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蟬しぐれ



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【この小説が収録されている参考書籍】
蝉しぐれ
蝉しぐれ (文春文庫 ふ 1-25)

蟬しぐれの評価: 4.67/5点 レビュー 169件。 Sランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全169件 101~120 6/9ページ
No.69:
(5pt)

藤沢文学の青春小説

藤沢文学最高級の青春小説です。正直読んでいる途中、長いなぁと思いましたが、内容がすごく充実して面白かったです。仲間の成長や出世、杯を交わしたり、恋愛要素が含まれていて、時代小説や長編が苦手な人こそこの本を読んでほしいと思いました。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.68:
(5pt)

静かな感動

静かな感動がゆっくりと沸き上がる、それが読後の感想です。

映像化されたものは見ていなかったので、本書は真っ新な状態で読みました。若い武士が父の非業の死を乗り越え、固い友情に支えられながら、清廉な生き方を貫いていく、爽やかな成長物語で、その中に淡い恋があり、ストーリーの中心的な出来事と関連していきます。

清々しい若者が、艱難辛苦に耐えつつ、人に恥じないよう生きていくという基本的には爽やかな話ですが、普通なら悲嘆に暮れる状況においても凛々しい振る舞いが要求されたり、外からは分からない自分の心の中だけのわずかな心の動きを恥じてみたり、時代が違うといってしまえばそれまでかもしれませんが、主人公の若いながらもストイックな自身の律し方は、自分勝手を個性と言い換えることが当たり前になっている現代を生きる我々にとっては、非常に新鮮かつ痛快であって、胸を打つものがあります。

名作だと聞いていましたが、本当に期待を裏切らない名作だと思います。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.67:
(5pt)

繊細な感受性を凝縮して熟成させた小説。

●一度は耳にしたことがあるであろう、
言わずと知れた時代小説の巨匠”藤沢周平”の名作中の名作
「蝉しぐれ」

●日本人にしかこの繊細な感動はわからないと思う。
DNAの髄まで浸透しているとしか思えない日本特有の美意識。
無常観、儚さ、わびさび。
これら日本特有の美意識がこの小説全体に漂っているのを感じます。

●決して、「恋空」のようなお涙頂戴の安っぽい感動ではなく、品性を感じさせる感動であり、
また、映画タイタニックのような体を突き抜けるような壮大な感動でもない。
それは心に染み入る、儚い、情緒溢れる、感慨深い作品といった言葉が一番当てはまる気がする。

●読んだ後は心地よい浮遊感を感じると共に、どこかさびしさを感じる不思議な小説。
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No.66:
(4pt)

文四郎とふくの幼き頃の淡い思い出の記憶を蘇らせる“蝉しぐれ”

現在、映像化の最も高い人気を誇る時代小説の雄・ 藤沢周平 (1997・1・26逝去、享年69歳)。没後13年が過ぎ去った現在もその人気はとどまるところを知らず、 山田洋次 監督による藤沢周平三部作(『 たそがれ清兵衛 』『 隠し剣 鬼の爪 』『 武士の一分 』)や近年でも『 山桜 』(08・5・31公開)や『 花のあと 』(10・3・13公開)など著者原作による映像化が後を絶たず、まるで現在もベストセラー作品を執筆し続けている流行作家のようである。

 普段、時代小説に馴染みの薄い読者も虜にする藤沢作品であるが、私も同様、以前映画『 蝉しぐれ 』(05・10・1公開、監督:黒土三男、主演:市川染五郎)を拝見し、今回本書を手にした次第である。
 本書は『山形新聞』夕刊(1986・7・9〜87・4・11)に掲載され、東北の小藩「海坂藩」の下級武士の子として育った少年藩士・牧文四郎の淡い恋と友情、そして自分にふりかかる悲運と忍苦を通して成長していく姿を描いた作品である。

 藩内で起こった権力闘争に巻き込まれ、切腹するはめになった父・助左衛門の遺志を受け継ぎ、世間の非難を浴びながらも家を守り、懸命に生きる文四郎の姿や同じ道場仲間の明朗な小和田逸平と秀才の島崎与之助との友情、密かに文四郎の事を慕う幼なじみのふくとの運命的再会などを通して日本古来独特の風習が描かれており、自分にとっては初めての藤沢作品体験であったが、読後感としては時代小説の大家である 五味康祐 や 柴田錬三郎 といった同時代の作家が描いた作品を連想させる文体や世界観で今日における藤沢作品の人気の一端を垣間見る思いがした。

 最後に少年時代から互いに思いを寄せているにも関わらず、なかなか言葉に表すことができずに互いにすれ違いのまま別々の道へ歩む事となった文四郎とおふくが、20年越しに幼き頃の思いを交わせる事ができてよかったと思いました。
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No.65:
(3pt)

敢えて言う、緩い。

当方、時代小説に関しては全くの初心者である。だからこそ、世評の高い本作を入門編として読んだのである。

 反感覚悟で、敢えて一言で言う。

 緩い。

 わざわざ長編にするような話だろうか?若干似たモチーフの三島由紀夫『春の雪』の読後感に比べたら5分の1くらいの感動だったような気がする。

 元々、私が時代小説とは相性が悪かったのかも知れない。しかし藤沢周平のこの作品は舞台だけ、江戸時代にしたサラリーマン小説であるような印象を受けた。ファンが多いのも分かる気がする。

 勿論、文章は神業並みに上手い!が、却ってそのテクニカルなあざとさが鼻につく。

 藤沢周平の小説はもう、多分これ以上読まないと思う。
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No.64:
(4pt)

爽快な青春時代小説です。。。

藤沢作品をはじめて読みましたが、これはなかなか面白い時代モノでした。

 作者の小説をもっともっと読んでみたいと思う一冊です。
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No.63:
(5pt)

そこにある―勇姿―

『蝉しぐれ』には、牧文四郎のひた向きに生きる様が描かれている。

 淡い恋心、青春時代、過酷な運命、親を想う気持ち、人生を切り開く勇気、修行の行為、そういった生きる醍醐味を、彼は手加減なく経験していく。

 尊敬に値する父のいる不自由なき良い家庭に育ち得た青年が、突然、家の不運に襲われる。心ない周囲の行為が彼をさらに傷つける。彼は若くして地獄を見たはずだ。私だったら、きっと潰れてしまう。

 現代は、少しぶっちゃける。辛いときには、情けない姿や弱音、そういうものを、ちょっと見せて共感を得る。別にそれで悪くない。頼ってもらえれば「しゃあないなぁ〜」って、味方してあげたくなるし、持ちつ持たれつは、良好な人間関係で、わたしたちは今、そういう時代に生きている。

 しかし彼は、潰れもせず、泣きつきもせず。じっと思案し、どうすべきか道を探り、まっすぐに走りだした。ときに竹馬の友や縁ある人々が、文四郎に力を貸そうとする。そんな描かれ方もいい。

彼を見ていると、何があっても彼を支持したい気持ちになっていく。

 母をかばい、自らの生きる道を見いだし、志高く生きようとする。そうすることに、一歩も引かなかった。冷静に己を見つめる視点と共に、選んだ剣の道を謙虚に渋く歩み、やがて自信を身につけるに至った。

 逆境に負けず、ひた向きに生きて行く。人として大切な姿が描かれた作品である。
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No.62:
(5pt)

青春物語

父の死、淡い恋、友情、様々な思惑が渦巻く藩内の抗争
…巻き込まれ戸惑い成長していく主人公、牧文四郎の物語。

最終章でお福さまの「文四郎さんの御子が…」という台詞は何回読んでも胸にじーんとくる。

数年前にみたNHKドラマにはまった当時の私の印象では恋愛物語のイメージが強かったが、文四郎をはじめ若い武士たちの活躍を描いた爽やかな物語だと分かった。
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4163102604
No.61:
(5pt)

「橋をかける」前から読みたいと思っていました

美智子皇后様の国際児童図書評議会における基調講演のビデオを一部拝見したことがありました。詳しく活字で読みたいと思っていましたところ今回文庫特装版で出版されたことを知り早速注文しました。本屋さんで探すよりも手軽に手に入ります。送料の関係で「蝉しぐれ」も頼みました。美智子皇后様のお言葉は幼少のころからの読書体験から語られ、現在の深い慈愛に満ちたまなざし、生き方そのものにつながられていることを知り、幼少の読書がいかに大切かを実感させられます。「根っこを与え」「翼をくれ」「悲しみや喜びにつき、思いめぐらす機会をあたえてくれた」と述べられていましたが若いお母様方に是非読んでいただき、お子様を心豊にはぐくんで欲しいと願う本です。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.60:
(5pt)

良質な時代小説のお手本

舞台、主人公の年齢設定、心理描写と風景描写、筋書きの芯となる苦難と陰謀、友情と淡い恋、剣と成長。これらを組み合わせたバランスがよい、テンポがよい、無駄がない。
時代小説になじみのない若年層から、歴史もの時代ものをいろいろ読んだ熟年層まで(そういう人はすでに読んでいるだろうが)お薦め対象者を選ばない。
それにしても日本人というのは、うだる夏空の蝉しぐれに包まれると、遠い少年・少女の日に自動的にトリップしてしまう仕様になっているみたいだ。
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No.59:
(5pt)

信じられない!!

そんなにたくさん本を読んでるわけではないので
よくこの本は何度も読み返したくなる〜とか、擦り切れるまで読む〜とか
理解できなかったし、好きな本に対するお決まりのほめ言葉としか見てなかったけど
この本を読んでその気持ちがよく分かりました。
もう何度も読み返してるし、きっとこれからも何度も手に取ると思います。
すごいよかった。
初めて時代物を読んだので最初はすごく読みづらい気がしたけど
すぐなれました。
文四郎のまっすぐさや、闘うときの緊張感もすごくいい。
でも、何より言葉では表せない雰囲気や空気がありました。
しばらくするとその雰囲気が恋しくなって思わず読み返しちゃうんです。
こんな気持ちになれる本とは後にも先にもこの一冊だけだと思います。
読んでよかった。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.58:
(5pt)

数年後、もう一度読みたくなる作品。

時代小説好きな方はもちろん、敷居が高そうと感じて挑戦できない方や、これから読書を始めてみようという若い人にも読んで欲しい作品。

 この作品には、様々な要素(恋、別れ、友情、戦い)が絶妙なバランスで折り重なっていき収束していく爽快感がある。この作品で、最後のシーンを確かめたときに感じた気持ちを、言葉に出来なくてもいいから大事にして欲しいと思う。心を豊かにしてくれる作品だ。

 ただし、物語が急展開を迎えるまでにかなりのページ数を読む必要があるために、途中で挫折する人がいるかもしれない。それでも最後まで読んで欲しい。主人公と共に歩んでこそ、最後にこみ上げてくる思いに意味が生まれてくる。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.57:
(5pt)

少年から大人への繊細かつ深い描写

純粋な少年剣士牧文四郎に突然、尊敬していた父の切腹、家禄の召し上げ、淡い想いを抱いていたおふくの奥入りと、少年に理不尽な不条理がつきつけられる。
藩内の人からも非難される中、剣に打ち込むことで心身ともに強くなっていく文四郎。
しかし、逞しく成長した文四郎だが、本人の意思とは別に権力闘争に巻き込まれていく・・・
いつもの海坂藩を舞台として、少年の成長のさまを描いた作品。
目の前に浮かぶような景色と少年から大人へと変わっていく繊細な心の動きの描写が読者をぐいぐいと引き込んでいきます。
著者の作品は重厚で玄人好みともいえるものが多いですが、これは比較的若い人にもお勧めしたい一品です。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.56:
(5pt)

作家の力量

風景描写が素晴らしい。精緻な文章とはこうゆう文章を言うのだと思えた。
純粋な文章の表現力に驚くことは少いが、GWに実家で父親の本棚にあったこの作品に驚いた。ファンが多いのは知っていたが、藤沢周平が優れた作家であると遅ればせながら知った。
主人公は江戸時代、北国のとある藩の下級武士の子である。当時の武士の子弟は儒学や剣術に励み、将来の官吏としての修行に励む。幼少から主人公は剣に抜群の才能をみせる。
藩の権力争いによる父親の横死などの困難に耐えながらも友情や剣術に励む姿が描かれる。その話の展開は無駄が無く、無理が無い。
奇抜な展開で構成された小説と対極に位置するような、丁寧な描写と無理の無い展開による構成は同時に強い説得力とリアリティを持つ。
主人公は平凡な半生を送るのではない。しかし、抜群の剣の腕前を持ちながらも、やはり主人公は普通の人間であり、藩という組織の内部抗争に翻弄される下級武士である。剣は主人公を助けるが、主人公を超人にはしない。

主人公は良い結末を迎えるが、読後に残るのはやはり切なさである。不幸な結末となった人々や藩という組織の非常さ、抗いようもない下級武士の悲哀、過ぎ行く少年期、それらに対する緻密な描写が主人公の活躍があっても心躍る物語ではなく、切ない物語にしている。
印象的な場面が多々ある。
冒頭の自然描写。
物静かな父が大声を上げて進言し、その確固たる良心に日頃の尊敬の念を深めた場面。
主人公が死罪となった父に思いを伝えられなかったことを悔やむ場面。
刑死した父の遺体を荷車に載せて牽く主人公の描写。
先輩の官吏に従って野山に分け入って農村を巡り、稲の作柄を相談する場面。
上げればきりがないが、精緻な文章がそれぞれの名場面を表現しており、それらが無理のない展開で連なっている。
それぞれの名場面の描写はおそらく、作者が相当の労力を掛けて書き上げた労作と思われる。そう思えるほど良く練られており、緻密である。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.55:
(4pt)

どっしりとして歴史小説

藤沢作品を初めて読んだ。

文章の流れがきれい、剣での戦い場面はグイグイ引き込まれるような表現、主人公とその周りの人たちの言葉、ストーリーの進め方 

脇目もせず、どっしりとして大河小説のような安心して読める歴史小説ですね。

これまで、有名な歴史上の人物の歴史小説を読んできたが、蝉しぐれのような歴史小説もとても面白いのですね。

落ち着いて読むには、藤沢作品はとても良いと思います。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.54:
(5pt)

まだ読んでいない人は

この小説を表現できる言葉が見つかりません。

何度も何度も、繰り返し読んでいますが、そのたびに新たな感情が涌き起こってきます。
ただストーリーのおもしろさに酔うのではなく、語られる言葉のひとつひとつを、
味わってみたくなる。

まだ読んだことのない方は幸せかもしれません。
これから素晴らしい世界を味わうことができるのですから。
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4163102604
No.53:
(5pt)

一途さの美しさ

「単純」という言葉はあまりよい意味では使われないが、単純であることを、私は男の美しさと思っている。単純さは一途さであり信念である。決して華やかではないが、雑音に惑わされずに立っていることのできる男を、藤沢周平は好んで書いた。私もまたそういう男を美しいと思う。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
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No.52:
(5pt)

大河小説と呼ぶべき藤沢文学の傑作

東北の小藩を舞台に、文四郎と言う若き藩士を中心に、青年達の友情と成長物語、藩の中の権力争い、剣の道、そして藩の点描を大河が流れるように悠揚迫らぬ筆致で描き切った傑作。藤沢文学の代表作と言っても良い。

冒頭で藩の地理が繊細に描かれ、読者を自然に物語に引き込む。剣豪の道を歩む事になる文四郎の幼友達として、調子が良いだけに見えるが実はしっかり者の逸平、学問に秀でた予之助を配しているのも巧み。三人の友情物語が話を支える一本の柱である。冒頭では三人は15才程度。ここで、聞こえる「蝉しぐれ」は読者に子供の頃の夏の日を思い出させる。藩の勢力争いのせいで文四郎の父が切腹、文四郎の家の禄も減って苦難の道を歩く文四郎。また、文四郎を慕う隣家の娘"ふく"が江戸に旅立つ際、会えなかった事を後悔する文四郎。物語は名誉回復と"ふく"への想いを確かめるための文四郎の生き様を描いたものとも言える。不遇の文四郎は剣の道に励み、遂には道場対抗の試合に出るようにまでなる。この辺の対決シーンの迫力は凄い。「秘剣村雨」などどんな技かワクワクする。そうかと思えば、逸平に誘われて行く色街の居酒屋の酌女や文四郎が村回りで会う農民なども活き活きと描かれている。雨、風、田の様子など自然描写も物語に溶け込んでいる。まさに硬軟自在である。そして、"ふく"が藩主の側室になり、"お福さま"となる。これをキッカケに藩の権力争いが再発し、文四郎は...。

結末で壮年となった文四郎は再び「蝉しぐれ」を聞く。あの日を思い出す「蝉しぐれ」でもあり、来し方行く末の長さを噛み締める「蝉しぐれ」であろう。時代小説と言う枠を超え、大河小説と呼ぶべき藤沢文学の傑作。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.51:
(4pt)

北国の風雪に耐えるような,主人公の芯の強さに感服

とにかく,文四郎の芯の強さに心打たれます。

最初にそれが現れるのが,家禄を減せられてから狂ったように剣に打ち込んで行くさま。この頃はそうするより道が無かった感があるけれども,安定した生活に戻ったあとの山場で取った彼の行動は,完全なる自由意志の現れ。

事件の首謀者に相対する文四郎の立ち回りには,読んでいるだけで身震いが来ます。そこには,運命に翻弄された積年の思いを感じずにはいられません。(ちと奥さんが可哀想だけどね・・・)

「あの日,文四郎が兵馬と打ち合いをせずに家に戻っていたら」と当然誰もが思うだろうけど,それは野暮な空想というもの。

想う男と女が同じ場所に会うのも運命,会わないのもまた運命。その結果に従って生きなければならないことがあるのは,いつの時代も変わらないこと。それをはっきりと認識させてくれます。ラストシーンで,その感傷がまた際立ちました。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604
No.50:
(5pt)

美しい国、日本。

この物語には日本人の持つ美しさ、力強さが描かれていると思います。

今も昔も変わらぬ人間の欲深さ。それに翻弄される主人公。

悲しくも力強く生き抜いていきます。その姿が何とも清々しい。

日本人の理想型でもなんでもなく、日本人の本来あるべき姿を現しています。
蝉しぐれAmazon書評・レビュー:蝉しぐれより
4163102604

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