちされているのでしょうか?まるで拡散縮小を繰り返すデジタル・アートのように。何故こんな話をしているのかと言えば、本作は「台北」という街とストリートが主役の物語だと思えるからでしょう。2021/4月に読んだ「ブート・バザールの少年探偵」は、インド、スラム居住区のストリートの物語でした。探偵小説は、主人公と街が描かれていることがとても大切ですね。マーロウのL.A.のように。 「台北プライベートアイ "Private Eyes"」(紀 蔚然 文藝春秋)を読み終えました。私立探偵、呉誠(ウー・チェン)の初登場。大学で演劇学を教える教師であり、劇作家でもあった彼は、パニック障害を持ち、妻に去られ、大人数の酒の席で人間関係を破壊し、全てを投げ出すようにして私立探偵に転職します。まあ、言うほど簡単な職業ではないとは思いますが(笑)。 或る詐欺恐喝事件が物語の<つかみ>として描かれ(それは、呉誠のはじめての事件となるわけですが)、そこで彼は一人の女性と懇ろになり、そこから今回のメイン・ストーリーである連続殺人事件へと突入していきます。今回もまたストーリーを語れるのはこの辺まででしょうか? 事件については、先に読んだ「月下のサクラ」(柚月裕子)同様、地取り捜査よりもむしろ監視カメラの連鎖が取得した映像を追いかける現代捜査がひつこく描かれ、GPSが台北の街を睥睨し、米国からプロファイリングが持ち込まれ、それらの記述については、<ミステリ読み>の手練たちから見た時、どう評価されるのでしょう。私は、作者の知識をひけらかすようなアカデミックな視点があまり好きではありませんでした。しかしながら、その拡がりのない閉ざされた物語でありながら、おそらく一回しか使えない「極私的なストーリー展開」については、処女作であるが故に許容される範囲内なのかと思ったりもしました。ミステリ的興趣については、確実に布石が置かれているあたりは好感が持てますが、飽くまで「好事家」的な、自画自賛が垣間見える点、読者の好みがわかれるかもしれません。 また、或る宗教についての薀蓄を披露し、ペダントリーに溺れて見える主人公については、自虐的なユーモアとアイロニーに満ちたタメ口と軽口を速射砲のように放出し、ユニークで破天荒に見えたりもしますが、実は、意外にストレートで真面目な探偵として記憶されるような気がします。愛すべき、未成熟なアンチ・ヒーローとして。未成熟は、成熟を惹きつけます。言っている私はまた、呉誠よりも遥かに未成熟ですが(笑)。 今回は、私立探偵・呉誠の己が罪への「埋め合わせ」の物語。私立探偵小説としては、ここから始まる「前夜」の物語。いずれにしろ、次回作を期待しながらも、そこで私のささやかな不満が解消されるのか否か、注目したいと思います。「大同的世界」の実現はまだまだ遠い彼方にあると思います(笑)。 | ||||
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