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蟬しぐれ
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蟬しぐれの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全169件 141~160 8/9ページ
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なんて切ない話なんだろう…これは単純に恋愛の話では なく、人間の不憫で儚く、だけど美しい繋がりをうまく 描写している。友の声や父の思い、そして好きな人の身 を案じる主人公の気持ちがひしひしと伝わって来る!読 み終わった後、映画の主題歌「かざぐるま」の詩が凄く 切なく聞こえる。ただ通り過ぎただけ…そうだったのか も知れない。藤沢周平の本を読むのならこれで決まりで しょう!! | ||||
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時代劇はちょっとと思いつつ読み始めたら一気に最後まで読んだ。 下級藩士の父を藩内の抗争の末,罪人として処刑された文四郎の少年から青年,そしてりっぱに成長し父の名前を継承するまでになった波乱の人生を,友との熱い友情,剣の道を学ぶ道場,そして父を語る何人かの人々に包まれながら,どんな不遇の環境にあっても決して不平を言わず,まっすぐで強い凛とした心のまま生き抜く姿はまぶしくもある。 そして,どんな時も文四郎の心の中に生き続けた「ふく」の存在。隣家の娘がやがて殿の側室となり,その身分は大きく離れることとなるが,藩内の抗争から,ふくとその子を守るため自らの命をかけて立ち向かうことになる文四郎。 身分や立場がどれほど変わろうとお互いを想い続けていた二人の心を「恋」というにはあまりに簡単過ぎるが,他に言葉が見つからない。 これは,時代劇でなく淡い恋の物語だという方もいるが,文四郎はやっぱり武士でなければ表現できない男の生き様だと思う。 映画の中で,罪人として処刑された父を荷車に乗せ,人々の冷たい視線や言葉の中,真夏の炎天下,手の豆がつぶれながら必死に運ぶ文四郎。 その文四郎に手を貸すため必死に走り寄る少女ふく。この場面はいくらぬぐっても涙を止めることはできなかった。 その対局としての文四郎とふくの最後の別れの場面。長い年月が全てのことを受け入れさせ,お互いの心を開き,そして離れゆく二人の心中はふくと文四郎が最後に語った有名な言葉の他は,どんな言葉をもってしても語ることは出来ないと思う。 まちがいなくこれまで読んだ時代劇最高の作品です。 | ||||
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同じ藩の下級武士の家柄どうし、しかも隣家の子。 男と女のちがいが意識される前から互いを見知っていた、ふくと文四郎。 それは、燃え上がるような激しい恋ではない。 それは、ごく淡い思慕であった。 その淡い思いゆえに、文四郎は命を賭けた。 かけがえのない、いとおしさを守るため。 この小説は、人は激情によらずとも我が身を捨てることができるという こと、いとおしいものを守るのは人の誇りであるということを、わたし たちに示してくれている。 日本人の恋の元型がここにある。 凡百の恋愛小説が束になってかかってもかなわない恋愛小説である。 とくに、ラストの切ない爽快感(としか言い様がない)は圧巻。 (NHKドラマのラストシーンほど悲壮感がなく、映画のラストシーンより は艶っぽい。私は、この原作のラストが一番好きだ) | ||||
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良いものは、良いのです。文句なく。ストイックに長年の思いを胸に秘めという物語は、やはり受け入れちゃいます。古くは「天の夕顔」なんて、作品もありますが、読後感は似ていて非なるものです。こちらの作品のほうが、まさに爽快度では、上回ります。「解説」に『一気に読めてしまう』とありますが、私もそう思います。文四郎のすがすがしくさわやかな男らしさと、おふくのけなげで一途な女らしさが、非常にうまく絡み合っていて本当にお勧めです。 | ||||
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切ないほどに美しく、凛然としてすがすがしい。 若い頃からの剣の修行、淡い恋、逸平や与之助との友情、藩の世継ぎ争いからの父の悲運とも言える切腹、里村家老と稲垣元中老の罠など息をも吐かさぬ話の展開。 その中にあって牧文四郎はどこまでも武士の子として毅然として自らの運命に立ち向かうのである。 二十余年の歳月が過ぎて出会ったふくと文四郎の二人が交わす言葉は遠く過ぎていったあの頃を取り戻したかったかのように響く。 「文四郎さんの御子が私の子で、私の子供が文四郎さんの御子であるような道はなかったのでしょうか」・・・・・・・ 「それが出来なかったことを、それがし、生涯の悔いとしております」 20年ー 人を想い続けたことがありますか? | ||||
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TVで水野真紀がお福の役で出演していたのを見ました。 藤沢周平は「海坂藩」という架空の藩(自分が自由に描ける舞台)を舞台に物語を作り上げています。 主人公は牧文四郎とその幼なじみのお福。貧しい家に育ったお福は江戸に奉公に出てから大きく運命が変わり、世継ぎに絡んで藩の派閥争いに巻き込まれます。お福を守ろうとする文四郎たち。 物語の最後に、二人はそれぞれが思いを寄せていたことを確認します。抱き合って唇を重ねあいますが、二人の立場はそれ以上はいかんともすることができない立場です。この場面の二人の会話が、なんとも切ないのです。一瞬炎が燃えたように時が止まり、やがて蝉しぐれだけが聞こえる静寂へと場面が変わっていくところがいいのです。 藤沢周平の文章は、なんといいますか、ほんのりとした温かさがあります。ストーブやヒーターのような暖かさではなく、陽だまりのぬくもりのような柔らかな温かさを感じます。私はそこが好きです。 | ||||
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映画も公開前に一足先に見て来ましたが、本書を読まずして、観たとはいえないでしょう。このストーリーには昔から関心がありましたが、今、改めて読んでみて、また違ったものを感じた。それは「時間の流れ」の持つ意味である。これは人それぞれ、感じ方は本来は異なるのだが、本作品の締めくくりが、この2人の「感じ方」の一体化にあるのではなかったろうか? | ||||
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純愛ブームなどという言葉が恥ずかしいくらいに、さっぱりとしている恋愛。 そして武士として今から見るとみょうちくりんな気概というものもなく、ただただ日本人としての資質を教えてくれる。その姿勢を感じ、素晴らしいと思える。それがとても嬉しく思える。 | ||||
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何べん読んでも、すがすがしい後味の本です。なんか気分がくさくさしたりした時に、気分転換にわたしは4回読みました。 この頃、「御宿かわせみ」にはまっており、時代物もいいなぁと思っていた時に、この本は系統が違うかもと思いながら読んでみました。捕り物も良いけど、こういう青春ものもいいな、現代の若者にはなかなか経験できないものかもしれないが、こういう人生の浮き沈みの中でも辛抱し、普段の心の持ち様で周りの人の協力も得られ、人生が開けてくる。こういう世の中であって欲しいと望むのは、現代にないロマンがあるからなのか。映画化されるとの事で原作をこわさない内容であって欲しいと思う。 | ||||
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いい加減年を取った,しかも男が言うと,街角インタビューで政治について詳しくコメントしてしまう,一般通行人のようでいやなのだが,「恋はいい」。こんな俺でも胸がきゅんとなるんもんな。 恋とハラハラと爽快感これは,私の中のエンターテイメントに欠かせないもんなのだが,「蝉しぐれ」はすべて100%です。息子が大きくなって,酒が飲めるようになったら,黙って机の上に置いてやりたい一冊です。 藤沢周平さんの作品は,ほとんど読みましたが,自分の中では1番です。というこうとは,今まで読んだ時代小説の1番ということです。 「不憫だ」というコメントが多いですが,私は爽快感というか清々しさでいっぱいになりました。最初から最後まで「清々しく」て「切なく」て「胸が躍る」至極の一冊です。 | ||||
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お福と文四郎の恋模様がもう少し書かれていても良かったかなと感じたのも事実だが、この作品には友情が描かれている。文四郎、与乃助、逸平の友情は歴史小説版スタンドバイミーといった印象を受けた。特に逸平の子どもっぽさは自分と似ているなと感じながら読んでいた。 またこの作品は自然描写が巧みで、蝉のなく夏に雑木林の中で一人、空を見上げると木々の間から太陽の光がかすかに差し込むといった情景が思い浮かんだ。この自然描写をもっとじっくり楽しみながら読めばより懐かしさ」を感じながら読めたのかもしれない。 最後に、蝉しぐれというタイトルについてだが、「しぐれ」とは「涙」という意味もある。田舎の夏を連想させる懐かしさを「蝉」、文四郎とお福の恋、特に最後のお福の涙を「しぐれ」に込めたものではないかと読み終えてじっくり考えている。 「こんなのもありだな」何か静かな懐かしさが残る、文学作品だと感じた。 | ||||
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以前、映画ドラマで描かれる時代劇は、脚色されてどれも同じような筋書きで満足できるものではなかった。 しかし、藤沢氏の作品を知った時、そこに市井の人々の息遣いが身近に感じられその中に引き込まれていった。 主人公が、老中の罠からどうやって身を守るかというところは現代の上司と部下の関係に当てはめても参考になるところであった。 ここ数年藤沢氏の作品が山田監督をはじめ取り上げられるところを見ると日本人の本質性が藤沢氏の作品から訊ねられているように感じられた。 | ||||
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どちらかというと、時代物の小説は苦手な方だ。しかしこの作品は、最初から最後まで、飽きることなく楽しめた。やさしく誠実な心と凄腕の剣、そして揺るぎない信念。文四郎はとても魅力のある人物だ。淡い恋、友情、剣のライバル。そして藩内の勢力抗争。様々な出来事にぶつかりながら、何とかそれを乗り越え、文四郎は成長していく。人は苦労するほど、悩むほど人間として大きく成長する。彼の成長を見続けることが出来たのは、読者冥利に尽きる。爽快感が残る、とてもいい作品だった。 | ||||
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この小説は、すがすがしい読後感を残すという。そうだろうか。私には、たいへん辛い、悲しい物語に思える。青春小説かと思って読んでいると、権力抗争の物語になり、終章にいたって、美しい、しかし限りなく切ないラブストーリーとして結晶する。たんたんとした筆致ではあるが、描かれているのは、激しい情念である。初恋の淡い思い出などというものではない。ここに描かれているような恋が現実にありうるのかは知らない。しかし描写には説得性があって、感傷を排したエンディングは、心を揺さぶる。私たちは浮世のしがらみを引きずって生きている、生きてゆかねばならぬ。一度契っただけで(あるいは「逢い見る」ことなく)、相愛の人に永遠の別れを告げねばならぬこともあるだろう。人生がそういうものだとすれば、あまりに残酷ではないか。作者は、人生の本質は別離だと言いたかったのだろうか。 | ||||
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主人公の少年期から壮年期までを描いたこの作品は、小さな源流がさまざまな伏流を加えながら、激流を下り、最後は静かに海に流れていく、そんな作品です。 この作品展開の素晴らしさは、小説を読みながら、上質の映画を見ているようで、「息をつかせぬ展開」とはまさにこの作品のことだと思います。 複雑に絡み合う人間関係の、一服の清涼剤である文四郎とおふくの恋、その恋の行方が、この作品をただの時代劇に終わらせていない、藤沢文学の真骨頂ではないでしょうか。 読んだ後のすがすがしさは、たとえようがありません。 | ||||
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藤沢周平を読んでいるとその世界に入り込み、そよ風の香りをかぐ思いをする。この作品であれば、海坂藩の住人となることができるのだ。四季折々の風があり、やさしい風もあれば、少し心に染み入る風もある。さらに、読み手を引き込むエンターテイメント性がある。これ以上何を望もう? 「蝉しぐれ」はそんな藤沢周平の世界を堪能できる代表作のひとつ。内容は他のレビュアーの方が書かれているとおりなので割愛させていただきますが、この世界に住みつづけたいと思わせる名作です。 | ||||
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『蝉しぐれ』というタイトルに併せるがように、03年の夏の終わりにNHKで放映され、藤沢ファンのみならず、多くの方を惹きつけた名作である。テレビの「文四郎とふく」は、原作に合う起用で共に良かった。 (二人の家老も、筋書きをフォローするが如くの俳優起用で良かった) 幼なじみの『淡い恋』(正確には、恋とも言えない「ほのかに好き」くらいの感じなのだろう)を、終始薄いバックミュージックに流しながら、『男の子の友情』(女の子にはない、男の子ゆえの友情。この表現、わかってもらえますか?…)を、節目節目に織り込みながら、物語は進行する。 読んだあと「ほのかで・清らかな」な感じが、秘薬のように心に漂う、えもいわれぬ良い作品である。 昔は「初恋の味・カルピス」といったが、この作品に関しては、それは合わない。カルピスでは濃すぎるのだ。 表現のプアな私が例えていえば、「清楚ななりの、細身のご婦人が、ふあっと通り過ぎたあとに、かすかに感じられる残り香」のようなものか。 幼な心に思った女や、自分を育んでくれた故郷の物象に対して、大きくなってから想う心は、文四郎ならずとも、「淡く切ないもの」として感じられる。 その意味からしても、この作品のタイトルは、まさしく『蝉しぐれ』をおいて、他にない。 | ||||
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父を罪人とされたひとりの青年の、運命に従容に、ときには果敢にたちむかう成長の物語。秘剣を操る剣客の話、サムライの話、友情の話、悲恋の話・・・それらが作者が巧みに描く山野の情景に彩られ、どのような解釈で読んでも心にしみいる名作である。現代人の忘れてしまったなにかが読後に去来する、時代小説の枠を越えた感動があるに違いない。 | ||||
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思春期の目の高さでみた大人たちの世界。 遠い日の祭り、荒れ狂う闇の風雨、運命の夏の1日、 学問や道場生活を通じての淡い想い、尊敬、どん底、 そして友情。 もちろん剣は競争世界の中で勝つためのツールに過ぎない。 大人の幾分捻じ曲がった世界を、スリル満点に小気味良く、 景色や気温までもを鮮明に読者にイメージさせる洗練された 言い回し。さらにお福様と文四郎の数十年ぶりの再会は、 だれしも少なからずあこがれる大人の出来事でもある。 気が付くと蝉しぐれの中で自分を発見している主人公。 この小説を読む前から、多忙な毎日は夢幻で、蝉しぐれの 中にいる自分こそ原点であるという思いがあった。 こんな気持ちの良い小説を紹介していただいた、先輩に 感謝する次第でもある。 | ||||
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剣術道場と塾で文武両道を目指す15歳の牧文四郎は、ある日突然、父が監察に捕らえられたという知らせを受ける。父は切腹、家禄も減らされ、牧家は断絶寸前の危機にさらされる。父が生前に関わっていた、藩の内政に関わるある重大な秘密とは・・・?そして、文四郎とその友人たちや道場の仲間、初恋の幼なじみ、おふくをも巻き込んでゆく、藩の内紛のゆくえは・・・? 美しい四季の描写に彩られ、事件は展開し、文四郎は剣の腕だけでなく、内面的にも成長してゆきます。叶えられなかった初恋の傷を胸に、父の遺した「わしを恥じてはならん」という言葉を信じて、ひたむきに、誠実に生きようとする彼の姿勢には、時代小説という設定を越えて読者に訴えるものがあります。 まだ少年の文四郎が、父の死と向き合い乗り越えようとする「蟻のごとく」の章は、残酷で、けれど強い意志を感じさせて、とても印象的です。荷車をひく文四郎のイメージは、「蝉しぐれ」の音とともに、この小説から静かな生命力を私に抱かせてくれました。 | ||||
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